世界情報通信事情 World Information and Communication Circumstances

Federal Republic of Germany ドイツ(最終更新:令和4年度)

市場の動向

インターネット・ブロードバンド市場

連邦ネットワーク庁の2021年次報告書によると、2021年末時点で、固定ブロードバンド加入数は3,690万である。ブロードバンド回線の主流はDSLで2,540万ある。FTTH/Bは260万、ケーブルは1,150万(うち、高速のHFCは880万)である。

固定ブロードバンド加入数及び加入率(2017-2021年)

2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
固定BB加入数(千) 33,232 34,152 35,191 36,215 36,881
固定BB加入率 40.2% 41.2% 42.3% 43.5% 44.2%

出所:ITU World Telecommunication/ICT Indicators Database

移動電話市場

2014年に業界3位のテレフォニカ・ドイツと4位のEプラスが合併したことで、ドイツテレコム、ボーダフォン、テレフォニカ・ドイツによる寡占化とこれら3事業者の市場競争が進んだ。2019年に5G用周波数(2GHz/3.6GHz帯)オークションが実施され、1&1ドリリッシュが新規参入事業者として5G周波数の割当てを受けたことにより、市場競争がさらに激しくなることが見込まれている。ドイツテレコムとボーダフォン・ドイツは2019年に、テレフォニカ・ドイツは2020年に、それぞれ5Gサービスを開始した。

3大事業者の事業戦略を見ると、固定と移動体通信のバンドル化が進んでいる。例えば、ドイツテレコムはバンドル・サービスの提供に力を入れ、「Magenta」という共通のブランド名を冠することで顧客の認知度を高めている。

移動電話加入数及び加入率(2017-2021年)

2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
移動電話加入数(千) 109,700 107,500 107,200 107,400 106,400
移動電話加入率 132.8% 129.7% 128.9% 128.9% 127.6%

出所:ITU World Telecommunication/ICT Indicators Database

固定電話市場

主要事業者はドイツテレコムで、その他、ボーダフォン・ドイツがある。

固定電話加入数及び加入率(2017-2021年)

2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
固定電話加入数(千) 44,400 42,500 40,400 38,400 38,600
固定電話加入率 53.7% 51.3% 48.6% 46.1% 46.3%

出所:ITU World Telecommunication/ICT Indicators Database

放送市場

地上放送

公共放送の全国放送は、九つの州放送協会によって構成されるドイツ公共放送連盟(ARD)による1系統(第1テレビ)と、第2ドイツ・テレビジョン協会(ZDF)による1系統の、計2系統で実施している。これ加えてARTE DeutschlandとARTE Franceが共同出資しているARTEがそれぞれの国で放送を行っている。

商業放送は、RTLグループとプロジーベンザット1メディアの2大メディアグループが全国の都市圏でそれぞれ4~5チャンネルで放送している。これ以外に地域放送局が約170局ある。地上テレビ放送の視聴世帯数は極少数であり、衛星放送とケーブルテレビが主な基幹伝送路として使用されている。

衛星放送

ほとんどの衛星放送サービスに、ルクセンブルクの衛星運用事業者SESアストラの衛星が使用されている。公共放送のARDとZDF、商業放送大手のRTLグループとプロジーベンザットアインス等が無料放送を行っている。有料プラットフォーム事業者には、英国スカイの子会社スカイ・ドイチュラント(Sky Deutschland)とSESアストラのHDプラス(HD+)がある。2021年6月現在、衛星放送の視聴世帯普及率は約4割である。

重要政策動向

ギガビット社会

連邦交通デジタルインフラ省(BMVI、当時)が2016年11月に「ギガビット社会」計画を発表し、2025年までに1Gbpsの超高速光ファイバ網の全国整備を完了するとした。ギガビット網の全国整備は4段階で実施される。

  • 第1段階:2018年末までに全世帯で50Mbpsのブロードバンドが利用可能
  • 第2段階:2019年末までに通信環境が不十分な産業エリアに光ファイバ網を整備
  • 第3段階:2020年末までに周波数帯の確保を含めた5Gの全国展開に必要な環境を整備
  • 第4段階:2025年末までに全国にギガビット網を構築

これに先立ち2017年1月には「DigiNetz法」が成立した。DigiNetz法は、超高速ブロードバンド網の展開にかかるコスト削減を目的とする欧州の「コスト削減指令(2014/61/EU)」を国内法へ置き換えたもので、光ファイバや5Gの展開に関して既存の公共インフラ(電気通信、道路、鉄道、水道、電力、ガス)の活用・共有化を推進することを意図したものである。

5G

BMVI(当時)が2016年9月に発表した「5G Initiative for Germany」では、5G早期導入を迅速かつ成功裏に進めるために必要な五つのポイントを挙げている。

  • 周波数の確保(2018年までに5Gの初期商用展開に向けて周波数帯を確定する)
  • 5G研究開発支援(公的資金の投入や研究開発活動の調整を支援する)
  • BMVI(当時)主導による5G推進フォーラムの設立
  • 5Gアプリケーションの先行導入(5Gを実現するモデル都市を特定し、連邦政府が200万EURを出資する)
  • 5Gの早期商用化の実現(遅くとも2025年までにすべての幹線道路及び鉄道路線、20以上の大都市に5Gサービスを展開する)

5G用周波数オークションは2019年3月から6月にかけて実施され、2GHz帯及び3.6GHz帯が新規参入を含む4事業者に割り当てられた。また、3.7GHz帯(3.7-3.8GHz)はローカル5G用に割り当てることとし、BNetzAは免許申請の受付を2019年11月より開始した。2022年9月現在、249件の申請があり、243件の免許人に付与している。加えて、26GHz帯(24.25-27.5GHz)もローカル5Gに限らず、技術中立で2021年1月から免許申請受付し、2022年9月現在14件の申請があり14件の免許人に付与している。

基礎データ集

国の基礎データ

政体
連邦共和制
面積
35万7,022㎢
人口
8,341万人
首都
ベルリン
公用語
ドイツ語

経済関連データ

通貨単位
1ユーロ(EUR)=142.32円(2022年9月末)
会計年度
1月から1年間
GDP
4兆2,599億3,491万USD(2021年)

出所:World Bank, World Development Indicators Database

法律

通信 2004年電気通信法、テレメディア法、新連邦データ保護法 等
放送 ドイツ連邦共和国基本法、州公共放送法、州商業放送法、放送とテレメディアに関する州間協定等

監督機関

通信 連邦経済・気候保護省、連邦ネットワーク庁、連邦デジタル・交通省
放送 連邦ネットワーク庁、州の首相官房、州のメディア監督機関 等