市場の動向
インターネット・ブロードバンド市場
世帯利用におけるインターネット接続方式はケーブルモデム接続が主流である。2019年現在の事業者別市場シェアは、ベル・カナダがトップとなっており、以下、ロジャース・コミュニケーションズ、ショウ・コミュニケーションズ、テラス、ビデオトロンと続く。
固定ブロードバンド加入数及び普及率(2014-2018年)

2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | |
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12,568 | 13,115 | 13,386 | 13,924 | 14,299 |
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35.2% | 36.4% | 36.8% | 37.9% | 38.6% |
出所:ITU World Telecommunication/ICT Indicators Database
移動電話市場
全国規模で事業を行う移動体通信事業者は3大事業者のベル・カナダ、テラス、ロジャース・コミュニケーションズである。LTEサービスについては、ロジャース・コミュニケーションズが2011年7月、ベル・カナダが2011年9月、テラスが2012年2月からそれぞれ提供を開始しているほか、地域事業者もMTS(現Bell MTS)が2012年9月、サスクテルが2013年1月にサービスを開始している。新規参入のビデオトロンは2014年9月にケベック州の主要4都市においてサービスを開始、同じく新規参入のエクスプロネット・コミュニケーションズも2018年11月にマニトバ州でサービスを開始した。CRTC調査によれば、2019年現在の全国におけるLTE人口カバレッジは約99%である。
5Gの実装に向けた実証実験も進んでおり、2016年にベル・カナダがフィンランドのインフラ・ベンダであるノキアと共同で国内初となる5Gネットワーク技術の実証実験に成功している。2018年4月には、ロジャース・コミュニケーションズがスウェーデンのインフラ・ベンダであるエリクソンと共同で今後数年かけて主要都市での試験を含む5G対応技術開発計画を発表している。2018年5月にも、フリーダム・モバイルがノキアと共同で3500MHz帯及び28GHz帯のテスト専用周波数を用いた5G技術試験を実施している。
移動電話加入数及び普及率(2014-2018年)

2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | |
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28,789 | 29,765 | 30,752 | 31,693 | 33,082 |
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80.7% | 82.6% | 84.5% | 86.3% | 89.2% |
出所:ITU World Telecommunication/ICT Indicators Database
固定電話市場
ベル・カナダを含むベル・カナダ・エンタープライズ(BCE)傘下の地域通信事業者、テラス、ロジャース・コミュニケーションズが全国レベルで固定通話サービスを展開しており、3大事業者とされる。そのほかにはマニトバ州を拠点とするBell MTS(旧MTS)、サスカチュワン州を拠点とするサスクテル、ケーブルテレビ事業者であるビデオトロンやコゲコも固定通話サービスを提供している。
固定電話加入数及び普及率(2014-2018年)

2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | |
---|---|---|---|---|---|
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16,404 | 15,612 | 15,156 | 14,469 | 13,900 |
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46.0% | 43.3% | 41.7% | 39.4% | 37.5% |
出所:ITU World Telecommunication/ICT Indicators Database
放送市場
地上放送
2017年現在、地上テレビ放送はCBCの27系統と商業放送の93系統のほか、宗教7系統と教育7系統で実施されており、そのうち全国放送は公共放送のCBCと商業放送のCTVが実施している。CBCは英語とフランス語の全国ネットワークを運用しているが、各ネットワークにはCBC直営局のほか、一部の商業放送事業者も加盟している。
このほか、フランス語圏のケベック州をサービス地域とするフランス語放送のTVA等に代表される地域放送事業者があるほか、どのネットワークにも属さない独立系商業放送事業者や州交付金で運営される州営放送事業者がある。
衛星放送
衛星放送は、ショウ・コミュニケーションズによるShaw DirectとBCEによるBell TVが、カナダのケーブルテレビ番組を中心に米国の番組を加えた内容でサービスを提供している。
ケーブルテレビ
2017年現在、国内のケーブルテレビ加入者数は約610万である。衛星放送の加入者数は約200万、IPTVの加入者数は約260万であるため、有料放送市場はケーブルテレビが圧倒的に優勢である。
重要政策動向
電気通信法、放送法、無線通信法の見直し
2018年6月、政府は法制度の近代化を目的とし、電気通信法、放送法、無線通信法の見直しを開始した。法律、ビジネス、学界から選ばれた審査委員会が設置され、2019年6月には、2018年9月に募集を開始したパブリックコメントの結果が公開された。その後、審査委員会による検討の結果、2020年1月に最終報告書が公開され、報告書には後述の四つのテーマに関連する97の具体的な提言が含まれている。四つのテーマは、①すべてのカナダ人が高度な情報通信網にアクセスする際の障壁軽減、②カナディアン・コンテンツ(Canadian content)の創造、制作、発見可能性、③デジタル消費者の権利向上、④通信分野の制度的枠組みの更新となっている。
ユニバーサル・サービス
ユニバーサル・サービスの提供範囲については、2011年5月に発表された「Telecom Regulatory Policy CRTC 2011-291」の下、音声サービスとダイヤル・アップ・インターネットだけがその対象となっていた。しかし、CRTCは2016年12月、ブロードバンド・インターネット接続も基本通信サービスに含めることを宣言したうえで、ブロードバンド基金を設立し、5年間で総額7億5,000万CADを投資することを発表した。同基金は、50Mbps/10Mbpsの固定ブロードバンド・インターネットに接続できない地域向けのもので、民間投資を補完する位置付けとなっている。2018年9月、CRTCはガバナンス、運営方法、アカウンタビリティ、申請プロジェクトの評価基準等のブロードバンド基金の詳細を発表した。CRTCは、同基金に採択されるプロジェクトの評価や選定、監督を担当し、補助金の徴収と採択されたプロジェクトへの配分は第三者機関であるCTCC(Canadian Telecom-munications Contribution Consortium Inc.)が管理する。2019年6月から、地域を限定して第一次申請受付を開始し、2019年11月には、カナダ全土に対象を広げた第二次申請受付を開始している。
デジタル国家戦略
政府は2014年4月、39種のイニシアチブを含む国家デジタル戦略である「デジタル・カナダ150」を発表した。同戦略は、ブロードバンド網整備(Connecting Canadians)、国民保護(Protecting Canadians)、デジタル経済(Economic Opportunities)、電子政府(Digital Government)、コンテンツ振興(Canadian Content)の五つの原則に従って構成され、カナダ人の98%以上が5Mbps相当のブロードバンドに接続可能となるほか、安全なオンライン取引、プライバシーの保護、サイバーいじめ(cyberbullying)の回避等を実現することが目指された。2015年6月には「デジタル・カナダ150 2.0」が発表され、これまでの成果の概説と上記目的を達成するための新たな取組みが提示された。
基礎データ集
国の基礎データ
- 政体
- 立憲君主制
- 面積
- 997万610㎢
- 人口
- 3,707万人
- 首都
- オタワ
- 公用語
- 英語、フランス語
経済関連データ
- 通貨単位
- 1カナダ・ドル(CAD)=81.49円(2019年9月末)
- 会計年度
- 4月から1年間
- GDP
- 1兆7,133億4,170万USD(2018年)
出所:World Bank, World Development Indicators Database
法律
通信 | 1993年電気通信法、1985年無線通信法 等 |
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放送 | 1991年放送法 |
監督機関
通信 | イノベーション・科学・経済開発省、カナダ・ラジオテレビ電気通信委員会 |
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放送 | イノベーション・科学・経済開発省、カナダ民族遺産省、カナダ・ラジオテレビ電気通信委員会 |