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政策評価の手法等に関する研究会(第3回)議事概要

日時

平成11年10月25日(月) 9:30〜12:15

場所

中央合同庁舎第4号館共用第3特別会議室

出席者

(研究会)
村松岐夫座長、奥野正寛、金本良嗣、久保惠一、田辺国昭、星野芳昭、山谷清志の各研究協力者

(総務庁)
続総務庁長官、持永総務総括政務次官、東田行政監察局長、畠中官房審議官、鎌田企画調整課長、若生政策評価等推進準備室長その他関係官

議題

  1. 総務庁長官挨拶
  2. 総務総括政務次官挨拶
  3. 研究協力者による発表
    • 星野(社)日本能率協会チーフコンサルタント
      「地方自治体における政策評価の動向と評価の手法について」
    • 金本東京大学大学院経済学研究科教授
      「中央省庁における政策評価の動向と評価の手法について」
  4. その他
    • 「標準的ガイドライン案の検討方向案(平成11年9月21日中央省庁等改革推進本部顧問会議説明資料)」について

会議経過

  1. 冒頭、続総務庁長官から次のような挨拶が行われた。

    • 以前、北川三重県知事から、当時誰一人できるとは思っていなかったが、自ら先頭に立って事務事業の見直しを始めたとの話を伺ったことがあり、政策評価に大変関心を持つとともに、その実現には大変な情熱が必要であると感じた。
    • 政策評価は大変難しいテーマであるが、国民にとって実現する必要がある。国民の期待に応えられるような政策評価の手法を御提言いただきたい。

  2. 続いて、持永総務総括政務次官から次のような挨拶が行われた。

    • 新しい行政の在り方が非常に大きな課題となっている中、政策評価の手法の検討は国民的にも重要な課題と認識。ともすれば従来の慣行に馴れがちな中、客観的で公正な行政システムを追求し、国民の側に立った政策を実施するために、政策評価制度の確立が重要。長官を補佐し、2001年からの実施に向けて政策評価に全力で取り組みたい。

  3. 研究協力者による発表として、星野(社)日本能率協会チーフコンサルタントから、「地方自治体における政策評価の動向と評価の手法について」、以下のような説明がなされた。

    • 政策評価の導入を検討する際には、評価の1.目的、2.対象、3.視点・方法、4.時期及び5.体制という5点から整理することが必要。
    • 地方自治体では、政策評価をPlan-Do-Seeというマネジメント・サイクルの一環として導入するというのが基本的な姿勢。
    • 三重県における政策評価の直接の目的は「住民起点での課題解決の実現」。それには、「わかりやすく透明性の高い行政運営の実現」という側面と、「将来につけを残さない事業の組立て」という側面がある。前者の上位の目的は「住民と行政との協働」、後者は「健全な行政の運営」であり、最終的には「魅力ある安定したまちづくりの実現」を目指す。この両方の側面のバランスを取るためには政策評価の導入が必要。
    • 最上位の概念として地方自治体のビジョンがあり、それを目的・手段で整理したものが政策体系。三重県では、政策から演繹的に目的を落とし込んでいき、政策-施策-基本事務事業-事務事業という体系を形成。この政策体系と現状の事務事業の単位を合わせる作業が不可欠。
    • 政策評価を、1.個々の施策や事務事業を評価する個別評価(「目的妥当性評価」、「有効性評価」、「効率性評価」)と2.複数の施策や事務事業間の関係を評価する相対評価(「貢献度評価」、「優先度評価」)に整理すると、1.を確立してはじめて2.が可能。「目的妥当性評価」は、目的が政策体系に馴染むかどうかの妥当性の評価であり、指標づくりの前にまず評価すべきもの。「効率性評価」はコストに対する活動量で、「有効性評価」は活動量に対する成果(目的達成度)で評価するもの。「貢献度評価」は、目的達成に対する貢献度を事前・事後に評価するもの。
    • 評価を行う際には、1.評価の出発点を明確にすること、2.評価の本質は「住民との認識の共有」であることに留意すること、3.行政をより良くしていくための前向きな評価を行うことを基本的な考え方とすべき。
    • 地方自治体では、まず事後評価と途中評価から始め、数年経って、政策体系を整備しながら、事前評価の仕組みを作り上げていくというのが一般的。
    • 地方公共団体における評価の体制としては、事業部門がまず評価を行い、評価部門が評価手法の管理や部局横断的な評価を行うとともに、事業部門の評価能力を指導、支援する役割を持つ。これを計画部門、予算部門、組織部門、広報広聴・情報公開部門等が役割分担をしながら支える。さらに、外部評価機関がシステム運用に関する監査勧告や第三者的な立場で評価を行うことが考えられる。
    • 地方公共団体における政策評価の問題点と課題について、1.制度面では、各地方公共団体は政策体系と予算体系との不整合の問題に苦労しており、例えば三重県では管理会計のような仕組みの中で歳入と歳出の整理に取組んでいる。また、過度に細分化された国からの紐付き事業の廃止が課題。政策や施策など上位の目的になればなるほど当該地方自治体の業績だけでは評価ができなくなるため、全体をつなげた行政システムと捉え、地域としての政策評価を行うことが必要。2.運用面としては、予算編成過程で評価を行うと結果評価がなされず、予算獲得の材料になるという評価の時期が課題。また、改革の障害を組織的に克服できない場合、外部評価との連動による「駆け込み寺」が必要であり、総務省にこの役割を期待したい。3.環境面では、評価に対するインセンティブの問題があり、また、方針管理・能力開発との連動や役職者の人事考課への反映が課題。
    • 国と地方自治体の行政を比較すると、地方自治体の事業は直接住民を対象にし、事業部門が広範囲に分散し、対象者も住民自治と納税者という2つの側面を持つ。国の各府省の事業は地方自治体を通した間接的なものが多く、事業部門の範囲は地方自治体に比べて狭く集中型であり、対象者は納税者のみ。したがって、国の場合には、地方自治体を通してのトータルのシステムとして評価すること、府省をまたぐ課題解決型の政策体系を設定すること、各府省の新規事業を全体として束ねて評価することに留意すべき。

  4. 星野研究協力者の発表を踏まえ、以下のような意見交換が行われた。

    (村松座長)
    • 最初のビジョンや政策体系の策定段階で非常に強い合意がない限り、その基準に合わないという評価結果を理由として事務事業を廃止することには抵抗があるのではないか。

    (星野研究協力者)
    • ビジョンや政策レベルでの議論は抽象的なので、三重県などでは、施策をまず決めてから、関係課長が集まって基本事務事業を議論し、現状の事務事業と関連付けしている。その際、事務事業の責任者ではなく、施策の責任者としての立場で検討が行われることが重要。
    • 基本事務事業については、施策の共同目標という視点から、基本事務事業の責任者の課長が設定。さらに、施策の成果責任者を決め、その成果責任者が基本事務事業の責任者に指示して施策の中での優先順位を付けることになる。

    (金本研究協力者)
    • 特に国の場合には課毎に応援団がいるため、課長は簡単には引き下がれないのが現実であろうが、実際に政策評価をうまく動かすための仕掛けはないか。

    (星野研究協力者)
    • 1つは、三重県のように、施策の実現が大体部局でできるよう政策体系に沿って組織機構を再編成するという方法があるが、これには限界がある。もう1つは、施策と基本事務事業の成果目標、予算シェア、成果貢献度等の情報公開を通じて客観性を保つという方法。

    (山谷研究協力者)
    • 現実には、市町村において仕事を削ることは難しく、目的を達成できないからといって廃止すると言えないことも多い。その場合、「有効性評価」や「目的妥当性評価」の代わりに、「効率性評価」や組織の再編成・見直し程度で終わってしまわないか。

    (星野研究協力者)
    • 市町村の事業における住民サービスの側面については、「効率性評価」の方が市民にとって分かりやすいが、効率性だけの評価であれば、事業を完全に受益者負担にして民営化すればよいことになる。「目的妥当性評価」を行わないと、何のために事業を行っているかが分からなくなるし、どこまで街が良くなったかの評価も効率性の側面だけでは不十分であり、「有効性評価」が必要。まず「目的妥当性評価」と「有効性評価」があり、最後に「効率性評価」という順序。

  5. 研究協力者の発表として、金本東京大学大学院経済学研究科教授から、「中央省庁における政策評価の動向と評価の手法について」、以下のような説明がなされた。

    • 中央省庁における政策評価のうち、自分が関わったものを中心に動向を説明。
    • 国における政策評価には色々なタイプがあり、統一的には行われていない。また、地方自治体のようなトップダウン式ではなく、基本的には現場に近いところで各々の特性に応じた評価が行われている。国の場合、トップダウン式でシステマチックな評価はうまくいかず、かえって弊害が出る恐れ。
    • 国における政策評価で現在最も進んでいるのは、公共事業の分野における費用対効果分析であり、各種マニュアル案も作成・公表されつつあり、いくつかのものは公表されている。
    • 費用対効果分析の範囲については、効率性の評価(費用と便益を金銭換算し、さらに、金銭換算できないものを勘案して判断)に限定すべきであるとするものと、効率性の評価と有効性の評価(例えば政治的な理解が得られるか、何らかの政治的な目的と整合的か、公平性の面から見ておかしくないかといった観点)を総合すべきであるとするものとがあり、どちらを採用するかを決めることが必要。
    • 費用便益分析における主な手法は、以下のとおり。
      1. 「消費者余剰法」は、需要曲線をベースに、消費者がどれだけ便益を受けるかを計測する手法。交通分野で一般的。価格又はこれに相当するものがないもの(非市場財)には通常適用できない。歴史もあり、他の手法と比べ精度が高い。また、事後的に、需要予測が実績と違うかどうかをみることによって、予測が正しかったかどうか検証できる。将来の需要予測が過大になった場合には、便益も過大に推定され、誤った結果を導く。
      2. 「代替法」は、同じ役割を果たす他の財によった場合のコストを計算し比較する手法。価格又はこれに相当するものがない場合に使用。代替的な財がない場合には適用できない。
      3. 「一般均衡シミュレーション」は、伝統的には「地域計量モデル」(便益の評価を行う場合、計量モデルを用いて各地域においてどの程度県民所得等が増加するかなどを計算)が、最近では「CGEモデル」(数値計算で一般均衡モデルを解く)が主に用いられる。しかし、精度が低いことから、欧米諸国では実務ではあまり使用されていない。また、モデル作成者による恣意的な操作が容易である。
      4. 「ヘドニック法」は、住宅価格や土地価格が社会資本の便益に反映されるような場合、例えば交通条件のよいところは土地価格が高く、悪いところは低くなり、この差をもって交通投資の便益を計る手法。かなりの非市場財に適用できるが、推定結果にかなりのばらつきがあるので一つの推定だけによる結果への信頼性は低い。
      5. 「CVM法」は、アンケートにより支払意思額を調査する手法。他の手法がない場合には使用されることも多い。本人の意識やアンケート表の設計の仕方で結果に誤差が出てくるため、精度は一般的にはかなり疑問。
    • 評価手法の選択については、オーダーメイド型アプローチ(個別プロジェクトについてある手法を使用して便益を計測)と原単位法(多くの評価結果を積み重ねて原単位を設定)とがあるが、「CVM法」や「ヘドニック法」は前者では使用しない方がよい。
    • 評価手法の選択に当たっては、第三者が検証可能かどうかが重要。そもそもデータが公開されていなければ検証できない。また、データの収集方法に問題がある場合は最初からやり直すことが必要。なお、原単位法の方がチェックが容易。手法の妥当性の評価は、素人には基本的に無理であるため、専門家をどう組織化するかがキーポイント。情報公開が重要であるが、その情報をみた人の意見をどのように整理するかのシステムづくりも課題。事後チェックができる手法であるかどうかも重要な問題であり、「消費者余剰法」は可能であるが、「CVM法」や「ヘドニック法」は困難。
    • 費用対効果分析において、効率性と公平性をどう取り扱うか、事業のコストとしての税金の扱いをどうするか、割引率をどう設定するか、地域開発効果をどう考えるかといった公共事業の共通の問題が今後の検討課題。
    • 規制の分野については、欧米諸国では規制インパクト分析が行われているが、規制の費用、便益の効果の計測が難しいため、費用便益分析の形になっている例は多くない。我が国ではまだ検討段階であるが、各担当部局が分析に必要な情報の収集を行っておらず、初歩的な分析すらできない。例えば規制の順守費用(規制により民間にかかるコスト)など、判断の基礎となる基礎的な情報を把握することが必要。また、環境、安全の分野についても聖域とせず、リスクがあるものをどう評価するかが重要。「規制」の分野で重要なのは、施策が国民のためになっているかどうかを検証することである。
    • プログラム評価は、一部で検討され、これから始めていこうかという段階であり、やる必要があるが、過度の期待をかけ過度の資源を投入することは疑問。政策体系全体を評価するためには、プロジェクト単位での評価がまず必要。
    • 業績指標を用いた評価については、地方自治体で行われているような事務事業評価を国で実施している例は見たことがない。国は地方公共団体とは事業の性格が違い、直接の事業実施は少ないので、どれだけ有効なのか疑問。独立行政法人などの執行部門では有効かもしれないが、企画部門である本省でどのように行えるかは検討する必要。

  6. 金本研究協力者の発表を踏まえ、以下のような意見交換が行われた。

    (田辺研究協力者)
    • 費用便益分析は、公共事業以外の補助金にどれくらい行われているのか。また、適用できる可能性はどの程度あるのか。
    • 費用便益分析の共通化をどの程度行うべきか。また、便益の範囲の共通化は可能か。

    (金本研究協力者)
    • 我が国では、公共事業以外の補助金の費用便益分析はほとんど行われていない。補助金については、一般論として公共部門が支出する便益の推定はできると思うが、その数字の信頼性については、補助金は様々であり一概には言えず、個別の事例による。
    • 費用便益分析では、事業の性格により適切な手法が異なるので、手法面で共通化することは困難。ただし、割引率や税金の取扱いなどの共通の課題については全体で議論すべき。また、便益の範囲を一律に設定することは難しい。しかし、考え方として数字の信頼性が確保できるものはできるだけ便益の範囲に入れるとか、公平性の要素を入れるのかどうか、入れる場合の方法をどうするのか、また、入れた場合と除いた場合の2種類を推定するのかなどのフォーマットの標準化等は必要。

    (星野研究協力者)
    • 補助金については、補助対象の活動の目的妥当性と有効性の評価及び補助の目的の評価の2種類の評価を行うべき。評価の手法や便益の範囲等は、事務事業の性格により多様であり、むしろ評価のプロセスや情報公開を義務づけるべき。

    (奥野研究協力者)
    • 評価のデータや過程を情報公開し、第三者が検証できるようにすることが重要であるが、第三者の意見はどのようなルートで反映されることになるか。

    (金本研究協力者)
    • 欧米諸国では、パブリックコメントの制度がある。それに加えて、計画段階が長く、評価結果も計画策定における政治的意思決定プロセスの一環として公開され、それに対する意見が出された上で最終的な意思決定を行っている。

    (星野研究協力者)
    • 三重県では、毎年、結果評価の過程を公開することを事業部門単位に義務づけており、パブリックコメントや意識調査等で出てきた意見とともに評価表の中に書き込んでいる。
    • 職員の施策や事務事業に対する意見を伝えられるようなシステムが必要。また、関係者からの様々な意見を第三者が公平な立場から判断し、しかるべき機関へ勧告するというシステムが必要。

  7. 「標準的ガイドライン案の検討方向案(平成11年9月21日中央省庁等改革推進本部顧問会議説明資料)」について、事務局から説明が行われ、次のような意見交換が行われた。

    (奥野研究協力者)
    • 総務省は、政策評価に関する「駆け込み寺」的な機能を持つべきではないのか。
    • 統計を行う機関が、政策評価に使用できる中立的なデータを第三者も含めて提供するようなシステムを構築すべき。
    • 評価結果だけの公表ではなく、評価の途中段階から公表し、パブリックコメントを求めて、評価結果に反映させるべき。

    (山谷研究協力者)
    • 政策評価がうまくいくかどうかは、国民がどれだけ政策評価を理解するかが重要。一般的には、節約がなされ、政策が効率よく行われているというだけで満足しがち。政策評価に関する国民への広報も必要。

    (星野研究協力者)
    • 評価の責任の所在を明確にし、担当者が変わる際にも引き継きを確実に行うようにすべき。

  8. 次回第4回研究会は、平成11年11月30日(火)9:30から、研究協力者による発表等を議題として開催することとされた。
     また、第5回研究会を平成11年12月13日(月)13:00から開催するとともに、12月21日(火)を研究会開催の予備日とすることとされた。

以上
(文責:総務庁行政監察局政策評価等推進準備室)

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