総務省トップ > 政策 > 白書 > 令和5年版地方財政白書(表紙) > 第3部 > 1 新型コロナウイルス感染症への対応

第3部 最近の地方財政をめぐる諸課題への対応

1 新型コロナウイルス感染症への対応

新型コロナウイルス感染症への対応については、国民の生命と生活を守るため、医療提供体制の確保、ワクチン接種の推進、検査の環境整備、地域経済・住民生活の支援などを、国・地方の総力を挙げて実施する必要があり、その現場を担う地方公共団体が財源面での心配なく感染症対策に取り組むことができるよう、国において必要な財源を確保することが重要である。こうしたことから、国においては、累次の補正予算の編成や予備費の使用により財政措置を講じるとともに、新型コロナウイルス感染症の影響による地方税の減収に対する措置などを講じてきた。

(1)令和3年度における対応等

ア 令和3年度における対応

令和3年度においても、令和2年度と同様、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金による医療機関等への支援に関する事業や、新型コロナウイルスワクチンの接種体制の整備・接種の実施に関する事業(以下「ワクチン接種事業」という。)など、ほとんどの事業を全額国費対応とした。

また、地方公共団体が地域の実情に応じてきめ細やかに効果的・効率的で必要な事業を実施できるよう、令和2年度に創設された新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金について、感染拡大の防止や医療提供体制の確保、地域経済・住民生活の支援等を行うための地方単独事業分や国庫補助事業等の地方負担分、営業時間短縮要請等に応じた事業者に対する協力金等の給付のための協力要請推進枠等分が引き続き措置されたことに加え、令和3年度においては、新たに、感染拡大の影響を受ける事業者の支援のための事業者支援分や、登録事業者が無料で行うPCR等検査への支援のための検査促進枠分が措置された(令和3年度補正予算(第1号)で6.8兆円、令和3年度一般会計新型コロナウイルス感染症対策予備費で0.5兆円の合計7.3兆円)。

また、地方公共団体が新型コロナウイルス感染症対策に取り組む中、財政運営に支障が生じないよう、当面の資金繰り対策として、<1>特別減収対策債及び公営企業における特別減収対策企業債の延長、<2>臨時財政対策債に対する財政融資資金等の公的資金の大幅な増額確保、<3>共同発行市場公募地方債の発行額の増額といった措置を講じた。

イ 令和3年度の地方公共団体における新型コロナウイルス感染症対策関連経費

総務省において、令和3年度の地方公共団体における普通会計の新型コロナウイルス感染症対策関連経費を調査した結果は、第82図のとおりである。新型コロナウイルス感染症対策関連経費の歳出については、純計額は21兆1,009億円となっており、特別定額給付金事業の終了等により、前年度と比べると17.7%減となっている。

新型コロナウイルス感染症対策関連経費の性質別歳出内訳の状況は、第46表のとおりであり、補助費等が最も大きな割合を占め、以下、貸付金、扶助費、物件費の順となっている。前年度と比べると、特別定額給付金事業の終了等により補助費等が44.8%減、制度融資の減少等により貸付金が6.1%減、子育て世帯等臨時特別支援事業の実施等により扶助費が592.8%増、ワクチン接種事業の増加等により物件費が96.8%増となっている。

都道府県の主な事業は、営業時間短縮要請等に応じた事業者に対する協力金の給付事業、制度融資等の貸付事業、病床確保支援事業、生活福祉資金貸付事業等であった。市町村(特別区及び一部事務組合等を含む。)の主な事業は、子育て世帯等臨時特別支援事業、ワクチン接種事業、制度融資等の貸付事業、中小企業等への支援事業等であった。

また、新型コロナウイルス感染症対策関連経費の財源内訳の状況については、第47表のとおりである。純計額についてみると、国庫支出金が最も大きな割合を占め、次いで貸付金元利収入等のその他の収入となっており、これらで95.2%を占めている。一方、一般財源については、4.1%と低い割合となっている。

(2)令和4年度における対応

令和4年度においても、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金による医療機関等への支援に関する事業や、ワクチン接種事業など、ほとんどの事業を引き続き全額国費対応とした。

また、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金については、国庫補助事業等の地方負担分、検査促進枠分が引き続き措置された(令和4年度補正予算(第2号)で7,500億円)。

また、令和4年度においても、新型コロナウイルス感染症の影響により料金収入が減少する公営企業の資金繰りに支障が生じないよう、公営企業における特別減収対策企業債を延長し、令和5年度も引き続き措置することとしている。

(3)保健所等の恒常的な人員体制の強化

新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえ、保健所の恒常的な人員体制強化を図るため、保健所において感染症対応業務に従事する保健師を令和3年度と令和4年度の2年間でコロナ禍前の約1,800名から1.5倍の約2,700名に約900名増員できるよう、地方財政計画に必要な職員数を計上するとともに、地方交付税措置を講じた。

また、令和5年度においては、次の感染症危機に備えた「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(平成10年法律第114号)等の改正等を踏まえ、保健所において感染症対応業務に従事する保健師を約450名(令和5年度約3,150名)、保健所及び地方衛生研究所の職員をそれぞれ約150名増員できるよう、地方財政計画に必要な職員数を計上するとともに、地方交付税措置を講じることとしている。

これらを踏まえ、地方公共団体においては引き続き保健所等の体制強化に取り組むことが求められている。

ページトップへ戻る