市場の動向
インターネット・ブロードバンド市場
OECDのブロードバンド統計によると、2021年12月現在、固定ブロードバンドの接続数は約1億2,711万、移動体ブロードバンドの接続数は約5億5,870万となっている。そのうち、固定ブロードバンドの世帯普及率は、ケーブルモデムが23.4%、光ファイバが8.4%、ADSLが5.1%である。
ブロードバンド接続を提供している事業者は、ADSL接続や光ファイバ・衛星接続を提供する大手電気通信事業者と、ケーブルモデムを提供するケーブルテレビ事業者とで構成されている。最大手から順に、ケーブルテレビ事業者のコムキャスト、次いでチャーター・コミュニケーションズ、電気通信事業者のAT&T、ベライゾンが続く。
固定ブロードバンド加入数及び加入率(2017-2021年)
2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | |
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固定BB加入数(千) | 108,200 | 110,756 | 114,292 | 121,232 | 127,032 |
固定BB加入率 | 32.8% | 33.3% | 34.2% | 36.1% | 37.7% |
移動電話市場
国際電気通信連合(ITU)統計によると、2021年時点で、米国の移動電話加入数は約3億6,162万であり人口普及率は約107.3%である。米国移動電話市場の規模は、中国(約17億)とインド(約12億)に次いで世界で3番目である。全国規模の主な事業者は、AT&Tコミュニケーションズ、ベライゾン・ワイヤレス、T-モバイルUSの3社である。
なお、米国では、全国展開を行っている移動体通信事業者のほかに、特定の市場のみの地域事業者、再販事業者もしくは仮想移動体通信事業者(MVNO)、データサービス事業者、衛星移動体通信事業者等の多様な事業者が、移動体通信サービスを提供している。
移動電話加入数及び加入率(2017-2021年)
2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | |
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移動電話加入数(千) | 340,113 | 348,242 | 355,763 | 352,522 | 361,617 |
移動電話加入率 | 103.1% | 104.8% | 106.4% | 104.9% | 107.3% |
固定電話市場
回線交換網による固定電話(VoIPを含む)を提供している主な事業者は、AT&Tコミュニケーションズ、ベライゾン、ルーメンとなっている。その他、固定電話を提供している主な事業者としては、ケーブルテレビ事業者のコムキャスト、チャーター等がある。ただし、こうした大手電気通信事業者やケーブルテレビ事業者に加えて、全国で100を超える中小規模の電気通信事業者がサービス提供している。
固定電話加入数及び加入率(2017-2021年)
2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | |
---|---|---|---|---|---|
固定電話加入数(千) | 116,297 | 110,333 | 106,431 | 101,799 | 97,113 |
固定電話加入率 | 35.3% | 33.2% | 31.8% | 30.3% | 28.8% |
放送市場
地上放送
商業放送と非商業・教育放送が存在するが、サービスは商業放送を中心に行われている。商業局の大部分がABC、CBS、NBC、Fox、CWをはじめとする地上ネットワークの直営局又は加盟局である。非商業・教育局には、公共放送PBSのメンバー局と独立系局とがある。
有料放送
ケーブルテレビ放送はコムキャスト、チャーター・コミュニケーションズ、コックス、アルティスUSA等が、衛星放送はディレクTVとディッシュ・ネットワークが実施している。ディレクTVは2015年以降AT&T傘下にあったが、AT&Tが2021年8月に独立新会社ディレクTVを設立し、新会社が衛星放送を含む有料放送事業を行うことになった。
重要政策動向
ネット中立性規制
オバマ大統領(当時)は、ネット中立性と呼ばれる上位レイヤ・サービスの非差別的な伝送を確保するための規則整備を後押ししていたが、政権交代ののち、パイFCC委員長(当時)は、オープン・インターネット規則の再検討に取り組み、2017年11月には「インターネットの自由の回復」にかかる命令案が公表され、同年12月に採択された。同命令では、ブロードバンド・インターネット・アクセス・サービスを情報サービスに再度分類することで規制対象から除外した。また、スロットリング、有料優先措置、ブロッキングの三つを禁止する規制も廃止し、公式の苦情処理手続についても廃止した。透明性については、2015年の規制を緩和し、2010年の規則の水準まで戻した。
ただし、この2018年命令は、司法判断により、同命令よりも更に厳格な規則や要件を課すことを州に禁止した部分が無効化されている。
これを受けて、州政府では、独自のネット中立性規則制定の動きが広がった。全米州議会議員連盟によると、2022年5月時点で、7州(カリフォルニア、コロラド、メイン、ニュージャージー、オレゴン、バーモント、ワシントン)及びプエルトリコでネット中立性法又は関連する決議が採択され、11州では2022年議会会期にネット中立性法案が提出されている。
メディア所有規制
FCCは4年ごとにメディア所有規制の見直しを行い、公益に資さない規制を廃止又は修正することが義務付けられている。2018年度審査は後述の訴訟問題により完了していないが、2022年12月に2022年度審査が開始した。
FCCは2017年11月に四つのメディア所有規制緩和措置を採択した。しかし、連邦第3巡回区控訴裁判所は2019年9月、FCCの規制緩和措置を無効とする判決を下した。これを不服としたFCCが2020年4月に同判決を見直すよう連邦最高裁判所に申し立てたところ、連邦最高裁判所は2021年4月、FCC決定を支持する裁定を下した。これを受け、FCCは2021年6月に一連の規制緩和措置を復活させた。
基礎データ集
国の基礎データ
- 政体
- 連邦共和制
- 面積
- 963万1,420㎢
- 人口
- 3億3,700万人
- 首都
- ワシントンD.C.
- 公用語
- 英語
経済関連データ
- 通貨単位
- 1ドル(USD)=111.92円(2022年9月末)
- 会計年度
- 10月から1年間
- GDP
- 23兆3,150億8,560万USD(2021年)
法律
通信 | 1934年通信法、1996年電気通信法 等 |
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放送 | 1934年通信法、1996年電気通信法 等 |
監督機関
通信 | 連邦通信委員会、商務省国家電気通信情報庁、州公益事業委員会 等 |
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放送 | 連邦通信委員会、州公益事業委員会 等 |