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令和3年版
地方財政白書
(令和元年度決算)

2 地域のデジタル化の推進

国においては、行政のデジタル化の集中改革を強力に推進するため、マイナンバー制度と国・地方を通じたデジタル基盤のあり方を含め、抜本的な改善を図ることとされ、地方公共団体における情報システム等の共同利用の推進や地方公共団体の行政手続のオンライン化の推進等を盛り込んだ「デジタル・ガバメント実行計画」(令和2年12月25日閣議決定)が策定された。

(1)自治体DX推進計画の策定

デジタル・ガバメント実行計画に掲げられた地方公共団体に関連する施策について、国が主導的に役割を果たしつつ、地方公共団体全体として、足並みを揃えて取り組んでいく必要があることから、総務省においては、地方公共団体が重点的に取り組むべき事項・内容を具体化するとともに、総務省及び関係省庁による支援策等を取りまとめ、「自治体デジタル・トランスフォーメーション(以下「DX」という。)推進計画」として令和2年12月25日に策定した。

自治体DX推進計画では、DX推進のために地方公共団体が取り組むべき事項を着実に実施するため、<1>首長、CIO*1、CIO補佐官等を含めた全庁的なマネジメント体制の構築等による組織体制の整備、<2>外部人材の活用及び職員の育成の推進等によるデジタル人材の確保・育成、<3>スケジュール策定等による計画的な取組、<4>市町村における個別の施策の着実な推進・デジタル技術の共同導入・人材確保等について都道府県による市町村支援といった、推進体制を構築することを示している。

また、デジタル・ガバメント実行計画の各施策のうち、地方公共団体が取り組むべき主な重点取組事項として、<1>地方公共団体の情報システムの標準化・共通化、<2>マイナンバーカードの普及促進、<3>地方公共団体の行政手続のオンライン化、<4>地方公共団体のAI・RPAの利用促進、<5>テレワークの推進、<6>セキュリティ対策の徹底を示している。このうち、情報システムの標準化・共通化は、令和7年度末を目標として、全国規模のクラウド基盤(Gov-Cloud(仮称)*2)の活用に向けた検討を踏まえ、地方公共団体の主要な17業務を処理するシステム(基幹系システム)*3について、国の策定する標準仕様に準拠したシステムへ移行する取組である。また、行政手続のオンライン化は、令和4年度末を目標として、原則、全地方公共団体で、特に国民の利便性向上に資する手続*4について、マイナポータルからマイナンバーカードを用いたオンライン手続を可能にする取組である。

さらに、これらの施策とともに地方公共団体が取り組むべき事項として、すべての地域がデジタル化によるメリットを享受できるよう地域社会のデジタル化を集中的に推進することや、地域の幅広い関係者と連携し、デジタル活用支援員の枠組みも活用しつつ、地域住民に対するきめ細やかなデジタル活用支援を実施するデジタルデバイド対策を示している。

(2)地方公共団体の情報システムの標準化・共通化

地方公共団体の情報システムの標準化・共通化については、デジタル・ガバメント実行計画において、基幹系システムの標準仕様を、デジタル庁*5が策定する基本的な方針の下、関係府省において作成することとされており、それぞれの業務システムについて、作成等の期限を含め、今後の工程が示されている。また、同計画においては、各事業者が、標準仕様に準拠して開発したシステムを「Gov-Cloud(仮称)」上に構築し、令和7年度末を目標として、当該システムを各地方公共団体が利用することを目指すこととされている。

こうした標準化・共通化を実効的に推進するため、国が定める標準仕様に準拠したシステムの利用を地方公共団体に義務付けること等を定めた「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律案」を第204回通常国会に提出している。

また、地方公共団体が「Gov-Cloud(仮称)」への移行のために必要となる準備経費やシステム移行経費に対し、令和7年度まで国が補助を行うこととしている。

(3)マイナンバー制度の改善及びマイナンバーカードの普及・利活用の促進

ア マイナンバー制度の意義

マイナンバー制度は、より公平な社会保障制度や税制の基盤となるとともに、安心・安全なデジタル社会のインフラとして国民の利便性の向上や行政の効率化に資するものである。すなわち、所得把握の精度が向上し、真に手を差し伸べるべき人に対する社会保障の充実、負担・分担の公平性がより一層確保されることや、行政の効率化が図られ、限られた行政資源を住民サービスの充実のために、より重点的に配分することが可能となる(第129図)

第129図 マイナンバー制度の意義について

今後、各地方公共団体において業務のICT化などを進め、質の高い行政サービスを効果的・効率的に提供する業務改革に取り組んでいくに当たっては、マイナンバーシステム(マイナンバー制度と関連の各システム)が提供する様々な機能を積極的に活用していくことが不可欠である。

また、マイナンバーの確認と本人確認を1枚で行えるマイナンバーカードは、官民・分野を問わず、オンラインでも確実な本人確認手段として住民が幅広く利用可能であることから、あらゆるモノやサービスがインターネットでつながるSociety 5.0時代における必須ツールとなる。

イ マイナンバーを活用した情報連携の円滑な運用

マイナンバー制度の重要な根幹が、平成29年11月から本格運用が開始された情報連携である。マイナンバー法に基づき総務省が設置・管理する情報提供ネットワークシステムを用いて、国の行政機関や地方公共団体がそれぞれ管理している同一個人の情報をオンラインで情報連携し、相互に活用することが可能となった。これにより、令和3年1月時点で児童手当の申請など約2,300の事務手続で情報連携による提出書類等の削減が実現し、行政手続のペーパレス化やワンストップ化の進展に寄与しており、今後も順次、対象事務が増えていくことが予定されている。

ウ マイナポータルの利用拡大

国が運営するオンラインサービスとして、国民一人一人に用意されたポータルサイトがマイナポータルである。自身のマイナンバー付きの個人情報が情報連携された履歴を確認する「情報提供等記録表示」機能のほか、運用開始以降、利用可能なサービスが着実に拡大している。

市町村の子育てや介護、被災者支援関係などの手続について、サービス検索やオンライン申請を可能とするワンストップサービス(ぴったりサービス)が提供可能となっており、行政機関からのお知らせ(プッシュ型)サービスの活用も含め、手続のオンライン化による行政サービスの効果的・効率的な提供に向けて、各地方公共団体の積極的な利用が期待される。なお、マイナポータルの機能改修により、令和3年度上半期から地方公共団体は、個別の接続サービスの有無にかかわらずマイナポータルに接続することができるようになる。

また、マイナポータルを活用した子育て、介護等のオンライン手続の導入を促進するため、市町村が必要となる経費に対し、令和4年度まで国が補助を行うこととしている。

エ マイナンバーカード(公的個人認証サービス等)の普及と利活用の促進

マイナンバーカードは、券面による身分証明機能に加え、ICチップに搭載された公的個人認証サービスによってオンラインでの確実な本人確認を可能とするものである。国民にマイナンバー制度のメリットをより実感してもらえるデジタル社会を早期に実現するため、安全・安心で利便性の高いデジタル社会の基盤となるマイナンバーカードの普及とその利便性の向上を図る必要があり、令和4年度末には、ほとんどの住民がカードを保有することを目指し、さらなる申請促進・市町村の交付体制の強化などの取組が必要である。

令和元年6月4日のデジタル・ガバメント閣僚会議において、「マイナンバーカードの普及とマイナンバーの利活用の促進に関する方針」が決定され、令和2年度にマイナンバーカードを活用した消費活性化策(以下「マイナポイント事業」という。)を実施することや、令和3年3月からマイナンバーカードの健康保険証としての利用を開始することなど様々なマイナンバーカード普及策が決定され、令和元年9月3日の同会議においては、医療機関等におけるマイナンバーカードの健康保険証利用の環境整備とマイナンバーカードの交付枚数(想定)に関する全体スケジュールが決定された。

また、デジタル・ガバメント実行計画の「国・地方デジタル化指針」では、マイナンバーカードの利活用・利便性向上に向けた具体の取組方針と工程表が示され、今後は、これらに基づき、取組を着実に進めることとされている。この中において、マイナポイント事業については、令和3年3月末までにマイナンバーカードの交付申請を行った者をマイナポイント申込・付与の対象に加え、事業期間を令和3年度にかけて延長するとともに、4,000万人としていた対象人数の拡大を図ることとされており、令和2年度補正予算(第3号)及び令和3年度当初予算案において、追加で計1,000万人分の予算を計上している。

さらに、マイナンバーカードの発行・運営体制の強化のため、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)を国と地方公共団体が共同で管理する法人へ転換し、国のガバナンスを強化すること等を定めた「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案」を第204回通常国会に提出している。

(4)地域デジタル社会推進費の創設

光ファイバの全国的な展開や5Gサービスの開始、ローカル5Gの導入など情報通信基盤の整備の進展を踏まえ、今後これらの基盤を有効に活用し、すべての地域がデジタル化によるメリットを享受できるよう地域社会のデジタル化を推進していく必要がある。

このため、地方公共団体金融機構の公庫債権金利変動準備金を活用して、地域社会のデジタル化を集中的に推進するための経費として、令和3年度及び令和4年度に限り、地方財政計画に新たに「地域デジタル社会推進費」(各年度2,000億円)を計上することとしている。

これに対応し、地方交付税の算定においても新たな費目として「地域デジタル社会推進費」を創設し、算定額は道府県分800億円程度、市町村分1,200億円程度とすることとしている。算定に当たっては、人口を基本とした上で、地域住民を主な対象とする取組に係る指標として、高齢者数及び障害者数を、地域企業を主な対象とする取組に係る指標として、事業所数、一次産業事業所数、中小企業数を用いて、全国平均に対するその割合によって割増しを行うこととしている。

上記の措置を講じるため、「地方交付税法等の一部を改正する法律案」を第204回通常国会に提出している。



*1 Chief Information Officer 最高情報統括責任者。

*2 政府の情報システムについて、共通的な基盤・機能を提供する複数のクラウドサービスの利用環境のこと。地方公共団体の情報システムについても「Gov-Cloud(仮称)」を活用できるよう、具体的な対応方策や課題等について検討を進めている。

*3 児童手当、住民基本台帳、選挙人名簿管理、固定資産税、個人住民税、法人住民税、軽自動車税、就学、国民健康保険、国民年金、障害者福祉、後期高齢者医療、介護保険、生活保護、健康管理、児童扶養手当、子ども・子育て支援を処理するシステムのこと。

*4 デジタル・ガバメント実行計画における「地方公共団体が優先的にオンライン化を推進すべき手続」のうち、住民がマイナンバーカードを用いて申請を行うことが想定される手続から選定された、子育て(15手続)、介護(11手続)、被災者支援(罹災証明書)、自動車保有(4手続)の計31手続

*5 第204回通常国会に提出されている「デジタル庁設置法案」に基づき今後設置されるデジタル庁をいう。

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