AI政策の転換:安全重視から開発重視へ
米国では従来、安全で信頼できる、責任あるAIの開発や利用を推進することを主眼としてさまざまな取組みを行っていたが、2025年1月に発足したトランプ政権は、その方針を転換し、開発を重視するスタンスへと舵を切った。トランプ大統領は同月、イノベーションを阻害する要因を取り除くことで米国のAI優位性を維持・強化する「米国のAIにおけるリーダーシップの障壁除去」に関する大統領命令に署名した。この命令の下、トランプ政権はその目的に合致しない既存政策の見直しを進めているほか、2025年7月には、米国のAI優位性を維持・強化する「米国AI行動計画」を公表した。
AI優位性を維持・強化するための主な取組み
トランプ政権は、AI競争の勝利に向けて、AIエコシステム全体を底上げ、強化する取組みを進めており、同盟国やパートナー国との連携を通じてサプライチェーン多様化も進めている。具体的には、①AIイノベーションの加速(規制緩和、労働力育成や人材開発、科学データ開発、AI評価システム構築、政府でのAI利用加速等)、②米国AIインフラの構築(データセンター/半導体製造施設/エネルギーインフラの合理的な許認可制度の創設、グリッド開発、重要インフラサイバーセキュリティの強化等)、③米国AIシステムの輸出促進(米国のハードウェア、モデル、ソフトウェア、アプリケーション、標準を含むフルスタックのAIシステムを輸出パッケージとして開発、フロンティアAIモデルの国家安全保障リスク評価システムの構築等)、といったさまざまな施策に取り組んでいる。米国は、これらAIシステムを利用・搭載する高度製造や6Gシステム、自動運転車やドローン、ロボットといったインフラ/ハードウェアでも世界覇権を目指している。
全国統一的な国家AI政策枠組みの確立
トランプ大統領は2025年12月、州ごとに異なる法律によって生じる一貫性のない高コストなコンプライアンス体制から米国のAIイノベーションを保護する大統領命令に署名した。これは、AI規制のパッチワーク化を防ぐことが目的で、イノベーションを阻害する州のAI法に優先する国家AI立法枠組みを構築するため、連邦政府の政策と対立する規制を禁止する措置を講じるよう商務省や司法省等に指示している。さらに、ホワイトハウスは2026年3月、AIの安全性とセキュリティに関する統一的な政策を確立するための立法枠組みを公表し、議会に対して、AIへの規制を最小限に抑え、州が独自のAI規制を制定することを阻止するよう求めた。