市場の動向
インターネット・ブロードバンド市場
ISEDは2022年5月、インターネット及び移動体通信サービスにおける高すぎる利用料金の是正とサービス向上のため、移動体通信とインターネットに関する新たな政策方針案を発表した。CRTCに対しては、インターネット卸売市場への参入と競争の強化、移動体通信における競争拡大、消費者の権利向上、ユニバーサル・アクセスのための新しいインフラストラクチャの高速化、消費者を支援するための規制構築を求め、2023年2月に指令として正式決定。世帯利用のインターネット接続方式はケーブルモデム接続が主流である。2021年現在、ケーブルモデム接続が全体の約48%を占めるも減少傾向、DSLも約21%で減少傾向の一方、FTTxは約24%と比率が高まってきている。CRTCは2016年12月、ブロードバンド・インターネット接続も基本通信サービスに含めることを宣言したうえで、ユニバーサル・ブロードバンド基金(Universal Broadband Fund:UBF)を設立し、5年間で総額7億5,000万CADを投資することを発表。
固定ブロードバンド加入数及び加入率(2018-2022年)

2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | |
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14,446 | 15,142 | 15,572 | 16,052 | 16,565 |
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39.0% | 40.4% | 41.1% | 42.1% | 43.1% |
出所:ITU World Telecommunication/ICT Indicators Database
移動電話市場
全国規模で事業を行う移動体通信事業者は3大事業者のベル・カナダ、テラス、ロジャース・コミュニケーションズ。2023年現在の市場シェアはロジャース・コミュニケーションズが約32%、テラスが約28%、ベル・カナダが約28%。LTEサービスについては、ロジャース・コミュニケーションズが2011年7月、ベル・カナダが2011年9月、テラスが2012年2月からそれぞれ提供を開始しているほか、地域事業者もMTS(現Bell MTS)が2012年9月、サスクテルが2013年1月にサービスを開始している。
商用5Gサービスについては、ロジャース・コミュニケーションズが2020年4月に、ベル・カナダとテラスが2020年6月に、ビデオトロンが2020年12月にそれぞれサービスを開始している。更に、ロジャース・コミュニケーションズはカナダ初の商用5G スタンドアロン(SA)サービスを2022年3月に、同初の3500MHz帯商用5Gサービスを2022年6月に開始。
移動電話加入数及び加入率(2018-2022年)

2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | |
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33,211 | 34,367 | 32,360 | 33,611 | 35,082 |
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89.7% | 91.6% | 85.4% | 88.1% | 91.2% |
出所:ITU World Telecommunication/ICT Indicators Database
固定電話市場
ベル・カナダを含むベル・カナダ・エンタープライズ(Bell Canada Enter-prises:BCE)傘下の地域通信事業者、テラス、ロジャース・コミュニケーションズが全国レベルで固定通話サービスを展開している。そのほかに、マニトバ州を拠点とするBell MTS(旧MTS)、サスカチュワン州を拠点とするサスクテル(SaskTel)、ケーブルテレビ事業者であるショウ・コミュニケーションズ(Shaw Communications)、ビデオトロン(Videotron)やコゲコ(Cogeco)も固定通話サービスを提供。
2016年7月時点でのロジャース・コミュニケーションズ等のケーブルテレビ事業者を含む競争的地域通信事業者(Competitive Local Exchange Carrier:CLEC)の数は75社。特に都市部でBCEやテラスを含む既存地域通信事業者(Incumbent Local Exchange Carrier:ILEC)から市場シェアを奪う形で拡大し増加傾向にあったが、2019年からは減少傾向。
固定電話加入数及び加入率(2018-2022年)

2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | |
---|---|---|---|---|---|
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13,842 | 13,596 | 13,340 | 11,783 | 11,312 |
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37.4% | 36.2% | 35.2% | 30.9% | 29.4% |
出所:ITU World Telecommunication/ICT Indicators Database
放送市場
「1991年放送法」において放送免許取得事業者に課される義務が規定されている。CRTCが、ラジオ、テレビ、放送配信サービス(ケーブルテレビ及び衛星放送が該当)、ニューメディア放送(VODサービス等が該当)の各サービスに対し個別規定を設け、免許条件やコンテンツ制作基準等を規定する。
「1991年放送法」は「カナダの放送システムの所有者及び管理者はカナダ国籍でなければならない」とも規定しており、これが外資規制の根拠となっている。直接投資は20%(間接投資を含めて46.7%)まで、間接投資は33.33%までとされている。所有規制についてはCRTCが決定しており、1企業が同時に所有できるメディア事業者の数はテレビ放送事業者、ラジオ放送事業者、新聞社のうち最大二つまでで、1社で英語圏あるいはフランス語圏の視聴者占有率の45%を超えてはならない。
重要政策動向
卸売提供制度
ISEDは2022年5月、インターネット及び移動体通信サービスにおける高すぎる利用料金の是正とサービス向上のため、移動体通信とインターネットに関する新たな政策方針案を発表した。CRTCに対しては、インターネット卸売市場への参入と競争の強化、移動体通信における競争拡大、消費者の権利向上、ユニバーサル・アクセスのための新しいインフラストラクチャの高速化、消費者をよりよく支援するためのよりよい規制の構築を目的とした規則の導入を求め、2023年2月にこれを指令として正式決定した。これを受けて2023年3月、CRTCは、卸売料金を即時10%引下げる決定を行い、卸売料金の再評価を行うための意見募集を行っている。
緊急通信
2017年6月に、通信事業者に対し次世代型緊急通信911「NG 911」を提供可能にするためにネットワーク整備を更新するよう指示している。通信事業者各社は、2020年6月末までに「NG 911」音声サービスの提供を開始し、同テキスト・メッセージング・サービスの提供を2020年12月末までに開始しなければならないとしていたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を受けた通信事業者各社のネットワーク整備の遅れを受け、「NG 911」音声サービスの提供開始期限を2022年3月1日まで延長し、同テキスト・メッセージング・サービスの提供については今後の整備状況を見て設定するという決定を2021年6月に下している10。しかし、その後2022年3月1日に、通信事業者各社に対して、「NG 911」音声サービスを提供可能とするためのネットワーク設備の更新を開始するよう指示するとともに、同日時点においては、未だ同サービスを利用することはできない旨を発表している。なお、「NG 911」音声サービスは2025年3月までに、国内のほぼ全域において提供開始されると公表している。
基礎データ集
国の基礎データ、経済関連データ
- 政体
- 立憲君主制
- 面積
- 997.5万㎢
- 人口
- 3,699万人(2021年)
- 首都
- オタワ
- 公用語
- 英語、フランス語
経済関連データ
- 通貨単位
- 1カナダ・ドル(CAD)=110.74円(2023年9月末)
- 会計年度
- 4月から1年間
- GDP
- 1兆9,906億USD(2021年)
出所:World Bank, World Development Indicators Database
法律
通信 | 1993年電気通信法、1985年無線通信法 等 |
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放送 | 1991年放送法 |
監督機関
通信 | イノベーション・科学・経済開発省、カナダ・ラジオテレビ電気通信委員会 |
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放送 | イノベーション・科学・経済開発省、カナダ民族遺産省、カナダ・ラジオテレビ電気通信委員会 |
電波 | イノベーション・科学・経済開発省、カナダ・ラジオテレビ電気通信委員会 |