世界情報通信事情 World Information and Communication Circumstances

Federal Republic of Germany ドイツ(最終更新:令和3年度)

市場の動向

インターネット・ブロードバンド市場

連邦ネットワーク庁(BNetzA)よれば、2020年の固定ブロードバンド加入者数は前年比3%増の3,610万である。ブロードバンド回線の主流はDSLで、2020年末現在の加入者数は2,540万。近年のHFC及びDOCSIS 3.1の積極的な導入によりサービスの多様化・高速化が進んだことで、ケーブル・ブロードバンド加入者数も増加しており、2020年末現在の加入者数は870万となっている。

主な提供事業者は、ドイツテレコム、ボーダフォン・ドイツ、1&1、テレフォニカ・ドイツである。これ以外に地域の小規模事業者としてテレコロンバス(PYUR)、ネットコロン、テレ2等がある。

固定ブロードバンド加入数及び加入率(2016-2020年)

2016年 2017年 2018年 2019年 2020年
固定BB加入数(千) 31,862 33,243 34,152 35,072 36,041
固定BB加入率 38.8% 40.2% 41.1% 42.0% 43.0%

出所:ITU World Telecommunication/ICT Indicators Database

移動電話市場

テレフォニカ・ドイツ、ボーダフォン・ドイツ、ドイツテレコムの3社が4割弱から3割弱の加入者数シェアを持ち、5Gサービスを提供中である。1&1は5G免許を持つがサービス開始が遅れている。

LTEは2020年1月までに全国世帯加入率が98%以上となった。5Gについては、ドイツテレコムが2025年までに人口カバレッジを99%とする計画を発表している。

MVNO市場には100社を超えるMVNOが参入しており、このうち大手事業者のサブブランドでない独立系MVNO事業者が8割を占めている。

移動電話加入数及び加入率(2016-2020年)

2016年 2017年 2018年 2019年 2020年
移動電話加入数(千) 103,470 109,700 107,500 107,200 107,500
移動電話加入率 125.9% 132.7% 129.3% 128.4% 128.3%

出所:ITU World Telecommunication/ICT Indicators Database

固定電話市場

BNetzAによると、2018年のブロードバンド回線を含む固定電話回線数は3,840万回線であった。

ドイツテレコムが指定的事業者であるが、ボーダフォン・ドイツ、ユニティメディアの2社がIP電話、ブロードバンド、移動体通信、ケーブルテレビ・サービスを併せたバンドル・サービスで新規加入者を伸ばしている。このほかに、テレコロンブス、テレフォニカ・ドイツ、テレ2等がサービスを提供している。

固定電話加入数及び加入率(2016-2020年)

2016年 2017年 2018年 2019年 2020年
固定電話加入数(千) 45,300 44,400 42,500 40,400 38,300
固定電話加入率 55.1% 53.7% 51.1% 48.4% 45.7%

出所:ITU World Telecommunication/ICT Indicators Database

放送市場

地上放送

公共放送の全国放送は、九つの州放送協会によって構成されるARDが1系統(第1テレビ)、ZDFが1系統の計2系統で実施している。商業放送は、RTLグループとプロジーベンザット1の2大メディア・グループが全国の都市圏でそれぞれ4~5チャンネルで放送している。これ以外に地域放送局が172局ある。

2016年5月から地上デジタル放送の次世代規格であるDVB-T2方式への移行が始まり、2021年9月現在、地上デジタル放送を視聴している世帯は、テレビ視聴世帯数3,850万世帯のうち6.7%である。

地上テレビ放送の視聴世帯数は極少数であることから、伝送路としての地上波は補完的な役割にとどまっており、衛星放送とケーブルテレビが主な基幹伝送路として使用されている。

有料放送

ケーブルテレビは、衛星放送と並び、ドイツで最も利用されているプラットフォームの一つである。2021年6月現在、ケーブルテレビの視聴世帯加入率は43.7%である。

ケーブルテレビ事業者には地域網から複数の州にまたがる広域網までを一手に運営する大手事業者であるボーダフォン・カーベル・ドイツトとユニティメディアの2社のほかに、大手事業者から受けた信号を加入者に小売りする小規模事業者が多数あり、更に小規模事業者が統合して成長した独立系の中規模事業者(テレコロンブス等)等がある。

重要政策動向

ギガビット社会

連邦交通デジタルインフラ省(BMVI)が2016年11月に「ギガビット社会」計画を発表し、2025年までに1Gbpsの超高速光ファイバ網の全国整備を完了するとしている。ギガビット網の全国整備は、次の四つのフェーズで実施される。

  • フェーズ1:2018年末までに全世帯で50Mbpsのブロードバンドが利用可能
  • フェーズ2:2019年末までに通信環境が不十分な産業エリアに光ファイバ網を整備
  • フェーズ3:2020年末までに周波数帯の確保を含めた5Gの全国展開に必要な環境を整備
  • フェーズ4:2025年末までに全国にギガビット網を構築

5G政策

BMVIは、2025年までにハイレベルの5G展開を完了させる目的で、周波数の開放、光ファイバ・バックホールの展開支援、製造業、交通、農業、電力、医療、エンタテイメント、スマートシティ分野のアプリケーションの開発コンペ等の実施を盛り込んだ「ドイツの5G戦略(5G Strategy for Germany)」を2017年7月に発表した。研究開発については、BMVIが5Gアプリケーション開発支援プログラム「5Gイノベーションプロブラム」を実施している。

AI政策

連邦政府は2018年11月、AI戦略を公表した。連邦政府はこの戦略によりドイツにおけるAIの研究・開発・応用において世界トップレベルへ引き上げたいとしている。

2020年12月、連邦政府はAI戦略の更新について閣議決定しており、AI専門家の教育・訓練と国際的に評価の高い研究成果の創出、AIエコシステムの構築と中小企業等のビジネス現場への開発技術の適用、ドイツ及び欧州レベルでの人間中心型AIの開発・普及に向けた規制枠組の構築・強化、市民社会における共有財としてのAIの活用に焦点を当てた施策が展開されている。

基礎データ集

国の基礎データ

政体
連邦共和制
面積
35万7,022㎢
人口
8,319万人
首都
ベルリン
公用語
ドイツ語

経済関連データ

通貨単位
1ユーロ(EUR)=129.86円(2021年9月末)
会計年度
1月から1年間
GDP
3兆8,060億USD(2020年)

出所:World Bank, World Development Indicators Database

法律

通信 2004年電気通信法、テレメディア法、新連邦データ保護法 等
放送 ドイツ連邦共和国基本法、州公共放送法、州商業放送法、放送とテレメディアに関する州間協定 等

監督機関

通信 連邦経済・気候保護省、連邦ネットワーク庁、連邦デジタル・交通省
放送 連邦ネットワーク庁、州の首相官房、州のメディア監督機関 等