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令和3年版
地方財政白書
(令和元年度決算)

4 地方創生の推進

地方創生は、出生率の低下によって引き起こされる人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持することを目的としており、主な取組は以下のとおりである。

(1)地方創生の取組

ア 地方創生の動き

将来にわたる活力ある地域社会の実現と、東京圏への一極集中の是正を目的として、平成26年に国の第1期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(平成26年12月27日閣議決定。以下、「総合戦略」という。)が策定され、これを受け、地方公共団体が「地方版総合戦略」を策定し、地方創生の取組が進められてきた。

こうした取組の結果、地方の若者の雇用の改善など、一定の成果が現れてきたものの、依然として東京圏への一極集中の傾向は続いていることから、第1期の成果と課題の検証を踏まえ、第2期総合戦略(令和元年12月20日閣議決定)が策定された。第2期総合戦略においては、<1>「稼ぐ地域をつくるとともに、安心して働けるようにする」、<2>「地方とのつながりを築き、地方への新しい人の流れをつくる」、<3>「結婚・出産・子育ての希望をかなえる」、<4>「ひとが集う、安心して暮らすことができる魅力的な地域をつくる」の4つの基本目標と、<1>「多様な人材の活躍を推進する」、<2>「新しい時代の流れを力にする」の2つの横断的目標が定められた。その後、新型コロナウイルス感染症の影響等を踏まえ、第2期総合戦略の2020改訂版(令和2年12月21日閣議決定)が策定された。

この第2期総合戦略の2020改訂版における新たな取組としては、

  • 地方への移住・定着を目指した、地方創生に資するテレワークや東京から地方へのUIJターンによる起業・就業者の創出の推進
  • 特定の地域に継続的にオンラインの活用を含めた多様な形で関わる「関係人口」の創出・拡大の推進
  • 専門的知見を有する企業の人材を、企業版ふるさと納税の仕組みに基づき地方公共団体へ派遣する「企業版ふるさと納税(人材派遣型)」の活用の促進等が盛り込まれた。

イ 地方版総合戦略への支援

このような中、国においては、地方版総合戦略に基づく地方公共団体の取組を支援することとされている。

令和2年度補正予算(第3号)においては、地方創生拠点整備交付金について、500億円が確保されるとともに、地方公共団体によるサテライトオフィス等の整備・運営、利用促進等を支援する100億円の「地方創生テレワーク交付金」が新設された。

また、令和3年度当初予算案においては、地方創生推進交付金について引き続き1,000億円が確保されるとともに、テレワークにより東京での仕事を継続しながら地方へ移住する場合も支援の対象とするなどの移住支援事業の要件緩和等、さらなる運用改善を行うこととされている。

さらに、地方公共団体が地域の実情に応じ、自主的・主体的に地方創生に取り組むことができるよう、平成27年度以降、地方財政計画に計上している「まち・ひと・しごと創生事業費」について、令和3年度においても引き続き1兆円を確保した。

(2)地方回帰支援

密な都市生活を回避する新たな価値観が芽生え、テレワーク等の普及により国民の意識や行動が変容してきているこのタイミングを捉え、東京一極集中の是正に向けて、自立分散型地域経済の構築を推進し、都市部の多様な人材の地方回帰を支援するため、特に以下の施策を推進することとしている。

ア 関係人口の創出・拡大

特定の地域に継続的に多様な形で関わる関係人口の創出・拡大に向けては、平成30年度から、モデル事業*6を実施してその成果検証を行うとともに、「『関係人口』ポータルサイト」等を通じ、関係人口の意義や事例について情報発信することで、地方公共団体の取組の普及支援や高度化を図ってきた。

令和3年度においては、これまでのモデル事業を通じて得られた知見の横展開を行い、取組の実装化を図ることとし、関係人口の創出・拡大等に取り組む市町村について、新たに地方交付税措置を行うこととしている。

イ 地域おこし協力隊等による地域への人材還流の促進

地域おこし協力隊制度は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に移住し、一定期間以上、当該地域に居住して、地場産品の開発・販売・PR等の地域おこしの支援や、農林水産業への従事、住民の生活支援等の各種の地域協力活動に従事する取組である。令和元年度には、全国1,071の地方公共団体で5,503人の地域おこし協力隊員が活動している。

こうした中、隊員数を令和6年度に8,000人まで増加させるという目標の達成に向け、令和3年度から、隊員希望者が2週間から3ヶ月間実際の地域おこし協力隊の業務に従事することができる「地域おこし協力隊インターン」を創設することとしているほか、任期後の定住・定着の支援策として、隊員が任期後に居住する空き家の改修に要する経費について新たに特別交付税措置を講じることとしているなど、地域おこし協力隊制度の拡充を行う。

さらに、市町村が、地域住民、民間企業、外部専門人材等と連携しながら地域活性化に向けた重要プロジェクトを実施する際に、その現場責任者として、関係者間を調整及び橋渡ししながらプロジェクトを推進する者を「地域プロジェクトマネージャー」として任用するための経費について、新たに特別交付税措置を講じることとしている。

ウ 地域活性化起業人

地域おこし企業人は、市町村が、三大都市圏に所在する民間企業等の社員を6ヶ月以上3年以内の期間受け入れ、そのノウハウや知見を活かし、地域独自の魅力や価値の向上等につながる業務に従事してもらう取組であり、平成26年度から企業人の受入に要する経費等について特別交付税措置を講じている。令和元年度には、全国65の市町村で95人の地域おこし企業人が活動している。

こうした中、さらに企業人材が幅広く市町村の様々な課題に対応できるよう、令和3年度から「地域活性化起業人」に改めるとともに、新たに三大都市圏外の都市地域等でも活動できるよう地域要件を拡大し、企業人材の一層の活用を促進することとしている。

なお、地域独自の魅力や価値を向上させるため、地域活性化の取組に関する知見やノウハウを有する外部専門家が市町村に赴き指導・助言を行う「地域力創造アドバイザー」についても、同様に地域要件を拡大することとしている。

エ 特定地域づくり事業の推進

地域人口の急減に直面している地域において、農林水産業、商工業等の地域産業の担い手を確保するための特定地域づくり事業を行う事業協同組合に対して、財政的、制度的支援を行うことを定めた「地域人口の急減に対処するための特定地域づくり事業の推進に関する法律」(令和元年法律第64号)が令和2年6月4日に施行された。

同法に基づき都道府県知事の認定を受けた特定地域づくり事業協同組合の運営費等を支援する地方公共団体を対象に、国が補助を行うとともに、これに伴う地方負担等について特別交付税措置を講じることとしており、引き続き制度の普及を促進していくこととしている。

オ 若者定着に向けた地方大学の振興等

若年層を中心として地方から東京圏に人口が流出している中、地方とのつながりを築き、地方への新しいひとの流れをつくるためには、地方大学の振興や地方における雇用創出・若者の地元就業等による地方定着は重要な課題である。

平成27年度から内閣官房、総務省、文部科学省が連携して実施している「奨学金(「地方創生枠」等)を活用した大学生等の地方定着の促進」及び「地方公共団体と地方大学の連携による雇用創出・若者定着の促進」の取組支援のうち、前者については、令和2年度から、制度の広報に係る経費について新たに特別交付税措置を講じるとともに、市町村の取組については、基金の設置を不要とし、支援対象者に「高校生等」を追加するなどの拡充等を行ったことにより、活用団体が、令和元年度の51団体(13県21市13町4村)から令和2年度の113団体(16県54市37町6村)に大きく増加している。また、後者については、令和2年度の活用団体は12団体(8県4市)となっている。

さらに、地域貢献・地域連携を主たる目的とする公立大学等施設の整備について、引き続き地域活性化事業債の対象とすることとしている。

カ ローカル10,000プロジェクト

産学金官の連携により、地域の資源と地域金融機関の資金を活用して、雇用吸収力の大きい地域密着型事業を立ち上げる「ローカル10,000プロジェクト」を推進している。

具体的には、地域の金融機関から融資を受けて事業化に取り組む民間事業者が、事業化段階で必要となる初期投資費用について、地方公共団体が助成を行う場合において、それに要する経費の一部又は全部を国が補助することとしている。令和元年度までに408事業が交付決定されており、地域経済への様々な波及効果が期待されている。

キ 分散型エネルギーインフラプロジェクト

地方公共団体を核として、需要家、地域エネルギー会社及び金融機関等、地域の総力を挙げて、バイオマス、廃棄物等の地域資源を活用した地域エネルギー事業を立ち上げるマスタープランを策定する団体を支援する「分散型エネルギーインフラプロジェクト」を推進している。

令和元年度までに54団体がマスタープランを策定しており、さらなる普及を目指して、地方公共団体職員向けのハンドブックを作成し、令和2年12月に各地方公共団体に配布している。

引き続き、関係省庁タスクフォースと連携して、マスタープランの策定支援や、「事業化ワンストップ相談窓口」でコンサルティングを行うとともに、令和3年度からは、マスタープランと関係省庁補助金の連携強化を図るほか、事業化に必要となる各分野の専門人材リストについて関係省庁間で共有し、地方公共団体に人材を紹介・派遣する仕組みを構築するなど、事業化に向けた支援を行うこととしている。

(3)過疎対策の推進

平成12年に制定・施行された「過疎地域自立促進特別措置法」(平成12年法律第15号。以下「過疎法」という。)は、平成22年、24年、26年及び29年の法改正により、令和3年3月までの期限延長、国勢調査結果による過疎地域の要件の追加、過疎対策事業債の対象施設の見直し及びソフト事業への拡充、経済・社会情勢に応じた所要の見直しが行われてきた。

過疎地域は、過疎法に基づき市町村ごとに「人口要件」及び「財政力要件」により判定されており、過疎対策事業債等の支援が行われる。令和2年4月1日現在での過疎関係市町村は817市町村となっており、過疎関係市町村の割合は47.6%となっている。

過疎地域は、都市部の災害防止、水源の涵養、安心・安全な食料の供給、森林による二酸化炭素の吸収などにより、都市部の生活と成長を支えている一方で、従来より、人口減少、高齢化、身近な生活交通の不足、医師不足、維持が危ぶまれる集落の問題など、多くの課題が存在している。現行の過疎法失効後の新たな過疎対策の確立に対応し、過疎地域の持続的発展のための施策を推進するため、令和3年度においては、過疎対策事業債について、地方債計画に対前年度300億円増の5,000億円を計上するとともに、過疎地域における人材の育成や、ICT等技術を活用した取組等を支援する過疎地域持続的発展支援交付金について、対前年度0.9億円増の7.8億円を予算計上している。



*6 モデル事業の例:地方の農業に関心のある都市部からの滞在者との協働による農業用水路の修繕(鳥取県鳥取市(令和元年度モデル事業))等

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