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令和3年版
地方財政白書
(令和元年度決算)

8 地方行政をめぐる動向と地方分権改革の推進

(1)多様な広域連携の推進

ア 第32次地方制度調査会について

平成30年7月5日に発足した第32次地方制度調査会は、約2年に及ぶ調査審議を経て、令和2年6月26日に「2040年頃から逆算し顕在化する諸課題に対応するために必要な地方行政体制のあり方等に関する答申」を内閣総理大臣に提出した。同答申は、2040年頃から逆算し顕在化する諸課題に対応するという観点から、必要な地方行政体制のあり方として、<1>地方行政のデジタル化、<2>公共私の連携、<3>地方公共団体の広域連携、<4>地方議会について提言したものである。

イ 地方公共団体間の多様な広域連携について

第32次地方制度調査会答申を踏まえ、2040年頃にかけて顕在化する人口構造等の変化やリスクに的確に対応し、持続可能な形で行政サービスを提供していくため、地方公共団体間の多様な広域連携を推進する。そのためには、地方公共団体が、それぞれの地域における長期的・客観的な変化・課題の見通し(「地域の未来予測」)を作成し、これを踏まえ、定住自立圏・連携中枢都市圏や、相互補完的・双務的な役割分担に基づく連携など、地域の実情に応じた広域連携を検討していくことが考えられる。

(ア)定住自立圏構想の推進

「定住自立圏構想」とは、人口5万人程度以上の中心市と近隣市町村が連携・協力し、「生活機能の強化」、「結びつきやネットワークの強化」及び「圏域のマネジメント能力の強化」を行うことにより、圏域全体で必要な生活機能を確保し、地方圏への人口定住を促進する政策であり、平成21年度から全国展開を行っている。

令和3年1月現在では、140市が中心市として圏域を形成する意思を宣言し、128の圏域(延べ537市町村)が形成されるなど、全国で着実に定住自立圏構想による取組が進んでいる。

(イ)連携中枢都市圏構想の推進

「連携中枢都市圏構想」とは、地域において、相当の規模と中核性を備える圏域の中心都市が近隣の市町村と連携し、コンパクト化とネットワーク化により「経済成長のけん引」、「高次都市機能の集積・強化」及び「生活関連機能サービスの向上」を行うことにより、人口減少・少子高齢社会においても一定の圏域人口を有し活力ある社会経済を維持するための拠点を形成する政策であり、平成26年度から全国展開を行っている。

令和3年1月現在では、36市が中心都市として圏域を形成する意思を宣言し、34の圏域(延べ325市町村)が形成されるなど、全国で着実に連携中枢都市圏構想による取組が進んでいる。

(ウ)多様な広域連携の取組

第32次地方制度調査会答申において、市町村が、他の地方公共団体と連携し、住民の生活機能の確保や持続可能な都市構造への転換、都市・地域のスマート化の実現など、まちづくり等に広域的に取り組んでいくことが必要であり、地域の実情に応じ、市町村間の広域連携や都道府県による補完・支援等の多様な手法の中から、最も適したものを自ら選択することが適当であると指摘された。

今後、定住自立圏・連携中枢都市圏のほか、地方公共団体間の多様な広域連携を推進することとしており、その前提となる地域の未来予測の作成について、具体的な分野・指標等を提示するとともに、関連する地方財政措置を検討することとしている。

(2)地方公共団体職員に係る取組

ア 給与の適正化及び適正な定員管理の推進

地方公共団体においては、現下の厳しい財政状況において、計画的に行政改革を推進するとともに住民への説明責任を果たす見地から、目標の数値化や分かりやすい指標の活用を図りつつ、給与情報等公表システムにより給与及び定員の公表を行うなど、給与の適正化や適正な定員管理などの取組を行っている。

令和2年4月1日時点のラスパイレス指数は、地方公共団体平均で99.1となっており、平成24年及び平成25年の国家公務員の給与減額支給措置の影響を除き、平成16年以降、17年連続で100を下回っている。地方公共団体の総職員数については、第51表のとおり、令和2年4月1日の対前年比で、都道府県0.8%増、政令指定都市1.7%増、政令指定都市を除く市町村0.4%増となっており、全地方公共団体においては0.8%の増加となった。

第51表 地方公共団体の定員管理の状況について(令和2年4月1日現在)

イ 会計年度任用職員制度の施行への対応

地方公務員の臨時・非常勤職員制度については、「地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律」(平成29年法律第29号)により、令和2年度から会計年度任用職員制度が導入された。

この制度は、これまで課題とされてきた(1)一般職の非常勤職員の採用方法等の明確化、(2)労働者性の高い非常勤職員への期末手当の支給、(3)特別職の任用要件や臨時的任用の要件の厳格化などを図るものである。

会計年度任用職員制度の導入に伴う財源については、新たに必要となる期末手当等の経費について令和2年度の地方財政計画に1,738億円を計上した。また、令和3年度においては、制度の平年度化による期末手当の支給月数の増によって生じる経費を加え、対前年度664億円増の2,402億円を計上した。

令和2年4月1日現在の状況*9については、「令和2年度地方公務員の臨時・非常勤職員に関する調査*10」の結果、都道府県、市町村及び一部事務組合等における会計年度任用職員は62.2万人であった。

また、臨時的任用職員は6.8万人、特別職非常勤職員(法第3条第3項第3号)は0.4万人であった。

各地方公共団体においては、概ね、制度の趣旨に沿った運用が図られているが、一部にまだ対応が十分でない団体もあり、必要な適正化を図ることが求められる。

(3)地方分権改革の推進

ア 地方に対する事務・権限の移譲及び規制緩和に係る取組

地方分権改革については、「地方分権改革推進法」(平成18年法律第111号)による地方分権改革推進委員会の勧告に基づき、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成23年法律第37号。いわゆる「第1次地方分権一括法」)から「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成26年法律第51号。いわゆる「第4次地方分権一括法」)までの4次にわたる一括法により、地方に対する事務・権限の移譲及び規制緩和(義務付け・枠付けの見直し)について、具体的な改革が積み重ねられてきた。

平成26年には、これまでの成果を基盤とし、地方の発意に根差した新たな取組を推進することとして、「地方分権改革に関する提案募集の実施方針」(平成26年4月30日地方分権改革推進本部決定)により地方分権改革に関する「提案募集方式」を導入し、地方に対する事務・権限移譲や規制緩和に関する地方からの提案を受け付けている。これまで、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成27年法律第50号。いわゆる「第5次地方分権一括法」)から「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(令和2年法律第41号。いわゆる「第10次地方分権一括法」)までの一括法により、地方側の長年の懸案であった農地転用許可の権限移譲や地方版ハローワークの創設をはじめとするさらなる事務・権限の移譲等を行うなど、国が選ぶのではなく、地方が選ぶことができる地方分権改革が推進されている。

また、政府の地方分権改革の推進体制としては、内閣総理大臣を本部長とする地方分権改革推進本部が政策決定機能を担い、地方分権改革担当大臣の下に開催されている地方分権改革有識者会議が調査審議機能を担っている。さらに、地方分権改革有識者会議の下で、提案募集検討専門部会等を開催し、専門的な見地から検討が行われている。

これまでの地方分権改革における主な取組は、以下のとおりである。

(ア)事務・権限移譲

地方分権改革においては、地方公共団体、特に住民に最も身近な行政主体である基礎自治体に事務事業を優先的に配分し、地方公共団体が地域における行政の自主的かつ総合的な実施の役割を担うことができるようにすることが必要不可欠である。

これまでの地方分権一括法等により、国から地方公共団体への事務・権限の移譲については、看護師など各種資格者の養成施設等の指定・監督等の国(地方厚生局)の事務・権限を都道府県へ移譲する改正や、自家用有償旅客運送の登録、監督等の国(地方運輸局)の事務・権限を希望する市町村へ移譲する改正等が、都道府県から基礎自治体への事務・権限の移譲については、都市計画に関する事務を市町村へ移譲する改正や、県費負担教職員の給与等の負担、定数の決定等に係る権限を道府県から政令指定都市へ移譲する改正等が行われた。

以上のような事務・権限の移譲により、窓口の一本化等による住民の利便性向上、地域課題の解決に資する独自の取組、総合行政の展開による行政の効果的・効率的な運営が進んでいる。

(イ)地方に対する規制緩和(義務付け・枠付けの見直し)

地方分権を進めるためには、これまで国が一律に決定し地方公共団体に義務付け・枠付けを行ってきた基準、施策等を、地方公共団体が条例の制定等により自ら決定し、実施することができるように改めていく必要がある。

義務付け・枠付けの見直しについては、累次にわたる地方分権一括法等により、これまで法令により全国画一的に定められていた保育所や放課後児童クラブの設備・運営に関する基準など施設・公物設置管理の基準等を条例に委任すること等により、地域の実情や住民のニーズ等を反映した地方独自の基準の制定が進んでいる。

イ 令和2年の地方からの提案等に関する対応方針

令和2年12月、地方分権改革推進本部及び閣議において、「令和2年の地方からの提案等に関する対応方針」(令和2年12月18日閣議決定。以下「令和2年対応方針」という。)が決定された。

「令和2年対応方針」においては、現場の課題に基づく地方からの提案等にきめ細かく対応し、都道府県から市町村への事務・権限の移譲、規制緩和(義務付け・枠付けの見直し)等を推進することとされている。

「令和2年対応方針」に盛り込まれた事項のうち、主なものは第132図のとおりである。

第132図 令和2年の地方からの提案等に関する対応方針(概要)

令和2年対応方針に盛り込んだ事項のうち、法律の改正により措置すべき事項については、所要の一括法案等を第204回通常国会に提出することを基本とし、現行規定で対応可能な提案については、地方公共団体に対する通知等により明確化することとされている。

また、地方公共団体において、移譲された事務・権限を円滑に執行できるよう、地方税、地方交付税や国庫補助負担金等により、確実な財源措置を講じるとともに、マニュアルの整備や技術的助言、研修や職員の派遣などの必要な支援を実施することとされている。

今後とも、地方からの提案をいかに実現するかという基本姿勢に立って、地方分権改革を着実かつ強力に進めていくこととされている。

ウ 地方税財源の充実確保

各地方公共団体が自らの発想で特色を持った地域づくりを進めていくためには、その基盤となる地方税財源の充実確保を図るとともに、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築を進めることが重要である。地方公共団体が地域における新型コロナウイルス感染症対策の主体であることも踏まえつつ、引き続き取組を進めていくことが必要である。

なお、令和3年度税制改正については、令和2年11月17日に、地方財政審議会から、「令和3年度地方税制改正等に関する地方財政審議会意見」(附属資料参照)が提出されるとともに、同年12月21日に「令和3年度税制改正の大綱」が閣議決定された。

以上を踏まえ、地方税制の改正を行うため、「地方税法等の一部を改正する法律案」を第204回通常国会に提出している。



*9 出典:会計年度任用職員制度等に関する調査結果
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei11_02000153.html

*10 任用期間が6か月以上、かつ1週間当たりの勤務時間が19時間25分(常勤職員の半分)以上である者。

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