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3 デジタル田園都市国家構想等の推進

「デジタル田園都市国家構想」の実現に向け、地域社会全体のデジタル変革を加速させ、活力ある地方を創るためには、デジタル技術を活用して地方の社会課題解決や魅力向上を図るとともに、地方公共団体のDX(デジタル・トランスフォーメーション)等を推進していく必要がある。

(1)デジタル田園都市国家構想の推進

「デジタル田園都市国家構想総合戦略」(令和4年12月23日閣議決定)においては、「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」を目指すデジタル田園都市国家構想の実現に向け、デジタルの力を活用して地方の社会課題解決に向けた取組を加速化・深化させるとともに、デジタル実装の前提となる取組を国が強力に推進することとされている。同戦略の2023改訂版(令和5年12月26日閣議決定)においては、「デジタル行財政改革中間とりまとめ」(令和5年12月20日デジタル行財政改革会議決定)なども踏まえつつ、規制改革をはじめとする政策と連携しながら、一体的な推進を図ることなどが盛り込まれた。

令和5年度補正予算(第1号)においては、「デジタル田園都市国家構想交付金」について735億円が計上されるとともに、令和6年度予算案においても1,000億円が計上された。同戦略の2023改訂版においては、同交付金を活用し、将来的に国や地方の統一的・標準的なデジタル基盤への横展開につながる見込みのある先行モデル的な実装を支援することとされている。

また、若者の地方移住に対する支援を強化するため、地方創生移住支援事業を拡充し、東京都内に本部を置く大学の学生が、地方の企業において実施される就職活動に参加するための交通費を支援するなど、大学卒業後に地方に移住する学生への支援を強化することとされている。

さらに、令和6年度の地方財政計画においては、地方公共団体が自主的・主体的に地方創生に取り組むための「地方創生推進費」(1兆円)と、地域が抱える課題のデジタル実装を通じた解決に取り組むための「地域デジタル社会推進費」(2,500億円)を内訳として、引き続き「デジタル田園都市国家構想事業費」(1兆2,500億円)を計上している。

(2)地域DXの推進・マイナンバー制度の利活用の推進等

ア 自治体DXの推進

総務省では、国の取組と歩調を合わせた地方公共団体の取組を強力に推進するため、「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第2.2版】」(令和5年12月22日。以下「自治体DX推進計画」という。)及び「自治体DX推進手順書【第2.2版】」(令和5年12月22日)を策定しており、引き続き、国の取組の進捗等を踏まえて見直しを行っていくこととしている。

自治体DX推進計画では、DXの取組を着実に実施するための前提となるDX推進体制の構築やデジタル人材の確保・育成について示した上で、<1>自治体フロントヤード改革の推進、<2>自治体の情報システムの標準化・共通化、<3>マイナンバーカードの普及促進・利用の推進、<4>セキュリティ対策の徹底、<5>自治体のAI・RPAの利用推進、<6>テレワークの推進について、自治体が重点的に取り組むべき「重点取組事項」として定め、その具体的内容や国の主な支援策等を示している。

イ 自治体フロントヤード改革

自治体フロントヤード改革については、マイナンバーカードやデジタルツールを活用し、対面非対面の対応を適切に組み合わせて住民との接点を多様化・充実化することや、データ対応の徹底等を通じて、住民の利便性向上と業務効率化による業務改革に繋げることを目指している。令和5年度補正予算(第1号)においては、総合的な改革モデルの構築やその横展開に向けた調査研究を実施することとしている。

ウ 地方公共団体の情報システムの標準化・共通化

地方公共団体の情報システムの標準化・共通化については、「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」(令和3年法律第40号)に基づき、基幹業務システムを利用する全ての地方公共団体が、原則として、目標時期である令和7年度までに、同法第5条に基づく基本方針の下で所管省庁が作成する標準化基準に適合した標準準拠システムへ円滑かつ安全に移行することができるよう、その環境を整備することとし、その取組に当たっては、地方公共団体の意見を丁寧に聴いて進めることとされている。

また、各地方公共団体がシステムの移行の際に必要となる準備経費や移行経費については、令和5年度補正予算(第1号)において、地方公共団体情報システム機構に設置されているデジタル基盤改革支援基金の積立てに要する経費として5,163億円を追加し、累計で6,988億円を計上しており、当該基金を活用し、国が補助を行うこととしている。

エ 地域社会DXの推進

デジタル技術を活用し、全国各地域における地域課題解決を促進するため、令和5年度補正予算(第1号)において、地域のデジタル基盤の整備支援や高齢者等を対象としたデジタル活用支援等を実施することとしている。

また、地方公共団体においては、AIの活用等の新たな取組も進められているところであり、「地域社会のデジタル化に係る参考事例集【第2.0版】」(令和4年9月2日)の改定・周知等を通じて、更なる横展開を図ることとしている。

オ 地域におけるDXの推進体制の構築等

全国的にデジタル人材が不足する中、地域におけるDXの取組を全国津々浦々に広げていくため、令和5年度補正予算(第1号)において、都道府県と市町村等の連携によるDXの推進体制の構築・拡充を図る取組に対して、専門家を派遣して伴走支援を行うモデル事業を実施することとしている。

また、市町村がCIO補佐官等として外部人材の任用等を行うための経費や地方公共団体におけるデジタル化の取組の中核を担う職員(DX推進リーダー)の育成に要する経費に対する特別交付税措置を拡充することとしている。

カ マイナンバー制度及びマイナンバーカードの利活用の推進

(ア)マイナンバー制度の意義

マイナンバー制度は、行政の効率化、国民の利便性の向上及び公平・公正な社会を実現するデジタル社会の基盤である。

今後、各地方公共団体において業務のICT化などを進め、質の高い行政サービスを効果的・効率的に提供する業務改革に取り組んでいくに当たっては、マイナンバー制度を積極的に利活用していくことが不可欠である。

(イ)マイナンバーを活用した情報連携の円滑な運用

「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(平成25年法律第27号)に基づきデジタル庁が設置・管理する情報提供ネットワークシステムを用いて、国の行政機関や地方公共団体がそれぞれ管理している同一個人の情報をオンラインで情報連携し、相互に活用することが可能である。これにより、令和5年12月時点で児童手当の申請など約2,500の事務手続で情報連携による添付書類の省略が可能となっており、今後も順次、対象事務が増えていくことが予定されている。

(ウ)マイナンバーカード(公的個人認証サービス等)の利活用の推進

安全・安心で利便性の高いデジタル社会の基盤であるマイナンバーカードについては、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和5年6月9日閣議決定。以下「重点計画」という。)等に基づき、令和6年12月2日から現行の健康保険証の発行を終了し、マイナンバーカードと健康保険証を一体化した、いわゆる「マイナ保険証」を基本とする仕組みへの移行に向け、カードの取得環境の整備と利便性の向上に取り組んでいる。

具体的には、高齢者などで暗証番号の設定に不安がある方が安心してカードを利用できるよう、暗証番号の設定が不要な「顔認証マイナンバーカード」を令和5年12月15日から導入したほか、福祉施設、希望する方の個人宅等を訪問する形での出張申請受付や、郵便局窓口を活用した交付申請受付を推進するとともに、新生児、紛失等による再交付、海外からの転入者など、速やかにカードを取得する必要がある場合を対象に、申請から1週間以内(最短5日)で交付できる特急発行・交付の仕組みの構築等に取り組んでいる。

今後、重点計画に基づき、運転免許証や在留カードとの一体化などの取組も進めていくこととされている。

(エ)マイナポータルの利用拡大

マイナポータルは、「マイナンバーカードをキーにした、わたしの暮らしと行政との入口」として、地方公共団体へのオンライン申請や、行政機関等が保有する本人情報の閲覧・取得、お知らせの通知などのサービスを提供している。

令和5年4月から、一部の市町村において、マイナポータルを通じたオンライン申請において、申請に伴う手数料などの支払いについてオンライン決済サービスを利用できるようになった。これにより、申請から決済までがオンラインで完結され、住民の手続負担の軽減や市町村事務の効率化を実現している。

(3)地方創生の推進

ア 活力ある地方創り

地方は、人口減少や少子高齢化、働く場や交通への不安など、様々な課題に直面している。これらの課題を解決し、活力ある地方を創出するため、以下の施策をはじめとする様々な取組を推進している。

(ア)地方への新たな人の流れの強化

a 地域おこし協力隊

地域づくりの重要な担い手となっている「地域おこし協力隊」については、令和4年度は全国1,116の地方公共団体で6,447人の隊員が活動しており、引き続き、現役隊員数を令和8年度までに1万人とする目標の達成に向けて取組を強化することとしている。

こうした中、令和6年度から、地域おこし協力隊員への報償費等について、会計年度任用職員に対する勤勉手当の支給開始に伴い上限を引き上げるとともに、専門性の高いスキルを持つ人材や豊富な社会経験を積んだ人材に対して、より弾力的に支給することができるよう、特別交付税措置を拡充することとしている。

また、JET青年(JETプログラムにより招へいした外国青年)等の外国人に対する地域おこし協力隊への関心喚起及びマッチング支援等に要する経費や、外国人の隊員へのサポートに要する経費について、新たに特別交付税措置を講じることとしている。

b 地域活性化起業人(企業派遣型/副業型)

大都市圏の企業の社員を即戦力として活用する「地域活性化起業人」については、企業人材の副業ニーズの増加を踏まえ、企業から社員を派遣する従来の方式(企業派遣型)に加え、地方公共団体と企業に所属する個人間の協定に基づく副業の方式(副業型)についても、令和6年度から新たに特別交付税措置を講じることとしている。

また、官民連携により、デジタル人材・インバウンド人材・GX人材などの地方への流れを創出するため、三大都市圏の企業に対し当該制度の活用を広く促すとともに、活用を検討中の企業の情報を希望する地方公共団体に提供するなど、マッチングの支援を行うこととしている。

c 地域プロジェクトマネージャー

地域活性化に向けたプロジェクトを実施する際に多様な関係者間の橋渡し役となる「地域プロジェクトマネージャー」については、令和5年度から、その報償費等に対する特別交付税措置を1団体当たり2名までに拡充しており、引き続き、制度の活用を推進していくこととしている。

d 関係人口の創出・拡大

「関係人口ポータルサイト」を通じ、関係人口が継続的かつより深く地域に関わるための参考事例とノウハウを提供するとともに、関係人口創出・拡大等の取組に対して引き続き地方交付税措置を講じることにより、全国各地での取組を推進することとしている。

e 若者の地方定着の促進

若年層等について地方とのつながりを築き、地方への新しい人の流れをつくるため、「奨学金を活用した若者の地方定着の促進」及び「地方公共団体と地方大学の連携による雇用創出・若者定着の促進」に要する経費について特別交付税措置を講じており、引き続き、取組を推進することとしている。

(イ)地域の経済循環の創出・拡大等

a ローカルスタートアップの推進

地域資源を活用し地域課題の解決に資する地域密着型事業の創業・新規事業について、引き続き「ローカル10,000プロジェクト」により支援するとともに、国庫補助事業の地方負担分に加え、地方単独事業についても令和6年度から新たに特別交付税措置を講じることとしている。

このほか、令和5年度に創設した「ローカルスタートアップ支援制度」により、事業の企画・準備・立ち上げ・フォローアップの各段階において要する経費について、引き続き特別交付税措置を講じることとしており、このうち、事業の立ち上げ段階における対象経費を令和6年度から拡充することとしている。

b エネルギーの地産地消の推進

エネルギーの地産地消を進めるため、地域資源を活用した地域エネルギー事業を立ち上げるエネルギー供給事業導入計画(マスタープラン)の策定に要する経費について、引き続き国が補助を行うこととしている。

c 特定地域づくり事業の推進

「地域人口の急減に対処するための特定地域づくり事業の推進に関する法律」(令和元年法律第64号)に基づき都道府県の認定を受けた特定地域づくり事業協同組合の運営費等を支援する地方公共団体を対象に、国が補助を行うとともに、これに伴う地方負担等について、引き続き特別交付税措置を講じることとしている。令和6年2月末時点において、全国で72組合が認定を受けている。

イ 地域におけるリスキリングの推進

地域に必要な人材確保(中小企業、農林水産、介護等)のため、デジタル・グリーン等成長分野に関するリスキリングの推進に資する経営者等の意識改革・理解促進、リスキリングの推進サポート等及び従業員の理解促進・リスキリング支援に要する経費について、引き続き特別交付税措置を講じることとしている。

また、地方公共団体と地方大学の連携による雇用創出・若者定着の促進に関する特別交付税措置においても、大学講師等による社会人等が対象のリスキリング講座の実施等に要する経費について、引き続き措置の対象とすることとしている。

ウ 地域公共交通への対応

ローカル鉄道の再構築を図るため、「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律」(令和5年法律第18号)が令和5年10月に施行され、地方公共団体又は鉄道事業者からの要請に基づき国土交通大臣が組織する「再構築協議会」の枠組みが創設された。当該協議会等における鉄道事業者と地域の合意に基づくローカル鉄道の再構築に取り組む地方公共団体への支援として、「社会資本整備総合交付金」の「地域公共交通再構築事業」等を受けて実施する鉄道施設やバス施設等の整備事業に係る地方負担について、引き続き地方財政措置を講じることとしている。

エ 過疎対策の推進

過疎地域は、国民の生活に豊かさと潤いを与え、国土の多様性を支える重要な役割を果たしている一方で、人口減少・少子高齢化等の厳しい社会経済情勢が長期にわたり継続し、地域社会を担う人材の確保、地域経済の活性化、交通機能や医療提供体制の確保、集落の維持等が喫緊の課題となっている。

令和5年4月1日現在では、「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」(令和3年法律第19号)に基づき、人口要件及び財政力要件を満たす885市町村が「過疎地域」とされ、過疎対策事業債や国庫補助率の嵩上げ等の特例措置が講じられている。

令和6年度においては、過疎対策事業債について、資材価格等の高騰による建設事業費の上昇等を踏まえ、過疎地域の持続的発展に関する施策に取り組んでいけるよう、地方債計画に対前年度300億円増の5,700億円を計上するとともに、過疎地域における人材の育成や、ICT等技術を活用した取組等を支援する「過疎地域持続的発展支援交付金」について、前年度同額の8.0億円を予算計上している。

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