昭和60年版 通信白書

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1 予算・財政投融資

(1)予 算

 高度情報社会形成の中核的役割を担う電気通信事業は,新しい電気通信秩序の下で,現在新たな発展期を迎え,極めて高い発展の可能性と同時に,需要動向や技術動向をはじめとする様々の流動的要素を有している。
 そのため,国としては,民間の活力が最もよく発揮され,自由で公正な競争が全体としての調和を保ちつつ展開されるよう,通信高度化への展望を先行的に調査研究し,その結果を事業者の依るべき指針として明らかにすることが必要となる。
 こうした観点から,60年度における電気通信関連予算は,ニューメディア・先端技術の開発・振興を中心に,宇宙通信政策の推進,放送行政の推進,電波資源の開発と利用秩序の維持,国際協力の推進を重要施策事項としている。
 (ニューメディア・先端技術の開発・振興)
 ニューメディア・先端技術の開発・振興に関しては,[1]地域における情報通信の高度化の促進,[2]ニューメディア技術の開発調査,[3]データ通信の高度化を図るための開発調査,[4]通信行政に関する長期的展望策定のための調査研究の各施策について前年度に引き続いて措置した。
 また,新たに[5]電気通信事業の振興を図るため,具体的には,新規参入促進のためのネットワーク総合化技術,競争下における電気通信料金の在り方及び国際電気通信分野における競争市場育成に関する調査研究を実施することとしている。
 (宇宙通信政策の推進)
 宇宙通信政策の推進に関しては,[1]宇宙通信政策推進のための調査研究,[2]航空・海上衛星技術の研究開発,[3]衛星用マルチビームアンテナの研究開発,[4]宇宙電波による高精度測位技術の研究開発の各施策について措置している。
 このうち,宇宙通信政策推進のための調査研究については,具体的には,宇宙通信の長期ビジョン,放送衛星利用の高度化・多様化,衛星利用パイロット計画及び衛星通信の高度利用システムに関する調査研究を実施することとしている。
 (放送行政の推進)
 放送行政の推進に関しては,[1]国際放送の充実,[2]テレビジョン放送の難視聴対策の推進について前年度に引き続き措置したほか,新たに[3]ニューメディア時代における放送に関する調査研究を行うこととしている。本調査研究は,ニューメディア時代における放送の役割について長期展望を行うとともに,国民の多様化する要望にこたえ得る放送の在り方について検討を行うものである。
 (電波資源の開発と利用秩序の維持)
 電波資源の開発と利用秩序の維持に関しては,周波数資源の開発及び重要無線通信妨害対策用監視施設の整備強化について措置した。
 (国際協力の推進)
 国際協力の推進に関しては,国際協力体制の整備を図るとともに,開発途上国に対する経済・社会援助協力を推進することとしている。具体的には,海外通信関係技術協力基盤の強化及び開発途上国向け電気通信技術システムの調査研究を行うこととしている。

(2)財政投融資

 (民間投資意欲の適切な誘導)
 電気通信関連事業は,一般にその装置性から多大な先行的設備投資を要し,さらに,その技術先端性から事業化に当たって,技術リスク,市場リスクが大きい。また,その公共性から安全性・信頼性対策にも資金を要するものである。
 このような資金面の課題を有する電気通信関連事業分野において,競争市場を速やかに実現するとともに,ニューメディアの育成振興を図るためには,民間の投資意欲を適切かつ計画的に誘導する施策を国としても講ずる必要がある。
 また,我が国の国際的地位向上に伴って,その地位にふさわしい国際的責任の遂行が要請されており,電気通信分野においても,経済摩擦問題をめぐる先進諸国との関係調整が重要性を増している。
 そこで,60年度における電気通信関連財政投融資は,電気通信基盤整備,情報処理・通信システム化促進及び電気通信分野の国際協調の推進の各事項について措置している。その総額は日本開発銀行(情報化促進枠等),北海道東北開発公庫,日本輸出入銀行における予算額3,740億円の内数として認められており,前年度に比べ,融資対象の拡大,融資条件の改善が図られている。
 なお,このほかに,民間における基盤技術に関する試験研究を促進することを目的とした基盤技術研究促進センターに対する日本開発銀行の30億円(産業技術振興)の出資が措置されている。
 (電気通信基盤整備の推進)
 電気通信基盤整備に関しては,[1]第一種電気通信事業用通信システム(最優遇特利),[2]第二種電気通信事業用通信システム(オンライン情報処理システムを除く。),(特別金利,一部基準金利),[3]放送型CATVシステム(特別金利),[4]衛星通信・衛星放送施設等整備(最優遇特利,一部基準金利)が融資対象となっている。
 [1],[2]及び[3]については,伝送路設備,交換設備,中継設備,電源設備のほか,土地建物等の取得に係る資金が融資の対象となる。
 また,[4]については,i)CS-3を利用して衛星通信システムを設定する者に対しては,CS-3の負担金,地球局設備及び土地建物等の取得に係る資金,ii)通信・放送衛星機構に対しては,衛星管制施設の整備に係る資金,iii)衛星放送受信システムのリース事業を行う者に対しては,リースに供される衛星放送受信システムの取得に係る資金が融資の対象となる。
 (情報処理・通信システム化促進)
 情報処理・通信システム化促進に関しては,[1]いわゆるVAN及び情報処理型CATV(特別金利,一部基準金利),[2]ビデオテックス事業関連システム(特別金利),[3]地域振興情報処理・通信システム(特別金利)を構築する者が,電子計算機,周辺端末機器,通信制御装置,建物等を取得する場合,その資金が融資の対象となる。
 (電気通信分野の国際協調の推進)
 外国通信機器輸入の促進を通じ,我が国の電気通信の高度化及び電気通信分野における経済摩擦解消を図るため,通信機器に関する日本輸出入銀行の製品輸入金融の金利引下げ措置がとられ,通信衛星の輸入に関し同行の長期低利融資の適用が決定された。

 

 

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