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政策評価の手法等に関する研究会(第17回)議事概要

日時

平成12年9月20日(水) 14:00〜17:10

場所

中央合同庁舎第4号館共用第3特別会議室(401号室)

出席者

(研究会)
奥野座長代理、金本良嗣、久保惠一、田辺国昭、星野芳昭の各研究協力者

(総務庁)
塚本行政監察局長、松村官房審議官、若生政策評価等推進準備室長、土井次長、塚本補佐、島倉補佐その他関係官

議題

  1. 事例研究(高齢者介護サービス、政府開発援助(ODA)、海岸保全施設の整備等
  2. その他

会議経過

  1. 土井次長から、前回研究会の事例研究資料について再整理を行った趣旨、資料作成の基本的スタンス、事例研究結果の取扱及び前回研究会の事例研究資料の各分野(下水道等汚水処理施設の整備、空港の整備及び職業能力の開発)における主な修正点について説明がなされた。説明を受けて、以下のような意見交換がなされた。

    (久保研究協力者)
    • 実績評価は、有効性の観点からのみの評価なのか。必要性、効率性等の他の観点による実績評価はあり得ないのか。

    (土井次長)
    • 実績評価は目標値に対する達成度をみるのが主眼であり、それは有効性の観点であると考えてまとめた。ただし、実際的活動として評価を実施する場合には、他の観点を付加して評価することも想定できる。

    (久保研究協力者)
    • 公共事業の必要性はその事業ごとに決まる。途中評価は、計画したが進んでいない事業や着手していないものに対して行うものであり、事業進捗中に途中評価を行うわけではない。後は事業完了後に事後評価を行うことになる。
    • これに対して、高齢者介護サービスのように完了することなく継続していく事業については、必要性、効率性について定期的に評価していく必要がある。その場合、総合評価で見ていくしかないのではないか。

    (土井次長)
    • 実績評価は、目標達成度を目標期間中又は目標期間終了時に見るものである。その際に達成状況について分析を行い、必要性等を評価する必要が生じれば更に総合評価を行うものである。

    (田辺研究協力者)
    • 実績評価は、目標値を立ててそれをどの程度達成したかをみるものであるが、効率性を測るための指標として、例えば削減率5%という目標を立ててどの程度達成できたかを見ることは、実績評価で効率性を見る評価になる。指標が持っている意味は有効性だけではなく、いろいろな観点に関するものがあり得る。

    (星野研究協力者)
    • 実績評価は、目標を設定し、その達成度を評価するものであるり、そういう意味で、実績評価イコール有効性ではない。
    • また、実績評価は達成度を見る事後的な評価だけではなく、目標が妥当かどうかという事前の評価、当初の目標が時代環境の変化に対応しているかという途中に行う評価もあり得る。

    (奥野座長代理)
    • 例えば、5年前においては必要なかったが、現在では社会経済情勢が変化して必要になってきているが、5年後にはマーケットができるようになり必要がなくなるということもある。そのような点にも留意して必要性、効率性を考えるべきである。
    • 優先性の観点からの評価については、個別箇所別事業について、どの箇所を優先するのかなどが考えられるのではないか。また、事業評価により優先性が評価できる場合もあるのではないか。

    (田辺研究協力者)
    • 総務省が行う客観性担保評価、すなわちメタ評価について、どのように行うのかという具体的なやり方をどこかで言及しておいた方がよいのではないか。

    (星野研究協力者)
    • 同感である。現在、各省庁では実施要領を作成し、ガイドラインに基づき政策評価を行うことになるが、二次評価としての客観性担保評価はどのように行うのかを研究会で検討する必要があるのではないか。

    (若生室長)
    • 各府省の実施要領に対する総務省の関わりについては、政策評価制度官庁としての総務省が、政府全体としての運用を確保するために、各府省の実施要領とガイドラインとの調整を図るということである。これは総務省による評価の問題ではなく制度官庁としての制度運用の問題である。ただし、各府省が実施要領に基づいて行った評価結果について客観性担保評価を行うということになる。
    • 研究会で検討していただきたいことは、ガイドラインでは柱建てだけで抽象的な表現となっているので、それを具体的に適用、実施する場合に、どのような問題点、留意点があるのかなどの実施のやり方についてである。また、総務省が行う評価についても、どのような点に留意する必要があるのかということも含めて検討していただきたい。

    (奥野研究協力者)
    • 以前から評価を行っているものについて、1事例でも実際にメタ評価を実施してみた方が、省庁再編後、総務省の中にできる政策評価・独立行政法人評価委員会が活動しやすいのではないか。

  2. 続いて、事務局から、高齢者介護サービス、政府開発援助(ODA)及び海岸保全施設の整備に関する事例研究について順次説明がなされた。説明を受けて、以下のような意見交換がなされた。

    (金本研究協力者)
    • この事例研究全般について、どういう意味合いを持つのかが不明確である。特に実績評価の部分については、いろいろな要素が詰め込まれているが、それでどうするのかが明確でない。
    • 次のステップでよりよい政策を実施していくためにはどのような評価を行うべきかという観点から、見直してみるべきである。

    (星野研究協力者)
    • 個別テーマに関する評価の在り方の問題以前に、この事例研究そのものを行う目的を明確にすべきであるが、本事例研究は、各府省が評価を行うとすればこのようなやり方になるのではないかということをまとめたものと理解している。
    • 本事例研究は、ガイドラインの補足資料として位置付けるべきであり、ガイドラインの内容をより具体化した細則的なものやガイドラインの内容に付加する附則的なものの作成に役立てるべきであると考える。そのような観点から議論すべきではないか。
    • 抽象的な内容であるガイドラインに基づいて政策評価を行うと、各府省でどうしてもばらつきが出てくる。このような事態を避けるためにも、ガイドラインの内容を具体化・詳細化したものを作ることが必要である。しかし、あまり具体化しすぎると各府省の評価を必要以上に拘束してしまうことになるので、その辺りのバランスは必要である。
    • ハード的な整備事業についての事業評価の単位は、箇所別にしないと具体的な評価にはならない。ただ、それだけだと部分最適となるので、地区海岸全体や地域全体として面的にとらえる必要もある。
    • 評価の対象がミクロ的なものが事業評価で、マクロ的なものが実績評価になる。マクロになればなるほど、各府省の自己評価だけではできず、総務省が行う評価で面的な優先性をつけていくことになる。したがって、優先性の評価についてはほとんどが総合評価になるのではないか。

    (奥野座長代理)
    • 不要な箇所に補助をつけていないかをチェックすることは、政治家や官僚による地元への利益誘導を排除することにつながるため、事業評価については箇所別評価が非常に重要である。
    • 事業評価において、事業実施箇所別の優先度を客観的に示していくことが重要である。政治がその優先度をひっくり返したときに、その事実が国民に分かるような仕組みになっていなければならない。それが政策評価制度のメリットであり、目的の1つであると考える。
    • 「高齢者介護サービス」における「国の関与の必要性」では、情報の偏在により制度の必要性を説明しているが、この分野における情報の偏在を総務省が確かめるためには、特別養護老人ホームの民間経営者や医学部の専門家などに対し調査を依頼したり、また、それらの者に報告書の妥当性を判断してもらう(ピア・レビュー)ことが必要である。
    • 公平性について地域間格差を採り上げることは止めるべきで、個人の公平性の観点から見るべきである。

    (田辺研究協力者)
    • 実績評価については、政策の周辺にある政策とも比べつつ、横並び的に評価していく必要がある。
    • 本事例研究における総合評価については、
       (1)その計画に盛り込まれているデータ・資料はそもそも存在するのか。(2)対象テーマに必要性、又は社会的重要性があるか。(3)既存の分析ツールがあり、使えるか。あるいは既存の知識である程度対応できるものなのか。(4)時間とリソースの問題。そのテーマの完成が時間的に可能かなどについてチェックする必要がある。
    • 本事例研究は、指標の分析により現状を把握し、政策がうまくいっているのかを見るという点においては、かなり書かれている。しかし、勧告に結びつけるためには、うまくいっていない場合の原因分析や因果関係を探る必要があるため、それをどのように行うかも検討する必要がある。
    • 高齢者介護サービスについて、主要なポイントは、サービスが十分に供給されていない場合に、その原因が供給者側にあるのかどうかをチェックできるものとなっているかどうかである。

    (久保研究協力者)
    • 今まで出された6事例の研究結果を基にして、必要性や効率性などの観点ごとに評価方法をパターン化できないか。その際、まず行政活動を分類し、それごとにパターン化していくことになる。
    • 政策評価は会計年度に対応させるものと理解している。また、実績評価は、Plan−Do−Seeを実行するための評価であり、評価結果と責任権限及び予算との結びつきを確保しながら機能させることが重要である。

    (奥野座長代理)
    • 目標については、数値的な比率だけではなく、サービスの質についても考慮すべきである。
    • 「高齢者介護サービス」の公平性について、受益者負担の考え方だけではなく、所得に応じた負担である応納負担という考え方もある。

    (金本研究協力者)
    • 事業評価について、政策体系のレベルで一番下の単位を対象とした評価という考え方と、事業の実施、変更、中止等の意思決定のための評価という考え方と、2つの考え方があるが、例えば、前者の考え方を採ると、高齢者介護サービスのような大きな単位のものは総合評価でよいということになるが、総合評価はある特定のテーマを立てて評価を行うもので、網羅的に行う評価ではない。したがって、重要な部分が評価から漏れてしまう可能性がある。
    • 実績評価については、成果目標の設定が最も重要なステップであり、成果として何が達成できるか、そのために適切な制度になっているかを見ることが必要である。
    • ガイドラインにおける実績評価では、因果関係の分析を行うことや、次のステップへどのように反映させていくかというところまで規定されていない。このため、各府省が、そのようなことは行わなくともよいと解釈すれば、形式的な評価しか行わない可能性がある。実績評価はそれで完結するものではなく、次の政策をよりよくしていくためのものであるということを、精神規定的に盛り込むような形がよいのかもしれない。

    (田辺研究協力者)
    • 評価においては、どこまでのデータが収集できるかが重要である。総務省にはデータを収集できる権限が制度的にどこまで担保されているのか。各府省が評価を行うに当たって市町村からデータを収集できるのか。また、各府省が収集したデータをオープンな形で共用できるのか。そのためには、どういう制度的な担保が必要なのか。

    (土井次長)
    • どのようなデータがあるかということは把握が可能だが、評価の仕掛け、手順的なものを中心に考えている。
    • 1つ懸念しているのは、統計法の問題である。今は調査を行うごとに1つ1つ承認を得なければならない仕組みにあり、調査するに当たって相当な事務的手続きが必要となる。

    (奥野座長代理)
    • あらかじめ何を調査すべきかを設計した上で、各個人のパネルデータを連続的にきちんと取れるようにすべきであり、匿名性を担保できる形に直して、パネルデータを常に公表すべきである。各府省、シンクタンク、研究者等が、同じデータを使えるということにすれば、統計に割いている資源をまとめて効率化でき、そこで節約された人的資源を他に有効に活用できる。
    • ODAには、国際的な公平性があり、公平性の基準を入れてもよいのではないか。
    • ODAには10数省庁が関係しているため、府省横断的評価も考えられるが、府省横断的評価とは何を行うための評価なのかが見えない。具体的なイメージがほしい。

    (若生室長)
    • 府省横断的評価については、例えば、補助金について、零細補助金の在り方や施設整備のための補助金の在り方といったテーマで各省庁の補助金を統一的に見るなど、全政府的に一定の統一的なものの見方で横断的に評価をしていくというものをイメージしている。

    (星野研究協力者)
    • そうだとすれば、府省横断的評価は、総合評価の1つとして位置付けられる。総合評価の中に府省横断的評価と府省総合的評価があるととらえるべきではないか。

    (金本研究協力者)
    • 例えば、総務省が、農道の評価と国道の評価がどのように違うかを比較するためには、独自に調査を行う必要がある。そうなると、単なる客観性担保評価を超えたものになるのではないか。

    (久保研究協力者)
    • 介護保険の中で応納負担(所得に応じた負担)という話が出たが、例えば、応納負担という制度に変えていこうとする評価は、政治の領域に関わることではないのか。政策評価は政治の領域に立ち入らない範囲内で評価を行い、政治が意思決定を行うためのデータを提供するということだと思う。

    (奥野座長代理)
    • ガイドラインでは、政策という言葉を主に用いているため、事業については該当しないのではという誤解を与える。
    • 総合評価では、必要性など5つの観点以外の観点もあり得る。評価の観点は、この観点だけしか見てはいけないという限定的なものではなくて、最低限見なければならない観点はあるものの、それ以上見ることを妨げるものではないと考えるが、これについてもご意見を伺いたい。

    (星野研究協力者)
    • 事業評価の事前評価でも有効性の観点は必要不可欠である。例えば、ODAの事例で、上位目標に対する貢献度という評価項目があったが、これはその国全体をよくするのにどれだけ貢献するかということであり、まさに有効性の評価である。事業評価の案件別評価でも事前評価でその点をきちんと評価すべきである。
    • 優先性については、あまり議論していないが、優先性とは、ある目的を達成するために複数の手段がある場合に、どれを優先するかということであると理解している。
    • 優先性は、上位目的と具体的な事業とのセットで考えていくべきである。したがって、事業評価と総合評価が優先性の範囲で、実績評価については優先性はあまり考えられないと考える。
    • 箇所別評価における優先性とは、地域全体の面的整備の中で、どこの箇所から優先的に整備していくかということである。国だけでは評価が行えず、自治体や広域体で行うことになるのではないか。その辺りの議論がないと、優先性が正しく位置付けられない。

    (金本研究協力者)
    • 事業評価は、実務上の制約から、これから行おうとする事業を採り上げて、その事業を実施するために評価するという形にならざるを得ない。そこから漏れる優先性については、さまざまな見方が混在・錯綜しているという印象がある。
    • ガイドラインでは、「政策」という言葉を、政策、施策、事業の3つを含んだ広義の政策という意味で用いており、それでよいと考える。文言を変えると更に混乱を来す。

    (奥野座長代理)
    • 最終的な事例研究の取扱いについては、各研究協力者の御意見を踏まえ次回以降改めて検討することとしたい。

  3. 次回第18回研究会は、平成12年10月16日(月)の10:00から、実績評価の目標、指標の設定の考え方、米国における総合評価の事例等を議題として開催することとされた。

以上
(文責:総務庁行政監察局政策評価等推進準備室)

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