福祉、学校教育、消防、道路や河川等の社会基盤の整備を始めとした国民生活に密接に関連する行政はその多くが地方公共団体の手で実施されており、地方財政は国の財政と並ぶ車の両輪として、極めて重要な地位を占めています。その結果、令和4年度地方財政計画における歳入歳出総額の規模は、通常収支分については、90.6兆円となり、東日本大震災分については、復旧・復興事業が0.3兆円、全国防災事業が0.1兆円となっています。
今後も、地方分権改革の推進や少子・高齢社会に向けた介護・医療・子育て支援など地方公共団体が担うべき役割に即した地方税財源の確保がますます重要となってきます。
地方財政は、約1,700の地方公共団体の財政の総体であり、その多くは財政力の弱い市町村です。地方財政の財源不足は地方税収等の落込みや減税等により平成6年度以降急激に拡大し、平成22年度には景気後退に伴う地方税や地方交付税の原資となる国税5税の落ち込みにより、過去最大の18.2兆円に達しました。令和4年度は、地方税収入や国税5税の法定率分が増加する中で、経費全般について徹底した節減合理化に努めましたが、社会保障関係費の増加が見込まれることなどにより、通常収支にかかる財源不足は2.6兆円となり、依然として大幅なものとなっています。
また、地方財政の借入金残高は、令和4年度末には189兆円、対GDP比も33.6%と見込まれています。
国民が負担している租税については、国税と地方税の比率が62:38となっていますが、地域間の財源の均衡を図るため、国税の一定割合の額が地方交付税という使途を特定しない財源として地方に交付され、さらに、補助金のように一般的に使途が特定されている国庫支出金が地方に対して支出されており、最終的な支出ベースは国と地方の比率が44:56と逆転しています。このようにして、地方公共団体が事業を行うための財源が国から地方へ移転されています。 (図B)
自治財政局では、人口や産業の集積の度合いによる地域間格差や景気の動向による税収の年度間格差にかかわらず、地方公共団体がその重要な責任を果たすことが出来るよう地方財政計画(多種多様な地方公共団体の財政の複合体である地方財政の規模や収支見通しを全体として捉えたもの)を通じて、地方の財源を保障し、地方交付税や地方債などにより各地方公共団体に財源保障をしています。
地方公共団体の歳出は地方債(地方公共団体の借入金)以外の歳入をもって賄うことが原則ですが、建設事業など将来の住民にも経費を分担してもらうことが望ましい場合、あるいは災害など臨時的に多額な出費の必要がある場合には、地方債を経費の財源とすることができます。自治財政局では毎年度地方債計画を策定し、地方債発行額の見込みを定めるほか、起債の同意等の事務を通じて、限られた地方債資金の配分を行っています。
自治財政局では地方公営企業に関する制度の企画立案、財政措置、助言等を行っています。
地方公営企業は、水道事業、交通事業、病院事業、下水道事業など地域住民の生活や地域の発展に不可欠なサービスを提供しており、その事業数は8,165事業で、決算規模は18兆751億円となっています(令和2年度決算)。
本来、地方公共団体の財源は自ら徴収する地方税など自主財源をもって賄うことが理想です。しかし、現実には税源などは地域的に偏在しているため、これを調整し、地方税収の少ない団体にも、一般財源(使途が特定されず、どのような経費にも使用することができる財源)を保障するための仕組みが必要となります。このような趣旨から設けられたのが地方交付税制度です。 令和4年度地方財政計画における地方交付税の総額は、18兆538億円となっています。
令和4年度末には地方財政の借入金残高が189兆円と見込まれています。このような財政状況のもと、自治財政局は、地方財政計画の策定等を通じて、地方公共団体が直面する地域福祉の充実や生活関連社会資本の整備等の重要政策課題に対応するため必要な財源を確保しつつ、不要不急な経費について徹底した節減合理化の道標を示すなど、地方財政の健全化の先導役としての役割を担うことが期待されています。