世界情報通信事情 World Information and Communication Circumstances

Federative Republic of Brazil ブラジル(最終更新:令和4年度)

市場の動向

インターネット・ブロードバンド市場

固定ブロードバンド回線の主流はxDSLからFTTxに移っており、FTTxは中間所得層の拡大を背景に有料放送やインターネット配信サービスに加入するユーザが増え、シェアを伸ばしている。電気通信庁(Anatel)によると2022年9月現在、ブロードバンド技術で最も普及しているのはFTTxで、68.3%の市場シェアを誇る。2位は、ケーブルモデム(シェア20.9%)、3位はxDSL(同6.7%)となっている。

ISPは、ケーブルテレビ最大手NETセルビソスと固定通信エンブラテルを傘下に持つクラロを筆頭に、フランスのメディア大手ビベンディからGVTを買収したテレフォニカ・ブラジル、地場企業Oiの大手3社が、ブラジルのインターネット市場を支配している。Anatelによると、2022年9月現在、各事業者のシェアはクラロが22.7%、テレフォニカ・ブラジルが15.0%、Oiが11.9%となっている。

固定ブロードバンド加入数及び加入率(2017-2021年)

2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
固定BB加入数(千) 28,908 31,233 32,907 36,345 41,505
固定BB加入率 13.9% 14.9% 15.5% 17.0% 19.4%

出所:ITU World Telecommunication/ICT Indicators Database

移動電話市場

ブラジルの移動体通信市場は、5年連続で加入数が減少していたが、2020年には再び増加に転じ、2021年12月末時点で加入数は2億1,966万に達し、回復基調を見せている。

移動体通信市場は、テレフォニカ・ブラジル、クラロ、TIMブラジルの大手3社で市場シェアをほぼ独占している。これ以外では、市場シェアが1%前後の小規模事業者が多数存在する。Anatelによると、2022年9月現在、大手3社の加入者シェアはテレフォニカ・ブラジルが37.6%、クラロが33.4%、TIMブラジルが26.6%となっている。

2021年11月に5G周波数オークションが行われ、5Gの商用サービス展開がようやく始まり、同年12月には、アルガー・テレコムとクラロが、本オークションで落札された周波数を使用し、最初の5Gサービスを開始し、これより少し遅れて2022年3月と7月にTIMブラジルとテレフォニカ・ブラジルが5Gサービスを開始している。

移動電話加入数及び加入率(2017-2021年)

2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
移動電話加入数(千) 221,269 209,410 202,009 205,835 219,661
移動電話加入率 106.1% 99.6% 95.4% 96.5% 102.5%

出所:ITU World Telecommunication/ICT Indicators Database

固定電話市場

ブラジルでは従来の固定電話網(PSTN)に加え、VoIPやFWAによる音声通話サービスが提供されているが、近年、移動体通信サービスが急成長したこともあり、固定電話の契約数は減少傾向にある。

ブラジルの固定電話市場は近年、大型買収・合併が繰り返され、現在ではOi、テレフォニカ・ブラジル、クラロの既存電気通信事業者3社で8割以上のシェアを占めている。

固定電話加入数及び加入率(2017-2021年)

2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
固定電話加入数(千) 40,376 38,312 33,713 30,654 28,883
固定電話加入率 19.4% 18.2% 15.9% 14.4% 13.5%

出所:ITU World Telecommunication/ICT Indicators Database

放送市場

地上放送

商業放送は、Rede Globo、Rede Record、SBT、TV Band、RedeTV!の5大ネットワークが直営局と系列局を通じて全国放送を実施している。公共放送は、公共放送機関EBC傘下のTVブラジルにより実施されており、ブラジル国土の約90%をカバーしている。同局の番組は地上テレビ、ケーブルテレビ、衛星放送等でも放送されている。

有料放送

Anatelによると、2021年9月末現在、有料放送の加入数数は1,444万である。衛星放送はこの数年の間に新規参入が相次ぎ、クラロ、スカイ・ブラジル、Oi、テレフォニカ・ブラジル、GVT、Nossa TV等数十社が放送免許を受けてDTHサービスを提供している。

ケーブルテレビは、光ファイバへの需要の高まりに押され、加入数は減少傾向にある。アルガー・テレコム等をはじめとする小規模事業者の中には、従来のケーブルテレビや衛星放送に基づいた有料放送事業から撤退する者も出ている。

重要政策動向

光ファイバ整備推進策

ブラジル政府は2021年9月、北部アマゾン地域の通信インフラ整備を目的とした、新たな「政令第10800号」を公布した。この「持続可能なアマゾン統合プログラム(Programa Amazonia Integrada Sustentavel:PAIS)」は、八つのプロジェクトが予定されており、ブラジル北部の59都市を接続し、約1,000万人の住民が恩恵を受けることになる。光ファイバ回線は、全長1万2,000kmに達し、環境負荷を低減するため、川底に敷設される。その第1弾となる「Norte Conectado」プログラムによる全長770kmの光ファイバ網「Infovia 00」の敷設が2022年1月末に完了し、パラー州とアマパ州の住民100万人にブロードバンド接続を提供している。

基礎データ集

国の基礎データ

政体
連邦共和制
面積
851万4,047㎢
人口
2億1,432万人
首都
ブラジリア
公用語
ポルトガル語

経済関連データ

通貨単位
1レアル(BRL)=26.81円(2022年9月末)
会計年度
1月から1年間
GDP
1兆6,089億8,146万USD(2021年)

出所:World Bank, World Development Indicators Database

法律

通信 1997年一般電気通信法、1996年最小限法、2014年インターネット憲法、2018年個人情報保護法
放送 1962年ブラジル通信法、2008年公共放送法、2011年有料テレビ法

監督機関

通信 通信省、電気通信庁
放送 通信省、電気通信庁