総務省トップ > 組織案内 > 審議会・委員会・会議等 > 政策評価・独立行政法人評価委員会 > 会議資料 > 政策評価の手法等に関する研究会(第4回)議事概要

政策評価の手法等に関する研究会(第4回)議事概要

日時

平成11年11月30日(火) 9:30〜12:00

場所

中央合同庁舎第4号館共用第1特別会議室

出席者

(研究会)
村松岐夫座長、奥野正寛座長代理、金本良嗣、久保惠一、田辺国昭、星野芳昭、山谷清志の各研究協力者

(総務庁)
東田行政監察局長、塚本官房審議官、畠中官房審議官、鎌田企画調整課長、若生政策評価等推進準備室長その他関係官

議題

  1. 研究協力者による発表
    • 久保監査法人トーマツ代表社員(公認会計士)
         「米国における政策評価の動向と評価の手法について(GPRAを中心に)」
    • 山谷岩手県立大学総合政策学部教授
         「政策類型および評価対象のレベルに応じた評価について」
  2. その他
    • 「英国における政策評価の動向について」(事務局説明)

会議経過

  1. 研究協力者による発表として、久保監査法人トーマツ代表社員(公認会計士)から、「米国における政策評価の動向と評価の手法について(GPRAを中心に)」、以下のような説明がなされた。

    (久保研究協力者)
    • 米国における「GPRA(政府業績成果法 Government Performance and Results Act)」の目的は、1.連邦政府に対する信頼の向上、2.パイロット・プロジェクトによるプログラム・パフォーマンス改革の開始、3.成果・サービスの品質及び顧客満足度の重視によるプログラムの有効性とアカウンタビリティの向上、4.連邦政府によるサービス提供能力の向上、5.プログラム等の有効性・効率性に関する客観的な情報に基づく議会の政策立案能力の向上、6.連邦政府の内部管理の改善。
    • GPRAにより、「戦略的計画書(Strategic Plan)」、「パフォーマンス計画書(PerformancePlan )」及び「プログラム・パフォーマンス報告書」を作成。
    • 「戦略的計画書」は5年以上のビジョンであり、3年毎に更新。主な内容は、1.明確なミッション、2.アウトカム指標による「全般的なゴール」、3.ゴールの達成方法、4.パフォーマンス・ゴールと全般ゴールの関係、5.外部・管理外のキー・ファクター、6.プログラムの評価方法及び評価スケジュール。
    • 「パフォーマンス計画書」は、予算との関係を明示することになっているが、現状ではあまり連動できていないようである。また、国家機密に関することは対象から除外。主な内容は、1.プログラム活動によって達成されるパフォーマンス・ゴールの設定、2.客観的・数量化可能・測定可能なゴール設定(例外規定あり)、3.パフォーマンス・ゴール達成のための条件、4.パフォーマンス指標の設定、5.パフォーマンス・ゴールと実績を比較する際の基準、6.測定した値を実証するための手法。
    • 「プログラム・パフォーマンス報告書」は、本格実施のものが本年3月に提出される予定。主な内容は、ゴールと実績を比較する達成度合いの評価。ゴールを達成していない場合、その理由や達成のための今後の計画、実施不可能であれば今後の対策も記述。管理柔軟性付与条項(Managerial Accountability and Flexibility)の効果、各年度のプログラム評価についての発見事項の要約についても記述。
    • 管理柔軟性付与条項は、パフォーマンスの向上が見込める場合に、行政手続のルール・要件を適用除外としてもよいという実験的なもの。内容は、パーフォーマンス・ゴールを達成するために、人員配置や給与水準の設定、予算項目間の流用を柔軟に実施できるというものであるが、事前にOMB(行政管理予算庁)の承認が必要。
    • 1994年度から1996年度の2年間、10以上の行政機関でパイロット・プロジェクトを実施。1999年度から本格実施。最初から全面的に導入するのではなく、段階的に導入。
    • 1998・1999年度には予算の金額の変化に応じてパフォーマンスの水準も変化するというパフォーマンス予算を試行的に導入。2001年までに提出する報告書において、年度予算にパフォーマンス予算を含めることについての実施可能性や問題点等を検討する予定。
    • 我が国の政策評価に対し、示唆になる点は以下のとおり。
      1. 米国には、PPBS(Planning, Programming, Budgeting System)やZBB(ゼロベース予算)などの政策評価の歴史と経験があるにも関わらず、GAO(連邦会計検査院)は政策評価に関する経験が不足、組織風土が未熟であると指摘。GPRAもパイロット・テストを行いながら、やりやすいところから徐々に導入しており、日本で政策評価を導入する場合には余程慎重に進める必要があり、数年後を目標に段階的に導入するのが適当。
      2. OMBのみならず、GAOも各省庁に対して支援する仕組みとなっており、パイロットプロジェクトの計画書・報告書をレビューして改善指導。
      3. 評価指標は、直接的なサービスを提供する分野では数量化しやすいが、政策立案部門では数量化に工夫が必要。この点について、GPRAに対する各省庁の試みを調査することにより、ある程度パターン化できる可能性。また、数量指標の設定が不可能な場合は定性的な指標も認めざるを得ないが、その場合にも客観性を持たせるための工夫が必要。
      4. 評価指標となるデータについては、評価に必要な数量データの入手可能性と決算監査(財務諸表監査)が重要。統計データの収集は早いうちに開始することが必要。
      5. 戦略的計画(5年以上:政策の長期的一貫性を保持)と当年度計画(パフォーマンス計画書)の二本立てにしていることは参考になる。
      6. GPRAでは、評価担当者用、議会用など、用途に合わせた評価ガイドブックを作成。我が国でも各府省が計画書・報告書を作成するに当たっての具体的なガイドブックをはじめ、使用目的や利用者ニーズに応じたガイドブックの作成が必要。
      7. パフォーマンス・ゴールと予算書の関連付けということで、予算と政策評価がゆるやかに連動することが考えられる。
      8. 柔軟性条項については取り入れるべきか検討する価値がある。
      9. パフォーマンス予算は、米国も今後どうなるかわからない状態であり、長期的な検討課題。

  2. 久保研究協力者の発表を踏まえ、以下のような意見交換が行われた。

    (金本研究協力者)
    • GPRAはかなりアカデミックなものであり、本当に機能するかどうか、これからの動向を見ることが必要。しかし、米国では政府に専門家がいるため、GPRAが機能する余地はあるが、日本ではゼネラリスト志向で政府に専門家がほとんどおらず、一から始める必要があるところが異 なる。
    • GAOで実際に調査を行うのはマスター取得者が主流であり、専門的能力について過大評価はできないものの、他の省庁に比べると職員の異動が少なく、その質は安定。ただし、GAOは他機関(大学等を含む)が先行的に開発した評価手法を使った評価はできるが、自ら先行して評価を行うことは難しいという印象。

    (田辺研究協力者)
    • GPRAは大統領制の下で行われているものであり、日本の議院内閣制との違いがどのように影響するのか。
    • OMBは、議会との連絡調整もやっており、マネジメントに関するアドバイス、予算の大統領府の側のまとめも実施。この点について、日本では権限が分散しており、例えば大蔵省の予算と総務庁の管理とが分離。こうした二元的体制の中でGPRAを導入した時にどのような問題があるか。

    (久保研究協力者)
    • 日本では総務庁が政策評価制度を担当することになるが、英米では予算を立案する部署がこれを担当。これは、英米では政策評価を予算に直接反映させるということを念頭に置いているからではないか。なお、議会の下にあるGAOはこれらを側面から支援する役割。

    (金本研究協力者)
    • 米国では議会が予算法案を提出できるが、GAOはそのために議会の委員会や議員のコンサルティングをやるという側面をもつ。

    (村松座長)
    • 報告書はOMBに一度提出された後、議会と大統領に提出されることになっているが、大統領はこれをどのように使うことを予定しているのか。
    • GPRAの成果についての論文等は出ているのか。

    (田辺研究協力者)
    • 大統領が全体をまとめるということだろう。これに対し、議会は達成度はこれでいいのか、 この指標で測ることは適切かといったパフォーマンスの指標について関与。

    (久保研究協力者)
    • GAOが分厚いレポートを出しているが、各省庁からの本格的な報告書は2000年3月に提出予定。
    • GPRAにおいては、ミッション(使命)から体系的にパフォーマンス指標を設定してその測定をすること自体が、行政の効率化に役立つと考えられる。GPRAについては、部分的にでも良いことが多ければ、一部に問題があっても導入を検討する価値がある。

  3. 研究協力者の発表として、山谷岩手県立大学総合政策学部教授から、「政策類型および評価対 象のレベルに応じた評価について」、以下のような説明がなされた。

    • 「プロジェクト評価」は、伝統的に大学等で研究が行われ、学問的にも精錬されており信頼性が高い(特に公共事業評価)。また、ODAのプロジェクト評価の新しい動向として、社会基盤のインフラ整備に加えて、近年、社会開発の考え方(ベーシック・ヒューマン・ニーズをいかに満たすことができるか)のアプローチが入ってきている。
    • 「プログラム評価」の例としては、1.政策の枠組みや政策執行過程において生じる問題点を 指摘し、その解決に向けた情報を提供する評価、2. 1970年の米国連邦政府の評価の方針(教育や福祉を対象として、連邦政府による補助金等をプログラムとして指定し、地方自治体がそれをプロジェクトとして実施)、3.社会プログラム評価(人間を対象としたヒューマンサービスを実施するもの)、4.米国の公益法人による研究費の助成団体に対するプログラム評価(費用対効果に加え、社会科学的なモデルを導入し研究の成果を調べ、助成の成果を判断)、5.ODAの「プログラムアプローチ」(関連するプロジェクト群をセットにして併せて評価)が挙げられる。
    • 「市民」による評価としては、1.顧客(利用者)による評価、2.エンパワメント評価、3.利害関係者の評価等がある。
    • プロジェクト評価に比べ、プログラム評価はまだ一般には十分認知されていない。しかし、OECDもプログラム・エバリュエーションが大切だと指摘。米国のように、福祉、医療、教育、失業対策、人権等の社会問題に対する対応策(個別プロジェクト)がプログラムとしてまとめられているところでは、プログラムの長期的な効果を教育学、心理学、社会福祉学などの応用社会科学的な手法で評価。
    • 公共事業、宇宙開発、病院建設などについては、政策目的とプロジェクトの結びつきが明確・自明であるが、特に男女共同参画事業のように人間が対象となるサービスにおいては、政策目的とプロジェクトの結びつきが明確ではなく、中間にプログラムの考え方を入れることが重要。
    • 英国では1985年からの制度改革においてスローガンとして、ニュー・パブリック・マネージメントが掲げられ、プログラムを対象とするNext Steps、Citizen's Charterなどの計画が策定、実施され、プログラムレベルでエージェンシー等による効率化、政策とoperation(サービスを対象とするperformance measurement)の結び付きの強化が行われた。これはプロジェクトレベルというよりも、現場のオペレーション単位でいろいろな業績指標が付けられて、業績が測定されたもの。
    • ODAでは、プログラムのもとで実施する仕事をオペレーショナライゼーション(概念の解釈・操作)してプロジェクトドキュメントを作りあげ、政策目的にうまくつなげる方法としてプログラムを入れ込もうと努力をしている。
    • 政策類型別に見ると、1.社会資本の公共財の提供(公共事業等)の「分配政策」に関しては個別のプロジェクト評価である程度対応できるのではないか、2.福祉、教育、医療、ODAの社会開発等「再分配政策」に関しては、個別のプロジェクト評価では困難であり、プログラムレベルで評価の仕組みを考えていく必要があるのではないか、3.「規制政策」に関しては、諸外国では規制インパクト分析の検討が進んでおり、これについて検討する必要がある、4.介護保険など「構成政策」に関しては、制度選択による効果やコストの違いを調べる必要があると考えられる。
    • 「行政(経営)評価」は、厳密には組織(構造・ルール・マニュアル・組織構造・昇進や給与などの誘引)の見直しであり、政策の見直しと言えないのではないか。
    • 「業績評価」は広義では政策評価に入るが、何の業績であるかについて議論しないと、アウトプットの評価や単なるベンチマーク評価になってしまう可能性がある。
    • 行政活動には、見直して廃止できるものと廃止できないものがあり、廃止できるものについては、政策評価が可能であり、効果がなければ廃止すればよいが、廃止できないものについては、節約とか効率等の物差しで評価せざるを得ないのではないか。
    • 事業(プロジェクト)評価、施策(プログラム)評価、制度の評価というように、政策のレベル別の政策評価の方法があり得る。
    • 日本には、米国で従来行われてきた様々な評価の概念が一気に入ってきており、政策評価についての混乱状況が引き起こされており、整理することが必要。

  4. 山谷研究協力者の発表を踏まえ、以下のような意見交換が行われた。

    (金本研究協力者)
    • プログラム・エヴァリューションの良い例はなかなか見つからない。しかし、政府内の部局としてもやるべきであると考える。それは、内部部局でやることにより、評価のための情報として何が必要かが分かり、そのような評価を行った上で情報が公開されないと、外の人も政策評価ができないからである。
    • 政策評価には限界があり、いわば単なるベンチマークでも良いという割り切りが必要。エヴァリエーションは、私企業の中で評価する場合でも直接的に評価するのではなく、評価の助けとなる指標をたくさん作り、それを並べることにより評価するもの。それよりも公的部門の体系をきちん作ることはかなり難しいと考えられ、メジャーメントの側面も軽視すべきではない。

    (山谷研究協力者)
    • メジャーメントも重要とは思うが、現実的には、業績指標めいたものやベンチマーク的なものを並べて言い訳に使う場合も少なくない。
    • プログラム評価にはあまりいい例がなく、プロジェクト評価と比べると洗練の度合いが格段に違うが、プログラムレベルの評価が必要な場合がある。

    (奥野研究協力者)
    • 「市民による評価」とあるが、本来の民主主義では、政治が行政を動かし、市民は政治を動かすということが大切。政策評価は行政が最終的に判断するのではなく、市民が判断し、それが政治を通じて行政に戻ってくるというフィードバックをきちんと仕組むことが重要。そのために、基本的にはプロジェクトについては数値で評価する、プログラムについては代替的プログラムを比較するというルールづけと割り切り、それがベンチマークになってもよいのではないか。

    (村松座長)
    • 政治家の中には、一方では各省庁の評価をしっかりさせようと思い、もう一方では各省庁の政策評価が充実すると議会の権能が奪われると思っている人もいる。いずれにしても政策評価によって、客観的なデータを提供し、それを上手に利用できるようにする公開性が大切。

    (星野研究協力者)
    • 「プログラム(評価)」の定義がはっきりしていないこと、政策体系に基づいて「何を評価するのか」が明確でないことから議論が抽象的になってしまう。
    • プログラムの目的が行政だけで達成できるものと、男女共同参画のように一人ひとりに働きかけるなど行政だけでは達成できないものとがあり、後者の目的の達成は、地方公共団体においては住民と行政の役割分担で成り立つ。
    • 我が国の行政システムの役割分担、民間と行政、国と地方との分担を考慮した横断的な政策評価が必要であり、それらを横断的に調整する機能が総務庁などに必要ではないか。

  5. 「英国における政策評価の動向について」、事務局から以下のような説明が行われた。

    (若生政策評価等推進準備室長)
    • ブレア労働党政権は1997年5月に発足後、保守党政権での歳出の優先順位を見直すため、包括的歳出見直し(CSR)に着手し、白書「改革への投資?包括的歳出見直し1999年度?2002年度新公共支出計画」(98年7月)として結実。目的ベースの合理的な予算編成実現のため、政府全体の目的及び各省庁ごとの目的に基づき各省庁の業績を評価する制度の枠組みを構築。
    • CSRの成果を踏まえ、「公務部門における協定(PSA)」をとりまとめ、そこで定められた目的や目標等を具体的に分析評価するための指標等を「成果・業績分析(OPA)」として提示。
    • さらに、上記枠組みと保守党前政権から引き継いだ「資源会計予算制度(RAB)」(発生主義会計及びバランスシートの国の会計への導入等)との有機的な連携を推進。
    • 評価の特徴として、1.目標の設定及びその達成度の定期的なフォローアップによる業績評価、2.目的・目標等の階層化、3.各省庁における業績評価結果の予算編成との直結が挙げられる 。(2000年4月のRAB導入に合わせて本格的に導入する予定。)

  6. 事務局の説明を踏まえ、以下のような意見交換が行われた。

    (金本研究協力者)
    • 具体例を見ていると、日本の五カ年計画や全国総合開発計画のような印象を受けるが、各省庁はこの仕組みをどの程度真剣に受け止めているのか。予算に反映されるというが、この仕組みで本当に予算を半分に減らしたりできるのか。予算査定との関連について更なる調査を要望したい。

    (座長)
    • 資源会計予算制度(RAB)を採用して、発生主義会計やバランスシートを導入するとのことだが、予算査定の仕方が変わるのか。

    (若生室長)
    • フォーマルな形で評価結果を予算にどのように反映させるかという規定はないようであるが、予算編成がOPAの目標ベースで行われることになる模様。また、目的を達成するために各省庁が保有している資産をどのように運用するかという点がバランスシートに明示されるようになる。報告書が出されるのが200年4月であるが、今後とも引き続き調査したい。

  7. 次回第5回研究会は、平成11年12月13日(火)13:00から、先行事例の発表(北海道における政策アセスメント)、政策評価の類型等を議題として開催することとされた。
  8. 以上
    (文責:総務庁行政監察局政策評価等推進準備室)

ページトップへ戻る