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『平成22年度第3回地域力創造セミナー』開催概要

開催日

平成23年2月18日(金)

参加者数

54名  (自治体職員等)

次第

13:00
主催者挨拶
総務省地域力創造グループ 地域自立応援課 地域支援専門官 秦野 高彦
13:05〜13:15
地域自立応援課が推進する事業の概要について
総務省地域力創造グループ 地域自立応援課 地域支援専門官 秦野 高彦
13:15〜14:25
基調講演1
テーマ:農業の六次産業化による地域おこし
講師:伊賀の里モクモク手づくりファーム 社長理事 木村 修 氏
14:35〜15:45
基調講演2
テーマ:そばによる国際交流とむらおこし
講師:財団法人利賀ふるさと財団 理事長 中谷 信一 氏
15:55〜17:05
パネルトーク
テーマ:地域活性化について必要なものとは
コーディネーター:松蔭大学観光文化学部 教授 古賀 学 氏
パネリスト:木村 修 氏、中谷 信一 氏
17:05
閉会
※閉会後名刺交換会(情報交換会)を開催(17:05〜17:45)

平成22年度第3回地域力創造セミナー会場の写真

概要

基調講演1の写真(木村 修氏) <基調講演1>「農業の六次産業化による地域おこし」
木村 修 氏
 三重県の中山間地域である伊賀で六次産業化(自ら生産(一次)+自ら加工(二次)+自ら販売する(三次))を実践している(きっかけは、ウィンナーの製造体験)。その基本は「その地域で採れたものを売っていく」ことである。現在、年間の売上は50億円程度であり、常に付加価値の高い農業を目指している。そして、自分たちの農業が多く地域の人々にいかに支援されているかが大切である。
 近年、流通が変化し、価格競争、産地間競争、国際競争がより激しくなっている。この土俵で戦えば負けてしまう。同じ土俵ではなく、自分たちの土俵を作って差別化する必要がある。そういう中で作り上げたのが「地産地消」へのこだわりである。スーパーマーケットなどでも他社との差別化を図る上で、ブランドを作りたがっている。このような中で、地域もこれからはブランドを作らないと生き残れない状況となっている。
 「モクモク」は常に本質的価値を追い、美味しさと安心が重要と考えている。そして、生産においては、スピードと効率性を高め、生産物は地元だから新鮮である。しかし、「良いもの」だから売れるのではなく、「良いもの」を知ってもらわなければ売れない。どう消費者にPRするかが必要なのである。
 農業は一生懸命やればマスコミが応援してくれる環境がある。農業自体が過疎化や高齢化の中で衰退している状況であり、このような動向についてマスコミは「農業が可愛そう」だと考えてくれる。
 一生懸命取り組みことによって、結果としてブランドができてくる。地域の中でモクモクという存在価値を明らかにすることがブランドの基盤となっている。積極的に取り組んできた見学や体験が「モクモク」考え方に共感を呼び、消費者と「モクモク」を結ぶきっかけとなった。
 現在、モクモクは、「食育」を大事にしている。食の価値を知らしめる事が大切と考えている。どのように「良いもの」を理解してもらえるかを考えない事業は伸びない。



基調講演2の写真(中谷 信一氏) <基調講演2>「そばによる国際交流とむらおこし」
中谷 信一 氏
 市町村合併のため現在は南砺市の一部となっている利賀村は、富山県の山間部に位置し、昭和30年代半ばから過疎化のため人口流出が進み、若者も職を求めて村を出てしまうことが多く見られた。
 このような環境のなかで、古くから地域に根ざしてきた合掌造りの保存と芸術文化の交流の場として昭和48年「利賀合掌文化村」を設置した。さらにガイ氏即興人形劇場主宰の水田外史氏が合掌家屋にアトリエを開設し文化活動を開始する事となった。さらに地元出身者の関係で縁があった東京都の武蔵野市と姉妹都市の盟約を締結した。武蔵野市との交流は、市内小学校の長期宿泊体験の受入につながっている。東京圏の市と山村との連携の目的は、互いにないものを補うことであった。これが、利賀村の交流の始まりであった。
 その後、水田氏とのつながりから昭和49年より宝仙学園短期大学の利賀村移動受業「自然から学ぶ」を開始し、次第に交流が広がっていった。
 次に大きな転機となったのは、昭和51年に当時の早稲田小劇場(劇団「SCOT」)が利賀村に活動の拠点を求めて入り込み、世界演劇祭を開催したことである。演劇を通じてギリシャのデルフィ市との交流が生まれ、過疎の村は一気に世界と結びつくこととなった。
 このような動きを通じて、利賀村の知名度は次第に上がり村を誇りに思う村民意識も高まってきた。そして、村民が主体となったむらおこし活動や地域活性化イベントの開催意欲が高まり、当時は無謀といわれた真冬での地域活性化を目的にイベントを企画する事になる。その核となったのが、山村文化として古くから利賀村で大切にされてきた「そば」であった。「そば」を活かした村づくりを行うための、村民の活動の場として「そば祭り」を、一年で一番厳しい冬の時期に開催し、それが現在までさまざまな成果を上げながら継続している。
 「そば」について、常に多くの人が嗜好する「手打ちそば」、「手作りの蕎麦料理」としての「本物」*を志向していくことにより、そばの原産地であるネパールとの交流がうまれ、近年では韓国平昌郡との交流も活発になっている。足場をしっかりした取り組みを行うことにより、利賀村の交流は自然体のなかで広がりを増すこととなった。
 *本物:多くの人が嗜好する「手打ちそば」、「手作りの蕎麦料理」



パネルトーク会場の写真 <パネルトーク>「地域活性化について必要なものとは」
コーディネーター:古賀 学 氏
パネリスト:木村 修 氏、中谷 信一 氏

木村氏:モクモクの取り組み当初は、開発した加工品が売れずに苦労したが、今はうまくいっている。これはひとえに地域の連帯による成果である。
事業として展開していくためには、単純に農業をテーマにしてはダメであり、商品開発等の活動を通じて消費者の理解・認知を形成していくことが大切である。
農業を活性化するためには加工品開発が大切であり、不可価値の高い加工品を作らない限り地域振興は出来ない。そしてこの際、女性からの視点が大切である。

中谷氏:身近な地域振興をすることが地域住民の理解を得るうえで重要である。他の地域でやっている良いことは積極的にマネるべきである。最初はマネることから始まり、次第に地域の中で質を高めることや地域の特性を活用した取り組みを行っているうちに、地域固有(オリジナル)の「本物」のものとなり外の人にも共感を持って伝わっていく。
その地域に愛があれば、誰もが本気で活性化に取り組むことができる。中途半端ではなく真剣に取り組むことが重要である。何よりも自分が思ったことは先ずは実行することが重要である。

古賀氏:モクモクファームと利賀村は,農業を素材として地域振興を行うという視点は同じだが、その農業を生かした地域振興の手法や目標は異なる。モクモクファームは、農業・畜産加工品を中心とした顧客のニーズにあった共感を生み出す「流通システム」の構築、片や利賀村は、農産物であるソバを中心とした体験、イベント、野外学習、ネパールや韓国などとの連携など地域の活力となる「交流システム」の構築にあるという点である。その結果としては、どちらも地域や農業の特性を活かしたすばらしい地域振興が図られてきた。
異なった手法や目標ではあるが、それを実現化させるための理念には共通するところがある。その共通する主な点とは、一つは、様々な活動を通じて地域住民、消費者、そして海外など他地域の人々等との間に農業を通じて「信頼」という共通意識の形成が不可欠であるということ。
二つ目は、モクモクファームにおいては食の安心安全そして味の追求という視点から、利賀村においてはソバの原点を訪ねることから始り、その後の様々な活動などから裏付けられるソバの持つ可能性の追求といった視点から、誰もが認めるこれからの「本物」の農業のひとつの形を求めているということ。
そして三つ目は、一つのことにとどまらず、やる気ある人材の育成・雇用、多様な補助金等の活用、他地域や施設との実質的な交流など、様々な手段を活用して次々と新たな事業へと結びつけていくことにより、常に「発展」という持続を維持していくことにあるということである。
地域振興すべてにいえることではあるが、これからの農業を生かした地域振興においては、この両地域・施設のように、消費者や地域住民、流通や交流といったさまざまな視点から、農業・農産物が果たす役割の重要性・可能性を今一度認識し直し、それを推進していくための地域特性・農業特性を踏まえた地域や関係者の共通認識としての理念をしっかりと持つことが、ますます大切なこととなってくるであろう。

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