7 公営企業等の状況

(1)公営企業等

法適用企業(公営企業型地方独立行政法人を含む。以下同じ。)及び法非適用企業の決算の状況は、次のとおりである。

ア 概況

(ア)事業数

令和3年度末において、公営企業を経営している団体数は1,781団体(一部事務組合等のみで公営企業を経営している6団体及び特別区を含む。)である。

また、公営企業型地方独立行政法人を設立している団体数は62団体(一部事務組合等のみで公営企業型地方独立行政法人を設立している4団体を含む。)であり、公営企業型地方独立行政法人が経営している事業は全て病院事業となっている。

これらの団体及び公営企業型地方独立行政法人が経営している公営企業等の事業数は8,108事業で、水道事業及び下水道事業における事業統合等により、前年度末と比べると57事業減少している。これを事業別にみると、第58図のとおりである。

(イ)業務の状況

公営企業等は、住民の生活水準の向上を図る上で大きな役割を果たしている。各事業全体の中で公営企業等が占める割合は、第22表のとおりである。

(ウ)決算規模

決算規模は17兆9,766億円で、企業債元利償還金の減少等により、前年度と比べると0.5%減となっている。

これを事業別にみると、第59図のとおりである。

(エ)全体の経営状況

法適用企業と法非適用企業を合わせた全体の経営状況は、第23表のとおりであり、黒字事業数は全体の88.3%、赤字事業数は11.7%となっている。全体の総収支は1兆192億円の黒字で、料金収入の増加等により、前年度と比べると46.4%増となっている。また、赤字額は1,410億円で、前年度と比べると35.1%減となっている。

(オ)料金収入

料金収入は9兆4,320億円で、病院事業における患者数の増加、水道事業等において臨時的に実施されていた新型コロナウイルス感染症対応の特別な料金減免の終了等により、前年度と比べると3.4%増となっている。なお、病院事業における患者数は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い減少していたものが増加に転じたものの、感染症拡大前の令和元年度より少ない状況となっている。

これを事業別にみると、第60図のとおりである。

(カ)建設投資額の推移

建設投資額の推移は、第61図のとおりであり、令和3年度の額は4兆293億円で、前年度と比べると0.3%の微減となっている。

建設投資額が前年度より増加した主な事業は、水道事業(対前年度比0.8%増)、下水道事業(同0.4%増)、交通事業(同2.9%増)となっている。

(キ)企業債の状況

資本的支出に充当された企業債の発行額の状況は、第62図のとおりであり、発行額は2兆3,191億円で、下水道事業等における借換債の発行等により、前年度と比べると0.8%増となっている。

企業債借入先別現在高の推移は、第63図のとおりであり、企業債現在高の令和3年度末の総額は37兆4,824億円で、前年度末と比べると3.1%減となっている。

(ク)他会計繰入金の状況

他会計からの繰入金は2兆8,397億円で、下水道事業における企業債元利償還金の減少等により、前年度と比べると4.0%減となっている。

この内訳をみると、収益的収入(*)として1兆9,932億円(収益的収入に対する繰入金の割合13.6%)、資本的収入(*)として8,465億円(資本的収入に対する繰入金の割合19.8%)となっている。

これを事業別にみると、下水道事業への繰入額が最も大きな割合(繰入額総額の55.5%)を占め、以下、病院事業(同29.6%)、水道事業(同6.7%)の順となっている。

(ケ)法適用企業の経営状況

a 損益計算書、貸借対照表

損益計算書の状況は、第64図のとおりであり、令和3年度は、総収益が総費用を上回り、総収支は黒字となっている。

また、料金収入の増加等により総収益が増加するとともに、病院事業における患者数の増加等により総費用も増加している。

貸借対照表の状況は、第65図のとおりであり、料金収入の増加に伴う流動資産(現金・預金)の増加等により、資産が微増となっている。

b 損益収支(*)*13

法適用企業の総収益(経常収益+特別利益)は14兆984億円、総費用(経常費用+特別損失)は13兆1,512億円となっている。この結果、純損益は9,471億円の黒字となっており、総収支比率は107.2%と前年度より2.3ポイント上昇している。また、経常収益(営業収益+営業外収益)は13兆9,552億円、経常費用(営業費用+営業外費用)は13兆134億円となっている。この結果、経常損益は9,418億円の黒字となっており、経常収支比率は107.2%と前年度より2.3ポイント上昇している。

経常収支比率の推移をみると、平成3年度以降100%を下回る状況が続いていたが、平成15年度からは19年連続で100%を上回っている。

なお、純損益及び経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第24表のとおりである。

c 資本収支(*)

建設投資や企業債の償還金等の支出である資本的支出は7兆1,584億円で、前年度と比べると1.2%減となっている。これに対する財源は、企業債等の外部資金が3兆8,209億円、損益勘定留保資金等の内部資金が3兆2,376億円で、資本的収入額が資本的支出額に不足する額である財源不足額は999億円となっている。

資本的支出のうち建設改良費は3兆7,407億円で、前年度と比べると0.4%増となっている。建設改良費が大きい事業は、下水道事業(建設改良費総額の44.5%)、水道事業(同34.5%)、病院事業(同10.9%)である。

d 累積欠損金

過去の年度から通算した純損益における損失の累積額である累積欠損金は3兆8,302億円で、前年度と比べると5.7%減となっている。また、累積欠損金合計額に占める割合が大きい事業は、病院事業(累積欠損金合計額の43.6%)、交通事業(同38.9%)である。

e 不良債務

令和3年度末現在において、流動負債の額(建設改良費等の財源に充てるための企業債等を除く。)が流動資産の額(翌年度へ繰り越される支出の財源充当額を除く。)を上回る場合の当該超過額である不良債務は1,113億円で、前年度と比べると9.8%減となっている。不良債務の大きい事業は、交通事業(不良債務額総額の61.4%)、下水道事業(同23.8%)、病院事業(同9.1%)である。

(コ)法非適用企業の経営状況

法非適用企業の実質収支をみると、黒字事業数は法非適用企業全体の97.9%、赤字事業数は2.1%を占めており、全体では721億円の黒字(前年度587億円の黒字)となっている。

イ 事業別状況

(ア)水道事業

a 事業数

(a)上水道事業

地方公共団体が経営する上水道事業で、令和3年度決算対象となるものは、1,317事業であり、このうち、末端給水事業は1,248事業、用水供給事業は69事業(うち建設中2事業)である。

(b)簡易水道事業

地方公共団体が経営する簡易水道事業で、令和3年度決算対象となるものは、470事業(うち法適用102事業)である。

b 経営状況

(a)法適用企業

<1> 損益収支

水道事業の総収益は3兆1,989億円、総費用は2兆8,691億円となっており、この結果、純損益は3,298億円の黒字、総収支比率は111.5%となっている。また、経常収益は3兆1,776億円、経常費用は2兆8,499億円となっており、この結果、経常損益は3,277億円の黒字、経常収支比率は111.5%となっている。純損益及び経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第25表のとおりである。

累積欠損金は660億円で、前年度と比べると11.2%減となっている。また、不良債務は2億円で、前年度と比べると12.4%増となっている。

<2> 資本収支

資本的支出は1兆9,268億円で、前年度と比べると1.1%増となっている。これに対する財源は、外部資金が6,812億円、内部資金が1兆2,430億円で、財源不足額は26億円となっている。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は1兆2,895億円で、前年度と比べると0.8%増、企業債償還金は5,854億円で、前年度と比べると2.3%増となっている。

<3> 給水原価と供給単価

有収水量1m3当たりの給水原価(用水供給事業を除く。)は168.11円(資本費58.23円、職員給与費20.27円、受水費28.20円、その他の経費61.41円)、1m3当たりの供給単価(用水供給事業を除く。)は171.66円となっており、供給単価が給水原価を3.55円上回っている。

また、令和3年度中に料金改定を実施した水道事業(用水供給事業を含む。)は57事業(前年度95事業)で、営業中の事業の4.0%となっている。

(b)法非適用企業

簡易水道事業における法非適用企業は368事業で、実質収支をみると、黒字事業が364事業で26億円の黒字となっており、赤字事業が4事業で0.7億円の赤字となっている。

(イ)工業用水道事業

a 事業数

地方公共団体が経営する工業用水道事業で、令和3年度決算対象となるものは、153事業(うち建設中2事業)である。

b 経営状況

(a)損益収支

工業用水道事業の総収益は1,513億円、総費用は1,335億円となっており、この結果、純損益は179億円の黒字、総収支比率は113.4%となっている。また、経常収益は1,466億円、経常費用は1,250億円となっており、この結果、経常損益は217億円の黒字、経常収支比率は117.4%となっている。純損益及び経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第26表のとおりである。

累積欠損金は303億円で、前年度と比べると21.2%増となっている。また、不良債務は1百万円で、前年度と比べると皆増となっている。

(b)資本収支

資本的支出は1,002億円で、前年度と比べると3.2%減となっている。これに対する財源は、外部資金が390億円、内部資金が605億円で、財源不足額は6億円となっている。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は618億円で、前年度と比べると2.2%減、企業債償還金は274億円で、前年度と比べると5.5%減となっている。

(c)給水原価と供給単価

有収水量1m3当たりの給水原価は27.09円(資本費11.61円、職員給与費3.12円、その他の経費12.36円)、1m3当たりの供給単価は30.41円となっており、これを補助事業と単独事業に分けてみると、単独事業では供給単価(16.45円)が給水原価(13.65円)を2.80円上回っており、補助事業では供給単価(33.80円)が給水原価(30.36円)を3.44円上回っている。

(ウ)交通事業

a 事業数

地方公共団体が経営する交通事業で、令和3年度決算対象となるものは、85事業である。これを事業別にみると、バスが24事業、都市高速鉄道が9事業、路面電車が5事業、モノレール等が2事業、船舶が45事業となっている。

b 経営状況

(a)法適用企業

<1> 損益収支

法適用の交通事業の総収益は5,375億円、総費用は5,751億円となっており、この結果、純損益は377億円の赤字、総収支比率は93.5%となっている。また、経常収益は5,360億円、経常費用は5,735億円となっており、この結果、経常損益は375億円の赤字、経常収支比率は93.5%となっている。純損益及び経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第27表のとおりである。

累積欠損金は1兆4,882億円で、前年度と比べると2.4%増となっている。また、不良債務は684億円で、前年度と比べると3.6%増となっている。

これを事業別にみると、バス事業においては、第28表のとおりである。

累積欠損金は809億円で、前年度と比べると22.0%増となっている。また、不良債務は80億円で、前年度と比べると3.4%増となっている。

都市高速鉄道事業においては、第29表のとおりである。

累積欠損金は1兆3,833億円で、前年度と比べると1.3%増となっている。また、不良債務は603億円で、前年度と比べると3.5%増となっている。

<2> 資本収支

資本的支出は4,090億円(うちバス事業209億円、都市高速鉄道事業3,748億円)で、前年度と比べると6.2%減となっている。これに対する財源は、外部資金が2,238億円、内部資金が1,265億円で、財源不足額は587億円となっている。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は1,797億円(うちバス事業136億円、都市高速鉄道事業1,626億円)で、前年度と比べると3.3%増、企業債償還金は2,217億円(うちバス事業61億円、都市高速鉄道事業2,062億円)で、前年度と比べると12.8%減となっている。

(b)法非適用企業

交通事業における法非適用企業は船舶運航事業の38事業で、実質収支をみると、黒字事業が37事業で6億円の黒字となっており、赤字事業が1事業で0.5億円の赤字となっている。

(エ)電気事業

a 事業数

地方公共団体が経営する電気事業で、令和3年度決算対象となるものは、97事業(うち建設中1事業)であり、法適用企業が31事業、法非適用企業が66事業である。

b 経営状況

(a)法適用企業

<1> 損益収支

法適用の電気事業の総収益は943億円、総費用は741億円となっており、この結果、純損益は202億円の黒字、総収支比率は127.2%となっている。また、経常収益は933億円、経常費用は720億円となっており、この結果、経常損益は213億円の黒字、経常収支比率は129.6%となっている。純損益及び経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第30表のとおりである。

累積欠損金は23億円で、前年度と比べると74.7%増となっている。なお、不良債務を有する事業はない。

<2> 資本収支

資本的支出は536億円で、前年度と比べると16.2%減となっている。これに対する財源は、外部資金が153億円、内部資金が384億円で、財源不足額を有する事業はない。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は327億円で、前年度と比べると23.6%減、企業債償還金は84億円で、前年度と比べると0.2%増となっている。

(b)法非適用企業

電気事業における法非適用企業は、水力発電事業、ごみ発電事業、風力発電事業、太陽光発電事業及びバイオマス発電事業の66事業(うち建設中1事業)で、実質収支をみると、黒字事業が64事業で10億円の黒字となっており、赤字事業が1事業で0.3億円の赤字となっている。

(オ)ガス事業

a 事業数

地方公共団体が経営するガス事業で、令和3年度決算対象となるものは、21事業である。

b 経営状況

(a)損益収支

ガス事業の総収益は696億円、総費用は624億円となっており、この結果、純損益は72億円の黒字、総収支比率は111.6%となっている。また、経常収益は696億円、経常費用は624億円となっており、この結果、経常損益は72億円の黒字、経常収支比率は111.5%となっている。純損益及び経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第31表のとおりである。

累積欠損金は50億円で、前年度と比べると26.0%減となっている。なお、不良債務を有する事業はない。

(b)資本収支

資本的支出は163億円で、前年度と比べると37.9%減となっている。これに対する財源は、外部資金が30億円、内部資金が133億円で、財源不足額を有する事業はない。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は90億円で、前年度と比べると7.7%減、企業債償還金は66億円で、前年度と比べると17.3%減となっている。

(カ)病院事業

a 事業数

地方公共団体が経営する地方公営企業法を適用する病院事業及び公営企業型地方独立行政法人が経営する病院事業で、令和3年度決算対象となるものは、681事業であり、これらの事業が有する病院(以下「公立病院」という。)数は853病院である。このうち、地方公共団体が経営する地方公営企業法を適用する病院は753病院であり、公営企業型地方独立行政法人が経営する病院は100病院となっている。

一般病院813病院*14のうち病床数300床以上の病院は、34.1%に当たる277病院となっており、地域における中核的な役割を担う病院として地域医療を支えている。

一方、病床数が150床未満であり、直近の一般病院までの移動距離が15km以上となる位置に所在している等の条件下にある「不採算地区病院」は、一般病院の38.1%に当たる310病院となっており、民間医療機関による診療が期待できない離島、山間地等のへき地における医療の確保のため、重要な役割を果たしている。

さらに、公立病院全体の85.5%に当たる729病院が救急病院として告示を受けており、地域の救急医療を担っている。

b 経営状況

(a)損益収支

病院事業の総収益は5兆8,401億円、総費用は5兆5,105億円となっており、この結果、純損益は3,296億円の黒字、総収支比率は106.0%となっている。また、経常収益は5兆7,515億円、経常費用は5兆4,259億円となっており、この結果、経常損益は3,256億円の黒字、経常収支比率は106.0%となっている。純損益及び経常損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第32表のとおりである。

累積欠損金は1兆6,682億円で、前年度と比べると12.5%減となっている。また、不良債務は101億円で、前年度と比べると57.5%減となっている。

また、医業費用に対する医業収益の割合である医業収支比率は90.7%(前年度88.1%)となっており、これを病院の種別にみると、一般病院が91.1%(同88.4%)、精神科病院が73.2%(同72.9%)となっている。

(b)資本収支

資本的支出は8,548億円で、前年度と比べると0.9%減となっている。これに対する財源は、外部資金が5,807億円、内部資金が2,566億円で、財源不足額は175億円となっている。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は4,095億円で、前年度と比べると2.2%減、企業債償還金は3,823億円で、前年度と比べると1.1%減となっている。

(キ)下水道事業

a 事業数

地方公共団体が経営する下水道事業で、令和3年度決算対象となるものは、3,605事業(うち建設中10事業)であり、法適用企業が2,120事業、法非適用企業が1,485事業である。

b 経営状況

(a)法適用企業

<1> 損益収支

法適用の下水道事業の総収益は3兆9,443億円で、前年度と比べると0.7%減となっている。その内訳をみると、使用料収入が1兆4,572億円(総収益に占める割合36.9%)、他会計繰入金(雨水処理負担金を含む。)が1兆765億円(同27.3%)等となっている。一方、総費用は3兆7,182億円で、前年度と比べると1.0%減となっており、うち支払利息が2,803億円(総費用に占める割合7.5%)となっている。この結果、純損益は2,260億円の黒字、総収支比率は106.1%となっている。また、経常収益は3兆9,201億円、経常費用は3兆7,032億円となっており、この結果、経常損益は2,169億円の黒字、経常収支比率は105.9%となっている。純損益における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第33表のとおりである。

累積欠損金は1,633億円で、前年度と比べると1.3%減となっている。また、不良債務は265億円で、前年度と比べると0.2%増となっている。

<2> 資本収支

資本的支出は3兆5,035億円で、前年度と比べると0.0%増となっている。これに対する財源は、外部資金が2兆1,453億円、内部資金が1兆3,388億円で、財源不足額は194億円となっている。資本的支出の内訳をみると、建設改良費は1兆6,658億円で、前年度と比べると1.0%増、企業債償還金は1兆8,154億円で、前年度と比べると0.8%減となっている。

(b)法非適用企業

下水道事業における法非適用企業の総収益は1,828億円で、前年度と比べると2.4%減となっている。その内訳をみると、使用料収入が654億円(総収益に占める割合35.8%)、他会計繰入金(雨水処理負担金を含む。)が1,101億円(同60.2%)等となっている。一方、総費用は1,051億円で、前年度と比べると3.1%減となっており、うち支払利息が202億円(総費用に占める割合19.2%)となっている。

資本的支出は1,937億円で、前年度と比べると5.2%減となっている。その内訳をみると、建設改良費は697億円で、前年度と比べると10.6%減、地方債償還金は1,228億円で、前年度と比べると2.1%減となっている。

実質収支をみると、黒字事業が1,463事業で71億円の黒字、赤字事業が17事業で4億円の赤字となっており、差引67億円の黒字となっている(第33表)。

(c)全体の経営状況

法適用企業と法非適用企業を合計した下水道事業の黒字額は2,514億円、赤字額は186億円となっており、この結果、全体の収支(法適用企業の純損益と法非適用企業の実質収支の合計)は2,327億円の黒字となっている。

汚水処理原価(汚水処理費を年間有収水量で除したもの)は141.31円/m3(維持管理費79.44円/m3、資本費61.87円/m3)で、前年度と比べると0.4%増となっており、使用料単価(使用料収入を年間有収水量で除したもの)は136.01円/m3で、前年度と比べると1.1%増となっている。

その結果、経費回収率(使用料単価を汚水処理原価で除したもの)は96.3%となっており、前年度と比べると0.7ポイント上昇している。

法適用企業と法非適用企業を合計した下水道事業の建設改良費は1兆7,354億円で、前年度と比べると0.4%増となっている。

(ク)その他の公営企業

a 事業数

地方公共団体は、以上の事業のほかにも各種の事業を経営している。これを事業別にみると、令和3年度決算対象となるものは、港湾整備事業が94事業、市場事業が150事業、と畜場事業が46事業、観光施設事業が235事業(うち建設中1事業)、宅地造成事業が418事業(うち建設中49事業)、有料道路事業が1事業、駐車場整備事業が188事業、介護サービス事業が485事業、その他事業(廃棄物等処理施設、診療所等)が68事業となっている。

b 経営状況

その他の公営企業の純損益、経常損益及び実質収支における黒字・赤字事業数及び黒字・赤字額は、第34表のとおりである。このうち、社会経済情勢の変化等による事業リスクが相対的に高い観光施設事業については、全体の収支(法適用企業の純損益と法非適用企業の実質収支の合計)が26億円の黒字であり、法適用企業の累積欠損金は前年度と比べると4.9%減の188億円となっている。また、同様に事業リスクが相対的に高い宅地造成事業については、全体の収支は914億円の黒字であり、法適用企業の累積欠損金は前年度と比べると6.6%減の3,112億円となっている。

(2)国民健康保険事業

国民健康保険制度については、「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律」(平成27年法律第31号)の施行により、平成30年度から都道府県が国民健康保険の財政運営の責任主体とされ、市町村とともに都道府県も国民健康保険の保険者となっている。

また、市町村は、国民健康保険の保険者として、引き続き、資格管理、保険給付、保険料の賦課・徴収等の被保険者に身近な保険者業務を担うこととされているが、医療給付等に必要な資金は都道府県から保険給付費等交付金の交付を受ける一方で、徴収した保険料(税)は基本的に都道府県に国民健康保険事業費納付金として納付することとされている。

ア 都道府県

(ア)歳入

都道府県の歳入決算額は11兆8,648億円で、前年度と比べると3.3%増となっている。

歳入の内訳をみると、第66図のとおりである。また、前年度と比べると、前期高齢者交付金が4.6%増、国民健康保険事業費納付金が2.1%減、国庫支出金が1.3%減となっている。

(イ)歳出

歳出決算額は11兆5,156億円で、前年度と比べると4.8%増となっている。

歳出の内訳をみると、第67図のとおりである。また、前年度と比べると、保険給付費等交付金が4.1%増、後期高齢者支援金等が0.4%減となっている。

(ウ)収支

実質収支は3,463億円の黒字(前年度4,959億円の黒字)となっており、実質収支から財源補填的な他会計繰入金を控除し、繰出金を加えた再差引収支については、47団体全てにおいて黒字で、黒字額は3,463億円(同4,960億円の黒字)となっている。

イ 市町村(事業勘定)

令和3年度末において国民健康保険事業会計を有する団体は、1,742団体(前年度1,743団体)となっている。

(ア)歳入

事業勘定の歳入決算額は13兆121億円で、前年度と比べると2.7%増となっている。

歳入の内訳をみると、第68図のとおりである。また、前年度と比べると、都道府県支出金が4.1%増、国民健康保険税(料)が1.6%減となっている。

(イ)歳出

歳出決算額は12兆7,228億円で、前年度と比べると2.7%増となっている。

歳出の内訳をみると、第69図のとおりである。また、前年度と比べると、保険給付費が4.3%増、国民健康保険事業費納付金が2.1%減となっている。

(ウ)収支

実質収支は2,873億円の黒字(前年度2,762億円の黒字)であり、昭和40年度以降黒字傾向が続いている。

実質収支から財源補填的な他会計繰入金及び都道府県支出金を控除し、繰出金を加えた再差引収支については、1,157億円の黒字(前年度1,026億円の黒字)となっている。

再差引収支を黒字・赤字団体別にみると、黒字団体数は1,304団体(前年度1,274団体)で、その黒字額は1,919億円(同1,813億円)となっている。

一方、赤字団体数は438団体(前年度469団体)で、その赤字額は762億円(同787億円)となっている。

ウ 市町村(直診勘定)

令和3年度末において直営診療所を設置している団体は、359団体(前年度同数)となっている。

直診勘定の歳入決算額は610億円で、前年度と比べると1.0%増となっている。

直診勘定の歳出決算額は577億円で、前年度と比べると0.1%減となっている。

実質収支は31億円の黒字(前年度25億円の黒字)となっているが、この実質収支から他会計繰入金を控除し、繰出金を加えた再差引収支は、129億円の赤字(同148億円の赤字)となっている。

(3)後期高齢者医療事業

後期高齢者医療事業では、保険料の徴収や後期高齢者医療広域連合へ保険料等の納付を行う団体(1,739団体(前年度同数))及び後期高齢者医療事業を実施する都道府県区域ごとの後期高齢者医療広域連合(47団体(前年度同数))に特別会計が設けられている。

ア 市町村

市町村の特別会計の歳入決算額は1兆9,415億円で、前年度と比べると1.2%増となっている。

歳入の内訳をみると、被保険者が支払う後期高齢者医療保険料が1兆3,915億円で最も大きな割合を占めており、次いで繰入金が4,809億円となっている。また、前年度と比べると、後期高齢者医療保険料が0.9%増、繰入金が0.8%増となっている。

歳出決算額は1兆9,103億円で、前年度と比べると1.1%増となっている。

歳出の内訳をみると、後期高齢者医療広域連合への納付金が1兆8,124億円で最も大きな割合を占めており、前年度と比べると0.9%増となっている。

イ 後期高齢者医療広域連合

(ア)歳入

後期高齢者医療広域連合の歳入決算額は17兆1,831億円で、前年度と比べると3.8%増となっている。

歳入の内訳をみると、第70図のとおりである。また、前年度と比べると、支払基金交付金が2.5%増、国庫支出金が1.1%減、市町村支出金が0.9%増となっている。

(イ)歳出

歳出決算額は16兆6,037億円で、前年度と比べると5.6%増となっている。

歳出の内訳をみると、第71図のとおりである。また、前年度と比べると、保険給付費は3.1%増となっている。

(ウ)収支

実質収支は47団体全て黒字となっており、その黒字額は5,794億円(前年度8,189億円の黒字)となっている。

(4)介護保険事業

介護保険制度を実施する保険者である市町村が設ける介護保険事業会計は、第1号被保険者(65歳以上の者)からの保険料や、支払基金交付金(第2号被保険者(40歳以上65歳未満の医療保険加入者)の介護納付金分に係る社会保険診療報酬支払基金からの交付金)等を財源として保険給付等を行う保険事業勘定と、介護給付の対象となる居宅サービス及び施設サービス等を実施する介護サービス事業勘定とに区分される。

なお、市町村が実施する指定介護老人福祉施設、介護老人保健施設、老人短期入所施設、老人デイサービスセンター、指定訪問看護ステーションの5施設により介護サービスを提供する事業は、介護サービス事業として公営企業会計の対象とされている。

令和3年度末において、介護保険事業の保険者は、1,571団体(前年度同数)となっている。

また、介護サービス事業勘定を設置している団体は、617団体(前年度635団体)となっている。

ア 保険事業勘定

(ア)歳入

保険事業勘定の歳入決算額は11兆8,771億円で、前年度と比べると2.5%増となっている。

歳入の内訳をみると、第72図のとおりである。また、前年度と比べると、支払基金交付金が1.9%増、国庫支出金が2.3%増、保険料が3.1%増、他会計繰入金が1.5%増、都道府県支出金が1.9%増となっている*15

(イ)歳出

歳出決算額は11兆5,326億円で、前年度と比べると2.5%増となっている。

歳出の内訳をみると、第73図のとおりである。また、前年度と比べると、保険給付費が2.0%増となっている。

(ウ)収支

実質収支は3,363億円の黒字(前年度3,180億円の黒字)となっており、実質収支から財源補填的な他会計繰入金及び都道府県支出金を控除し、繰出金を加えた再差引収支についても、3,345億円の黒字(同3,161億円の黒字)となっている。

再差引収支を黒字・赤字団体別にみると、黒字団体数は1,565団体(前年度1,562団体)で、その黒字額は3,366億円(同3,187億円)となっている。

一方、赤字団体数は6団体(前年度9団体)で、その赤字額は21億円(同26億円)となっている。

イ 介護サービス事業勘定

介護サービス事業勘定の歳入決算額は173億円で、前年度と比べると2.8%減となっている。

歳出決算額は163億円で、前年度と比べると2.5%減となっている。

なお、実質収支は9億円の黒字(前年度10億円の黒字)となっており、再差引収支は67億円の赤字(同72億円の赤字)となっている。

(5)その他の事業

ア 収益事業

収益事業を実施した地方公共団体の数は、延べ278団体(前年度280団体)となっている。

これを事業別にみると、公営競技についてはモーターボート競走事業を施行した団体が103団体と最も多く、以下、自転車競走事業55団体、競馬事業48団体、小型自動車競走事業5団体の順となっている。

また、宝くじは、47都道府県及び20政令指定都市の67団体で発売されている。

収益事業の決算額は歳入5兆4,106億円、歳出5兆1,585億円で、前年度と比べると、歳入は15.1%増、歳出は15.4%増となっている。

実質上の収支(歳入歳出差引額から翌年度に繰り越すべき財源、他会計からの繰入金、過去の収益を積み立てた基金からの繰入金及び未払金を控除し、他会計への繰出金及び未収金を加えた額)は、6,157億円の黒字(前年度5,452億円の黒字)となっている。

収益金の大部分は普通会計等に繰り入れられ、道路、教育施設、社会福祉施設等の整備事業などの財源として活用されている。その繰入額は4,181億円で、前年度と比べると10.9%増となっている。

イ 共済事業

(ア)農業共済事業

農業共済事業を実施した市町村の数は、2団体(前年度5団体)で、農業共済組合による共済事業への移行が進んだため、前年度と比べると3団体減少している。

農業共済事業会計の決算額は歳入26億円、歳出26億円で、前年度と比べると、歳入は19.0%増、歳出は19.6%増となっている。

なお、実質上の収支(歳入歳出差引額から支払準備金積立額、責任準備金積立額、繰入金及び未払金を控除し、繰出金及び未収金を加えた額)は、3億円の赤字(前年度2億円の赤字)となっている。

(イ)交通災害共済事業

直営方式により交通災害共済事業を実施した地方公共団体の数は、56団体(前年度58団体)となっている。

交通災害共済事業会計の決算額は歳入51億円、歳出40億円で、前年度と比べると、歳入は9.5%増、歳出は15.9%増となっている。

なお、実質上の収支(歳入歳出差引額から未経過共済掛金、繰入金及び未払金を控除し、繰出金及び未収金を加えた額)は、13億円の黒字(前年度14億円の黒字)となっている。

ウ 公立大学附属病院事業

公立大学附属病院事業を実施した地方公共団体の数は、1団体(前年度同数)である。

公立大学附属病院事業会計の決算額は、収益的収支では総収益24億円、総費用25億円となり、前年度と比べると、総収益は4.3%増、総費用は1.4%増となっている。

また、資本的収支では資本的収入5億円、資本的支出5億円で、前年度と比べると、資本的収入は6.2%減、資本的支出は5.6%減となっている。

実質収支は0.3億円の黒字(前年度0.5億円の黒字)となっている。

(6)第三セクター等

第三セクター等*16は、地域住民の暮らしを支える事業を行う重要な役割を担う一方で、経営が著しく悪化した場合には、地方公共団体の財政に深刻な影響を及ぼすことが懸念される。

特に地方公共団体に相当程度の財政的なリスクが存在する第三セクター等については、「第三セクター等の経営健全化方針の策定と取組状況の公表について」(令和元年7月23日付け総務省自治財政局公営企業課長通知)により、地方公共団体に対し、経営健全化方針の策定と、それに基づく取組の着実な実施を要請している。

第三セクター等に係る財政的リスクの状況は第35表のとおりである。



*13 法適用企業の経営状況を表すものには、純損益、経常損益、総収支比率、経常収支比率等がある。
純損益とは、総収益から総費用を差し引いた額をいい、当該年度の総合的な収支状況を表す。総収益が総費用を上回る場合の差額が純利益であり、逆に総費用が総収益を上回る場合の差額が純損失である。
経常損益とは、純損益から固定資産売却益等の臨時的な収益(特別利益)や、固定資産売却損等の臨時的な費用(特別損失)を除いたものをいい、当該年度の経営活動の結果を表す。経常収益が経常費用を上回る場合の差額が経常利益であり、逆に経常費用が経常収益を上回る場合の差額が経常損失である。
総収支比率とは総費用に対する総収益の割合、経常収支比率とは経常費用に対する経常収益の割合であり、それぞれ100%を下回ると費用が収益を上回っている状態を意味することになる。

*14 精神科病院以外の病院をいう。

*15 国庫支出金:・介護給付費負担金(介護給付及び予防給付に要する費用の額(以下「介護・予防給付額」という。)の100分の20(施設等給付費にあっては100分の15)に相当する額)
・調整交付金(介護・予防給付額の100分の5に相当する額)等
都道府県支出金 :都道府県の法定負担(※1)を含む
(※1)介護・予防給付額の100分の12.5(施設等給付費にあっては100分の17.5)に相当する額
他会計繰入金 :市町村の法定負担分(※2)を含む
(※2)介護・予防給付額の100分の12.5に相当する額

*16 第三セクター等とは、次の法人をいう。
(ア)第三セクター

a 社団法人・財団法人(「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」(平成18年法律第48号)等の規定に基づいて設立されている一般社団法人及び一般財団法人(公益社団法人及び公益財団法人を含む。)並びに特例民法法人)のうち、地方公共団体が出えんを行っている法人

b 会社法法人(「会社法」(平成17年法律第86号)等の規定に基づいて設立されている株式会社、合名会社、合資会社、合同会社及び特例有限会社)のうち、地方公共団体が出資を行っている法人

(イ)地方三公社
 地方住宅供給公社、地方道路公社及び土地開発公社

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