昭和60年版 通信白書

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1 伝送・交換技術

 伝送・交換技術は,通信の高度化を図るかなめとなり,通信網の中枢的役割を果たすものである。
 伝送技術については,これまで低コスト,高品質で信頼性の高い伝送路網を構成することを主な目的として,技術開発が進められてきた。
 有線系では同軸ケーブルから光ファイバケーブルヘ,無線系では地上マイクロウェーブ回線から衛星回線へと,新しい伝送媒体がそれぞれ開拓され,また,これらの特徴を生かした伝送方式の研究により,通信容量の拡大,通信品質の向上が図られている。
 交換技術については,ネットワーク機能の高度化・多様化に向けて,技術開発が行われている。
 現在では,アナログ交換機に代わり,ディジタル交換機が全国に徐々に導入され,ディジタル伝送路との組合せにょり,通信品質の向上及び網全体の経済化が図られている。また,映像等の広帯域な信号を交換するための広帯域交換機や,音声を蓄積し,ボイスメール等を可能にする音声蓄積交換機等の技術開発も進められている。
 (低損失,広帯域な光ファイバケーブル)
 光ファイバケーブルによる光通信の実現性が高まったのは1970年であり,それ以降,伝送損失を少なくする努力が各国で続けられている。我が国では,昭和51年に,電電公社において波長1.2μmで損失が0.47dB/kmの光ファイバが開発され,現在では,波長1.55μmで0.2dB/kmという低損失な光ファイバケーブルが試作されている。
 光ファイバケーブルの特徴をメタリックケーブルと比較すると,[1]同軸ケーブルと同等あるいはそれ以上の容量の伝送が可能である,[2]直径が細いので多心ケーブルを細径で実現できる,[3]低損失であるため中継距離が長くできる,[4]漏話がほとんどない,[5]軽量で可とう性に優れている,[6]送電線等からの外部電磁誘導を受けない,[7]化学的変化による腐食に強い,[8]資源問題が少ない,などが挙げられる。
 電電公社における「日本縦貫光ファイバケーブル」(旭川〜鹿児島)の運用が60年2月に開始され,全国ディジタル網構築の基盤形成ができた(第3-2-2表参照)。
 光ファイバケーブルには,前述のような特徴がある反面,製造,切断,接続に高度な技術が要求されており,これらを容易にする研究開発が進められている。59年度においては,従来の約10倍の高速製造技術及びパーソナル・コンピュータの指令による自動接続技術が開発され,製造,接続の作業に大幅な経済化が図られた。
 光ファイバケーブル伝送方式については,更に大容量かつ長中継間隔の伝送を可能とする研究開発が進められている。1.6Gb/sの信号を伝送する方式が試作されており,また,INSモデル実験では,複数の信号をそれぞれ別の波長の光にのせて,1本の光ファイバ中を伝送させる波長分割多重伝送方式の技術確認が行われており,これが実用化されると,64kb系と広帯域系の両サービスを1本の光ファイバで提供することが可能になるなど,一層の経済化が期待されている。
 (衛星通信技術の進展)
 通信需要の増大,多様化及び通信衛星の大型化を背景として,衛星通信の高度化のために必要なマルチビーム衛星通信技術の開発が進められている。
 マルチビーム衛星通信技術は,大型の衛星搭載アンテナを用いて地上での受信電力を大きくする技術であり,伝送容量の増大,地球局アンテナの小型化等が可能となることから,経済性の向上が期待できるとともに,限られた資源である軌道及び周波数を有効に利用することができる。地球局の小型化・経済化は,特に移動体通信においては必須の条件であり,船舶通信を中心に小型アンテナ等の開発が進められている。
 さらに将来は,従来型の通信衛星に比して量的・質的に飛躍的に拡大された通信を可能とする静止プラットフォームの開発が必要と考えられている。この静止プラットフォームの実現には大型アンテナ技術,姿勢制御技術,軌道上における組立て技術等種々の先端的な技術が必要とされている。我が国においても,今後,宇宙基地を利用するなどしてこれらの研究開発を行う必要がある。

第3-2-2表 光ファイバケーブル方式と同軸ケーブル方式の比較例

光ファイバーケーブルの接続

 

 

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