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政策評価の手法等に関する研究会(第12回)議事概要

日時

平成12年5月11日(木) 10:05〜12:50

場所

中央合同庁舎第4号館共用第3特別会議室

出席者

(研究会)
村松座長、奥野座長代理、金本良嗣、久保惠一、田辺国昭、星野芳昭、山谷清志の各研究協力者

(総務庁)
塚本行政監察局長、畠中官房審議官、堀江官房審議官、鎌田企画調整課長、若生政策評価等推進準備室長その他関係官

議題

  1. 各省庁の政策評価に関する検討状況について
  2. 事業評価(仮称)の在り方について
  3. その他

会議経過

  1. 各省庁の政策評価に関する検討状況について

    • 田辺研究協力者及び事務局から、各省庁における政策評価に関する取組の現状や検討状況について説明がなされた。

  2. 事業評価(仮称)の在り方について

    • 若生室長から、事業評価(仮称)の在り方に関する討議テーマについて説明があった後、以下のような意見交換がなされた。

    ○「導入の目的」、「事業評価(仮称)の基本的な在り方」について

    (久保研究協力者)
    • 評価対象が「主として事務事業等」というのは曖昧である。これを明確にしなければ、事業評価とは何かが明確にならない。最初から、公共事業、研究開発、ODA、規制、補助金に限定してはどうか。

    (星野研究協力者)
    • 事務事業を、行政が実施主体となっている直接事業(公共事業、研究開発、ODA等)と、規制や補助金等の間接事務の二つに分けて考えてはどうか。また、直接事業は、公共事業、ODA、研究開発等の一定期限で完結するプロジェクト事業と、統計データサービスなどの毎年継続的に繰り返し行われる定常事業の二つに大きく分かれる。また、間接事務である補助金の評価は、補助対象である直接事業を評価しないと国が補助することの妥当性について議論できないため、比較的難しくなる。

    (金本研究協力者)
    • 日本では、公共事業のかなりの部分が国の補助事業であり、補助金を直接事業的に使っている面が大きい。直接事業と間接事務に分けるとかなりの部分がおかしくなる。

    (星野研究協力者)
    • たとえ補助であっても、国が実質責任を持ってその事業を中止することができるものとそうでないものとに分けることができるのではないか。

    (金本研究協力者)
    • 補助事業の事業主体は、地方公共団体や地方公社等であるが、予算配分の査定は国が実施している。事業主体となる都道府県等には評価が義務付けられており、その評価結果を基に国が査定するケースがほとんどである。直轄事業の評価を査定する場合も、都道府県等の評価結果を査定する場合もマニュアル等は同じなので、評価手法などについて分ける意味はほとんどない。

    (村松座長)
    • 中間整理では、行政活動をできるだけ広くカバーする方式として施策実績評価(仮称)を位置付けたが、事業評価(仮称)でどのくらいの領域をカバーするかという議論はそれとの整合性にも関わってくる問題である。

    (田辺研究協力者)
    • ここでいう事業評価(仮称)は、政策体系の一番下のレベルである「事務」をすべてカバーするという意味ではない。事業評価(仮称)は、例えば規制などの国民にとって非常に影響が大きくなる行政活動についてその負担や便益をきちんと押さえるという役割を持つものである。
    • 公共事業、研究開発、規制など分野により具体的な評価のやり方が異なるため、事業評価では対象分野を区別して考える必要がある。

    (金本研究協力者)
    • 事業評価にはいくつかの側面があり、一つは手法若しくはフレームの問題である。事務局が考える事業評価の対象は基本的に二つに分類可能で、一つは費用対便益(効果)を一体のものとして情報を出していくもの(公共事業、規制インパクト分析、ODAのかなりの部分)、もう一つはもう少し幅広い意味での成果を測定するもの(一部のODA)。研究開発は後者に近い。後者の場合、手法として施策実績評価に近いものになる可能性があり、違いを明らかにする必要がある。
    • 事業評価の多くは、事業の採択や実施の可否のために行われるものであり、そういうとらえ方をすれば明確になるのではないか。施策実績評価との相違もその点にある。

    (星野研究協力者)
    • 事業評価であっても、目標を設定して達成度を見るという要素は含まれている。事業評価と施策実績評価とは重なる部分がかなりあるのではないか。

    (久保研究協力者)
    • 事業評価(仮称)を考える時、施策実績評価との関係を明確する必要がある。3方式の適用により行政分野を漏れなくカバーできることが重要で、考え方としては、国の行政について施策実績評価(仮称)でどこまで評価できるかを明確にし、それで補完し切れない分野について事業評価(仮称)を行うというようにすべきではないか。

    (金本研究協力者)
    • 既に事業評価(仮称)を行っている公共事業などでも施策実績評価(仮称)は可能である。対象が施策実績評価(仮称)に合わないから事業評価(仮称)をするというのではなく、何らかの意思決定をするために評価を行うのではないか。
    • 実際に予算や組織・定員の査定の際にも評価をしており、この政策評価システムというのはそれらの評価・審査をシステマティックに行うということである。
    • 目標設定の際、国民負担の観点からその目標を正当化できるかという視点がないと利益団体等と結びついて歯止めが効かなくなる懸念がある。そうならない仕掛けを早めにつくらなければ危険である。
    • 「成果重視」と「効率的な質の高い行政」という二つを結びつけて、国民にとって費用対効果があるかどうかをチェックするのが事業評価である。

    (久保研究協力者)
    • 課レベルの中の事務事業を一つ一つ積み上げ、政策体系図をつくって評価していくのが自治体のアプローチだが、そのやり方は国では事務事業が多すぎて無理なので、一つ上の施策レベルで網羅的に実績評価を行い、それを補完する形で事務事業レベルから限定列挙して評価するというイメージでいる。

    (田辺研究協力者)
    • 事業評価は、事務事業を実施するかどうかの選択の際一番押さえるべき評価になるという点で重要である。

    (星野研究協力者)
    • 今まで継続してきた事業を見直すことをしないと財政構造改革にならない。目標設定をして達成度を見ていくだけでなく、行政関与の必要性や目的の妥当性といった目標設定以前の評価が重要である。
    • 施策レベルでもその必要性、行政関与の必要性、目的の妥当性を評価する必要がある。その意味で評価の対象と評価の方法を分けて考える必要がある。
    • 事務事業の範囲は課の守備範囲から自然発生的に形成されてきているので、各省庁間でレベルがばらばらになる可能性がある。その意味で事務事業と施策との分類より評価の方式を義務付ける方が重要である。

    ○「対象分野」について

    1. 公共事業

      (金本研究協力者)
      • 現在は、各所管部局が自己正当化のために評価を行っているのが基本である。公共事業の評価は各省が横並びに出そろわないと意味がない。そのためにも、評価が出そろうスケジュールをどう考えるかが大きな問題である。また、横並びに見て色々な意見を言う人が必要であり、政府部内、様々な利害関係者、NGO、研究者等によるメタ評価が可能でなければならない。
      • そのためには、評価マニュアルの詳細版や評価結果等の情報が容易に手に入る仕組みが必要である。

      (村松座長)
      • 事業によって費用便益比率は異なると思うが、評価手法の共通化促進の可能性についてはどうか。

      (金本研究協力者)
      • 全く異なった事業間で共通化しても意味がない。ただ、例えば農道事業と国道事業といったものは、共通化、標準化することも必要である。

      (田辺研究協力者)
      • 規模の大きな事業に関しては事後評価もきちんと行える仕組みにする必要がある。

      (金本研究協力者)
      • 途中段階の評価は、既にほとんどの公共事業官庁で実施されている。事後評価についてはきちんと情報公開がされていれば我々研究者でも評価は可能である。単なる事後評価は行政監察局や会計検査院などで実施されており、各省が行うものは政策転換のためのものということを強調すべき。

      (星野研究協力者)
      • 公共事業の事後評価は行うべきで、事前評価の評価項目に事後評価の時期、やり方を含めるべき。

      (山谷研究協力者)
      • 同じ費用便益分析といっても具体的な評価手法は多々あるが、この事業にはこの評価手法を用いるというように決めるのか。手法の選択は担当者に任せるのか。

      (金本研究協力者)
      • 公共事業の評価は、たいてい第三者を含めた委員会で実施されるが、自らの行う事業に都合のよい結果が出るような手法を使いたいというインセンティブを是正する仕組みは必要である。ただ、第三者が手法を自由に決定できる仕組みもうまくいかない。第三者は出された評価結果を比較してものを言うべき。

    2. 研究開発

      (金本研究協力者)
      • この分野の評価にも情報公開の問題がある。学者はかなり情報を公開するが、行政による情報公開は少ない。これでは評価自体がよいものにならない。
      • 日本では研究開発の評価ができる人間が限られており、有名人で多忙な人たちが評価をするケースが多い。難しい研究を30分足らずの説明を聴いただけで評価するようなケースが多く、評価体制を再考すべき。特に研究開発費が大きくなるほど評価が簡単になる傾向がある。
      • このような課題に対応するには、評価をマネジメントするプロが必要である。

      (星野研究協力者)
      • 今議論している研究開発の評価は、テーマそのものの有効性をみる施策レベルの評価か、その下にある個々の研究プロジェクトについてみるミクロ的な評価か、どちらなのか。また、研究開発テーマの重複がないかをみるような評価は、個別の事業評価では出てこない。
      • 研究開発のスケジュールを変更した場合に納税者に対して説明責任が必要ではないか。

      (金本研究協力者)
      • 説明せずに済むように担当者は、できる限りプロジェクトを変更しないという戦略を採る。変えなければいけないのに変えていない状況を把握する仕掛けを作る方が有効である。
      • 科学技術会議での調整の仕組みと、個別プロジェクトの評価とをどう関係付けるかが問題である。

    3. ODA

      (久保研究協力者)
      • ODAだけではないが、既に指針を策定して評価を実施している分野について、事業評価(仮称)という観点から研究会として何を言わねばならないのか考える必要がある。このような分野については、現状を把握して問題点を採り上げ、改善すべきことをガイドライン等で示すやり方がよいのではないか。

      (山谷研究協力者)
      • ODA分野については自分たちが何を対象として評価を行っているのか分かっていないで評価している可能性があるので、整理が必要ではないか。

      (星野研究協力者)
      • 事前評価では事業開始の契機を明確に説明できることが必要である。事業が相手国の要望なのか国の関係維持のために必要なものなのかどうか、国民に分かりやすく説明することを指針で義務付けるべき。

      (村松座長)
      • ODAは申請主義なので、形の上では先方の国の申請があって初めて援助を行うもので、こちらはイニシアチブを取っていない。申請前の段階での情報をどう集めるか。公的な資料だけでは難しい。

      (山谷研究協力者)
      • ODAは相手国の要請に応じて実施するというスタンスである。実際には相手国にもコンサルタントがいていろいろやりとりがあるだろうが、そこまではオープンにできないし、相手国の主権にも関わるというのが弁明とされる。
      • ODAにおける事後評価の意義は、「事後的に効果がないものをなぜ続けるのか」という評価結果の積み重ねにより相手国を覚醒させることにある。

      (金本研究協力者)
      • ODAにおいては色々なタイプの評価が拡散しており、本当に重要な評価方法が分からず、なおざりになる傾向があるのではないか。基本的には事前評価におけるプロジェクト審査がメインで、そこに重点を置くべきであるという意見は明示しておくべき。

      (奥野研究協力者)
      • 最初の審査の段階で、どうしてそのプロジェクトが選ばれたのかということ自体に対する説明責任を要求することが必要である。

    4. 規制

      (金本研究協力者)
      • 規制インパクト分析については費用便益の算定が難しく、規制の評価手法が出来上がるのを待っていたら100年経っても評価できない。
      • 規制を評価対象として義務付けることは早く着手する必要があるが、規制インパクト分析は最初から完全なものを求めるべきでない。
      • 欧米諸国である程度しっかりできている分野を示して、その所管官庁に努力させる必要がある。

      (星野研究協力者)
      • 規制そのものの目的や想定される弊害を定性的にでもオープンにすべき。事前、事後両方の評価を義務付け、結果を情報公開すべき。
      • 規制は間接的な行政手段なので、目標設定しにくい部分がある。むしろ必要性や公的関与の妥当性といった視点を強調するよう指針として盛り込むべき。

      (金本研究協力者)
      • 具体的に言うと、規制緩和推進3か年計画で、「規制の必要性、期待される効果、予想される国民の負担等について検討し、検討結果を毎通常国会終了後速やかに国民に分かりやすく公表すること」とあるが、欧米でやっている規制インパクト分析は枠組みで言えばこれと同じ。
      • 欧米では分析の中身についてフォーマット化しており、直接規制がかかる人のコスト、間接的に国民に負担する費用、直接的又は間接的な便益について可能な限り数字で書かせる仕組みとなっている。このフレームで上記の3か年計画の項目について数字を出せということになれば、制度として動くはず。これをベースに、できるものは改善していけというようにするとよいのではないか。

      (田辺研究協力者)
      • 規制インパクト分析で便益まで金銭換算で示すのはかなり抵抗があり、かつ困難である。諸外国でも便益まで金銭換算している例は少ないが、目標は設定している。例えば消防関係なら、ある製品の使用を禁止することで1年間当たり火災で亡くなる人が数名減るというようなものである。
      • 問題は、規制遵守費用をどこまで義務付けるか。そのフォーマットと対象の区切りのラインを設ければ、システムが動かないことはない。
      • アメリカのように政令以下を対象にインパクト分析の結果をチェックするという体制で運用していくのかどうか。イギリスのように法律についても規制を含むものは費用便益分析を義務づけているものもある。
      • 規制緩和推進3か年計画で出てきている新設審査を行う部局(総務庁行政管理局)でチェックしてもらうというのも一つの案である。

      (金本研究協力者)
      • 制度的には、大蔵省の予算査定と評価部局との関係と同じことが言える。行政管理局が規制インパクト分析の窓口になっているとすると、その審査の資料としてフォーマットが出てくるが、その結果を詳細に検討してものを言えるかどうかである。

    5. 補助金等

      (星野研究協力者)
      • 補助金等の評価は、補助対象となっている事業の評価とその上で国が補助を行うことについての評価という二つの意味があることを明確にすべき。
      • 補助対象事業についての評価がないと補助を行うことについての評価はできない。まず、補助対象事業についての評価を義務付けるべき。
      • 費用便益分析を行う際にはマイナスの便益もあることをガイドラインに盛り込むべき。

      (田辺研究協力者)
      • 公共事業に係る補助金は公共事業評価の枠組みで評価されるので、補助金については非公共のものをどうするかが最も重要な問題である。
      • 補助金評価のレベルをどう考えるか。例えば実施主体である自治体単位の評価まで行うのか疑問である。新たな補助金制度を創設する際に評価する形になるのではないか。
      • 主計局における補助金のスクラップアンドビルド方式で十分と考えるのか。更に事業評価を行うことで情報を付け加えていく必要があるのか。

      (山谷研究協力者)
      • 補助率を変えるとか、統合補助金を創設するということになれば、むしろプログラム評価に近い。

      (金本研究協力者)
      • 補助金等の評価については、すべてを対象とするのではなく、大蔵省で行われているスクラップアンドビルドの対象となるものをリストアップするのが一つの方法である。
      • 補助金等の評価の中身をどうするかは難しい。補助事業が社会的に見ていいのかどうかをみる事業評価的なものでいいのか。補助率は30%か50%かの比較をするのか、あるいは全て地方自治体に任せる方がいいという評価をするのか。後者の評価は事業評価で行うのは難しい。

      (奥野研究協力者)
      • 補助金等を整理統合するだけでも、個々の補助金の必要性についての説明責任を明らかにできる。
      • 補助金は特殊法人や指定法人にも流れていて、その状況も明らかにすべき。
      • 難しいとは分かるが努力目標として、民間でできるものに補助金を出すことを防ぐため、補助金を出した時と出さない時の費用便益分析をやるべき。

  3. ○次回第13回研究会は、平成12年5月30日(火)の13:00から、中間まとめ素案の検討(施策実績評価、政策体系評価)を議題として開催することとされた。


以上
(文責:総務庁行政監察局政策評価等推進準備室)

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