「AI+」に関連した促進政策
中国では、生成AIの利用が急速に拡大している。2025年末時点における生成AIユーザ数は、前年比141.7%増の6億200万に達した。また、1日当たりのトークン呼び出し量は、2024年初の1,000億から2026年3月には140兆へと増加し、約2年間で1,000倍超に拡大している。AI関連企業数も6,000社を超えており、計算力の大幅な増強と相まって、AIの社会・産業への浸透が急速に進展している。
こうした動きの背景には、政府による「AI+」と呼ばれる利活用促進政策がある。「AI+」とは、各産業・分野へのAI導入を指す概念であり、2024年の政府活動報告において初めて明示された。さらに2025年8月には、国務院が「『AI+』行動の深化実施に関する意見」を公表し、科学技術、製造業、消費、民生等の幅広い分野におけるAI活用を加速させる方針を示した。
これを受け、各分野において個別政策の具体化が進んでいる。例えば、国家衛生健康委員会による「AI+医療衛生」の応用促進、中国民用航空局による「AI+民間航空」分野の発展推進等、分野別の実装を後押しする施策が相次いで打ち出されている。
今後5年間の方針
2026年から開始される第15次5か年計画(2026~2030年)に向けて、2025年10月には中国共産党中央委員会による「国民経済と社会発展の第15次5か年計画」に関する建議が採択された。同建議では、AIをはじめとするデジタル技術の革新加速を掲げるとともに、計算力、アルゴリズム、データといった基盤要素について、高効率な供給体制を構築・強化する方針が明確に打ち出されている。加えて、「AI+」の全面的な推進を通じて、各分野の高度化及び高度融合を図る方針が示された。
悪用による影響を抑制するための取組み
一方、AIの急速な普及に伴い、悪用リスクへの対応も強化されている。例えば北京市は2026年3月、AIの健全な発展を目的として、1か月間にわたるAI濫用是正キャンペーンを実施した。同キャンペーンでは、有害情報の拡散、なりすましや権利侵害、時事・災害情報の偽造といった行為を重点的に取り締まっている。また、AI生成コンテンツに付与された電子透かしの除去ツールの流通規制や、プラットフォーム事業者に対する識別・追跡・迅速対応体制の強化等、技術的・制度的な対応の整備も進められている。
さらに、国家インターネット情報弁公室は、擬人化AIサービスを対象とした新たな規制案の策定を進める等、規制枠組みの高度化にも着手している。
このように、中国政府はAIの利活用を積極的に推進する一方で、社会的リスクの顕在化を抑制するための規制にも注力しており、促進とリスク管理のバランスを重視した政策運営が特徴といえる。