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2020年サイバーセキュリティ特別企画
「地域のキーパーソンに聞く、新型コロナ対策としてのセキュリティ」
大阪大学 猪俣 敦夫 教授

会話(発話)は意識を切り替える良いキッカケ

写真:大阪大学 猪俣 敦夫 教授

 情報セキュリティ分野の人材育成の取組に力を入れる大阪大学に所属し、一般社団法人JPCERTコーディネーションセンター理事、一般社団法人公衆無線LAN認証管理機構代表理事、奈良県警察サイバーセキュリティ対策アドバイザーなど数多くの公職も務める、猪俣 敦夫 教授に、新型コロナ対策におけるサイバーセキュリティの勘所を聞いた。

新型コロナ対策でサイバーセキュリティの現状をお教えください

 経験したことのない禍に見舞われこの2ヶ月で業務スタイルが大きく変わった企業もあるかと思います。同様に、対面授業が当たり前であったほぼ全ての学校のほぼ全ての講義が遠隔越しで提供することになるとは誰も想像していませんでした。もちろんこれを実現する事は技術的にさほど難しいことはないのですが、普段からテレビ会議に慣れていない教員も多く、また不具合に臨機に対応できないなど運用面からもまだまだ解決しなければならない課題は多く存在します。さらには、外部に出てはならない機微情報などの機密性の高いデータを多数保有しており、個々に機密性レベルを設定し、これに応じて利用場所や扱いについて細かな取り決めがなされているわけですが、本来学内での利用を想定した上で厳密に決められた規約であるため、この新しい業務スタイルに合わせていくには綻びが見え始めています。何を言いたいのかというと、リスク対応の考え方として組織が保有する「損害の大きさ(情報資産価値)」と「発生可能性(脅威×脆弱性)」をもう一度今の状況に照らし合わせて見直す必要がある、ということです。

在宅勤務でサイバーセキュリティの面から、特に注意が必要なことを一つ挙げるとすれば何でしょうか

 在宅での業務を極端に表現するならば機密情報を自宅にテイクアウトするようなものです。自宅は会社のように厳格に管理された環境ではなく、監視も何もない最高に自由な場です。これを何とかしようとしても技術だけではどうにもなりません、その人の意識次第でどうにでもなるからです。テレワークというとどうしても映像品質や通信速度などの面ばかりに目を向けられがちですが、実は考えるべきことは居心地良い場での「意識の切り替え」なのです。いや何だかつまらないことのように聞こえるかもしれませんが、誰も見ていないからこそメリハリをつけることはとても難しい。真剣に作業をしている中に愛犬が甘えてきたらどうでしょうか、私ならばすぐにその集中が途切れてしまうでしょう、そんなことは事故した際の言い訳にもなりません。そこで私なりの秘策をお教えします。出来る範囲で構いません、電話でもインターネットでも構いません、同僚あるいは仲良い友達と少しでも良いので声を出して会話をして下さい、チャットではダメです。もちろんチャットでも議論は十分出来ますが、経験上やり取りされる会話(文章)に引っ張られ新たな発見や見落としが出てきます。一方、会話(発話)は意識を切り替える良いキッカケを与えてくれます。セキュリティの話に戻すとこれが大きな事故を回避するカギになることがあります。

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