広島県で養蜂業×IoT/AIにトライし、質の高いハチミツの効率的な生産に取り組んでいる「はつはな果蜂園」代表の松原さんにインタビューさせていただきました。
Q1 現在の事業概要を教えてください。
「個人事業としては、養蜂と柑橘を育てる農家です。廿日市(はつかいち)を拠点に果実生産と養蜂を行なっているので、「はつはな果蜂園」という名称をつけています。果蜂というのは、自分の造語です。現在、養蜂のため巣箱を置いている場所は、廿日市市(宮島を含む)、大竹市、江田島です。
法人としては、株式会社ビー・エス(Bee’S)という会社でIoTとAIを利用して養蜂業の効率化を図る養蜂業支援システム「Bee Sensing」を販売しています。
Q2 養蜂にIoT/AIを活用しようと思われた理由は何ですか。
養蜂は管理をうまくやれば成長できる事業なのですが、1週間に1回は巣箱を開けて異常がないかを確認し、異常があればその都度対処する必要があります。例えば、卵が1週間生まれていなかったとすると、それを対処せずにそのままにしていると、その卵から働き蜂が羽化したはずの1ヶ月半後にはその巣箱に悪影響が出て、収穫減につながることもあります。
また、多くの巣箱を開けて中の状態を観察するには時間もかかり、飼育数に限界があるため、収穫量も決まってしまい、ビジネスもそこで頭打ちしてしまいます。 そのため、大手の養蜂家さんでは人手を増やしたり外国産のハチミツを輸入したりして対処するのですが、うちは、広島産のハチミツを産地を明記して販売していますので、そういった方法ではなく、効率的に飼育するにはどうすればよいかと考えたわけです。
そこで、養蜂業に携わることを相談していた友人と株式会社アドダイスさんに相談しました。その後、KDDIの無限大ラボやひろしまIT融合フォーラムの支援も受けて、システム開発をアドダイスさんに行なってもらい、今のシステム「Bee Sensing」ができました。
Q3 IoT/AI(システム)導入のメリットは何ですか。
島嶼部も含め、巣箱を置いてある場所まで行かなくても巣箱の状態がわかるというのは大きなメリットです。現在センサーで測定しているのは、温度と湿度ですが、例えば、外気の気温が変化している中でも、巣箱の中の気温が一定に保たれていれば、蜂が正常に活動していることが分かります。また、蜂の群れが分かれる(分蜂)前に、温度が高くなることも確認できました。
Q4 課題や今後の展望を教えてください。
ミツバチはまだ解明されていない部分も多く、今後はその蓄積したデータをAIを使って学習しながら関係性を調べていきたい。
理想としてはスマホから巣箱の異常及び異常概要を通知し、事前に対処法を確認した上で、現地での対処が最小になるようなシステムにしたいと考えています。巣箱を開けることはミツバチたちにとってはストレスになるので、そういったことを最小限のとどめ、かつミツバチを健康に保つことが最終目的です。ストレスのない健康なミツバチから採ったハチミツという、付加価値を付けて販売することも目指していきたい。
また、「Bee Sensing」の利用者を増やして更にデータを蓄積し、異常通知ができるようにしたいと考えています。利用者を増やすためには、コストを抑えることが不可欠だと思います。
親機と子機の間の通信は、現在はWi-Fiを使っていますが、NTTドコモさんに協力してもらい、LoRAを実証してみる予定です。通信コストの抑制、利用可能なエリアの拡大やバッテリーの持ちがよくなることを期待しています。
(平成30年3月26日取材)