平成3年版 通信白書

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第1章 平成2年情報通信の現況

(5)電波利用の健全な発展のために

 ア 不法無線局問題
 近年、電波利用の拡大に伴い、免許を取得せずに運用する無線局(以下「不法無線局」という。)や免許を受けているものの電波法に違反して運用している無線局が多く出現し、放送、警察、海上保安、消防業務等の重要無線通信をはじめ、各種の無線通信に混信妨害を与える事例が増大している。
 これらの不法無線局等は、アマチュア無線機やパーソナル無線機を改造したもの、国内規格に違反する外国製品及び輸出目的で製作された国内製品等を使用することにより、妨害を発生することが多く、最近ではこれらの機器を意図的に使用する悪質な事例が増加しつつある。
 このような状況から、郵政省においては、今後、多発する混信妨害を排除し、電波利用環境の保護を推進するため、不法無線局の取締り強化とともに電波利用に関する知識の向上及び不法無線局の未然防止のための国民への広報活動の強化、混信被害情報の収集体制の整備等を図ることが重要な課題となっている。
 イ 不要電波間龜
 エレクトロニクス技術の発展と情報化の進展により、各種無線機器や電子機器が急速に普及しているが、各種電子機器から輻射される不要な電波が通信の疎通を阻害したり、各種無線通信機器から発射された電波が各種電子機器に障害を与えるといった、不要な電波による障害が多発している。
 このような不要電波問題については、関係省庁及び業界団体が不要電波の抑制と被害を受ける側の妨害排除能力(イミュニティ)とを相互に勘案しながら適切な対策を行う必要がある。
 郵政省においては、不要電波に関する規格の整備、技術開発の促進及び一般の人々の苦情相談を実施している。
 また、郵政省を中心とする関係省庁、学識経験者及び業界団体等からなる「不要電波問題対策協議会」においては、不要電波の測定法等の技術的検討、国内外の情報収集及び広報等を実施している。
 2年には、不要電波に関する国際機関である国際無線障害特別委員会(CISPR)において、不要電波の測定法や高周波利用設備から発生する不要電波の許容値の国際基準が大幅に改正されたことに伴い、本国際基準の国内規格化にむけ、現在電気通信技術審議会で検討が進められており、3年度に答申がなされる予定である。
 ウ 電波防護指針
 近年、国民生活や労働環境において「電波は人体に好ましくない影響を及ぼすのではないか」という電波の人体に与える影響について懸念が生じていた。郵政省は、昭和63年6月に電気通信技術審議会に対し「電波利用における人体の防護指針]を諮問していた。これに関して同審議会より2年6月に電波利用全般における人体の安全と電波利用の調和という新しい概念のガイドラインとなる「電波防護指針」の答申が提出された。
 この答申では、心配されるような生体作用が起きることはほとんどないことが強調されるとともに、電波利用における人体の防護指針が提示された。「電波防護指針」は電波防護の正しい理解を通し、健全な電波利用の発展を図るため、今後、行政における適切な措置及び電波利用者等における自主的な運用基準を策定する際のガイドラインとして積極的に活用されることが期待される。
 エ 無線通信の盗聴防止対策
 近年、自動車電話、コードレス電話等の普及は目覚ましいが、その一方では盗聴という新たな問題が生じており、通信の秘密の保護、電波利用の健全な普及発展に支障をきたす可能性がでてきている。
 このため郵政省は、無線通信の盗聴対策全般について技術面及び制度面の防止策の検討を行うこととしているが、当面の措置として、関係者に対して、
 (ア)一般向の受信専用機については、電気通信事業用の周波数帯(自動車電話、コードレス電話等)が受信できないような構造とすること
 (イ)現在のコードレス電話について、秘話性を向上させるための対策研究・開発を行うこと
 (ウ)コードレス電話機の取扱説明書等において、第三者に通話を聞かれる場合がある旨の表示をするなど、利用者の啓発・周知に努めることについて指導を行なったところである。
 その後、各社より盗聴防止機能を搭載した電話機が売り出されている。
 

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