平成3年版 通信白書

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第2章 豊かな生活と情報通信

(1)産業分野における情報化推進上の問題点

(情報化推進上の問題点)
 ネットワーク化動向調査の結果により各企業が抱えている情報化推進上の問題点について、利用する立場からみた問題点と管理する立場からみた問題点について概観する。
 利用する立場からみた問題点については、「端末の台数が少なく、利用したいときに使えない」、「端末の操作性が複雑でうまく使いこなせない」が上位の回答となっており、ネットワーク設備の不備といわゆるマン・マシン・インタフェースにかかわる問題点が指摘されている(第2-2-19図参照)。
 管理上の立場からみた問題点については、「システム開発・保守・運用の要員が不足している」が最も高い比率を占めている(第2-2-20図参照)。
 また、これに続いて「端末機器・コンピュータ・通信機器等の設備投資額(リース等も含む)が大きい」、「回線費用が大きい」といった設備面や利用面における経費の問題点が挙げられている。しかし、「情報通信
 人材、情報化投資の問題については、ヒアリング調査においても多くの指摘がなされている。
 人材の問題については、「ネットワーク化を通じて分散処理が進む中で、その環境に適応したアプリケーション・ソフトを開発するための要員が不足している。」(自動車製造業者B社)など、急速なネットワーク化の進展への対応が十分でないことを多くの企業が指摘している。
 また、情報化投資については、情報化の目的において省力化や合理化に加えて経営戦略にかかわるものの比重が高くなるにつれて、「情報化の効果を定量的に評価するのが困難になってきている。」(自動車製造業者B社及び繊維染色業者J社)というように、情報化の効果をどのように計量化し、投資規模の決定に反映させていくかが企業にとって大きな問題となっていることが指摘されている。一方、システム開発を受託しているL社は、委託元の企業について、「既存の業務の改善を行わず、システムを業務に合わせるという意識が強すぎるため、開発コストが高くなっている。」点や、「汎用のシステムをうまく使いながら業務を改善すれば、開発コストは安く、システム導入の効果も大きくなる。」ことなどを指摘しており、情報化投資の規模が拡大していくという問題には、情報化を進める企業が従来の業務処理の方法に固執してしまう意識自体にもその原因の一端があることがうかがえる。
(EDIに関する問題点)
 前項でみたように、産業分野においては受発注等の取引情報のやりとりをネットワーク・システムを使って行ういわゆるEDIの利用が進みつつあるが、今後の利用拡大に向けた問題点について概観する。
 ネットワーク化動向調査の結果からその利用動向についてみると、従業員千人以上の企業では約5割、従業員千人未満の企業では約2割の企業が利用していると回答しており、従業員規模による利用の格差がみられる(第2-2-21図参照)。
 また、業種別にみると、卸売・小売業における利用企業の比率が高くなっているが、その利用動向は企業規模によって大きく異なっている。従業員干人以上の企業では「利用している」あるいは「利用する予定はある」と回答した企業を合わせると9割を越えており、比較的大規模な卸売・小売業においてはEDIの利用が業務上必要不可欠なものになってきている状況がうかがわれる。一方、従業員千人未満の企業では、「利用している」と「利用する予定はある」を合わせた利用意向は4割程度にとどまっており、「利用する予定はない」と回答した企業の割合を下回っているのが特徴的である。
 次に、EDIの利用を拡大していく上での問題点については、「ビジネス・プロトコル等の標準化が必要である」という回答が約6割と最も多く、商品コードや伝送伝票の統一といったビジネス・プロトコルの確立に向けた標準化の必要性が指摘されている(第2-2-22図参照)。
 これに続く問題点として、「人材・技術の不足」については4割を越える企業が、また、「トラブル発生時の法的ルール作りの必要性」についても、従業員干人以上の企業の約3割、従業員千人未満の企業の約4割が指摘している。
 (ネットワークの運用・管理に関する問題点)ネットワークを構築する企業にとってはその運用・管理も非常に重要な問題である。ネットワークの運用・管理上の問題点についてみると、「障害の切分けができない」、「バックアップシステムの不備」、「ネットワーク運用・管理者の不足」がその3大要素として指摘されている(第2-2-23図参照)。
 これを従業員規模別にみると、従業員千人以上の企業では「障害の切分けができない」という回答が最も多く、約7割の企業が選択している。この問題については、ネットワークシステムにおいて利用している機器のメーカや電気通信事業者が複数にまたがっていることに起因する部分が大きい。機器については、種類が多岐にわたることがら、利用者である企業側での一元的な管理が困難になりつつある。また、複数事業者のサービスを利用する場合、その障害窓口が多元化していることから迅速な対応が困難になっている。
 一方、従業員千人未満の企業では「ネットワーク運用・管理者の不足」という回答が最も多く、ネットワーク運用・管理という専門知識や経験が必要とされる部門における人材の確保が難しいことを示している。ヒアリング調査においても、「急速にネットワーク化が進展する中で、ネットワークの総合的な管理を行える人材が少ない。」(自動車製造業者B社)ことが指摘されている。第2-2-20図 ネットワーク化推進上の問題点(管理上の立場)

第2-2-19図 ネットワーク化推進上の問題点(利用上の立場)

第2-2-20図 ネットワーク化推進上の問題点(管理上の立場)

第2-2-21図 EDIの利用動向

第2-2-22図 EDI拡大上の問題点

第2-2-23図 ネットワーク運用・管理上の問題点

 

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