公表資料
平成15年7月31日
平成15年11月27日
総務省関東管区行政評価局
より「開かれた国民の森」へ一層の工夫を!
関東森林管理局(東京分局)は、都市住民をはじめ国民の自然志向に応え、管内の豊かな国有森林資源をより身近で開かれたものとする観点から、「レクリエーションの森」の現況を的確に把握し、利用者の安全、利便に配意した遊歩道、標識等諸施設の適切な整備、維持管理に努めるとともに、関係地方公共団体とも連携しつつ、広報等に一層の工夫を図る必要。
<レクリエーションの森の現況等>
各レクリエーションの森の管理経営の基本となる「方針書」における諸施設の内容と現況が異なっており、適切な整備、維持管理、情報提供を図る上で見直しが必要な例
- 実在しないあるいは荒廃して利用に適さない遊歩道が「方針書」で施設として位置付けられている一方、すでによく利用されている遊歩道等が施設として位置付けられていない。
- 遊歩道、休憩施設等の実際の位置と、方針書の「利用計画図」の位置が異なっている。
利用者の安全、利便の確保等の観点からレク施設として整備する必要がある、あるいは、適切な維持管理が必要な例
- 足場が悪く、危険防止策が必要な遊歩道、老朽化し破損して判読しにくい案内表示等
- 分岐点等で誘導標識がないため、行き先が分かりにくいもの等
<広報等の状況>
ホームページでの現在の紹介内容はごく簡単なものとなっているが、利用者にとって重要な情報である最寄り駅、アクセス経路や遊歩道等の主な施設を示した案内地図を搭載するなど、より充実した内容のものとなるよう工夫するとともに、地元市町村等のホームページに有用な参考情報も多いことからリンクすることについて検討する必要。
(この行政評価・監視の目的、背景)
長期的な木材価格の低迷と森林に対する要請が多様化する中で、平成10年、国有林野の管理経営方針は「林産物の供給に重点をおいたものから、公益的機能の維持増進を旨とするもの」へと大きく転換が図られることとなった。これを受けて、国民の保健・文化・教育的利用に積極的に供することが適当と認められる国有林野については「レクリエーションの森」として広く国民に開かれた利用に供することとされ、関東森林管理局東京分局管内においても、40箇所、約1万1千ヘクタールの国有林野がレクリエーションの森として国民に開放されているところである。
この行政評価・監視は、これら国民の保健等のために整備された森林が、より広く国民に利用され、森林とのふれあいを通じた豊かな国民生活に寄与するものとなるよう、その整備、維持管理状況等を調査し、関係行政の改善に資するため実施したものである。
第 1 調査時期等
- 調査実施時期
平成15年8月〜11月
- 調査対象機関
関東森林管理局東京分局
東京神奈川森林管理署(高尾山自然休養林、丹沢自然休養林、城山自然観察教育林)
茨城森林管理署(筑波山森林スポーツ林、御前山風景林)
茨城森林管理署大子事務所(奥久慈自然休養林、花立自然観察教育林)
(注1)( )書きは、調査対象レクリエーションの森
(注2)東京分局管内のレクリエーションの森40のうち、7を抽出調査
- 調査担当部局
関東管区行政評価局
第 2 改善意見の通知(所見表示)
改善を要する事項について、平成15年11月27日、関東森林管理局東京分局長に改善意見の通知(所見表示)を実施。
(参考)
- 東京分局の管轄区域
1都7県(茨城、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨、静岡、栃木の一部)
- 東京分局管内のレクリエーションの森の数、面積
40か所、約1万1千ヘクタール(平成15年4月1日現在)
- 内訳:7自然休養林、11自然観察教育林、4森林スポーツ林、15風景林、3風致探勝林
- 東京分局管内全国有林野約17万5千ヘクタールの6.3パーセント。うち森林空間利用タイプの森林(レクリエーション等の活動や風致維持等の機能発揮の森林)約2万2千ヘクタールの50.0パーセント
<レクリエーションの森とは?>
「レクリエーションの森」とは、美しい森林、山岳、渓谷などの景勝地や野外スポーツに適した森林空間等を選定し、国民の保健・文化・教育的利用に広く提供している国有林野
利用形態で、次の6種類に区分
(種類) |
(特徴) |
1)自然休養林 |
特に風景が美しく、自然探勝、ハイキングなど多様な森林レクリエーションを楽しめる保健休養に適した森林 |
2)自然観察教育林 |
自然科学教育、自然観察に適した森林 |
3)森林スポーツ林 |
森林とふれあいながら、キャンプ、サイクリングなどのスポーツを楽しめる森林 |
4)風景林 |
名所、旧跡等と一体となった景勝地、展望台等から眺望できる美しい森林 |
5)風致探勝林 |
美しい自然景観の探勝を楽しめる森林 |
6)野外スポーツ地域 |
スポーツ施設、滞在施設等の設置に適した区域と周辺森林(東京分局管内に無し) |
第 3 行政評価・監視結果の概要
1 利用者の安全性、利便性に配慮したレク施設の整備及び維持管理
[調査結果の概要]
1) 安全に迷うことなく利用するのに必要な遊歩道分岐点の誘導標識等が適切に整備されていないものがみられる(7レク森、19事例)。
2) 利用者の安全性及び利便性に配慮した遊歩道等のレク施設の維持管理が適切に実施されていないものがみられる(4レク森8事例)。
(レク森=レクリエーションの森)
(具体例)
● レク施設の整備が適切に実施されていないもの
- 遊歩道の分岐点に誘導標識が未設置であることなどから、目的地方向が分かりにくいもの(5レク森11事例)
事例写真1
- レク森入口に、レク森の名称等を記載した案内表示がなく、レク森入口が分かりにくいもの(5レク森6事例)
- レク森入口等の案内図の表記内容が実際の遊歩道の設置状況と異なるものなど(2レク森2事例)
事例写真2
● レク施設の維持管理が適切に実施されていないもの
- 足場の悪い岩場の遊歩道で、ロープ等による転落防止策等が講じられていないなど、安全性への配慮が十分でないもの(1レク森3事例)
事例写真3
- 遊歩道の入口に雑草が繁茂しているもの等(2レク森2事例)
- 案内表示板がさび、破損等により表記内容を判読しにくいもの(1レク森2事例)
事例写真4
<事例写真1>

町営キャンプ場から筑波山頂方面への最初の分岐点に行き先方向を示す誘導標識が設置されていない(筑波山森林スポーツ林)
<事例写真2>

レク森の案内図に、三叉路から休憩舎へ向かう遊歩道と休憩舎が記載されていない(御前山風景林)
<事例写真3>

遊歩道の途中の足場の悪い高さ2〜3メートルの岩場の斜面にロープ等による転落防止策が講じられていない(奥久慈自然休養林)
<事例写真4>

目的地までの距離を記載した案内表示がさび、破損により内容を読み取れない(丹沢自然休養林)
[改善意見]
1) 森林保全巡視の活用等によって、レク施設の整備及び維持管理の実態を把握すること。
2) 把握結果を踏まえて、整備が必要な分岐点の誘導標識、レク森の案内表示等の整備を図ること。また、維持管理が必要なレク施設について改善措置を講じること。
2 国民に対するレク森に関する情報提供の推進
[調査結果の概要]
(レク森に関する情報提供について改善すべき事項)
1) 森林管理署等では、地元地方公共団体に対し、広報誌等へのレク森紹介の掲載依頼を行う等の広報活動は未実施。
2) 東京分局のレク森紹介のホームページには、レク森利用に必要な情報である、1)レク森を管理する管轄森林管理署の名称、連絡先、2)最寄駅、バス停からレク森入口までのアクセス経路、主なレク施設の場所等の情報が未掲載。
3) 利用者に参考となるレク森に関連する情報を掲載した市町村ホームページとのリンクも図られていない。
[改善意見]
1) 地元地方公共団体に対し、機会あるごとにレク森の利用等に関しその広報誌等への掲載依頼に努めること。
2) ホームページについて、1) 管轄森林管理署の名称、連絡先、レク森入口へのアクセス経路及び主なレク施設の場所等が分かる地図の掲載、2)レク森関係情報を掲載した市町村ホームページへのリンクを検討すること。
3 レク施設の利用実態等に即したレク森方針書の見直しの推進
[調査結果の概要]
1) 「レクリエーションの森管理経営方針書」(=レク森方針書)の施設計画と利用計画図(レク施設の整備状況を登載)は、レク施設の整備・維持管理状況の確認、利用者へのレク施設の情報提供等に活用しており、実態を踏まえた整理が重要。
2) 既に利用が不能等なレク施設、レク森方針書にレク施設として位置付けて維持管理等を行う方がよい施設、利用計画図の記載内容と現況が異なっている施設など、利用実態等とレク森方針書に乖離が生じているなどの状況がみられる(7レク森29事例)。
(具体例)
● レク森方針書登載のレク施設としての位置付けを見直す必要があるもの
- 長期間利用されず遊歩道の形跡がない、破損等で通行不能等、遊歩道として利用できない状態のものなど(3レク森、8事例)
事例写真5,事例写真6
- 老朽化し廃止された施設等、既に使用されていないもの(2レク森、2事例)
● レク森方針書にレク施設として位置付けて維持管理等を行う方がよいもの
- 整備計画中となっている遊歩道で既にハイキングや史跡探訪に利用され、設置済のレク施設として位置付ける必要があるもの(1レク森、1事例)
事例写真7
- 既に遊歩道として一般に利用されているなど、レク森方針書にレク施設として位置付ける必要があるもの(2レク森、3事例)
● 利用計画図に遊歩道の一部が記載されていないなど、利用計画図の記載内容と現況が異なっており、実態に合ったレク森方針書の整理が必要なもの (4レク森、7事例)事例写真8
<事例写真5>

草に覆われ、路面が荒れて、一般のハイキング者が利用できるような状況にない遊歩道(丹沢自然休養林)
<事例写真6>

レク施設として位置付けられているが、一部が破損し通行できない遊歩道。地方公共団体が通行止めの看板を設置(奥久慈自然休養林)
<事例写真7>

整備計画中となっているが、既に史跡探訪やハイキングに利用されている遊歩道(城山自然観察教育林)
<事例写真8>

レク森方針書の利用計画図に登載されていない遊歩道(高尾山自然休養林)
[改善意見]
森林保全巡視などで、レク施設の実態を的確に把握し、その結果を踏まえてレク森方針書を見直すともに、レク森方針書改訂時には、総合的に点検すること。