世界情報通信事情 World Information and Communication Circumstances

Republic of Korea 韓国(最終更新:令和5年度)

市場の動向

インターネット・ブロードバンド市場

1995年以降、韓国では政府主導で他国に先駆けてxDSLとケーブルモデムによるブロードバンド基盤が拡充された。現在はギガビット級高速ブロードバンドのサービス競争が進展している。KTとSKブロードバンドは2018年末から10Gbps級ブロードバンドの商用サービスを提供している。2023年9月末現在の固定網ブロードバンド加入総数は約2,398万で、加入数による市場シェアはKT、SKブロードバンド(SKテレコムの再販売含む)、LG U+の順であり、早くから市場競争が進展している。

固定ブロードバンド加入数及び加入率(2018-2022年)

2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
固定BB加入数(千) 21,286 21,762 22,327 22,944 23,537
固定BB加入率 41.2% 42.0% 43.1% 44.3% 45.4%

出所:ITU World Telecommunication/ICT Indicators Database

移動電話市場

移動体通信市場には、SKテレコム、KT、LG U+の3事業者が存在する。中長期的に最大手のSKテレコムのシェアが下がってきている。

世界に先駆けて開始した5Gの加入者数は、2022年末時点で国内人口の5割以上を占める。BtoB分野5G市場拡大のため、2021年からローカル5Gに当たる5G特化網制度が導入された。2022年末現在、計18機関が5G特化網周波数の割当又は指定を受けている。国内での5G特化網の通称は「イウム(e-UM)5G」である。

移動電話加入数及び加入率(2018-2022年)

2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
移動電話加入数(千) 66,356 68,893 70,514 72,855 76,992
移動電話加入率 128.4% 133.0% 136.0% 140.6% 148.6%

出所:ITU World Telecommunication/ICT Indicators Database

固定電話市場

国際通信が1991年、長距離通信が1996年、市内通信が1999年に自由化されているが、依然として旧国営事業者KTのシェアが大きい。市内通信市場には、KT、SKブロードバンド、LG U+の3社が存在する。各社の加入者規模は次の表のとおりで、2022年末時点の市内電話(PSTN)加入総数は約1,162万人である。2003年以降に番号ポータビリティが導入されてからは、KTが徐々にではあるが、加入数シェアを落としている。VoIP市場には9社が参入しており、2022年末時点の加入数は1,116万人。加入数による事業者の規模は、LG U+、KT、SKブロードバンド、KCTの順である。

国際電話市場では、KT、SKブロードバンド、LG U+、世宗テレコム(Sejong Telecom)、SK Telinkをはじめとする多数の事業者が価格競争を展開している。

固定電話加入数及び加入率(2018-2022年)

2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
固定電話加入数(千) 25,907 24,727 23,858 23,213 22,810
固定電話加入率 50.1% 47.7% 46.0% 44.8% 44.0%

出所:ITU World Telecommunication/ICT Indicators Database

放送市場

地上放送

地上テレビ放送事業者数は、地域民放を含めて30社である。このうち、公共放送についてはKBSが2系統、EBSが1系統の全国放送を行っている。また、公営放送としてMBCが1系統の全国放送を行っている。商業放送では、首都でサービスを提供している地域放送事業者のSBSが、地方の商業放送事業者とネットワークを結成して全国放送を行っている。

有料放送

総合通信事業者KTの子会社であるKTスカイライフ(KT Skylife)が2002年3月から「スカイライフ」のサービス名でデジタル衛星放送を提供している。2023年9月末時点での衛星放送サービス加入世帯数は353万で、このうち4K放送加入世帯数は178万である。2020年10月にMVNOサービスを開始した。また、2021年に大手ケーブル放送事業者現代HCNの買収を完了した。

OTT

グローバルOTTに対抗するため国内OTTの再編とリニューアルが進んでいる。国内OTTの2強とされるのが「wavve」と「Tving」である。SKテレコムのサービス「オクスス」と地上放送事業者3社の「POOQ」が統合され、国内最大のOTTサービスwavveとして2019年9月にサービスを開始した。メディア・コンテンツ最大手CJ ENMは自社のOTTサービスTvingを2020年10月に分社した。2022年12月にTvingがKTのOTTサービス「Seezn」を吸収合併し、国内勢ではwavveを規模で上回る最大手OTTとなった。

重要政策動向

大韓民国デジタル戦略

尹錫悦政権のデジタル国家基本戦略として、2022年9月に「大韓民国デジタル戦略(以下、デジタル戦略)」が発表された。2027年までに世界でAI三大強国、デジタル競争力3位、デジタル基盤1位を目指す。デジタル戦略は次の五つの推進戦略と19の細部課題に分けて進められる。

  • 世界最高のデジタル力
  • 拡張されるデジタル経済
  • 摂するデジタル社会
  • ともに歩むデジタル・プラットフォーム政府
  • デジタル文化革新
  • 重点強化分野として2023年からAI、AI半導体、5G/6G、量子技術、拡張仮想世界(メタバース)、サイバーセキュリティの6分野の研究開発に集中投資する。

    相互繁栄のデジタル社会のための価値観と原則に関する憲章

    2023年9月、政府のデジタルビジョンを具現化した「相互繁栄のデジタル社会のための価値観と原則に関する憲章(通称、デジタル権利章典)」を韓国におけるデジタル秩序のマニフェストとして発表した。本憲章では、世界でデジタル化が進む中で、韓国国家レベルの基準と原則を成文化するとともに、国際社会を導くための普遍的なデジタル秩序の方向性を概説する。文書の背景や目的を述べた前文と、デジタル社会の形成に向けた行動原則を定義する本文の計6章28条で構成されている。世界的に共有される価値観を反映するとともに、韓国特有のデジタルイノベーションをめぐる経験や哲学を盛り込んでいる。また人工知能(AI)を中心とした議論に留まらず、読み書き能力や格差への対応など、幅広いデジタル問題を含む。さらに、国際的な連帯と協力を通じた人類の福祉の促進など、際立った原則と権利を規定することで、デジタルイノベーションの役割を強調している。

    基礎データ集

    国の基礎データ

    政体
    民主共和国
    面積
    10万431㎢
    人口
    5,156万人(2023年)
    首都
    ソウル
    公用語
    韓国語

    経済関連データ

    通貨単位
    1ウォン(KRW)=0.11円(2023年9月末)
    会計年度
    1月から1年間
    GDP
    1兆6,739億1,647万USDドル(2022年)

    出所:World Bank, World Development Indicators Database

    法律

    通信 電気通信事業法 等
    放送 放送法

    監督機関

    通信 科学技術情報通信部、放送通信委員会
    放送 科学技術情報通信部、放送通信委員会、文化体育観光部
    電波 科学技術情報通信部、放送通信委員会