市場の動向
インターネット・ブロードバンド市場
固定ブロードバンドの市場シェアは2019年6月現在、テルストラが47%と最大であり、TPGテレコム(2020年7月にボーダフォン・ハチソン・オーストラリアと合併)が25%、オプタスが15%と続いている。
接続方式別の加入者数は、2019年6月現在、大部分が光ファイバ接続であるNBNに対する接続が約490万、DSLが約190万と光ファイバの優位が顕著となっている。ケーブルモデムを含むその他の接続方式は約94万と減少の傾向にある。他方、モバイル・インターネットについては、ネット接続が可能な移動電話の数が約2,750万となっている。
固定ブロードバンド加入数及び普及率(2015-2019年)

2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | |
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6,828 | 7,374 | 7,923 | 8,427 | 8,706 |
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28.5% | 30.4% | 32.2% | 33.8% | 34.5% |
出所:ITU World Telecommunication/ICT Indicators Database
移動電話市場
テルストラ、オプタス及び、TPGテレコム(ブランド名はボーダフォンとTPGを併存)の3社が設備を有する移動体通信事業を行っている。2019年6月末の市場シェアはテルストラが41%、オプタスが27%、VHAが19%である。
5Gについては、テルストラが2019年5月より商用サービスを開始、2020年10月現在で全国60都市にカバレッジを拡大している。一方、オプタスは2019年11月より商用サービスを開始、大都市圏を中心に全国で約800基の基地局を運用している。また、ボーダフォン(当時)は2020年3月に5G商用サービスを開始、2021年末までに5大都市及び首都キャンベラでの人口カバレッジを85%にまで拡大する計画である。なお、使用帯域は各社ともに3.5GHz帯であるが、オプタスは2020年2月より2.3GHz帯による5Gサービスをシドニー及びメルボルンで開始している。
移動電話加入数及び普及率(2015-2019年)

2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | |
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25,770 | 26,551 | 26,660 | 27,640 | 27,880 |
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107.7% | 109.4% | 108.4% | 111.0% | 110.6% |
出所:ITU World Telecommunication/ICT Indicators Database
固定電話市場
2005年度以降、加入者数、普及率は減少傾向で推移している。固定電話加入者数の減少の原因として、利用者が移動電話やVoIP等の他の通信手段に移行していることが原因として挙げられる。主な固定電話事業者はテルストラで2019年6月末現在の市場シェアは57%と大きい。競合事業者はオプタス及びTPGテレコムであるが市場シェアはそれぞれ20%前後である。
固定電話加入数及び普及率(2015-2019年)

2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | |
---|---|---|---|---|---|
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8,500 | 8,480 | 8,460 | 8,200 | 7,820 |
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35.5% | 35.0% | 34.4% | 32.9% | 31.0% |
出所:ITU World Telecommunication/ICT Indicators Database
放送市場
ABC、SBSの公共放送事業者2社、7ネットワーク(Seven Network)、9ネットワーク(Nine Network)、ネットワーク10(Network Ten)の商業放送事業者3社が全国向けに各1系統のテレビ放送を行っている。
フォクステル(Foxtel)が、DTHとケーブルテレビによる有料放送を行っている。ケーブルテレビはオプタス及びテルストラ所有の同軸ケーブル網によって視聴者に提供されている。フォクステルは競合事業者であったオースター(Austar)を2012年5月に買収し、実質的に有料放送市場の独占事業者となっている。2020年6月現在でのフォクステルのサービス加入者数は約200万である 。
重要政策動向
全国ブロードバンド網(NBN)計画
2009年4月、オーストラリア政府は全国域でFTTx網を新規に構築するNBN計画を開始した。NBN計画は2020年までに国内の90%の建造物にFTTxによる通信速度100Mbps級のブロードバンド・サービスを提供することを目標とした。
政府は2020年3月、NBN接続可能な建造物数が1,100万に到達、週単位で3万~4万件のペースで接続件数が増加し、NBN計画の95%以上が既に完了していることを明らかにした。また、国内約680万件の世帯及び企業がNBNの小売サービスに加入しており、既存加入者の67%及び新規加入者の80%が通信速度最大50Mbps以上の料金プランを選択していることも明らかにした。
なお、政府は、従来の計画通りに2020年6月末でNBN計画を完了したとするものの、同年9月に45億AUDを予算とする計画の更新を発表した。この新計画は、2023年までに国内の大都市圏及び地域における固定回線接続施設の最大75%に最大1Gbpsでの超高速ブロードバンド接続を提供することを目標としている。
「子どものネット安全」促進政策
オーストラリアでは2015年7月に、ネットいじめ対策法である「2015年子どものオンライン安全促進法(Enhancing Online Safety for Children Act 2015)」が施行され、ネットいじめの要因となるテキストや画像を迅速に削除する告発システムが構築されている。関連政策を所掌するのは、同法により設置された「ネット安全コミッショナー(e-safety Commissioner)」である。
同法による規制の内容は、ソーシャルメディアに対する規制や、「いじめ」、「同意のない個人画像の共有」等の違法な有害コンテンツを投稿したエンドユーザに対する削除告知等である。ただし、違法な有害コンテンツの苦情受付ポータルの構築や高齢者に向けたネットスキルの改善プログラムの実施等が新たな政策として追加された。
また、政府は2019年12月に、「2015年子どものオンライン安全促進法」と、違法なオンラインコンテンツ全般の規制根拠となっている「1992年放送サービス法(Broadcasting Services Act 1992)」の関連条文を統合し、違法な有害コンテンツの規制及び削除システムを統一的に確立するための法律である「オンライン安全法(Online Safety Act)」を提案する討議文書を作成し、意見公募を行っている。
基礎データ集
国の基礎データ
- 政体
- 立憲君主制
- 面積
- 769万2,024㎢
- 人口
- 2,520万人
- 首都
- キャンベラ
- 公用語
- 英語
経済関連データ
- 通貨単位
- 1オーストラリア・ドル(AUD)=75.49円(2020年9月末)
- 会計年度
- 7月から1年間
- GDP
- 1兆3,966億USD(2019年)
出所:World Bank, World Development Indicators Database
法律
通信 | 1997年電気通信法、2010年競争・消費者法、1992年無線通信法、1999年電気通信(消費者保護及びサービス基準)法 |
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放送 | 1983年オーストラリア放送協会法、1992年放送サービス法 |
監督機関
通信 | インフラ・運輸・地方開発・通信省、オーストラリア通信メディア庁、オーストラリア競争・消費者委員会 |
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放送 | インフラ・運輸・地方開発・通信省、オーストラリア通信メディア庁 |