4 地方経費の内容
普通会計の歳出決算額について、主な行政目的に従って、生活・福祉の充実、教育と文化、土木建設、産業の振興、保健衛生、警察と消防に分けてその状況をみると、以下のとおりである。
(1)生活・福祉の充実
ア 社会福祉行政
地方公共団体は、社会福祉の充実を図るため、児童、高齢者、障害者等のための福祉施設の整備及び運営、生活保護の実施等の施策を行っている。
これらの諸施策に要する経費である民生費の決算額は30兆2,720億円で、子育て世帯等臨時特別支援事業等の新型コロナウイルス感染症対応に係る事業費の減少等により、前年度と比べると3.3%減となっている。
また、団体区分別にみると、市町村の決算額は都道府県の約2.7倍となっている。これは、児童福祉に関する事務及び社会福祉施設の整備・運営事務が主として市町村によって行われていることや、生活保護に関する事務が市町村(町村については、福祉事務所を設置している町村に限る。)によって行われていること等によるものである。
民生費の目的別内訳の状況は、第27図のとおりである。また、主な費目の決算額を前年度と比べると、児童福祉費が11.0%減、社会福祉費*3が1.4%減、老人福祉費が5.4%増、生活保護費が0.1%減となっている。
これを団体区分別にみると、都道府県においては、後期高齢者医療事業会計、介護保険事業会計への負担金を拠出していることから、老人福祉費の構成比が最も大きく、以下、社会福祉費、児童福祉費の順となっている。市町村においては、児童福祉に関する事務及び社会福祉施設の整備・運営事務を主に行っていることから、児童福祉費の構成比が最も大きく、以下、社会福祉費、老人福祉費、生活保護費の順となっている。
民生費の目的別歳出の推移は、第28図のとおりである。
10年前(平成24年度)と比べると、児童福祉費は約1.4倍、社会福祉費は約1.6倍、老人福祉費は約1.3倍、生活保護費はほぼ同じであり、民生費総額は約1.3倍となっている。
民生費の性質別内訳の状況は、第29図のとおりである。また、主な費目の決算額を前年度と比べると、子育て世帯等臨時特別支援事業等の新型コロナウイルス感染症対応に係る事業費の減少等により、扶助費が7.8%減、後期高齢者医療事業会計や国民健康保険事業会計への繰出金の増加等により、繰出金が2.2%増、生活福祉資金の貸付事業費の減少等により、補助費等が3.7%減となっている。
なお、地方公共団体の決算額において、社会福祉行政や保健衛生(本節(5))等のうち、社会保障施策に要する経費は20兆7,135億円となっており、うち社会保障4経費*4に則った範囲の社会保障給付に充てられた経費は15兆9,980億円となっている。
一方、平成26年4月1日及び令和元年10月1日に引き上げられた税率に係る令和4年度の地方消費税収入の額は3兆4,944億円、令和4年度の消費税の地方交付税法定率分は4兆5,005億円で、その合計は7兆9,948億円となっている。
イ 労働行政
地方公共団体は、就業者等の福祉向上を図るため、職業能力開発の充実、金融対策等の施策を行っている。
これらの諸施策に要する経費である労働費の決算額は2,656億円で、事業者への支援に係る事業費の減少等により、前年度と比べると6.2%減となっている。
労働費の性質別内訳の状況は、第30図のとおりである。また、主な費目の決算額を前年度と比べると、物件費が3.0%増、人件費が2.3%減、補助費等が18.6%減、貸付金が7.5%減となっている。
(2)教育と文化
地方公共団体は、教育の振興と文化の向上を図るため、学校教育、社会教育等の教育文化行政を行っている。
これらの諸施策に要する経費である教育費の決算額は17兆7,681億円で、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会関連事業費の減少等により、前年度と比べると0.1%減となっている。
教育費の目的別内訳の状況は、第31図のとおりである。また、主な費目の決算額を前年度と比べると、小学校費が1.1%増、教育総務費*5が0.4%増、中学校費が1.7%増、高等学校費が2.8%減となっている。
目的別の構成比を団体区分別にみると、都道府県においては、政令指定都市を除く市町村立義務教育諸学校の人件費を負担していること等により、小学校費が最も大きな割合を占め、以下、教育総務費、高等学校費、中学校費の順となっている。市町村においては、義務教育諸学校の管理・運営や給食等に要する経費を主に負担していること等により、小学校費が最も大きな割合を占め、以下、保健体育費*6、教育総務費、中学校費、社会教育費の順となっている。
教育費の性質別内訳の状況は、第32図のとおりである。また、主な費目の決算額を前年度と比べると、人件費が0.1%増、物件費が6.0%増、普通建設事業費が4.8%減となっている。
(3)土木建設
地方公共団体は、地域の基盤整備を図るため、道路、河川、公園、住宅等の公共施設の建設、整備等を行うとともに、これらの施設の維持管理を行っている。
これらの諸施策に要する経費である土木費の決算額は12兆4,444億円で、前年度と比べると1.9%減となっている。
土木費の目的別内訳の状況は、第33図のとおりである。また、主な費目の決算額を前年度と比べると、道路橋りょう費が3.5%減、都市計画費*7が1.1%増、河川海岸費が4.0%減となっている。
土木費の性質別内訳の状況は、第34図のとおりである。また、主な費目の決算額を前年度と比べると、普通建設事業費が3.9%減、補助費等が0.3%減となっている。
(4)産業の振興
ア 農林水産行政
地方公共団体は、農林水産業の振興と食料の安定的供給を図るため、生産基盤の整備、構造改善、消費流通対策、農林水産業に係る技術の開発・普及等の施策に加え、6次産業化等の推進、人口減少社会における農山漁村の活性化等の施策を行っている。
これらの諸施策に要する経費である農林水産業費の決算額は3兆3,624億円で、畜産業費の増加等により、前年度と比べると1.8%増となっている。
農林水産業費の目的別内訳の状況は、第35図のとおりである。また、主な費目の決算額を前年度と比べると、農地費*8が1.9%減、農業費が2.3%増、林業費が0.0%増、水産業費が1.1%減となっている。
農林水産業費の性質別内訳の状況は、第36図のとおりである。また、主な費目の決算額を前年度と比べると、普通建設事業費が4.2%減、補助費等が17.4%増、人件費が0.3%減となっている。
イ 商工行政
地方公共団体は、地域における商工業の振興とその経営の強化等を図るため、中小企業の経営力・技術力の向上、地域エネルギー事業の推進、企業誘致、消費流通対策等様々な施策を行っている。
これらの諸施策に要する経費である商工費の決算額は10兆3,163億円で、営業時間短縮要請等に応じた事業者に対する協力金の給付等の新型コロナウイルス感染症対策に係る事業費の減少等により、前年度と比べると31.1%減となっている。
商工費の性質別内訳の状況は、第37図のとおりである。また、主な費目の決算額を前年度と比べると、制度融資の減少等により、貸付金が10.1%減、前述した営業時間短縮要請等に応じた事業者に対する協力金の給付等の減少等により、補助費等が61.8%減となっている。
(5)保健衛生
地方公共団体は、住民の健康を保持増進し、生活環境の改善を図るため、医療、公衆衛生、精神衛生等に係る対策を推進するとともに、ごみなど一般廃棄物の収集・処理等、住民の日常生活に密着した諸施策を行っている。
これらの諸施策に要する経費である衛生費の決算額は12兆2,250億円で、宿泊療養施設や自宅療養者への支援等の新型コロナウイルス感染症対策に係る事業費の増加等により、前年度と比べると7.5%増となっている。
衛生費の目的別内訳の状況は、第38図のとおりである。また、主な費目の決算額を前年度と比べると、公衆衛生費*9が6.8%増、清掃費*10が1.4%増となっている。
目的別の構成比を団体区分別にみると、都道府県においては、公衆衛生費が93.1%と大宗を占め、市町村においては、都道府県同様、公衆衛生費が60.2%と大きな割合を占めているものの、一般廃棄物の収集・処理等を行っていることから、清掃費が37.1%となっている。
衛生費の性質別内訳の状況は、第39図のとおりである。また、主な費目の決算額を前年度と比べると、前述した宿泊療養施設や自宅療養者への支援等に係る事業費の増加等により、物件費が6.4%増、補助費等が3.5%増となっている。
(6)警察と消防
ア 警察行政
都道府県は、犯罪の防止、交通安全の確保その他地域社会の安全と秩序を維持し、国民の生命、身体及び財産を保護するため、警察行政を行っている。
これらの諸施策に要する経費である警察費の決算額は3兆3,304億円で、物件費の増加等により、前年度と比べると1.2%増となっている。
警察費の性質別内訳の状況は、第40図のとおりである。また、主な費目の決算額を前年度と比べると、人件費が0.5%増、物件費が3.5%増となっている。
イ 消防行政
東京都及び市町村は、火災、風水害、地震等の災害から国民の生命、身体及び財産を守り、これらの災害を防除し、被害を軽減するほか、災害等による傷病者の搬送を適切に行うため、消防行政を行っている。
これらの諸施策に要する経費である消防費の決算額は1兆9,873億円で、消防施設の整備、消防自動車の購入等に要する経費の減少等により、前年度と比べると0.8%減となっている。
消防費の性質別内訳の状況は、第41図のとおりである。また、主な費目の決算額を前年度と比べると、人件費が2.4%増、普通建設事業費が18.9%減、物件費が0.6%増となっている。
*3 障害者等の福祉や他の福祉に分類できない総合的な福祉向上に要する経費
*4 「消費税法」(昭和63年法律第108号)第1条第2項に規定された、制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費
*5 教職員の退職金や私立学校の振興等に要する経費
*6 体育施設の建設・運営や体育振興及び義務教育諸学校等の給食等に要する経費
*7 街路、公園、下水道等の整備、区画整理等に要する経費
*8 農業基盤整備等に要する経費
*9 保健衛生、精神衛生、母子衛生等に要する経費
*10 一般廃棄物等の収集・処理等に要する経費