画像に関するアクセシビリティ対応について
図やグラフなどの画像の内容の詳細については、総務省自治財政局財務調査課にお問い合わせください。
電話番号:03-5253-5111(内線5649)

令和3年版
地方財政白書
(令和元年度決算)

8 東日本大震災の影響

(1)普通会計

平成23年3月11日に発生した東日本大震災は、死者19,729人、行方不明者2,559人(令和2年3月10日、総務省消防庁発表)、被害総額(推計)約16兆9千億円(平成23年6月24日、内閣府(防災担当)発表)にのぼる被害をもたらすとともに、全国的にも生産、消費、物流等の経済活動に大きな影響を与えた。

政府は、東日本大震災発生直後から、被災者の生活の支援や被災地の復旧・復興対策に当たってきており、令和元年度においても前年度に引き続き、被災地の地方公共団体を中心に復旧・復興事業など多額の東日本大震災関連経費が支出された。その状況は次のとおりである。

ア 東日本大震災分の歳入及び歳出の状況

(ア)歳入[資料編:第136表

東日本大震災分の歳入は、繰入金、国庫支出金の減少等により、前年度と比べると2,469億円減(10.4%減)の2兆1,221億円となっている。これを団体区分別にみると、都道府県においては、国庫支出金、繰越金の減少等により、前年度と比べると1,147億円減(8.0%減)の1兆3,191億円となっており、市町村においては、繰入金、都道府県支出金の減少等により、前年度と比べると1,654億円減(15.0%減)の9,372億円となっている。

歳入の構成比は、国庫支出金が30.6%(前年度30.4%)、一般財源が26.2%(同21.8%)、繰入金が21.1%(同23.9%)等となっている。

国庫支出金は、災害復旧事業費支出金の減少等により、前年度と比べると716億円減(9.9%減)の6,493億円となっている。

一般財源は、震災復興特別交付税の増加等により、前年度と比べると399億円増(7.7%増)の5,564億円となっている。

繰入金は、東日本大震災復興関連基金からの繰入金の減少により、前年度と比べると1,185億円減(20.9%減)の4,476億円となっている。

(イ)歳出[資料編:第137表第138表

a 目的別歳出

東日本大震災分の目的別歳出は、土木費、災害復旧費の減少等により、前年度と比べると2,812億円減(13.5%減)の1兆8,053億円となっている。これを団体区分別にみると、都道府県においては、災害復旧費、農林水産業費の減少等により、前年度と比べると1,295億円減(10.4%減)の1兆1,178億円となっており、市町村においては、土木費、総務費の減少等により、前年度と比べると1,663億円減(16.9%減)の8,156億円となっている。

目的別歳出の構成比は、土木費が30.5%(前年度31.1%)、総務費が15.7%(同15.1%)、災害復旧費が13.7%(同14.5%)等となっている。

土木費は、区画整理費、住宅費の減少等により、前年度と比べると982億円減(15.1%減)の5,508億円となっている。

災害復旧費は、公共土木施設の復旧事業の減少等により、前年度と比べると566億円減(18.7%減)の2,467億円となっている。

b 性質別歳出

東日本大震災分の性質別歳出は、普通建設事業費、災害復旧事業費の減少等により、前年度と比べると2,812億円減(13.5%減)の1兆8,053億円となっている。これを団体区分別にみると、都道府県においては、災害復旧事業費、普通建設事業費の減少等により、前年度と比べると1,295億円減(10.4%減)の1兆1,178億円となっており、市町村においては、普通建設事業費、補助費等の減少等により、前年度と比べると1,663億円減(16.9%減)の8,156億円となっている。

性質別歳出の構成比は、普通建設事業費が42.1%(前年度43.4%)、積立金が15.5%(同13.5%)、災害復旧事業費が13.7%(同14.5%)等となっている。

普通建設事業費は、補助事業費の減少等により、前年度と比べると1,450億円減(16.0%減)の7,600億円となっている。

災害復旧事業費は、補助事業費の減少等により、前年度と比べると565億円減(18.6%減)の2,467億円となっている。

イ 特定被災地方公共団体等における決算の状況[資料編:第139表

(ア)特定被災県

a 歳入

特定被災県(「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律」(平成23年法律第40号。以下「東日本大震災財特法」という。)第2条第2項に定める特定被災地方公共団体である県をいう。)9県の歳入総額は9兆5,907億円で、前年度と比べると0.2%増(全国では1.1%増)となっている。

このうち通常収支分は8兆2,859億円で、前年度と比べると1.6%増(全国では1.3%増)、東日本大震災分は1兆3,048億円で、前年度と比べると7.7%減(同8.0%減)となっている。

歳入総額の内訳を前年度と比べると、地方税が1.5%減(全国では0.4%増)、地方交付税が3.5%増(同0.7%増)、国庫支出金が0.7%増(同4.3%増)等となっている。

b 歳出

特定被災県の歳出総額は9兆1,740億円で、前年度と比べると0.4%減(全国では0.8%増)となっている。

このうち通常収支分は8兆684億円で、前年度と比べると1.0%増(全国では1.1%増)、東日本大震災分は1兆1,056億円で、前年度と比べると10.1%減(同10.4%減)となっている。なお、特定被災県の東日本大震災分の歳出は、全国の都道府県における東日本大震災分の歳出の98.9%を占めている。

歳出総額の目的別の各費目を前年度と比べると、総務費が6.7%減(全国では12.0%増)、民生費が4.8%増(同5.0%増)、災害復旧費が8.7%減(同10.0%減)等となっている。

歳出総額の性質別の各費目を前年度と比べると、普通建設事業費が5.5%増(全国では2.4%増)、災害復旧事業費が8.7%減(同10.3%減)、積立金が18.6%減(同23.5%増)等となっている。

c 決算収支

特定被災県の実質収支は802億円の黒字で、前年度と比べると20億円減少(全国では1,503億円増加)している。

d 地方債現在高等の状況

特定被災県の地方債現在高は15兆7,100億円で、前年度と比べると0.4%減(全国では0.4%減)となっている。債務負担行為額は1兆1,300億円で、前年度と比べると11.9%減(同7.0%減)となっている。積立金現在高は1兆6,792億円で、前年度と比べると6.0%減(同2.7%減)となっている。

(イ)特定被災市町村等

a 歳入

特定被災市町村等(「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律第二条第二項及び第三項の市町村を定める政令」(平成23年政令第127号)の別表第1に定める特定被災地方公共団体である市町村並びに同令の別表第2及び別表第3に定める市町村のうち特定被災地方公共団体以外のものをいう。)227市町村の歳入総額は7兆5,625億円で、前年度と比べると1.0%増(全国では2.5%増)となっている。

このうち通常収支分は6兆6,668億円で、前年度と比べると3.7%増(全国では2.9%増)、東日本大震災分は8,957億円で、前年度と比べると15.3%減(同15.0%減)となっている。

歳入総額の内訳を前年度と比べると、地方税が1.4%増(全国では1.9%増)、地方交付税が4.6%増(同1.6%増)、国庫支出金が5.0%増(同7.7%増)等となっている。

b 歳出

特定被災市町村等の歳出総額は7兆1,922億円で、前年度と比べると0.7%増(全国では2.5%増)となっている。

このうち通常収支分は6兆4,141億円で、前年度と比べると3.4%増(全国では2.8%増)、東日本大震災分は7,782億円で、前年度と比べると17.1%減(同16.9%減)となっている。なお、特定被災市町村等の東日本大震災分の歳出は、全国の市町村における東日本大震災分の歳出の95.4%を占めている。

歳出総額の目的別の各費目を前年度と比べると、総務費が0.4%減(全国では1.5%増)、民生費が3.7%増(同3.4%増)、災害復旧費が24.8%増(同10.6%増)等となっている。

歳出総額の性質別の各費目を前年度と比べると、普通建設事業費が6.3%減(全国では6.7%増)、災害復旧事業費が25.0%増(同10.6%増)、積立金が3.9%減(同5.1%減)等となっている。

c 決算収支

特定被災市町村等の実質収支は2,039億円の黒字で、前年度と比べると81億円減少(全国では264億円増加)している。

d 地方債現在高等の状況

特定被災市町村等の地方債現在高は6兆5,177億円で、前年度と比べると0.6%増(全国では0.3%増)、債務負担行為額は1兆3,214億円で、前年度と比べると9.5%減(同4.1%増)、積立金現在高は2兆2,007億円で、前年度と比べると6.8%減(同0.7%減)となっている。

(2)公営企業会計

公営企業については、特定被災県及び東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律第二条第二項及び第三項の市町村を定める政令の別表第1に定める特定被災地方公共団体である178市町村(当該団体が加入する一部事務組合等を含む。以下「特定被災地方団体」という。)を対象として、東日本大震災の災害復旧事業に係る一般会計からの繰出基準の特例等を講じている。

特定被災地方団体における公営企業の決算状況は次のとおりである。

ア 特定被災地方団体における公営企業全体の経営状況[資料編:第140表

特定被災地方団体における法適用企業と法非適用企業(建設中のものを除く。)を合わせた収支の状況は、黒字事業が794事業(事業数全体の89.8%)で、前年度と比べると20事業減少(2.5%減)している。黒字額は1,266億円で、前年度と比べると47億円増加(3.9%増)している。また、赤字事業は90事業(事業数全体の10.2%)で、前年度と比べると6事業増加(7.1%増)している。赤字額は244億円で、前年度と比べると10億円増加(4.3%増)している。

特定被災地方団体における公営企業の総収支は1,022億円の黒字で、前年度と比べると37億円増加(3.7%増)している。

前年度に比べ収支が改善した事業は6事業あり、下水道事業で117億円(対前年度比48.5%増)と最も大きく改善し、次いで宅地造成事業で20億円(同10.5%増)、ガス事業で7億円(同29.0%増)改善している。一方、前年度に比べ収支が悪化した事業は9事業あり、水道事業で36億円(対前年度比7.5%減)と最も大きく悪化し、次いで交通事業で31億円(同155.0%減)悪化している。

また、前年度に比べ黒字額が減少し、赤字額が増加した事業は6事業あり、病院事業においては、黒字額が14億円減少、赤字額が13億円増加している。

イ 特定被災地方団体における公営企業の料金収入[資料編:第141表

料金収入は1兆529億円で、前年度と比べると86億円減少(0.8%減)している。

前年度に比べ料金収入が増加した事業は6事業あり、病院事業で66億円(対前年度比1.6%増)と最も大きく増加し、次いで電気事業で9億円(同4.4%増)、港湾整備事業で1億円(同1.7%増)増加している。一方、前年度に比べ料金収入が減少した事業は9事業あり、水道事業で85億円(対前年度比2.5%減)と最も大きく減少している。

ウ 特定被災地方団体における公営企業の他会計繰入金[資料編:第142表

他会計からの繰入金は3,850億円で、前年度と比べると78億円減少(2.0%減)している。

この内訳をみると、収益的収入として2,361億円(収益的収入に対する繰入金の割合14.9%)、資本的収入として1,489億円(資本的収入に対する繰入金の割合26.9%)となっており、前年度に比べ収益的収入への繰入れは38億円増加(1.7%増)し、資本的収入への繰入れは117億円減少(7.3%減)している。

前年度に比べ他会計繰入金が増加した事業は6事業あり、下水道事業で10億円(対前年度比0.5%増)と最も大きく増加している。一方、前年度に比べ他会計繰入金が減少した事業は9事業あり、宅地造成事業で51億円(対前年度比23.3%減)と最も大きく減少し、次いで病院事業で15億円(同1.3%減)減少している。

エ 特定被災地方団体における法適用企業の経営状況[資料編:第143表

特定被災地方団体における法適用企業の純損益の状況をみると、黒字事業は300事業(対前年度比24事業増加、8.7%増)で、全事業数(建設中のものを除く。)の78.1%となっており、赤字事業は84事業(対前年度比4事業増加、5.0%増)で、同21.9%となっている。

総収益(経常収益+特別利益)は1兆3,379億円で、前年度と比べると226億円増加(1.7%増)、総費用(経常費用+特別損失)は1兆2,816億円で、前年度と比べると333億円増加(2.7%増)し、この結果、純損益は563億円の黒字となっており、前年度と比べると107億円減少(16.0%減)している。また、総収支比率は104.4%と前年度と比べると1.0ポイント低下している。

なお、総収益に占める料金収入の割合は70.9%(前年度73.2%)と前年度と比べると2.3ポイント低下している。

経常損益(純損益―特別損益)の状況をみると、経常利益を生じた事業数は302事業(対前年度比27事業増加、9.8%増)で、経常損失を生じた事業数は82事業(同1事業増加、1.2%増)となっている。経常損失を生じた事業数の全事業数(建設中のものを除く。)に占める割合は21.4%と前年度と比べると1.4ポイント低下している。

経常収益(営業収益+営業外収益)は1兆3,295億円で、前年度と比べると261億円増加(2.0%増)しており、経常費用(営業費用+営業外費用)は1兆2,698億円で、前年度と比べると351億円増加(2.8%増)している。なお、経常損益は597億円の黒字で、前年度と比べると90億円減少(13.1%減)している。また、経常収支比率は104.7%と前年度と比べると0.9ポイント低下している。

オ 特定被災地方団体における法非適用企業の経営状況[資料編:第144表

特定被災地方団体における法非適用企業全体の実質収支は459億円の黒字であり、前年度と比べると144億円増加(45.7%増)している。

実質収支で黒字を生じた事業は494事業で、全事業数(建設中のものを除く。)の98.8%、赤字を生じた事業は6事業で、同1.2%となっている。黒字事業の実質黒字額は471億円で、前年度と比べると150億円増加(46.6%増)している。また、赤字事業の実質赤字額は12億円で、前年度と比べると6億円増加(92.6%増)しており、営業収益(受託工事収益を除く。)に対する実質赤字額(赤字比率)は0.8%(前年度0.4%)となっている。

ページトップへ戻る