5 地方経費の構造

普通会計の歳出決算額について、経済的性質に従って、義務的経費、投資的経費、その他の経費に分けてその状況をみると、以下のとおりである。

(1)義務的経費

ア 人件費

(ア)人件費の状況

人件費は、職員給、地方公務員共済組合等負担金、退職金、委員等報酬等からなっている。

人件費の決算額は23兆839億円で、委員等報酬、地方公務員共済組合等負担金の増加等により、前年度と比べると0.3%増となっている。

人件費の歳出総額に占める割合を団体区分別にみると、都道府県が、政令指定都市を除く市町村立義務教育諸学校教職員の人件費を負担していることなどから、市町村を上回っている。

人件費の費目別内訳の状況は、第42図のとおりである。また、主な費目の決算額を前年度と比べると、職員給が0.1%増、地方公務員共済組合等負担金が1.0%増となっている。

職員給の決算額は15兆9,640億円で、ピーク時の平成10年度と比較すると約8割まで減少している。

職員給の部門別構成比の状況は、第43図のとおりである。

職員給の部門別構成比を団体区分別にみると、都道府県においては、政令指定都市を除く市町村立義務教育諸学校教職員の人件費を負担していることから、教育関係が最も大きな割合を占め、警察関係と合わせて全体の82.8%を占めている。市町村においては、教育関係が最も大きな割合を占めている。

人件費の財源内訳の状況は第44図のとおりであり、一般財源等(*)が最も大きな割合を占めている。

ここで、国庫支出金の構成比について、都道府県が10%を超え、市町村を上回っているのは、都道府県が負担している政令指定都市を除く市町村立義務教育諸学校教職員の人件費について、国庫負担制度(義務教育費国庫負担金)が設けられていること等によるものである。

なお、近年の人件費の歳出総額に占める割合及び人件費に充当された一般財源の一般財源総額に占める割合の推移は、第45図及び第46図のとおりである。人件費の歳出総額に占める割合は、令和2年度に新型コロナウイルス感染症対策に係る補助費等の増加等により低下したが、令和4年度は、人件費の決算額が増加し、補助費等が減少したこと等により、前年度から1.1ポイント上昇の19.7%となっている。

(イ)地方公務員の数

地方公共団体の職員数(普通会計分)は、事務事業の見直し、組織の合理化、民間委託等の取組が行われたことなどから、平成7年以降21年連続して減少したが、平成28年に増加に転じ、令和4年4月1日現在の職員数は245万4,536人で、前年同期と比べると0.1%増となっている。

イ 扶助費

扶助費は、社会保障制度の一環として、生活困窮者、児童、障害者等を援助するために要する経費である。

扶助費の決算額は17兆3,686億円で、子育て世帯等臨時特別支援事業等の新型コロナウイルス感染症対応に係る事業費の減少等により、前年度と比べると6.4%減となっている。

なお、扶助費に充当された財源の内訳をみると、生活保護費負担金、児童手当等交付金等の国庫支出金が9兆6,588億円(扶助費総額の55.6%)で最も大きな割合を占め、次いで一般財源等が7兆3,043億円(同42.1%)となっている。

ウ 公債費

公債費は、地方債元利償還金及び一時借入金利子の支払いに要する経費である。

公債費の決算額は12兆3,749億円で、元利償還金の減少等により、前年度と比べると2.1%減となっている。

公債費の内訳をみると、地方債元金償還金が11兆6,113億円(公債費総額の93.8%)で最も大きな割合を占めており、前年度と比べると1.3%減となっている。また、地方債利子は7,629億円(同6.2%)となっており、前年度と比べると12.1%減となっている。

なお、公債費に充当された財源の内訳をみると、一般財源等が11兆8,308億円(公債費総額の95.6%)となっており、使用料・手数料等の特定財源が5,440億円(同4.4%)となっている。

(2)投資的経費

ア 普通建設事業費

普通建設事業費は、公共又は公用施設の新増設・更新等に要する経費である。

普通建設事業費の決算額は14兆5,802億円で、補助事業費の減少等により、前年度と比べると4.7%減となっている。

なお、普通建設事業費のうち更新整備*11に要した経費は、都道府県においては3兆1,331億円、市町村においては4兆3,192億円となっている。一方、新規整備*12に要した経費は、都道府県においては2兆6,301億円、市町村においては1兆7,561億円となっている。普通建設事業費に占める更新整備に要する経費の割合は、都道府県では40.3%、市町村では58.4%となっている。

近年の普通建設事業費の推移は、第22表のとおりである。

(ア)普通建設事業費の目的別内訳

普通建設事業費の目的別内訳の状況は、第47図のとおりである。また、主な費目の決算額を前年度と比べると、土木費が3.9%減、教育費が4.8%減、農林水産業費が4.2%減となっている。

(イ)補助事業費

補助事業費の決算額は7兆4,183億円で、前年度と比べると8.1%減となっている。

補助事業費の目的別内訳の状況は、第48図のとおりである。また、主な費目の決算額を前年度と比べると、土木費が6.6%減、農林水産業費が5.5%減となっている。

(ウ)単独事業費

単独事業費の決算額は6兆3,977億円で、前年度と比べると0.8%減となっている。

単独事業費の目的別内訳の状況は、第49図のとおりである。また、主な費目の決算額を前年度と比べると、土木費が0.6%増、教育費が0.4%減、総務費が2.3%減となっている。

(エ)国直轄事業負担金

国直轄事業負担金の決算額は7,643億円で、前年度と比べると1.8%減となっている。

国直轄事業負担金の目的別内訳をみると、土木費が最も大きな割合を占めており、前年度と比べると1.3%減となっている。

(オ)普通建設事業費の充当財源

普通建設事業費の財源構成比の推移は、第50図のとおりである。

イ 災害復旧事業費

災害復旧事業費は、地震、豪雨、台風等の災害によって被災した施設を原形に復旧するために要する経費である。

災害復旧事業費の決算額は5,469億円で、前年度と比べると22.6%減となっている。

災害復旧事業費の状況は、第51図のとおりである。また、主な費目の決算額を前年度と比べると、補助事業費が28.4%減、単独事業費が4.7%減となっている。

ウ 失業対策事業費

失業対策事業費は、失業者に就業の機会を与えることを主たる目的として、道路、河川、公園の整備等を行う事業に要する経費である。

失業対策事業費の決算額は0.2億円で、前年度と比べると14.3%増となっている。

(3)その他の経費

その他の経費には、物件費、維持補修費、補助費等、繰出金、積立金、投資及び出資金、貸付金並びに前年度繰上充用金がある。

その他の経費の状況は、第23表のとおりである。

ア 物件費

旅費、備品購入費、需用費、役務費、委託料等の経費である物件費の決算額は13兆5,728億円で、全国旅行支援等の観光支援事業や消費喚起事業の委託料の増加等により、前年度と比べると9.7%増となっている。

イ 維持補修費

地方公共団体が管理する施設等の維持に要する経費である維持補修費の決算額は1兆4,315億円で、前年度と比べると1.0%増となっている。

ウ 補助費等

公営企業会計(*)(うち法適用企業(「地方公営企業法」(昭和27年法律第292号)の規定の全部又は一部を適用している事業をいう。以下同じ。))に対する負担金、市町村の公営事業会計に対する都道府県の負担金、様々な団体等への補助金、報償費、寄附金等の補助費等の決算額は16兆3,242億円で、営業時間短縮要請等に応じた事業者に対する協力金の給付等の新型コロナウイルス感染症対策に係る事業費の減少等により、前年度と比べると21.4%減となっている。

補助費等のうち、経費負担区分の原則により、普通会計が負担する法適用企業に対する負担金及び補助金は2兆1,871億円で、前年度と比べると2.1%増となっている。事業別にみると、下水道事業に対するものが1兆3,002億円で最も大きな割合を占め、次いで病院事業に対するものが6,192億円となっている。

エ 繰出金

普通会計から公営事業会計や基金に支出する経費である繰出金の決算額は5兆7,715億円で、後期高齢者医療事業会計への繰出金の増加等により、前年度と比べると2.0%増となっている。

また、各会計別の決算額を前年度と比べると、国民健康保険事業会計に対するものが1.7%増、介護保険事業会計に対するものが1.0%増、後期高齢者医療事業会計に対するものが4.0%増となっている。

公営企業会計(うち法非適用企業(地方公営企業法の規定を適用していない事業をいう。以下同じ。))に対する繰出金は、経費負担区分の原則により、普通会計が負担するものであり、決算額は3,195億円で、前年度と比べると6.8%増となっている。事業別にみると、下水道事業に対するものが1,449億円で最も大きな割合を占めており、次いで宅地造成事業に対するものが712億円となっている。

オ 積立金

特定の目的のための財産を維持し、又は資金を積み立てるための経費である積立金の決算額は5兆1,840億円である。これに歳計剰余金処分による積立金を含めた決算額は5兆5,807億円であり、前年度と比べると3.3%減となっている。

一方、積立金取崩し額の決算額は3兆7,514億円で、前年度と比べると46.4%増となっている。

積立金及び積立金取崩し額の状況は、第52図のとおりである。

カ 投資及び出資金

国債・地方債の取得や第三セクター等(*)への出えん、出資等のための経費である投資及び出資金の決算額は6,617億円で、公社・協会等に対する出資金や下水道事業等の公営企業への出資金の増加等により、前年度と比べると70.8%増となっている。

投資及び出資金のうち、公営企業会計(うち法適用企業)に対するものは3,102億円で、前年度と比べると3.7%増となっている。事業別にみると、下水道事業に対するものが最も大きな割合を占めており、以下、上水道事業、病院事業の順となっている。

キ 貸付金

地方公共団体が様々な行政施策上の目的のために地域の住民、企業等に貸し付ける貸付金の決算額は6兆4,552億円で、制度融資の減少等により、前年度と比べると9.2%減となっている。

公営企業会計(うち法適用企業)に対する貸付金は581億円で、前年度と比べると5.5%増となっている。



*11 既存の公共施設等の建替え等(移転、集約化、複合化を含む。)の更新や機能強化等(長寿命化改修、耐震改修、バリアフリー改修、太陽光パネルの設置等)をいう。建替え等に伴い行われる既存の公共施設等の除却も含まれる。

*12 新たな公共施設等の建設、既存の公共施設等の別棟の増築、道路や下水管の新規区間開設等の新規公共施設等の整備をいう。

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