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視覚障がい者のための公共トイレ音声案内システムの実用化と普及手法に関する調査研究会報告書(概要版)

1 研究会設置経過

 視覚障がい者は、そのハンディから一人で外出し行動するには様々な障害がある。特に公共トイレの使用は、不案内な上に、他の人の助けを受けることができないため、足を踏み外したり、水洗レバーやペーパーを探して手を汚すことが日常的に起こっており、視覚障がい者の外出の大きな障害になっている。外出時のトイレの問題は全国の視覚障がい者の極めて切実な問題であり、ICTを活用して、何処でも安心してトイレが使用できるようになれば、障がい者の社会参加、自立の大きな支援となることが期待される。
平成16年度調査研究会「電子タグと携帯電話を活用した視覚障がい者のための公共トイレ音声案内システムに関する調査研究会」では、「公共トイレ音声案内システム」が、視覚障がい者のサポートシステムとして有用である旨の報告書がとりまとめられた。
本システムの実用化と普及を図るためには、各地域の視覚障がい者支援団体等が、それぞれの地域において簡単にトイレ情報提供サービスの普及が行えるような環境整備が重要である。
 今年度は、その環境を実現する上で有効と思われる「誰でもが利用できる基盤システム(オープン基盤システム)」を試験的に構築して、フィールド試験を実施し、当該案内システムの実用化と普及に向けての課題及び対応策を検討することとした。その結果、オープン基盤システムの有効性、実用性が実証され、また、より的確な音声案内を行うための要件を明らかにすることができた。

2 今年度の調査研究方針

(1) オープン基盤システムのモデルシステムの検討
 公共トイレ音声案内システムは、固有のIDを持つ電子タグと、そのIDを読み取る電子タグリーダ、IDを送信しそれに対応するガイダンスを受信して音声再生するための携帯電話及び、トイレ情報を構築するオープン基盤システムで構成するものとする。オープン基盤システムについては、トイレ情報の入力等はWeb入力により行うことを可能とし、それぞれの地域においてどこからでも簡単にトイレ情報提供サービスの普及が行える図1のような「分散入力型普及モデル」を検討した。

図1 公共トイレ音声案内システムの分散入力型普及モデル概念図

公共トイレ音声案内システムの分散入力型普及モデル概念図

(2) オープン基盤システムに求められる機能の検討
 平成16年度調査研究会では、公共トイレ音声案内システムの在り方について各地域の自立的な活動が可能となる環境、システムを構築していくための条件の整理を行った。これを踏まえ、分散入力型普及モデルにおけるオープン基盤システムの要件として、下表に示す要件を満たすシステムとすることとした。

表 分散入力型普及モデルにおけるシステムの要件
機能 要件
1.システムの信頼性 (1)セキュリティ対策
(2)バックアップ、リカバリ方法
2.データベース機能

公共トイレに関する諸元情報をネットワークを介して登録し、更新する機能
(1)レコード構成
(2)トイレ識別情報
(3)トイレ情報(トイレ諸元データ)
(4)トイレ情報のデータ形式
(5)データの入力方法

3.ガイダンス自動生成機能

諸元データをもとにガイダンス(テキスト又は音声ファイル)を自動生成する

4.音声波形データ自動生成機能 携帯電話側で、受信したガイダンス(テキスト)を音声に自動生成する
5.対象トイレ検索機能 (1)一覧表示
(2)地図上への表示
6.シンボルマーク 音声案内システム導入トイレであることを明示

3 フィールド試験の実施

 「オープン基盤システム」に関して、その要求性能・機能及び技術条件等を把握するための調査検討を行うとともに、その実用化に向けた課題と方策を明らかにするため、図2及び図3のように金沢市、名古屋市及び仙台市において、各地域の支援団体および協力団体を主導とした公共トイレ音声案内システムのフィールド試験を実施し、誰もが利用できるオープン基盤システムの有効性を検証した。

電子タグプレートの貼付とトイレ情報等の登録(図2)

電子タグプレートの貼付とトイレ情報等の登録

音声ガイダンス及びトイレ情報登録等操作性のモニター(図3)

音声ガイダンス及びトイレ情報登録等操作性のモニター

4 公共トイレ音声案内システムの実用化・事業化に向けた課題等

 各地域の視覚障がい者支援団体等が、それぞれの地域において簡単にトイレ情報提供サービスの普及が行えるよう、公共トイレ音声案内システムの実用化と事業化に当たって、以下の事項について提言を行うものである。

(1) 公共トイレ音声案内システムの実用化と普及に向けて
(1)-1公共トイレ音声案内システムの基本条件
 ・電子タグ規格の統一
 トイレに貼り付けする電子タグの規格を統一し、どこでも1つの携帯電話で音声ガイダンスのサービスを受けられるようにする。
 ・携帯電話のテキスト読み上げ機能の活用
 音声再生の方法は、テキストのトイレ情報を携帯電話のテキスト読み上げ機能によるものとする。
(1)-2公共トイレのユニバーサルデザイン化
 音声ガイダンスを聞いてより早く場所を把握できるようにするためには、簡潔なガイダンスで利用者だれもがイメージしやすいように、わかりやすい形状、種類及び表現(呼び方)に統一されていることが望ましい。
(1)-3シンボルマークの確立
 電子タグやトイレの入口に表示して、本システムの認知度の向上を図るため、デザインを公募する等の周知を行うことによって、広くPRしていくことが望ましい。
(1)-4歩行者ITSとの連携
 公共トイレ音声案内システムは、トイレの個室内での情報ガイダンスを行うものであり、このサービスを受けるためには、その導入トイレがどこにあって、そこまでの誘導をどうするかが、システムの普及に向けての課題である。
 この誘導を可能にするため、本システムは、高齢者や障がい者を含む歩行者、車椅子使用者、自転車利用者等に安全・安心・快適な移動環境を提供することを目的とする、歩行者ITS(Intelligent Transport Systems)との連携を図っていくことが望ましい。

(2) 事業化について
 公共トイレ音声案内システムは、インターネット上に設置し、それを携帯電話で利用することから、エリアフリーな環境で利用できることが大きな特徴であり、全国でのサービス展開が容易なものとなっている。
 コスト面では、システムの基本構成である、電子タグ、携帯電話、情報サーバ等は、新たな技術開発をすることなく既存の技術を利活用しているため、低廉なシステム構築が可能である。公共トイレに設置(貼付)する電子タグについても、電子タグ自体にはトイレ情報を記憶させないで固有のIDのみを読み込むものであるため、その取り扱いは容易であり安価である。
 実用化・事業化に向けては、今回の調査研究結果を踏まえ、一定期間の試験運用を実施し、長期的な運用面での課題等を調査することが望ましい。また、試験運用の際、各情報機関と連携し、音声案内システム導入トイレを公開することによって、広く参画を呼びかけていくことが望ましい。

(3) 他の応用分野への拡張性について
 公共トイレ音声案内システムにおけるオープン基盤システムの基本構成として、取得したIDコードはユビキタスIDセンターのucode解決サーバにより関連する情報サービスの提供を受ける(該当する情報サーバのURLを取得する)ことから、本オープン基盤システムは、トイレ情報だけではなく、図4のように観光地情報、美術館等での展示物解説等の音声案内で活用することも可能であり、拡張性の高いシステム構成であるといえる。

 本システムが、様々な場面で活用され、「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」という将来のユビキタスネット社会の実現に向けた汎用性のあるシステムとして、早期に実現されることを期待するものである。

 視覚障がい者のための公共トイレ音声案内システムの実用化と普及手法に関する調査研究会報告書概要版(754KB)PDF


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