市場の動向
インターネット・ブロードバンド市場
チリは南米でも固定ブロードバンドサービスが進んだ国の一つで、VTRとテレフォニカ・チリが市場を2分している。中小のISPも数十社存在し、代表的なものにクラロ・チリ、Grupo GTD、エンテル・チリ、Pacifico Cableがある。
移動体通信事業者(WOM)はFTTHサービスを始め、有料テレビ市場にも参入を計画している。高速インターネット接続サービスはVDSLやFTTx、HFC方式を使い、大都市圏で提供されている。
ADSLの加入者数は減少しているが、FTTxの加入者数は増加しており、2023年6月末現在、FTTxが69.0%、ケーブル・モデムが27.1%、ADSLが1.1%を占めている。モバイルブロードバンド加入者は約2,255万人いる。チリはスペースXの衛星ブロードバンドプロジェクト「スターリンク」の拠点として選ばれ、2021年7月から学校で利用可能になり、2022年9月には7,115人が加入している。
固定ブロードバンド加入数及び加入率(2018-2022年)

2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | |
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3,251 | 3,430 | 3,764 | 4,283 | 4,454 |
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17.4% | 18.0% | 19.5% | 22.0% | 22.7% |
出所:ITU World Telecommunication/ICT Indicators Database
移動電話市場
移動電話加入者数は2012年をピークに2017年までわずかな減少が続いたが、2021年に急増した。エンテルPCSが32.4%、モビスター・チリが26.9%、クラロ・チリが17.5%、WOMが21.3%の市場シェアを持つ。WOMは若年層をターゲットにし、競合他社より有利なプランや新しい端末を提供し、2016年に加入者数を倍増させた。エンテルPCSとモビスター・チリは加入者の流出が続き、苦戦している。
MVNO市場は2017年から縮小傾向にあり、2022年9月末の加入者数は約43万人と市場全体の1.6%を占めるに過ぎない。さらに2020年11月にブロードバンド事業者のPacifico Cable(ブランド名:Mundo Pacifico)がMVNO市場に参入した。
VTRやTelsurと同様に、Mundo Pacificoも既存の固定回線サービスを補完する目的でMVNOサービスを開始しており、低価格帯での競争に参入している。
2021年にはエンテル・チリ、モビスター・チリ、WOMが5Gサービスを開始し、チリでは初めての取り組みとなった。
移動電話加入数及び加入率(2018-2022年)

2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | |
---|---|---|---|---|---|
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25,179 | 25,052 | 25,068 | 26,572 | 26,415 |
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134.6% | 131.6% | 129.9% | 136.3% | 134.7% |
出所:ITU World Telecommunication/ICT Indicators Database
固定電話市場
移動体通信サービスの普及に伴い、固定電話(PSTN)離れが進んでいる。特に通信サービスの行き届かない地域では、移動体通信事業者が4G網を利用して固定電話の代替サービスを提供する動きが見られる。また、VoIPの普及や後発事業者によるVoIPサービスの提供も固定電話離れの要因となっている。固定回線網の敷設が困難な地域では、エンテル・チリが3.5GHz帯を使った固定無線アクセス(FWA)サービスを提供している。
市内電話事業者は数十社存在し、テレフォニカ・チリ、VTR、エンテル・チリの3社が市場を寡占している。2023年9月現在、市場シェアはテレフォニカ・チリが33.7%、VTRが21.3%、エンテル・チリが19.7%である。他にもクラロ・チリやTelsurなどがサービスを提供している。2021年9月にはアメリカ・モビルとリバティ・グローバルが各チリ事業を統合し、合弁会社を設立した。
固定電話加入数及び加入率(2018-2022年)

2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | |
---|---|---|---|---|---|
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2,997 | 2,750 | 2,568 | 2,511 | 2,217 |
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16.0% | 14.4% | 13.3% | 12.9% | 11.3% |
出所:ITU World Telecommunication/ICT Indicators Database
放送市場
地上放送
ラジオ: 商業放送局が約140局、国営放送のRadio Nacional de Chile(RNC)が4局、そして7つの大学放送局が存在する。
テレビ市場については、 7社が全国放送を行い、TVN、メガビジョン、チリビジョン、Channel 13の4局が最も視聴されており、それぞれ10%弱の視聴率を獲得している。TVNは政府から財政敵に独立しており、広告収入で運営資金の95%を賄っている。
衛星放送については、多様な地形により衛星放送の加入率が高く、2023年6月現在で約97万8,000人が加入している。有料放送サービスの30.7%を占める。テレフォニカ・マルチメディア、クラロ・チリ、ディレクTVチリ、TuVesなどがDTHサービスを提供し、テレフォニカ・チリが市場シェア21.3%を、ディレクTVが19.0%を獲得している。
有料放送
Subtelによると、2023年6月現在、有料放送サービス加入数は約319万で、加入率は15.9%である。ケーブルテレビの加入数は約221万で、有料放送サービス加入数の69.3%を占める。そのうちケーブルテレビ最大手のVTRが27.8%(約88万6,000件)、クラロ・チリが9.7%となっている。
重要政策動向
消費者保護政策
MTTは2020年8月に最低限度の品質保証を通信事業者に義務付けた法律(第21.046号)の技術的基準を定めた法律施行規則「決議第1251」を発表した。この決議では、「ブロードバンド」の定義として、モバイルでは5Mbps/1Mbps(下り/上り)以上、固定回線では25Mbps/5Mbps以上の接続を指すこととされた。
この基準値は導入開始から2年目まで適用され、その後毎年更新され、全国平均速度に基づいて10%ずつ引き上げる。また、広告表示・契約書記載の基準に関して、ピーク時には、プロバイダは固定回線では契約速度の95%、モバイルでは90%を保証しなければならず、オフピーク時には、98%(固定回線)、93%(モバイル)と設定された。更に、プロバイダは消費者が自分の通信速度を正確に測定するためのツールの提供も義務付けられた。同分野の監視は2022年11月に新たに設置された独立機関である「Organismo Tecnico Independiente(OTI)」が担当する。
デジタル・ディバイド解消
また、チリ政府はFOAを補完するプロジェクトとして「国家光ファイバ(Fibra Óptica Nacional:FON)プロジェクト」を策定した。全国に1万kmの光ファイバ網を展開するために860億CLPの補助金が割り当てられた。Subtelは2020年1月に全国を六つのブロックに分割して入札を実施。2020年3月、六つのうち五つのブロックの契約について英国投資会社Novatorの傘下であるWOM(「Word of Mouth」の略語、旧ネクステル・チリ(Nextel Chile))が落札し、残りの一つはモビスター・ペルー(Movistar Peru)が落札した。2022年1月には、アイセン州において運用が開始された。
2021年5月、「国家衛星システム」の開発計画が発表された。イーロン・マスク氏の宇宙開発ベンチャー企業であるスペースX(SpaceX)が実施するこのプロジェクトでは、2024年までに10基の小型人工衛星が打ち上げられる。人工衛星はチリで製造され、2022年8月には、人工衛星を監視する国立宇宙センターの建設に向けた入札を開始した。
基礎データ集
国の基礎データ、経済関連データ
- 政体
- 立憲共和制
- 面積
- 75万6,626㎢
- 人口
- 1,949万人(2021年)
- 首都
- サンティアゴ
- 公用語
- スペイン語
経済関連データ
- 通貨単位
- 1チリ・ペソ(CLP)=0.17円(2023年9月末)
- 会計年度
- 1月から1年間
- GDP
- 3,169億USD(2021年)
出所:World Bank, World Development Indicators Database
法律
通信 | 1982年電気通信法 等 |
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放送 | 1982年電気通信法 等 |
監督機関
通信 | 運輸通信省/通信次官官房 |
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放送 | 運輸通信省/通信次官官房、国家テレビ委員会 |
電波 | 運輸通信省/通信次官官房 |