従来より、総務大臣の登録を受けた登録点検事業者が無線局の無線設備等の点検を行い、免許人から当該点検の結果を記載した書類の提出があったときは、検査の一部を省略することができる登録点検事業者制度が実施されており、無線局の無線設備等の新設検査、変更検査及び定期検査において広く活用されてきました。
平成23年6月30日の放送法等の一部を改正する法律の施行により、同制度を発展させ、総務大臣の登録を受けた登録検査事業者が無線設備等の検査を行い、免許人から当該無線局の無線設備の検査結果が法令の規定に違反してない旨を記載した証明書の提出があったときは、定期検査を省略することができる無線局の定期検査制度の見直しが行われ、これまでの点検に加えて検査を行うことが可能な登録検査等事業者制度が開始されました。
登録検査等事業者制度においては、無線局の無線設備等の定期検査に係る検査、又は無線局の無線設備等の新設検査、変更検査及び定期検査に係る点検の事業を行う登録検査事業者(用語1)と、従来からの登録点検事業者と同様に、無線設備等の点検の事業のみを行うことができる登録点検事業者(用語2)の2種類が存在します。
なお、経過措置として、本法律施行の際に、既に登録点検事業者として登録を受けている者は、引き続き、施行日に新制度における登録点検事業者として登録を受けたものとみなされます。
1 登録検査事業者が行う検査(定期検査に限る。)
人の生命又は身体の安全の確保のためその適正な運用の確保が必要な無線局として総務省令で定めるもの以外の無線局
登録検査等事業者等規則
- 第15条 法第73条第3項の総務省令で定める無線局は、次の各号のいずれかに該当する無線局とする。
- 一 法第103条の2第12項各号に掲げる者が専ら当該各号に定める事務の用に供することを目的として開設する無線局その他これらに類するものとして電波法施行令第14条各号に掲げる無線局
- 二 法第103条の2第13項第1号及び第2号に掲げる無線局
- 三 地上基幹放送局
- 四 船舶局(旅客船の船舶局に限る。)
- 五 航空機局
- 六 地球局(放送法第2条第3号に規定する一般放送及び同条第13号に規定する衛星基幹放送の業務の用に供するものに限る。)
- 七 航空機地球局
- 八 船舶地球局(旅客船及び第1号の無線局を開設する船舶の船舶地球局に限る。)
- 九 人工衛星局(放送法第2条第3号に規定する一般放送の業務の用に供するものに限る。)
- 十 衛星基幹放送局
- 十一 総務大臣が別に告示(平成23年総務省告示第277号)する無線局
- 航空保安用
- 放送事業用(固定局に係るものに限る。)
- 飛行援助用
2 登録点検事業者が行う点検
人の生命又は身体の安全の確保のためその適正な運用の確保が必要な無線局として総務省令で定めるもの以外の無線局
登録検査等事業者等規則
- 第19条
- 1〜2 (省略)
- 3 登録検査等事業者等が無線設備等の点検を行うことができる無線局は、国が開設するもの(登録検査等事業者等規則第15条に規定する無線局で国が開設するものに限る。)以外のものとする。
1 登録検査事業者による検査・点検が可能な範囲
新設検査 | 変更検査 | 定期検査 | |
---|---|---|---|
検査 | × | × | ○ |
点検 | ○ | ○ | ○ |
2 検査の実施項目等
登録検査等事業者等規則・別表第5号 一部抜粋
- 一 無線従事者の資格及び員数
- 二 電波法第60条の時計及び備付書類
- 三 無線設備
- 無線局事項書及び工事設計書に記載された内容と実装との照合
- 電気的特性の検査
- 総合試験
3 検査結果証明書の交付等
電波法施行規則
第41条の5 法第73条第3項の規定により、免許人から提出された施行規則別表第5号の2の様式による無線設備等の検査結果を記載した書類検査実施報告書及び検査実施報告書に添付された同項に規定する検査結果証明書が適正なものであって、かつ、検査(点検である部分に限る。)を行った日から起算して3ヶ月以内に提出された場合は、法第73条第1項の検査を省略する。
4 点検の実施項目等
登録検査等事業者等規則・別表第7号 一部抜粋
- 一 無線従事者の資格及び員数
- 二 電波法第60条の時計及び備付書類
- 三 無線設備
- 無線局事項書及び工事設計書に記載された内容と実装との照合
- 電気的特性の点検
- 総合試験
5 点検結果通知書の通知
電波法施行規則
第41条の6 法第10条第2項、第18条第2項又は第73条第4項の規定により、免許人又は予備免許を受けた者から提出された別表第5号の3の様式による無線設備等の点検結果を記載した書類「点検実施報告書」が適正なものであって、かつ、点検を実施した日から起算して3ヶ月以内に提出された場合は、法第10条第1項、第18条第1項又は法第73条第1項の検査の一部を省略する。
1 電波法第24条の2第4項第1号の規定による、別表第一に掲げる知識を有する者が点検を行うものであること。(点検員)
電波法・別表第一
- 一 第一級総合無線通信士、第二級総合無線通信士、第三級総合無線通信士、第一級海上無線通信士、第二級海上無線通信士、第四級海上無線通信士、航空無線通信士、第一級陸上無線技術士、第二級陸上無線技術士、陸上特殊無線技士(登録検査等事業者等規則第2条第2項第4号により、第一級陸上特殊無線技士に限る。)、又は第一級アマチュア無線技士の資格を有すること。
- 二 外国の政府機関が発行する前号に掲げる資格に相当する資格を有する者であることの証明書を有すること。
- 三 学校教育法による大学、高等専門学校又は中等教育学校において無線通信に関する科目を修めて卒業したものであって、無線設備の機器の試験、調整又は保守の業務に二年以上従事した経験を有すること。
- 四 学校教育法による大学、高等専門学校又は中等教育学校に相当する外国の学校において無線通信に関する科目を修めて卒業したものであって、無線設備の機器の試験、調整又は保守の業務に二年以上従事した経験を有すること。
2 電波法第24条の2第4項第2号の規定による、別表第二に掲げる較正を受けた測定器等を使用して無線設備の点検を行うこと。(測定器)
電波法・別表第二
- 一 周波数計
- 二 スペクトル分析器
- 三 電界強度測定器
- 四 高周波電力計
- 五 電圧電流計
- 六 標準信号発生器
3 電波法第24条の2第4項第3号の規定による、別表第四に掲げる知識経験を有する者が検査(点検である部分を除く。)を行うこと。(判定員)
電波法・別表第四
- 一 学校教育法による大学(短期大学を除く。第五号において同じ。)若しくは旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学において無線通信に関する科目を修めて卒業した者又は第一級陸上無線技術士の資格を有する者であって、無線設備の機器の試験、調整若しくは保守の業務に三年以上従事した経験又は第二十四条の二第四項第一号に規定する知識経験を有する者として無線設備等の点検の業務に一年以上従事した経験を有すること。
- 二 学校教育法による短期大学若しくは高等専門学校若しくは旧専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)による専門学校において無線通信に関する科目を修めて卒業した者又は第一級総合無線通信士、第一級海上無線通信士若しくは第二級陸上無線技術士の資格を有する者であって、無線設備の機器の試験、調整若しくは保守の業務に五年以上従事した経験又は第二十四条の二第四項第一号に規定する知識経験を有する者として無線設備等の点検の業務に二年以上従事した経験を有すること。
- 三 第二級総合無線通信士、第二級海上無線通信士又は陸上特殊無線技士(総務省令で定めるものに限る。)の資格を有する者であって、無線設備の機器の試験、調整若しくは保守の業務に七年以上従事した経験又は第二十四条の二第四項第一号に規定する知識経験を有する者として無線設備等の点検の業務に三年以上従事した経験を有すること。
- 四 外国の政府機関が発行する第二号に掲げる資格に相当する資格を有する者であることの証明書を有する者であって、無線設備の機器の試験、調整又は保守の業務に五年以上従事した経験を有すること。
- 五 学校教育法による大学に相当する外国の学校の無線通信に関する科目を修めて卒業した者であって、無線設備の機器の試験、調整又は保守の業務に三年以上従事した経験を有すること。
- 六 学校教育法による短期大学又は高等専門学校に相当する外国の学校の無線通信に関する科目を修めて卒業した者であって、無線設備の機器の試験、調整又は保守の業務に五年以上従事した経験を有すること。
4 電波法第24条の2第4項第4号の規定による、業務の実施の方法が定められていること。 (業務実施方法書)
電波法 第24条の2
- 1〜3 (省略)
- 4 (省略)
- 四 無線設備等の検査又は点検を適正に行うのに必要な業務の実施の方法(無線設備等の点検の事業のみを行う者にあっては、無線設備等の点検を適正に行うのに必要な業務の実施の方法に限る。)が定められているものであること。
電波法第24条の2第5項の規定による、欠格事由に該当しない者であること。
無線設備等の検査又は点検の事業を行う者は、総務大臣の登録を受けることができます。登録検査事業者又は登録点検事業者として登録を受けようとする者は、以下の申請書等を提出してください。
申請手数料はかかりませんが、別途、登録免許税9万円がかかります。
従来の登録要件への適合を命ずる適合命令(電波法法第24条の7第1項)に加え、業務実施方法書によらないで業務を行った場合の業務改善命令の規定が新たに追加(電波法第24条の7第2項)されました。
総務大臣は、電波法を施行するため必要があると認めるときは、電波法第24条の8の規定により、登録検査事業者又は登録点検事業者に対し、その登録に係る業務の状況に関し報告(報告の徴収)させ、又は登録検査等事業者の事業所に立ち入り、その登録に係る業務の状況若しくは設備、帳簿、書類その他の物件を検査(立入検査)させることができる旨規定されています。
立入検査は登録検査等事業者の業務の不適切な実施に関する疑い、又は外部からの情報があった場合にその事実関係を確認する場合に実施するほか、不正等の疑いがない場合であっても、登録に係る業務が法令の規定に基づき適正に実施されているか確認するために実施することがあります。
従来の登録の取り消しに加え、新たに期間を定めて業務の停止を命ずる業務停止命令の規定が追加されました。(登録の取消し)
総務大臣は次の場合には登録を取り消し、又は期間を定めて検査又は点検の業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。(業務停止命令)
登録の更新を受けなかったとき、廃止の届出をしたとき又は登録を取り消されたときは、その登録を抹消します。
〒461-8795 名古屋市東区白壁1-15-1 名古屋合同庁舎第3号館
東海総合通信局 電波監理部 電波利用環境課
電話:052-971-9617 FAX:052-971-9396
管轄:岐阜県、静岡県、愛知県、三重県
今般の法改正で変更となった主なポイントは以下のとおりです。
放送法等の一部を改正する法律の施行の際に、既に登録点検事業者として登録を受けている者は、施行日において、新制度における登録点検事業者として登録を受けた者とみなされます。登録番号に変更はなく、現在交付されている登録証は、そのまま利用可能です。
登録点検事業者が、登録検査事業者として登録を受ける場合、新たに登録検査事業者として登録の申請を行い、登録検査事業者として登録を受けることが必要になります。
登録点検事業者の登録と登録検査事業者の登録は、異なる別個の登録であることから、新たに登録検査事業者として登録を受けた場合は、登録免許税9万円が課税されます。
無線局事項書中船舶の用途コードにPSG(旅客船)又はPCS(貨客船)のいずれかが含まれているものはすべて登録検査事業者による検査の対象外の無線局となります。なお、旅客船は、法令上、12名を超える旅客定員を有する船舶と定義されています。
無線設備の機器の試験、調整又は保守の業務に5年以上(又は3年以上)従事した経験を有するという条件がありますが、経験年数はどの時点から起算すべきでしょうか。
無線通信に関する科目を修めて大学等を卒業した時点又は第一級陸上無線技術士等の無線従事者の資格を取得した時点等以降の業務経験年数が該当します。
立入検査は、業務の不適切な実施に関する疑い又は外部からの情報があった場合に、その事実関係を確認する場合に実施するほか、不正等の情報がない場合でも登録に係る業務が法令の規定に基づき適正に実施されているか確認するために実施することがあります。
できません。無線設備等の検査は、検査の点検である部分も含めて登録検査事業者が自ら定めた業務実施方法書に従って行うことが必要です。従って、検査の点検である部分を登録の異なる登録点検事業者が行った結果を用いることはできません。
判定員は、無線設備等の検査(点検である部分を除く。)を行うものであること (法第24条の2第4項第3号)
とされており、点検(検査の点検である部分を含む。)の業務を行うことはできません。ただし、判定員と点検員を兼務することは可能ですので、判定員は、業務実施方法書に点検員として登録を受けることが必要となります。
登録の更新の際に必要となる書類は、登録の申請の際に必要となる書類と同様です。なお、登録検査事業者がその登録の更新を受ける場合は、登録検査事業者としての登録を受けた場合に課税される登録免許税(90,000円)は必要ありませんが、登録更新手数料13,400円(電子申請の場合は13,300円)が必要となります。
検査実施報告書の提出を受けた総合通信局は、施行規則第41条の5の規定に基づき、証明書の内容が適正なものであるか、検査(点検である部分に限る。)を行った日から起算して3か月以内かつ総務大臣が通知した期日の1か月前までに提出されたものであるかの確認を行った上で、検査を省略する場合は、施行規則第39条第2項の規定に基づき、免許人に無線局検査省略通知書を通知します。
法的には、登録点検事業者としての登録を受けられますが、登録検査事業者は、検査と点検の両方の業務を行うことができますので、別に登録点検事業者として登録を受ける必要はありません。
登録検査事業者と登録点検事業者は、異なる登録に基づく、別個の事業者ですので、法第24条の9の規定に基づく登録検査事業者の廃止届を提出した上で、登録点検事業者として登録の申請を行うことが必要です。
不正の内容によっては、定期検査等を省略せず、国の検査を受けるか、他の登録検査事業者による検査、又は他の登録点検事業者による点検を受けてもらうことがあります。また、既に定期検査の省略を受けた場合であっても、国が臨時検査を実施し、当該無線設備等が法令に定める事項に適合しているか否かを確認する場合があります。
従来より、一般的な測定器では測定することが困難な特殊な無線設備の点検を行う場合等について、審査基準(第31条 (3) ク (エ))の規定により、(A)点検の業務の一部を他の者に委託する旨が業務実施方法書に記載され、委託する点検の業務について、法第24条の2第4項第2号に適合して行われることを受託者との間で取り決める旨が記載されていること、(B)受託先が報告する点検の業務の結果の適正性を確認する方法及び当該点検の業務の結果に係る組織内の管理体制が明確に記載されていること等の条件を満たす場合においては、点検の業務の一部を他の者に委託することができました。
登録検査等事業者制度についても従来の考えを踏襲し、検査の点検である部分の一部、又は点検の一部を他の者に委託することができます。
判定員は、点検員が作成した法令の規定を満足しているかどうか確認できる資料により判定を行うことになります。よって、検査の点検である部分の一部を他の者に行わせ、かつ検査の点検である部分と検査の判定が別の場所、別の者によって行われたとしても、判定員は点検員が用意した判定に必要な資料を基に判定を行うことになるため、問題ありません。
なお、点検(検査の点検である部分を含む。)は無線局に臨局して行うことを想定していますが、判定については、臨局する必要がないと判定員が判断する場合は、必ずしも臨局する必要はありません。
法第24条の10の規定に基づき、次の事項に該当する場合は、登録の取り消し又は期間を定めて業務の停止を受ける場合があります。
法第24条の7第2項において、総務大臣は、登録検査事業者又は登録点検事業者がその登録に係る業務の実施の方法によらないでその登録に係る検査又は点検の業務を行っていると認めるときは、当該事業者に対し、無線設備等の検査又は点検の実施の方法その他の業務の方法の改善に関し必要な措置をとるべきことを命ずることができることが新たに規定されました。
具体的には、帳簿等の備付け・保存義務違反、測定器等の管理等の義務違反、業務実施方法書によらない検査・点検の実施等が認められた場合は、無線設備等の検査又は点検の実施の方法その他の業務の方法の改善に関し必要な措置をとるべきことの命令を受けることがあります。
なお、総務大臣は、この法律を施行するために必要と認めるときは、その登録に係る業務の状況に関し報告させ、又はその職員に事業所に立ち入り、その登録に係る業務の状況若しくは設備、帳簿、書類その他の物件を検査させることができることとされています。