4 地方経費の内容

歳出決算額について、支出の対象となる主な行政の目的に従って、生活・福祉の充実(民生費、労働費)、教育と文化(教育費)、土木建設(土木費)、産業の振興(農林水産業費、商工費)、保健衛生(衛生費)、警察と消防(警察費、消防費)に分けてその状況をみると、以下のとおりである。

(1)生活・福祉の充実

ア 社会福祉行政

地方公共団体は、社会福祉の充実を図るため、児童、高齢者、障害者等のための福祉施設の整備及び運営、生活保護の実施等の施策を行っている。

これらの諸施策に要する経費である民生費の決算額は31兆3,130億円で、子育て世帯等臨時特別支援事業等の新型コロナウイルス感染症対策に係る事業費の増加等により、前年度と比べると9.1%増となっている。

また、決算額を団体区分別にみると、市町村は都道府県の約2.7倍となっている。

これは、児童福祉に関する事務及び社会福祉施設の整備・運営事務が主として市町村によって行われていることや、生活保護に関する事務が市町村(町村については、福祉事務所を設置している町村に限る。)によって行われていること等によるものである。

民生費の目的別の内訳をみると、第26図のとおりである。また、各費目の決算額を前年度と比べると、児童福祉費が17.0%増、社会福祉費*3が13.8%増、老人福祉費が1.8%減、生活保護費が0.6%増となっている。

これを団体区分別にみると、都道府県については、後期高齢者医療事業会計、介護保険事業会計への負担金を拠出していることから、老人福祉費の構成比が最も大きく、以下、社会福祉費、児童福祉費の順となっている。市町村については、児童福祉に関する事務及び社会福祉施設の整備・運営事務を主に行っていることから、児童福祉費の構成比が最も大きく、以下、社会福祉費、老人福祉費、生活保護費の順となっている。

民生費の目的別の内訳の推移は、第27図のとおりである。

10年前(平成23年度)と比べると、児童福祉費は約1.5倍、社会福祉費は約1.7倍、老人福祉費は約1.2倍、生活保護費は約1.0倍となっており、民生費総額は約1.4倍となっている。

民生費の性質別の内訳をみると、第28図のとおりである。また、各費目の決算額を前年度と比べると、子育て世帯等臨時特別支援事業等の新型コロナウイルス感染症対策に係る事業費の増加等により、扶助費が20.9%増、後期高齢者医療事業会計や介護保険事業会計への繰出金の増加等により、繰出金が0.7%増、生活福祉資金の貸付事業費の減少等により、補助費等が7.4%減となっている。

なお、地方公共団体の決算額において、社会福祉行政や保健衛生(本項目(5))等のうち、社会保障施策に要する経費は20兆4,711億円となっており、うち社会保障4経費*4に則った範囲の社会保障給付に充てられる経費は15兆8,480億円となっている。

一方、平成26年4月1日及び令和元年10月1日に引き上げられた税率に係る令和3年度の地方消費税収入の額は3兆3,547億円、令和3年度の消費税の地方交付税法定率分は4兆2,683億円で、その合計は7兆6,230億円となっている。

イ 労働行政

地方公共団体は、就業者等の福祉向上を図るため、職業能力開発の充実、金融対策、失業対策等の施策を行っている。

これらの諸施策に要する経費である労働費の決算額は2,832億円で、事業者への支援に係る事業費の減少等により、前年度と比べると13.2%減となっている。

労働費の性質別の内訳をみると、第29図のとおりである。また、各費目の決算額を前年度と比べると、物件費が3.0%増、人件費が0.3%減、補助費等が12.6%減、貸付金が19.8%減となっている。

(2)教育と文化

地方公共団体は、教育の振興と文化の向上を図るため、学校教育、社会教育等の教育文化行政を行っている。

これらの諸施策に要する経費である教育費の決算額は17兆7,896億円で、児童生徒向けの一人一台端末の整備等に係る事業費の減少等により、前年度と比べると1.7%減となっている。

教育費の目的別の内訳をみると、第30図のとおりである。また、各費目の決算額を前年度と比べると、小学校費が6.7%減、教育総務費*5が0.7%減、中学校費が4.4%減、高等学校費が1.2%増、保健体育費*6が11.1%増となっている。

目的別の構成比を団体区分別にみると、都道府県においては、政令指定都市を除く市町村立義務教育諸学校の人件費を負担しているほか、私立学校の振興や高等学校の管理・運営を主に行っていることから、小学校費が最も大きな割合を占め、以下、教育総務費、高等学校費、中学校費の順となっており、市町村においては、義務教育諸学校の管理・運営や給食等に要する経費を主に負担していることから、小学校費が最も大きな割合を占め、以下、保健体育費、教育総務費、中学校費、社会教育費の順となっている。

教育費の性質別の内訳をみると、第31図のとおりである。また、各費目の決算額を前年度と比べると、人件費が1.0%減、物件費が7.5%減、普通建設事業費が7.9%減となっている。

(3)土木建設

地方公共団体は、地域の基盤整備を図るため、道路、河川、公園、住宅等の公共施設の建設、整備等を行うとともに、これらの施設の維持管理を行っている。

これらの諸施策に要する経費である土木費の決算額は12兆6,858億円で、前年度と比べると0.0%減となっている。

土木費の目的別の内訳をみると、第32図のとおりである。また、各費目の決算額を前年度と比べると、道路橋りょう費が2.2%増、都市計画費*7が3.6%減、河川海岸費が2.3%増となっている。

土木費の性質別の内訳をみると、第33図のとおりである。また、各費目の決算額を前年度と比べると、普通建設事業費が0.1%増、補助費等が2.4%減となっている。

(4)産業の振興

ア 農林水産行政

地方公共団体は、農林水産業の振興と食料の安定的供給を図るため、生産基盤の整備、構造改善、消費流通対策、農林水産業に係る技術の開発・普及等の施策に加え、6次産業化等の推進、人口減少社会における農山漁村の活性化等の施策を行っている。

これらの諸施策に要する経費である農林水産業費の決算額は3兆3,045億円で、農地費*8の減少等により、前年度と比べると3.1%減となっている。

農林水産業費の目的別の内訳をみると、第34図のとおりである。また、各費目の決算額を前年度と比べると、農地費が3.1%減、農業費が2.6%減、林業費が0.0%減、水産業費が7.6%減となっている。

農林水産業費の性質別の内訳をみると、第35図のとおりである。また、各費目の決算額を前年度と比べると、普通建設事業費が2.9%減、人件費が0.8%減、補助費等が7.3%減となっている。

イ 商工行政

地方公共団体は、地域における商工業の振興とその経営の強化等を図るため、中小企業の経営力・技術力の向上、地域エネルギー事業の推進、企業誘致、消費流通対策等様々な施策を行っている。

これらの諸施策に要する経費である商工費の決算額は14兆9,802億円で、営業時間短縮要請等に応じた事業者に対する協力金の給付等の新型コロナウイルス感染症対策に係る事業費の増加等により、前年度と比べると29.9%増となっている。

商工費の性質別の内訳をみると、第36図のとおりである。また、各費目の決算額を前年度と比べると、前述のとおり、営業時間短縮要請等に応じた事業者に対する協力金の給付等の新型コロナウイルス感染症対策に係る事業費の増加等により、補助費等が164.3%増、制度融資の減少等により、貸付金が13.0%減となっている。

(5)保健衛生

地方公共団体は、住民の健康を保持増進し、生活環境の改善を図るため、医療、公衆衛生、精神衛生等に係る対策を推進するとともに、ごみなど一般廃棄物の収集・処理等、住民の日常生活に密着した諸施策を行っている。

これらの諸施策に要する経費である衛生費の決算額は11兆3,751億円で、新型コロナウイルスワクチン接種事業、病床確保支援事業等の新型コロナウイルス感染症対策に係る事業費の増加等により、前年度と比べると24.7%増となっている。

衛生費の目的別の内訳をみると、第37図のとおりである。また、各費目の決算額を前年度と比べると、公衆衛生費*9が39.0%増、清掃費*100が2.0%減となっている。

目的別の構成比を団体区分別にみると、都道府県においては、公衆衛生費が96.8%を占め、市町村においては、一般廃棄物の収集・処理等を行っていることから、公衆衛生費が60.1%、清掃費が37.2%となっている。

衛生費の性質別の内訳をみると、第38図のとおりである。また、各費目の決算額を前年度と比べると、新型コロナウイルスワクチン接種事業等の新型コロナウイルス感染症対策に係る事業費の増加等により、物件費が64.4%増、補助費等が14.6%増、人件費が8.3%増となっている。

(6)警察と消防

ア 警察行政

都道府県は、犯罪の防止、交通安全の確保その他地域社会の安全と秩序を維持し、国民の生命、身体及び財産を保護するため、警察行政を行っている。

これらの諸施策に要する経費である警察費の決算額は3兆2,923億円で、警察施設、交通信号機の設置等に要する経費である普通建設事業費の減少等により、前年度と比べると0.9%減となっている。

警察費の性質別の内訳をみると、第39図のとおりである。また、各費目の決算額を前年度と比べると、人件費が0.4%減、物件費が2.1%増となっている。

イ 消防行政

東京都及び市町村は、火災、風水害、地震等の災害から国民の生命、身体及び財産を守り、これらの災害を防除し、被害を軽減するほか、災害等による傷病者の搬送を適切に行うため、消防行政を行っている。

これらの諸施策に要する経費である消防費の決算額は2兆40億円で、消防施設の整備、消防自動車の購入等に要する経費である普通建設事業費の減少等により、前年度と比べると5.7%減となっている。

消防費の性質別の内訳をみると、第40図のとおりである。また、各費目の決算額を前年度と比べると、人件費が0.3%増、普通建設事業費が24.0%減、物件費が8.1%減となっている。



*3 障害者等の福祉対策や他の福祉に分類できない総合的な福祉対策に要する経費

*4 「消費税法」(昭和63年法律第108号)第1条第2項に規定された、制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費

*5 教職員の退職金や私立学校の振興等に要する経費

*6 体育施設の建設・運営や体育振興及び義務教育諸学校等の給食等に要する経費

*7 街路、公園、下水道等の整備、区画整理等に要する経費

*8 農業基盤整備等に要する経費

*9 保健衛生、精神衛生及び母子衛生等に要する経費

*10 一般廃棄物等の収集処理等に要する経費

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