I 調査の目的等
- [調査の目的]
河川敷地の管理・利活用状況等を調査し、関係行政の改善に資する。
- [調査対象機関]
関東地方整備局
利根川上流工事事務所(利根川)、利根川下流工事事務所(利根川)
江戸川工事事務所(江戸川)、荒川上流工事事務所(荒川)
- [実地調査時期]
平成14年12月〜平成15年3月
- [担当部局]
関東管区行政評価局
千葉行政評価事務所
- [調査結果の措置]
平成15年3月31日、関東管区行政評価局長から関東地方整備局長に改善通知した。
II 調査結果の概要
1 河川整備計画の策定の推進
関東地方整備局管内の1級河川8水系中7水系(利根川、荒川等)について、河川整備計画は未策定であり、策定されている河川は、多摩川のみ。
改善意見
河川整備計画を策定するための作業スケジュールを設定するなどにより、速やかに河川整備計画を策定すること。
2 不法係留船対策の推進
不法係留船が多数存在する等、計画的な不法係留船対策を講ずる必要のある河川について、河川の水面の利用に関する協議会が設置されていない。
工事事務所別 |
平成14年度調査不法係留船隻数 |
協議会の設置状況等 |
利根川上流 |
212隻 |
協議会未設置 |
利根川下流 |
236隻 |
霞ケ浦 |
515隻 |
協議会未設置 |
参考 |
江戸川 |
470隻
(平成11年度
1295隻 ) |
(江戸川放水路) 平成10年1月30日協議会設置、平成13年3月8日水面利用計画策定
(中川) 平成12年5月30日協議会設置、水面利用計画検討中 |
京浜 |
525隻
(平成11年度 589隻) |
(多摩川) 平成3年10月28日協議会設置、平成4年6月1日水面利用計画策定 |
改善意見
不法係留船の数が多い等の理由により、早急に不法係留船対策を講ずる必要のある河川について、河川の水面の利用に関する協議会を設置するなど、不法係留船対策を推進すること。
3 土地の不法占用に対する指導の徹底
- 是正措置が十分でないまま、長期にわたり改善措置がとられていない不法占用の事例がみられる。
- 指導内容、指導経過、是正させられなかった理由、今後の指導方針・予定等を記載していないため、着実な是正改善を図る上で十分でないものがみられる。
(河川敷を駐車場等として不法占用)

改善意見
不法占用の実態把握を行い不法占用者に対し、必要に応じ監督処分を実施すること。また、不法占用者に対する指導経過を記録し、工事事務所として組織的に対応し不法占用の解消に努めること。
4 不法投棄に対する指導の徹底
- 是正改善指導が十分でないため、長期にわたり改善措置がとられていない不法投棄の事例がみられる。
- 占用許可を受けている者に厳正な管理を行うよう注意喚起するとともに、一層適切な河川巡視を行う必要があると認められる事例がみられる。
(河川敷に放置された廃建設重機、廃プレジャーボート)

改善意見
廃棄自動車等について、不法行為対応フロー図に基づき除去するよう一層の指導を行うこと。また、環境汚染のおそれのあるもの等放置できない不法投棄物は、警告看板に撤去期限を明示すること。
5 占用許可事務の適正化
占用許可更新手続が長期間未実施となっているもの、更新申請手続がなされないため過去に遡って土地の占用許可を与えているものがみられる。
○長期間にわたり更新手続が行われていない(3工事事務所、22件)
6カ月〜4年 |
5年〜9年 |
10年以上 |
10件 |
7件 |
5件 |
○更新が行われず、遡って更新許可されている(4工事事務所、11件)
1年〜2年 |
2年〜3年 |
4年以上 |
5件 |
5件 |
1件 |
改善意見
関東地方整備局は、占用許可更新手続の適正励行を図らせるよう、工事事務所を指導する必要がある。
6 占用許可標識等の見直し
(1) 面的占用に係るもの
標識の未設置、標識の記載内容の不備、設置場所が適切でないなど、現地に看板を設置し情報提供を行うことの意義の低い状況がみられる。
(許可年月日、許可番号、許可期間、事務所名等の記載がない)

(左右両岸の許可を1ヶ所の標識で標示しているもの)

改善意見
採草地・農耕地等の面的占用に係る占用許可情報は、ホームページに掲載するなど、現地における占用許可標識は、許可受者の任意設置とすることについて検討すること。
(2) 許可工作物に係るもの
河川管理施設(国が設置するもの)については、名称及び位置名のほか、管理者連絡先及び工作物の操作員の電話番号が記載された「管理標示板」を設置しているが、許可工作物(許可を受けて設置するもの)については、管理者等の「電話番号」を記載することとされていない。
(操作員等の電話番号の記載がない)

(参考: 管理標示板では、電話番号が標示されている)

改善意見
許可工作物については、緊急時の迅速な対応が求められることから、占用許可標識に操作員等の電話番号を記載させること。
7 河川管理施設及び許可工作物の管理の適正化
- 河川管理施設の樋管の中に、堤防の土手の一部が崩壊(陥没)し、樋管の直水路及U字溝に堆積し、流路を一部ふさいでいるもの等がみられる。
- 許可工作物等の中には、1)樋管に土砂等が堆積し、流路を一部ふさいでいる、2)野球場のバックネットの鉄製支柱が溶接により固定されており、出水期に流下物をせき止めるおそれのあるものとなっている等がみられる。
改善意見
河川管理施設及び許可工作物について、異常個所の把握を行うとともに速やかな補修の実施、また、補修の実施についての指導を行うこと。
8 旧河川法認定民有名義の土地の登記の促進
江戸川右岸の吉川市内の「河川区域」について、私人の所有名義となっているもの、84筆12,800.34平方メートルの土地登記簿が存在することが判明した。河川区域内の河川敷、提塘敷等の私人名義となっている土地については、登記名義人又はその相続人の関心を無視できず、今後、苦情等の問題の発生が懸念される。
改善意見
旧河川法認定の河川区域内に存在する民有名義の土地については、不動産登記法第17条の地図整備作業に伴って多数発見されることがあることから、今後の苦情等の問題の発生を防止する観点から、登記所と積極的に連携を図り、このような情報の収集に努め、表示登記の嘱託を行うこと等。