平成27年1月9日up
北海道総合通信局は、12月11日(木曜日)災害発生時における被害を最小限にとどめるため、防災に関する知識や意識を高めることを目的としたセミナーを、北海道地方非常通信協議会、北海道テレコム懇談会との共催により開催しました。
講師:南 哲行(みなみ のりゆき)氏
国立大学法人北海道大学 大学院 農学研究院
国土保全学研究室 特任教授(農学博士)
今年は8月に広島県、北海道礼文町で豪雨、9月に御嶽山の噴火とその後の雨、そして11月には長野県北部地震などにより多くの土砂災害が発生しました。
南教授からは、土砂災害による被害の実態と対策について、災害現場の貴重な映像を交えてご講演いただきました。
<講演概要>
土砂災害の形態は、地滑り、崖崩れ、土石流又はその組み合わせなどがあり、単純化すると「発生する区域」と「被害を受ける区域」にわけられる。(双方が重なる場合もある)
土砂災害の対策としては、
・ハード対策「施設整備」(人命財産の保全)
・ソフト対策「警戒避難」(人命保護)
・ソフト対策「土地利用規制」(開発抑制)
の3つがあり、従来は災害が発生する区域での「ハード対策」が主流であったが、現在では、被害を受ける区域への「ソフト対策」(強靭化)にシフトしている。
道内の市町村長の方は「うちは大丈夫」だと思われている人が多いが、雨量が増加している中で、北海道は他県に比べ川幅が狭く危険な場所もある。
よく「山に木を植えれば安心」と思われがちだが、植樹した木は地上部分が大きくても根は大きくならない。古い木は豪雨によって流木となり被害を拡大させることがある。
土砂災害の場合、市町村の庁舎は堅牢なので被害の大きさが実感できない場合があるので注意が必要。
これからの課題としては、進む高齢者社会に対して地方の防災担当者が激減しており、少ない人数で災害弱者を助けなければならない。想定を上回る災害が起き、時間により刻々と状況が変わるので、マニュアルどおりには進まない。一人ひとりの経験が重要となっている。
山地及び丘陵などの深層崩壊の現象はまだ不明確な部分が多く、深く長く研究する必要がある。
講師:井上 裕之(いのうえ ひろゆき)氏
NHK放送文化研究所 メディア研究部 放送用語・表現班 上級研究員
井上様からは、東日本大震災に津波の被害にあった東北地方において、津波が押し寄せる切羽詰まった状態の中で行われた防災行政無線の放送(アナウンス)事例を中心に、非常災害時の呼びかけ方について、ご講演いただきました。
<講演概要>
茨城県大洗町、宮城県女川町、宮城県石巻市。
東日本大震災が発生し、津波が押し寄せる危機的状況において防災無線による放送が行われた。それぞれ役場の位置(被災状況)やアナウンスを行った者、指示系統など置かれた条件は違うものの、共通して使われたのが「避難命令」「避難せよ」「逃げろ」などの命令調の呼び掛けだった。
災害時用にアナウンスマニュアルを用意しておくことは重要だが、東日本大震災のような想定を超える状況が起こった場合、臨機応変に対応(アナウンス)する事が必要になる。
アナウンスの担当者は事態を把握し、住民に「緊急事態」であると気づかせる要素が必要であり、普段使われない命令調の言葉は効果的である。
「避難命令」という命令表現を使うことについて、法律上の「命令」ではなく、日本語表現として考えれば「誰が利益を得るか」を考えれば、緊急事態の場合は命令表現の方が聞く相手に利益がある。