5 防災・減災、国土強靱化及び公共施設等の適正管理の推進
近年、気候変動の影響により気象災害は激甚化・頻発化し、また大規模地震の発生が切迫している。このような中、国民の生命・財産を守るため、地方公共団体が国と連携しつつ、防災・減災、国土強靱化対策に取り組む必要がある。
また、我が国においては、高度経済成長期に大量に建設された公共施設等が一斉に更新時期を迎える中、人口減少や少子高齢化等による公共施設等の利用需要の変化や地方財政の厳しい状況等を踏まえると、各地方公共団体においては、地域における公共施設等の適正管理に向けた取組を着実に推進する必要がある。
(1)防災・減災、国土強靱化の推進
「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」(令和2年12月11日閣議決定。以下「5か年加速化対策」という。)に基づく直轄事業及び補助事業について、当初予算に計上される場合には、その地方負担を防災・減災・国土強靱化緊急対策事業債により措置することとし、補正予算に計上される場合には、その地方負担を補正予算債により措置することとしている。5か年加速化対策の3年目である令和5年度分については、令和4年度補正予算(第2号)(国費1兆5,341億円)を活用することとされており、その地方負担については、補正予算債等により措置することとしている。
地方公共団体が、喫緊の課題である防災・減災対策のための施設整備等に取り組んでいけるよう、「緊急防災・減災事業費」について、新たに社会福祉法人又は学校法人が行う指定避難所の生活環境改善のための取組への支援及び消防本部への水中ドローンの配備を対象事業に追加した上で、令和5年度の地方財政計画に前年度同額の5,000億円を計上している。
また、地方公共団体が、5か年加速化対策と連携しつつ、地方単独事業として緊急に自然災害を防止するための社会基盤の整備に取り組んでいけるよう、「緊急自然災害防止対策事業費」について、令和5年度の地方財政計画に前年度同額の4,000億円を計上している。
さらに、地方公共団体が、地方単独事業として緊急に河川等の浚渫を実施できるよう、「緊急浚渫推進事業費」について、令和5年度の地方財政計画に前年度同額の1,100億円を計上している。
このほか、広域化を前提として指令の共同運用に参画する消防本部が現行システムの更新時期を延長して運用する場合の割増経費や、消防学校における女性専用施設の整備について、令和5年度から、特別交付税措置の対象とすることとしている。
(2)公共施設等の適正管理の更なる推進
総務省においては、「公共施設等の総合的かつ計画的な管理の推進について」(平成26年4月22日付け総務大臣通知)により、各地方公共団体に対し、公共施設等の総合的かつ計画的な管理を行うための中期的な取組の方向性を明らかにする計画(以下「総合管理計画」という。)を策定するよう要請し、令和4年3月31日時点で、都道府県においては100%、市区町村においても99.9%の団体が、総合管理計画を策定している。
そのような中、総合管理計画については、その策定を要請した平成26年度以降、一定の期間が経過していることも踏まえ、総務省としては、地方公共団体に対して、個別施設ごとの長寿命化計画(個別施設計画)の内容を反映しつつ、中長期のインフラ維持管理・更新費の見通しや適正管理に取り組むことによる効果額を盛り込んだ見直しを行うよう要請してきたところであるが、「令和3年度までの公共施設等総合管理計画の見直しに当たっての留意事項について」(令和3年1月26日付け総務省自治財政局財務調査課長通知)により、総合管理計画の見直しに当たって記載すべき事項の考え方等について、改めて周知した。また、その見直しに当たっては、後述する「経営・財務マネジメント強化事業」等により、市区町村における総合管理計画の見直しのための専門家の招へいや業務委託等を支援している。
その結果、令和4年9月末時点で76.5%の団体が見直しを実施済みとなるとともに、令和5年度末までには99.8%の団体が見直し予定となっている。なお、新型コロナウイルス感染症の影響等により、見直しが完了していない地方公共団体においては、適切に見直しを進め、令和5年度末までに見直しを完了するよう要請している。
また、地方公共団体による公共施設等の適正管理の取組を推進するため、公共施設等適正管理推進事業債を平成29年度に創設し、令和4年度には、事業期間を令和8年度まで5年間継続することとした。令和5年度においては、「公共施設等適正管理推進事業費」について、地方公共団体が引き続き公共施設等の適正管理に積極的に取り組んでいけるよう、地方財政計画に4,800億円を計上している。