世界情報通信事情 World Information and Communication Circumstances

European Union 欧州連合(EU)(最終更新:令和7年度)

機関概要

設立目的

欧州域内の経済的統合を目指して発展してきた欧州共同体(European Community:EC)を基礎に、1993年11月、「マーストリヒト条約」に従って創立された。加盟国間の経済・通貨の統合、共通外交・安全保障政策の実施、欧州市民権の導入、司法・内務協力の発展等が創立目的として挙げられている。

加盟国

2025年10月現在、欧州連合(EU)の加盟国は27か国である。1951年調印のパリ条約によって欧州石炭鉄鋼共同体(European Coal and Steel Community:ECSC)が創設、更に1957年のローマ条約によって欧州経済共同体(European Economic Community:EEC)と欧州原子力共同体(European Atomic Energy Community:EURATOM)が設立されて以来、EU(EC)は拡大を続けてきた。

ECSC、EEC、EURATOMを設立した6か国(ベルギー、フランス、ドイツ、イタリア、ルクセンブルク、オランダ)は「原加盟国」と呼ばれる。また1995年の第4次拡大までの加盟国を「EU15か国」、2004年以降の加盟国を「新規加盟国」と呼ぶことがある。現在、加盟候補国としてアルバニア、北マケドニア、モンテネグロ、セルビア、トルコ、ウクライナ、ジョージア、モルドバ、ボスニア・ヘルツェゴビナが欧州理事会により承認され、コソボが潜在的加盟候補国と位置付けられている。

英国のEU離脱については、2020年1月にEUと英国がそれぞれ離脱協定に署名し、同年2月より英国はEU加盟国でなくなり、EUにとって第三国となった。移行期間も2020年12月末をもって終了している。

EUの組織

EU法の種類

EU法は第1次法と第2次法に分類される。第1次法はEUを基礎付ける条約、第2次法は、条約に法的根拠を持ち、そこから派生する法である。第2次法(以下、EU法)には適用範囲と法的拘束力の強弱によって、①規則(Regulation)、②指令(Directive)、③決定(Decision)、④勧告・意見(Recommendation/Opinion)の4種類が存在する。

EU法の立法過程における決定手続

EU法の立法過程における決定手続には、欧州議会の関与の程度に応じて、①通常立法手続、②同意手続、③諮問手続の3分類が存在する。通常立法手続においては、欧州議会と欧州連合理事会は、少なくとも1回は提案(法案)の審議に加わることができる。

EUの主要機関

EUには様々な機関が存在しているが、通信分野においては、欧州理事会、欧州連合理事会、欧州議会、欧州委員会、欧州連合司法裁判所が主なものとして位置付けられる。

欧州理事会(European Council 「EUサミット」又は「EU首脳会議」と呼称されることもある。欧州連合の全体的な政治指針と優先課題を決定する。リスボン条約によって正式な機関として位置付けられ、欧州理事会議長とEU外務・安全保障政策上級代表が新設された。メンバーは加盟国の元首・首脳と欧州委員会委員長、欧州理事会議長で構成され、外務・安全保障政策上級代表も任務遂行に参加する。全体の会合は最低年4回開催され、同時に経済、雇用、産業等の個別の分野の政策に関する論議が行われる。
欧州連合理事会(Council of the European Union EUの主たる決定機関である。「閣僚理事会」又は「EU理事会」と呼称されることもある。欧州議会と立法機能及び予算権限を共有し、共通外交及び安全保障政策と経済政策調整で中核的な役割を担う。本部はブリュッセルに置かれ、特定の会議はルクセンブルクで開かれる。議長国は半年交代の輪番制であり、2025年1月~2026年6月期の議長国は、2025年前半がポーランド、2025年後半がデンマーク、2026年前半はキプロスとなっており、2026年7月~2027年12月期の議長国は、2026年後半がアイルランド、2027年前半がリトアニア、2027年後半はギリシャとなっている。
欧州連合理事会は、加盟国の分野別閣僚(担当大臣)によって構成される。分野は10分野(一般、外務、経済・財政、司法・内務、雇用・社会政策・健康・消費者問題、競争力、運輸・電気通信・エネルギー、農業・漁業、環境、教育・青少年・文化・スポーツ)あり、それぞれの理事会を総称して欧州連合理事会と呼ぶ。
欧州議会(European Parliament 欧州連合理事会と並ぶ、EUの主たる決定機関である。欧州議会は、本会議はストラスブール(フランス)、一部の本会議、委員会及び事務局支部がブリュッセル、事務局本部はルクセンブルクに置かれている。
本会議では、各委員会で討議された法案等についての報告書が審議されるほか、EU内部の事項、国際情勢等も討議され、決議・勧告等が採択される。委員会は、具体的な政策を討議し、欧州議会としての意思決定のため準備を行う。
欧州委員会(European Commission EUの執行及び政策決定機関としての機能を担い、主に以下を所掌する。
  • EUの政策及び法案の提案
  • EU法(条約、条約の規定に基づく決定等)の公正な適用の監督
  • EUの行政及び執行機関として機能
  • 競争法分野における立法
欧州連合司法裁判所(Court of Justice of the European Union EU諸条約を含めたEU法の遵守を確保するため、その解釈、適用及びEU諸機関のすべての行為において必要な司法上の保護措置の実施を役割とする。欧州連合司法裁判所は、欧州司法裁判所、一般裁判所で構成される。

現行の規制枠組と手続

欧州電子通信コード(通信分野)

欧州委員会は2016年9月、既存の「電子通信規制パッケージ」の4指令を一本化する「欧州電子通信コード(European Electronic Communication Code:EECコード)」を提案した。主な内容は以下のとおりである。

  • 競争と投資の予測可能性の増進
  • 周波数の効率的な利用
  • 消費者保護の強化
  • 安全なオンライン環境と公正な市場の実現

5G展開のための周波数割当、大容量の固定網展開強化、市民のアクセス機会増大とセキュリティ対策といった同案の内容に対し、「電子通信」定義の見直し、SMP(Significant Market Power)事業者の卸売事業における義務の再規定と規制機関の役割の強化、ユニバーサル・サービス範囲の拡張、移動体通信着信料金の欧州域内での単一化等の修正内容が盛り込まれ、2018年12月に新たな指令として施行された。

オーディオ・ビジュアル・メディア・サービス指令(AVMS規制分野)

欧州議会は、2007年11月、「オーディオ・ビジュアル・メディア・サービス(AVMS)指令(2007/65/EC)」を採択した。正式名称は「テレビ放送活動の遂行に関し、加盟国において法律、規則、行政行為によって制定される規定の調整に関する1989年10月3日付け理事会指令(89/552/EEC)の改正についての2007年12月11日付け欧州議会及び理事会指令」。

2016年5月、欧州委員会は、デジタル単一市場戦略の一環としてAVMS指令の改正案を公表し、2018年11月に成立した。改正AVMS指令は、メディア事業者への公正な競争環境の提供、欧州制作作品の振興、有害コンテンツからの児童の保護、ヘイトスピーチ対策強化等を目的としている。また、新たに登場したオンラインプラットフォーム事業者に対する新たなアプローチについても盛り込んでいる。

政策動向

欧州委員会のデジタル政策

2019年に発足した欧州委員会のフォン・デア・ライエン体制は、2019~2024年の第1期と、再選を果たした2024~2029年の第2期から成る。2025年10月現在のデジタル分野における最優先事項としては、現政権で成立させたデジタル関連規制の執行強化に加え、デジタル技術主導の競争力強化、行政負担の軽減と規制簡素化、並びにオンラインにおける青少年保護等が示されている。

第1次体制において、2019年7月にフォン・デア・ライエン次期欧州委員長(当時)が公表した「次期欧州委員会の政治的ガイドライン2019~2024」では、「デジタル時代にふさわしい欧州(A Europe fit for digital age)」が優先政策課題の一つに掲げられた。

次に、欧州委員会は2020年2月、上述の優先政策課題の下、「ヨーロッパのデジタルの未来を形作る(Shaping Europe’s digital future)」という目標を示し、併せて「欧州データ戦略」と「人間中心主義のAI開発政策」を公表した。更に欧州委員会は、2024年までのデジタル分野での主な柱として、①人に役立つ技術、②公正で競争力のある経済、及び③開かれた、民主的で持続可能な社会を掲げ施策を推進した。

第2次体制において、2024年7月、欧州議会において2期目続投の信任投票に先立ち、フォン・デア・ライエン次期欧州委員長候補は、「次期欧州委員会の政治的ガイドライン2024~2029」を公表した。同ガイドラインは欧州理事会が示した戦略アジェンダに沿ったもので、以下の七つの柱で構成されている。

  • 欧州の持続可能な繁栄と競争力のための新たな計画
  • 欧州の防衛と安全保障のための新たな時代
  • 人々を支援し、社会と社会モデルを強化
  • QOL(Quality of Life)の維持:食糧安全保障、水、自然
  • 民主主義の堅守と価値観の擁護(「欧州民主主義の盾」の提案)
  • 世界における欧州:我々の影響力とパートナーシップの活用
  • 共に力を合わせ、我が連合の未来を築く

2025年1月には、第2次体制における最初の主要イニシアチブとして、戦略枠組「競争力コンパス(Competitiveness Compass)」が公表された。EUの競争力向上に関する提言をまとめたイタリア前首相のマリオ・ドラギ氏の報告書(通称「ドラギレポート」)を土台とし、ロードマップを示すものとなっている。三つの主要アクションとして、イノベーションギャップを埋めること、脱炭素化と競争力のための共同ロードマップ及び過剰な依存の削減と安全保障の強化を掲げているが、特にイノベーションギャップについては、「AIギガファクトリー」と「Apply AI」イニシアチブを提案するとしたほか、先端材料、量子、バイオテクノロジー、ロボット工学及び宇宙技術に関する行動計画の提案や、「EUスタートアップ・スケールアップ戦略」の策定、また、手続の簡素化・破産コスト削減の「28番目の法制度(28th legal regime)」の提案を行っていくとした。その他、2025年5月に新たな単一市場戦略を、2025年6月に関係諸国とのデジタル分野での連携を図る「EU国際デジタル戦略」を公表している。

プラットフォーム規制

欧州委員会は2020年12月15日、EU域内で運用するデジタル・プラットフォームにおける消費者保護、基本的権利、公正な市場構築を目的とした、2本の包括規則案「デジタルサービス法(Digital Services Act:DSA)」及び「デジタル市場法(Digital Markets Act:DMA)」を提案した。両案は、2022年11月にそれぞれ施行されている。

すべてのデジタルサービスに適用されるDSAは、「eコマース指令」を改正し、安全なオンライン環境を実現するため、サービスの仲介を行うオンラインプラットフォーム事業者に対して各種義務を課すことで、違法コンテンツ削除や言論の自由を含むユーザのオンラインにおける基本的権利の効果的な保護のメカニズムを向上させることを目的としている。具体的な規律の内容は、事業者の規模及び影響力に応じて異なり、特にEU域内の10%以上の人口(2025年11月現在の閾値は4,500万人)を有する超巨大プラットフォーム・検索エンジンに対しては、欧州委員会による強化された監督が実現する。

一方DMAは、対等な競争市場を構築し、EU単一市場における「ゲートキーパー」としての巨大プラットフォームがオンライン上で公正な態度を取るよう対処することを目的としている。強力な経済力、仲介の役割を果たし、市場で確立された永続的な地位を有するオンラインプラットフォームが提供するコアプラットフォームサービス(オンライン仲介、検索エンジン、SNS、動画共有プラットフォーム等)が規律の対象となる。欧州委員会が、①売上高要件(過去3年度でEU域内の売上高が年間75億EUR以上又は前年度の平均時価総額750億EUR以上であり、3か国以上の加盟国でコアプラットフォームサービスを提供)、②ユーザ数要件(前年度にEU域内で平均4,500万人以上の月間アクティブエンドユーザかつ年間1万社以上のビジネスユーザにコアプラットフォームサービスを提供)及び③持続性要件(3年度の間、上記②の要件を満たす)の三つを満たしたプラットフォームを指定し、監督・執行を行う。

AI関連規制

欧州委員会は2021年4月、AI規則案を発表した。同規則案について欧州委員会は、AIに関する世界初の法的枠組と、EU加盟各国との協調計画で構成されており、AIに関する国際基準の設定において欧州の主導的立場を強化するねらいがあるとしている。同規則は、2024年5月に成立、同年8月に施行された。EUで使用されるAIシステムが、安全、透明、倫理的、公平、そして人間の管理下にあることを確認するために、人間の生命や権利へ与える影響の大きさを基準として、AI利用を「禁止」「高リスク」「限定的な危険性」「最小限の危険性」の4段階に分類している。様々な用途に利用可能な機能を備えた「汎用AI(general-purpose AI:GPAI)」モデルについては、これら4段階の分類とは別に固有の義務を定めている。

電波政策

具体的な周波数帯の分配につき、EUは加盟各国に各種の勧告や決議を出している。

欧州委員会は2021年10月、欧州市場で流通する無線機器のサイバーセキュリティ要件を強化するため、無線機器指令(RED)に対する委任法(delegated act)(注:委任法とは、欧州委員会が委任された権限によって採択する法行為で、通常の立法行為と区別される)案を採択した。同法案は、移動電話、スマートウォッチ、フィットネストラッカー、ベビーモニター等のワイヤレス玩具等の無線デバイスに対して、市場に出回る前に安全性を保証するため、各メーカーに対して設計や生産過程におけるサイバーセキュリティセーフガードに関する新たな要件を課している。同法案は2か月の調査期間を経て、欧州理事会及び議会の異議の申立てがなかったため、施行された。