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令和3年版
地方財政白書
(令和元年度決算)

第1部 令和元年度の地方財政の状況

1 地方財政の役割

地方公共団体は、その自然的・歴史的条件、産業構造、人口規模等がそれぞれ異なっており、これに応じて様々な行政活動を行っている。

地方財政は、このような地方公共団体の行政活動を支えている個々の地方公共団体の財政の集合であり、国の財政と密接な関係を保ちながら、国民経済及び国民生活上大きな役割を担っている。

(1)国・地方を通じた財政支出の状況[資料編:第32表

国・地方を通じた財政支出について、国(一般会計と交付税及び譲与税配付金、公共事業関係等の6特別会計の純計)と地方(普通会計)の財政支出の合計から重複分を除いた歳出純計額は172兆2,667億円で、前年度と比べると、1.8%増(前年度0.6%増)となっている。

歳出純計額の目的別歳出額の構成比の推移は、第1図のとおりであり、令和元年度においては、社会保障関係費が最も大きな割合(34.7%)を占め、以下、公債費(20.0%)、教育費(11.9%)、機関費(11.8%)の順となっている。

第1図 国・地方を通じた目的別歳出額構成比の推移

この歳出純計額を最終支出の主体に着目して国と地方とに分けてみると、国が73兆4,201億円(全体の42.6%)、地方が98兆8,467億円(同57.4%)で、前年度と比べると、国が2.0%増(前年度1.4%増)、地方が1.6%増(同0.0%増)となっている。

また、歳出純計額の目的別歳出額について国と地方に分けて示したものが第2図である。これによると、防衛費、民生費のうち年金関係のように国のみが行う行政に係るものは別として、民生費(年金関係を除く。)、衛生費、学校教育費等、国民生活に直接関連する経費については、最終的に地方公共団体を通じて支出される割合が高いことが分かる。これを地方公共団体において実施されている具体的な行政事務でみると以下のとおりである。

第2図 国・地方を通じた純計歳出規模(目的別)

衛生費については、住民の健康を保持増進し、生活環境の改善を図るため、医療、公衆衛生、精神衛生等に係る対策が推進されるとともに、ごみなど一般廃棄物の収集・処理等住民の日常生活に密着した諸施策が実施されている。学校教育費については、幼稚園、小中学校、高等学校教育等が実施されている。司法警察消防費については、都道府県において、犯罪の防止、交通安全の確保その他地域社会の安全と秩序を維持し、国民の生命、身体及び財産を保護するため、警察行政が推進されるとともに、東京都及び市町村等において、火災、風水害、地震等の災害から国民の生命、身体及び財産を守り、これらの災害を防除し、被害を軽減するため、消防行政が推進されている。民生費(年金関係を除く。)については、社会福祉の充実を図るため、児童、高齢者、障害者等のための福祉施設の整備及び運営、生活保護の実施等の施策が行われている。

(2)国民経済と地方財政[資料編:第33表第131表

国内総生産(支出側、名目。以下同じ。)のうち、中央政府、地方政府、社会保障基金及び公的企業からなる公的部門は、家計部門に次ぐ経済活動の主体として、資金の調達及び財政支出等を通じ、資源配分の適正化、所得分配の公正化、経済の安定化等の重要な機能を果たしている。その中でも、地方政府は、中央政府を上回る最終支出主体であり、国民経済上、大きな役割を担っている。

なお、社会保障基金については、労働保険等の国の特別会計に属するもの、国民健康保険事業会計(事業勘定)等の地方の公営事業会計に属するもの等が含まれている。

ア 国内総生産(支出側)と地方財政

国民経済において地方政府が果たしている役割を国内総生産に占める割合でみると、第3図のとおりである。令和元年度の国内総生産は559兆6,988億円で、その支出主体別の構成比は、家計部門が57.2%(前年度57.6%)、公的部門が25.2%(同24.7%)、企業部門が17.7%(同17.8%)となっている。

第3図 国内総生産(支出側、名目)と地方財政

公的部門のうち、地方政府及び中央政府が国内総生産に占める割合は、地方政府が11.1%(前年度10.8%)、中央政府が4.2%(同4.0%)となっており、地方政府の構成比は中央政府の約2.6倍となっている。

イ 公的支出の状況

公的部門による公的支出の推移は、第4図のとおりである。令和元年度の公的支出は、前年度と比べると、2.6%増(前年度1.4%増)の140 兆9,657 億円となっている。また、国内総生産に占める割合は、25.2%(前年度24.7%)となっている。

第4図 公的支出の推移

公的支出の内訳をみると、第5図のとおり、政府最終消費支出が111兆7,147億円、公的総資本形成が29兆2,511億円となっており、これらを前年度と比べると、政府最終消費支出は2.4%増(前年度1.3%増)、公的総資本形成は3.3%増(同1.9%増)となっている。

第5図 公的支出の状況

さらに、公的支出の内訳を最終支出主体別にみると、中央政府は、前年度と比べると、政府最終消費支出が4.4%増(前年度1.2%増)、公的総資本形成が1.2%増(同0.3%減)で合計3.4%増(同0.7%増)であり、公的支出に占める中央政府の割合は、前年度と比べると0.1ポイント上昇の16.5%となっている。

地方政府は、前年度と比べると、政府最終消費支出が1.4%増(前年度1.4%増)、公的総資本形成が7.7%増(同2.7%増)で、合計2.9%増(同1.7%増)であり、公的支出に占める地方政府の割合は、前年度と比べると0.1ポイント上昇の43.9%となっている。

また、政府最終消費支出及び公的総資本形成に占める地方政府の割合をみると、政府最終消費支出においては前年度(42.4%)と比べると0.4ポイント低下の42.0%、公的総資本形成においては前年度(49.2%)と比べると2.1ポイント上昇の51.3%となっている。

各最終支出主体が国内総生産の増加率にどの程度の影響を与えたかを示す指標である寄与度の推移は、第6図のとおりである。国内総生産の増加率(経済成長率)0.5%に対する地方政府の寄与度は0.3%で、中央政府の寄与度は0.1%となっている。

第6図 国内総生産(支出側、名目)の増加率に対する寄与度

なお、ここでいう公的支出には、国・地方の歳出に含まれる経費の中で、移転的経費である扶助費、普通建設事業費のうち所有権の取得に要する経費である用地取得費、金融取引に当たる公債費及び積立金等といった付加価値の増加を伴わない経費などは除かれている。したがって、公的支出に占める中央政府及び地方政府の割合と歳出純計額に占める国と地方の割合は一致していない。

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