市場の動向
インターネット・ブロードバンド市場
固定ブロードバンドの市場シェアは2021年6月現在、テルストラが45%と最大であり、TPGテレコムが24%、オプタスが16%と続いている。接続方式別の加入者数は、2021年6月現在、光ファイバ接続であるNBNに対する接続が約820万、DSLが約92万と光ファイバの優位が確実なものとなっている。
固定ブロードバンド加入数及び加入率(2017~2021年)
2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | |
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固定BB加入数(千) | 7,922 | 8,427 | 8,803 | 9,100 | 9,083 |
固定BB加入率 | 32.2% | 33.7% | 34.7% | 35.4% | 35.0% |
移動電話市場
テルストラ、オプタス及びTPGテレコムの3社が設備を有する移動体通信事業を行っている。また、amaysim等のMVNOが約30社存在している。2021年6月末の市場シェアはテルストラが44%、オプタスが31%、TPGテレコムが17%である。
5Gについては、テルストラが2019年5月より商用サービスを開始、2022年7月現在で全国での人口カバレッジを80%にまで拡大している。一方、オプタスは2019年11月より商用サービスを開始、大都市圏を中心に全国で約1,300基の基地局を運用している。また、TPGテレコムは2020年3月に5G商用サービスを開始、2022年10月現在、大都市圏及び郊外の1,000地域にカバレッジを拡大している。
移動電話加入数及び加入率(2017~2021年)
2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | |
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移動電話加入数(千) | 26,660 | 27,640 | 27,535 | 27,452 | 27,090 |
移動電話加入率 | 108.4% | 110.7% | 108.6% | 106.9% | 104.5% |
固定電話市場
固定電話の加入数、加入率は減少傾向で推移している。固定電話加入数の減少の原因として、利用者が移動電話やVoIP等の他の通信手段に移行していることにある。主な固定電話事業者はテルストラで市場シェアは約75%を占める。競合事業者にはTPGテレコム等がある。
固定電話加入数及び加入率(2017~2021年)
2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | |
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固定電話加入数(千) | 8,460 | 8,200 | 6,200 | 5,600 | 4,600 |
固定電話加入率 | 34.4% | 32.8% | 24.5% | 21.8% | 17.7% |
放送市場
ABC、SBSの公共放送事業者2社、7ネットワーク、9ネットワーク、ネットワーク10の商業放送事業者3社が全国向けに各1系統の放送を行っている。また、フォクステルが、DTHとケーブルテレビによる有料放送を行っている。ケーブルテレビはオプタス及びテルストラ所有の同軸ケーブル網によって視聴者に提供されている。フォクステルは競合事業者であったオースターを2012年5月に買収し、実質的に有料放送市場の独占事業者となっている。2022年6月現在でのフォクステルの有料放送サービス(ストリーミングを除く)加入者数は約172万3,000である。
重要政策動向
全国ブロードバンド網(NBN)計画
2009年4月、労働党政権は「全国ブロードバンド網(NBN)計画」を発表した。NBN計画は当初、8年間で430億AUDを投資し、国内の90%の建造物にFTTP及びFTTBによる通信速度100Mbps~1Gbpsのブロードバンド接続サービスを提供するという計画であった。
2013年9月、政権についた保守連合はNBN計画の見直しを実施、光ファイバ網の接続方式を当初計画のFTTPからFTTNやFTTC、HFC等の組み合わせに変更し、テルストラ等の通信事業者による既存の通信設備を活用した網構築へと切替えを図った。
2022年4月現在のNBN加入件数は全国で850万件、加入可能な世帯及び事業所は1,210万件に達し、概ね全国カバレッジを達成している。加えて、ほぼすべての加入者が通信速度25Mbps以上のサービスを利用可能であり、76%が通信速度50Mbps以上のサービスに加入している。
「子どものネット安全」促進政策
保守連合政権は2015年7月に「2015年子どものオンライン安全促進法」を施行した。同法は、ネットいじめの要因となるテキストや画像等の有害情報を迅速に削除する仕組みを構築することを目的に、ネット上のソーシャルメディアに対して規制を導入するものである。加えて、通信、教育、司法等、省庁横断的に所在するネットいじめ関連の政策権限を集約するため、「ネット安全コミッショナー(e-safety Commissioner)」が新たに設置され、ソーシャルメディアや違法投稿者に対する規制権限が付与された。
同法の下では、ソーシャルメディア事業者は「第1種(tier 1)」と「第2種(tier 2)」事業者に二分され、第1種事業者にはネット安全コミッショナー事務局に対して事前申請し、同コミッショナーが規定する「基本オンライン安全見込み(basic online safety expectations)」に適合すると認められた事業者が分類される。一方、第2種事業者はネット安全コミッショナーの勧告により通信担当大臣が指定する事業者で、事前の申請は必要としない。
2022年6月現在、第1種事業者であるソーシャルメディアはTikTok、Twitter、Yahoo、WeChat等であり、第2種事業者にはFacebook、Instagram、YouTubeが指定されている。なお、有害情報がアップロードされた場合、第1種事業者はネット安全コミッショナーの要請により当該情報を自ら削除することになるが、第2種事業者は同コミッショナーの告示により、法的強制力の下、当該情報の削除が義務付けられている。
基礎データ集
国の基礎データ
- 政体
- 立憲君主制
- 面積
- 769万2,024㎢
- 人口
- 2,592万人
- 首都
- キャンベラ
- 公用語
- 英語
経済関連データ
- 通貨単位
- 1オーストラリア・ドル(AUD)=94.17円(2022年9月末)
- 会計年度
- 7月から1年間
- GDP
- 1兆5,526億6,736万USD(2021年)
法律
通信 | 1997年電気通信法、2010年競争・消費者法、1992年無線通信法、1999年電気通信(消費者保護及びサービス基準)法 |
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放送 | 1983年オーストラリア放送協会法、1992年放送サービス法 |
監督機関
通信 | インフラ・運輸・地方開発・通信・芸術省、オーストラリア通信メディア庁、オーストラリア競争・消費者委員会 |
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放送 | インフラ・運輸・地方開発・通信・芸術省、オーストラリア通信メディア庁 |