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3 デジタル田園都市国家構想等の推進

国においては、「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」(令和2年12月25日閣議決定)が策定され、令和3年9月にデジタル庁が発足した。また、目指すべきデジタル社会の実現に向けて、政府が迅速かつ重点的に実施すべき施策を明記した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和3年12月24日閣議決定)が策定されるとともに、「デジタル田園都市国家構想」の実現に向け、目指すべき中長期的な方向等について示した令和5年度を初年度とする5か年の「デジタル田園都市国家構想総合戦略」(令和4年12月23日閣議決定)が策定された。今後、地域社会全体のデジタル変革を加速させ、活力ある地方を創るためには、デジタル技術を活用して地方の社会課題解決や魅力向上を図るとともに、地方公共団体のデジタル・トランスフォーメーション(以下「DX」という。)等を推進していく必要がある。

(1)デジタル田園都市国家構想の推進

ア これまでの動き

将来にわたる活力ある地域社会の実現と、東京圏への一極集中の是正を目的として、平成26年に国の第1期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(平成26年12月27日閣議決定)が策定され、これを受け、地方公共団体が「地方版総合戦略」を策定し、地方創生の取組が進められてきた。こうした取組の結果、地方の若者の雇用の改善など、一定の成果が現れてきたものの、依然として東京圏への一極集中の傾向は続いていることから、第1期の成果と課題の検証を踏まえ、第2期(令和2年度から令和6年度まで)の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(令和元年12月20日閣議決定)が策定され、その後、新型コロナウイルス感染症の影響等を踏まえ、第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の2020改訂版(令和2年12月21日閣議決定)が策定された。

イ デジタル田園都市国家構想の実現

新型コロナウイルス感染症の影響により、テレワークの普及や地方移住への関心の高まりなど、社会情勢がこれまでとは大きく変化している中、国においては、「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」を目指す「デジタル田園都市国家構想」の実現に向け、デジタルの力を活用しつつ、地域の個性を生かしながら地方の社会課題解決や魅力向上の取組を加速化・深化することとしており、令和4年12月に第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を抜本的に改訂し、「デジタル田園都市国家構想総合戦略」が策定された。同戦略においては、同構想の実現に向け、地方はそれぞれが抱える社会課題等を踏まえ、地域の個性や魅力を生かした地域ビジョンを再構築し、地方版総合戦略の改訂に努めることとされ、国は政府一丸となって総合的・効果的に支援する観点から、必要な施策間の連携をこれまで以上に強化することとされている。

ウ 地方の取組への支援等

このような中、国においては、地方公共団体の取組の支援等を行っている。

令和4年度補正予算(第2号)においては、同構想の実現による地方の社会課題解決や魅力向上の取組の加速化・深化を図る観点から、「デジタル田園都市国家構想交付金」が創設され800億円が計上されるとともに、令和5年度予算においても1,000億円が計上された。

また、同交付金の移住・起業・就業型のうち、一定の条件下で東京23区に在住又は通勤する者が東京圏外に移住した場合に支給される移住支援金について、子育て世帯の移住を強力に後押しするため、「子育て世帯加算」を従来の子ども一人当たり最大30万円から、最大100万円に増額することとされている。

さらに、地域が抱える課題のデジタル実装を通じた解決の取組等を一層推進するため、地方財政計画の歳出において、「地域デジタル社会推進費」(令和4年度2,000億円)について、事業期間を令和7年度まで延長するとともに、マイナンバーカードを利活用した住民サービス向上のための取組に係る事業費をマイナンバーカード利活用特別分として、令和5年度及び令和6年度に500億円増額することとしている。また、少子化や人口減少などの課題に対応し、自主的・主体的に地方創生に取り組むための「まち・ひと・しごと創生事業費」(令和4年度1兆円)について、「地方創生推進費」に名称変更した上で、これと「地域デジタル社会推進費」(令和5年度2,500億円)を内訳として、「デジタル田園都市国家構想事業費」(令和5年度1兆2,500億円)を創設することとしている。

このほか、総務省においては、地方公共団体が地域社会のデジタル化に係る取組を検討・実施する際の参考となるよう、「地域社会のデジタル化に係る参考事例集 【第2.0版】」(令和4年9月2日)(第83図)を策定しており、引き続き、地方公共団体における取組状況を踏まえつつ事例の追加等の充実を図ることとしている。

第83図 「地域社会のデジタル化に係る参考事例集【第2.0版】」概要

(2)地方公共団体のDXの推進・マイナンバー制度の利活用の推進等

ア 地方公共団体のDXの推進

総務省では、国の取組と歩調を合わせた地方公共団体の取組を強力に推進するため、地方公共団体の情報システムの標準化・共通化等の地方公共団体が重点的に取り組むべき事項や国による支援策等を取りまとめた「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第2.0版】」(令和4年9月2日。以下「自治体DX推進計画」という。)、自治体DX推進計画を踏まえ地方公共団体が着実にDXに取り組めるよう一連の手順を示した「自治体DX全体手順書【第2.1版】」(令和5年1月20日)をそれぞれ策定しており、引き続き、国の取組の進捗等を踏まえて見直しを行っていくこととしている。

また、こうした取組を一層推進するため、都道府県や連携中枢都市等における市町村支援のためのデジタル人材の確保や地方公共団体におけるデジタル化の取組の中核を担う職員(DX推進リーダー)の育成に要する経費について、令和5年度から新たに特別交付税措置を講じるとともに、令和3年度から実施している市町村がCIO補佐官等として外部人材の任用等を行うための経費に対する特別交付税措置について、拡充することとしている。

さらに、後述する「経営・財務マネジメント強化事業」において、新たにDXの取組を支援するための専門アドバイザーを派遣するとともに、地方公共団体情報システム機構、自治大学校等における研修メニューの充実も図ることとしている。

イ 地方公共団体の情報システムの標準化・共通化

地方公共団体の情報システムの標準化・共通化については、「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」(令和3年法律第40号)に基づき、基幹業務システムを利用する原則全ての地方公共団体が、目標時期である令和7年度を目指し、同法第5条に基づく基本方針の下で所管府省が作成する標準化基準に適合した「ガバメントクラウド」上に構築されるシステムへ移行することができるよう、その環境を整備することとし、その取組に当たっては、地方公共団体の意見を丁寧に聴いて進めることとされている。

また、各地方公共団体がシステムの移行の際に必要となる準備経費や移行経費について、令和7年度まで国が補助を行うこととしている。

ウ マイナンバー制度及びマイナンバーカードの普及・利活用の推進

(ア)マイナンバー制度の意義

マイナンバー制度は、行政の効率化、国民の利便性の向上及び公平・公正な社会を実現するデジタル社会の基盤である。

今後、各地方公共団体において業務のICT化などを進め、質の高い行政サービスを効果的・効率的に提供する業務改革に取り組んでいくに当たっては、マイナンバー制度を積極的に利活用していくことが不可欠である。

(イ)マイナンバーを活用した情報連携の円滑な運用

「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(平成25年法律第27号)に基づきデジタル庁が設置・管理する情報提供ネットワークシステムを用いて、国の行政機関や地方公共団体がそれぞれ管理している同一個人の情報をオンラインで情報連携し、相互に活用することが可能である。これにより、令和4年12月時点で児童手当の申請など約2,400の事務手続で情報連携による添付書類の省略が可能となっており、今後も順次、対象事務が増えていくことが予定されている。

(ウ)マイナンバーカード(公的個人認証サービス等)の普及と利活用の推進

安全・安心で利便性の高いデジタル社会をできる限り早期に実現する観点から、国はマイナンバーカードの利便性向上・利活用シーンの拡大を更に推進するとともに、市区町村における申請促進・交付体制の強化に向けた支援を行う等、マイナンバーカードの普及を強力に促進している。

また、マイナンバーカードと健康保険証の一体化を進め、令和6年秋に健康保険証の廃止を目指している。これを踏まえ、マイナンバーカードの取得の推進に取り組むとともに、マイナンバーカードの手続・様式の見直しの検討等を進めている。

地方公共団体における利便性向上の取組への支援として、好事例について情報提供を行うことで横展開を図るほか、郵便局やコンビニなどにおける証明書自動交付サービスの導入に要する経費に係る特別交付税措置を令和7年度まで講じるとともに、令和4年度補正予算(第2号)において、コンビニが無い市町村を中心とした郵便局への証明書自動交付サービス端末の導入やマイナンバーカードの広域利用促進事業のための経費、地域独自のポイント給付を行う自治体マイナポイント事業の全国展開のための経費を計上している。

(エ)マイナポータルの利用拡大

マイナポータルは、「マイナンバーカードをキーにした、わたしの暮らしと行政との入口」として、地方公共団体へのオンライン申請や、行政機関等が保有する本人情報の閲覧・取得、お知らせの通知などのサービスを提供している。

令和5年2月6日より、全市区町村において、マイナポータルを通じたオンラインによる転出届・転入予約の取組が開始された。これにより、住民の手続負担の軽減や市区町村窓口事務の効率化が期待される。

(3)地方創生の推進

地方創生は、出生率の低下によって引き起こされる人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持することを目的としており、主な取組は以下のとおりである。

ア 活力ある地方創り

地方は、人口減少や少子高齢化、働く場や交通への不安など、様々な課題に直面している。これらの課題を解決し、活力ある地方を創出するため、以下の施策をはじめとする様々な取組を推進することとしている。

(ア)地方への新たな人の流れの強化

a 地域おこし協力隊による地域への人材還流の促進

地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に移住し、おおむね1〜3年、当該地域に居住して、地場産品の開発・販売・PRなど地域おこしの支援に向けた各種の地域協力活動に従事する取組である。令和3年度には、全国1,085の地方公共団体で6,015人の隊員が活動している。

こうした中、令和8年度までに現役隊員数を1万人とする目標の達成に向け、令和5年度から、新規採用者数を増加させるため、地方公共団体において募集の企画力やPRを強化することができるよう、隊員の募集等に要する経費について、特別交付税措置の上限を引き上げることとしている。

また、任期途中の退任者を減少させるため、市町村が隊員のサポート体制を十分に確保することができるよう、市町村における隊員の日々のサポートに要する経費について、新たに特別交付税措置を講じることとしている。

さらに、隊員等の起業・事業承継に要する経費について、隊員が早期から起業等の準備に着手することができるよう、特別交付税措置の対象期間を拡充することとしている。

b 地域活性化起業人

地域活性化起業人制度は、地方公共団体が、三大都市圏に所在する民間企業等の社員を一定期間受け入れ、そのノウハウや知見を活かしながら地域独自の魅力や価値の向上等につながる業務に従事してもらい、地域活性化を図る取組に要する経費について特別交付税措置を講じるものであり、引き続き、制度の活用を推進していくこととしている。

c 地域プロジェクトマネージャー

地域活性化に向けたプロジェクトを実施する際には、外部専門人材、地域、行政、民間などが連携して取り組むことが不可欠だが、令和3年度から、そうした関係者間を橋渡ししつつプロジェクトをマネジメントできる「ブリッジ人材」を、地方公共団体が「地域プロジェクトマネージャー」として任用するための経費について特別交付税措置を講じており、引き続き、制度の活用を推進していくこととしている。

d 関係人口の創出・拡大

特定の地域に継続的に多様な形で関わる関係人口の創出・拡大に向けて、令和3年度から、「関係人口ポータルサイト」により、先進的な取組を通じて得られた知見の横展開を図るとともに、地方公共団体の関係人口創出・拡大の取組に対して地方交付税措置を講じることにより、全国各地での取組の実装化を図ることとしている。

e 若者定着に向けた地方大学の振興等

若年層等について、地方とのつながりを築き、地方への新しい人の流れをつくるため、「奨学金を活用した若者の地方定着の促進」及び「地方公共団体と地方大学の連携による雇用創出・若者定着の促進」に要する経費について特別交付税措置を講じており、引き続き、取組の普及を推進することとしている。

(イ)地域資源を活かした自立分散型地域経済の構築

a ローカルスタートアップ支援制度の創設

地域資源を活用し地域課題の解決に資する地域密着型事業の創業を大幅に増加させるため、令和5年度から、ローカル10,000プロジェクトや地方財政措置等を合わせて「ローカルスタートアップ支援制度」としてパッケージ化し、地域でのスタートアップを幅広く支援することとしている。

なお、ローカル10,000プロジェクトについて、日本政策金融公庫による融資及びふるさと融資を利用する場合の地方公共団体による融資を融資元に追加するとともに、ふるさと融資を利用する場合は、地方公共団体による地方債の利子負担及び連帯保証料の補助に対して、特別交付税措置を講じることとしている。

b 分散型エネルギーインフラプロジェクト

分散型エネルギーインフラプロジェクトでは、エネルギーの地産地消を進めるため、地方公共団体のマスタープラン策定を支援するとともに、関係省庁が連携して、マスタープランの策定から事業化までの徹底したアドバイス等を実施している。その推進に要する経費について、引き続き特別交付税措置を講じることとしている。

c 特定地域づくり事業の推進

「地域人口の急減に対処するための特定地域づくり事業の推進に関する法律」(令和元年法律第64号)に基づき都道府県の認定を受けた特定地域づくり事業協同組合の運営費等を支援する地方公共団体を対象に、国が補助を行うとともに、これに伴う地方負担等について、引き続き特別交付税措置を講じることとしている。令和5年2月末時点において、全国で72組合が認定を受けている。

イ 地域におけるリスキリングの推進

新しい資本主義の実現に向けて、「人への投資」は重要な課題であり、政府においては「人への投資」の施策パッケージを5年間で1兆円へ拡充するなど、リスキリングに対する公的支援を強化している。地方公共団体においても、経営者等の機運醸成やアウトリーチ支援など、地域に必要な人材確保のための独自の取組が広がりつつある。このような状況を踏まえ、地域に必要な人材確保(中小企業、農林水産、介護等)のため、デジタル・グリーン等成長分野に関するリスキリングの推進に資する経営者等の意識改革・理解促進、リスキリングの推進サポート等及び従業員の理解促進・リスキリング支援に要する経費について、令和5年度から新たに特別交付税措置を講じることとしている。

また、「地方公共団体と地方大学の連携による雇用創出・若者定着の促進」に関する特別交付税措置においても、令和5年度から、大学講師等による社会人等が対象のリスキリング講座の実施等に要する経費を対象に追加することとしている。

ウ 地域公共交通への対応

ローカル鉄道等の地域公共交通は、人口減少等による利用者の減少等により、持続可能性と利便性が低下し、地域公共交通ネットワークの維持が難しい状況となっている。

こうした中、ローカル鉄道の再構築を図るため、第211回通常国会に提出されている「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律案」により、地方公共団体又は鉄道事業者からの要請に基づき国土交通大臣が組織する「再構築協議会」が創設される予定である。この再構築協議会等における鉄道事業者と地域の合意に基づくローカル鉄道の再構築に取り組む地方公共団体への支援として、社会資本整備総合交付金の基幹事業に創設される地域公共交通再構築事業等を受けて実施する、持続可能性や利便性等の向上に資する鉄道施設やバス施設等の整備事業に係る地方負担について、新たに地方財政措置を講じることとしている。

また、各公営地下鉄事業の経営が引き続き厳しい状況である中で、新型コロナウイルス感染症の影響により経営環境の変化が生じていることを踏まえ、経営戦略の改定状況に応じた発行要件を設けた上で地下鉄事業特例債を令和5年度から5年間延長し、引き続き地方財政措置を講じることとしている。

エ 過疎対策の推進

過疎地域は、食料、水及びエネルギーの安定的な供給、自然災害の発生の防止、生物の多様性の確保その他の自然環境の保全、多様な文化の継承、良好な景観の形成等の多面にわたる機能を有し、これらが発揮されることにより、国民の生活に豊かさと潤いを与え、国土の多様性を支えている。

東京圏への人口の過度の集中により大規模な災害、感染症等による被害に関する危険の増大等の問題が深刻化する中、過疎地域の担うべき役割は一層重要なものとなっている一方、人口減少、少子高齢化の進展等他の地域と比較して厳しい社会経済情勢が長期にわたり継続し、地域社会を担う人材の確保、地域経済の活性化、情報化、交通機能や医療提供体制の確保、教育環境の整備、集落の維持、農地、森林等の適正な管理等が喫緊の課題となっている。

令和3年3月、過疎地域の持続的発展に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」(令和3年法律第19号)が第5次過疎対策法として制定され、同年4月から施行されている。同法に基づき、「人口要件」及び「財政力要件」を満たす市町村が過疎地域とされ、過疎対策事業債や国庫補助率の嵩上げ等の特例措置が講じられている。

令和4年4月1日現在の過疎関係市町村は、令和2年国勢調査結果に基づき65市町村が追加され、885市町村となっており、過疎関係市町村の全市町村に占める割合は51.5%となっている。

令和5年度においては、過疎対策事業債について、資材価格等の高騰による建設事業費の上昇を踏まえつつ、過疎地域の持続的発展に関する施策に取り組んでいけるよう、地方債計画に対前年度200億円増の5,400億円を計上するとともに、過疎地域における人材の育成や、ICT等技術を活用した取組等を支援する過疎地域持続的発展支援交付金について、前年度同額の8.0億円を予算計上している。

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