新春年頭のご挨拶

「いのちを守り」、「地域の新しい元気をつくり」、「縁の下の力持ち」になります!

令和2年1月6日

 昨年のことです。災害対策本部立ち上げの準備を整えて迎えた翌日10月12日の深夜、終日激しい雨による大雨特別警報の発令、エリアメールの着信音が何度も届き、広瀬川の上流の大倉ダム放流の警報が鳴り続けました。結果として大事に至らなければ、とは思っていました。翌日に復興のシンボルとして開催する釜石市鵜住居スタジアムでのラグビーワールドカップ2019ナミビアVSカナダ戦を控え、試合が円滑に進行するための電波監視チームを派遣していました(審判及び各チーム等が無線機を海外から持ち込んでおり、この運用が妨害なく試合が円滑に進められる環境を整備しています。)し、また、観戦に訪れる海外の方への東北の魅力をICTで伝えるための広報部隊も翌日早朝にでかける予定にしていました。
 しかしながら、淡い期待は完全に打ち砕かれ、翌朝から1ヶ月余りは災害対策で職員は皆忙殺されました。釜石に広報で出かける予定だった職員は、急遽丸森町に無線機を届けながら福島県庁災害対策本部のリエゾンとして派遣しました。あの8年前の東日本大震災から、少しずつではありますが着実に復興の道を歩んできた東北で、しかもかなり同様な地域で災害に発生したこと、なかには原発被災から避難した方が避難先で再度困難に遭われることに、本当に自然の脅威とそれに対する人間の無力さを感じました。
 あらためまして、亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、被災された多くの方々が一日も早く日常生活に戻れることを心よりお祈り申し上げます。

 

 10月12日から遡ること2か月以上前、私は鵜住居スタジアムのこけら落としで開催されたラグビーワールドカップのテストマッチ日本VSフィジー戦を観戦しています。この場所は「津波てんでんこ」の教えの正しさを証明した場所です。「てんでんこ」とは各自のこと。各自てんでんばらばらに一刻も早く高台に逃げて、自分の命を守れという教えです。この地に釜石東中学校と鵜住居小学校が建っていましたが、みな無事に高台に避難しています。そして今は、真新しい防潮堤、かさ上げされた土地に学校が移転、学校跡地に緑豊かなピッチを有した鵜住居スタジアムと会場にはためく大漁旗、そして圧倒的な日本チームの勝利。まさにOne Teamの進撃はここから始まったと言っていいでしょう。私は乗り鉄ではありませんが、岩手県が主導した三陸防災復興プロジェクトに便乗し、今般の台風19号で再度被災してしまいましたが、縦断夜行列車イベント含めて三陸鉄道にも三度乗りました。環境省が東日本大震災の復興のシンボルとして主導する「みちのく潮風トレイル」、全長1000kmはとても全部は踏破できませんが、八戸種差海岸を一日かけて歩きました。学生時代には全く気がつかなかった東北の自然・文化の素晴らしさ、ひとの優しさと逞しさが至る所にあります。

 

 新年 明けましておめでとうございます。
 年頭にあたり東北総合通信局でこの一年その取り組みを強化していきたい点について、東京オリンピック・パラリンピックイヤーになぞらえて述べさせていただきます。
 メダルは、以下の金銀銅を独占です。「いのちを守り」、「地域の新しい元気をつくり」、「縁の下の力持ち」になります!
 五輪の最初の輪は、防災・減災を加速させる取組です。冒頭、昨年の台風19号災害にふれました。今般かろうじて自治体間の通信は確保され、それがその後の救援・復旧に役立ちましたが、住民まで的確なタイミングで適確な手段で確実に情報が届いていたのか改めて検証する必要があります。また、昨年当局に配備した臨時災害局を被災地で直ちに展開するためコミュニティFM関係団体と協定締結したことから、実際の各市町村をフィールドに支所・避難所がエリアに含まれるのか電波を出して確認するキャラバンを展開していきます。また、次のインバウンドの輪にも関わりますが、市町村の防災行政無線、コミュニティFMで使っていただけるような外国語での避難指示の雛形を配布します。さらに、自治体が住民のSNSから有効な情報を自在に引き出せるよう、情報通信研究機構(NICT)耐災害研究センターと協力して取り組みます。
 自然災害は東北だけに限りません。特に東日本大震災を経験した東北は風化させないために伝承が重要であり、自治体、東北整備局が地域での伝承基盤作りに力を入れています。東北局では南海トラフ地震想定地域に伝承を展開し、自治体間の関係強化や震災契機に生まれた技術の移転も取り組んでいきたいと考えます。
  次の輪は、地域の元気作戦の即戦力として期待されるインバウンドの取組です。昨年度、訪日外国人は3000万人を超え、統計が出るたびに東北の伸び率が徐々に上がってきました。それでも発射台が低く、東北地域全体に裨益していないのが現状です。観光メジャー地域に飽き足らない、ディープな日本に関心を持つ個人客はネットで事前調査して体験と滞在を楽しみ、かつリピート客になると想定されます。まさにこれに寄与するのはICTであり、DMO(観光地域作り法人)の知恵の出し処でもあります。ただし、個別のDMOだけの活動ではなく、交通体系としてまとまりをもった東北One Teamで周遊型・滞在型を目指していく必要があります。当局では、その一助として東北の放送事業者が観光地をさりげなく紹介していく海外輸出型コンテンツのダイジェストや各自治体等から提供いただいた「ここ一番」の動画をまとめて「Amazing! Michinoku Life」として公開(YouTubeサイトへは掲載QRコードからどうぞ。)していますが、さらに充実させ、海外からのアクセス数を増やすとともに、DMOのサイトとの連動にも取り組みます。ここには先ほど防災・減災の輪でふれましたが、3.11伝承ロード推進機構の動画もアップされ、被災地域の今も一緒に見ていただけるようになっています。また、Instagramでは、みなさまから映える画像や動画を募集しています(掲載QRコードからどうぞ。)。
 これら攻めのインバウンドとともに、台風19号の際にもラグビー観戦の訪日外国人がどう行動したらよいのか混乱を引き起こしたことから、守りのインバウンド、すなわち、ラジオでの外国語避難指示に加え、テレビ字幕を翻訳アプリで変換して見せていくことの関係方面の理解と協力がいただけるよう取り組んでいきたいと考えます。
 第3の輪は、地域の元気作戦の本丸であるICTをフル活用した地域課題解決への取組です。東北全域で自治体によるIoT等新技術を取り入れ企業からの提案も受けたマッチング事業等がかなり浸透してきました。しかし一方、規模の大きくない自治体では職員が多くの業務を抱えている中、なかなか思うように進んでいない現状にあります。当局はリエゾンのような形で職員や総勢18名擁する地域情報化アドバイザーを送り込み、自治体に負担のない形で計画策定を行い、最適な国の支援策等をマッチングさせる取り組みを行います。また、話題のローカル5Gについては構想・検討段階から許認可までワンストップ窓口で一貫した支援を行っていきます。5Gは幅広く産業利用することにより地域の人手不足を抜本的に解消するものとなるはずです。したがって地域でこそ率先して使われるものにしなければいけません。
 第4の輪は、いままでの3つの輪を下支えするユニバーサルサービスへの取組です。これまでに東京オリンピック・パラリンピックの開催、インバウンドを念頭に、管内新幹線(東北、秋田、山形、北海道(青函トンネル))トンネルの通話対策に注力してきましたが、2020年度中での全線での通話可能に目処が立ちました。しかしながら東北の携帯エリアの不感地帯(アンテナマークの立っていないところ)の割合は全国平均と比べて低くなっています。これからはこれらの居住地のみでなく防災、インバウンド、地域課題解決の観点から主要な峠道などの非居住地域にも目配りすることが重要であり、昨年策定されたICTインフラ地域展開マスタープランを先取りして、自治体と事業者との間の複数年次の整備計画作り・そのための調整に取り組んでいきます。
  また、これら生活・産業インフラの無線環境が混信等なく良好に維持していくとともに東京オリンピック・パラリンピックの運営を支える無線運用に支障がないように、電波の監視等について引き続き取り組んでいきます。
 最後の輪は、東日本大震災復興への取組です。2021年度以降の復興の基本方針がまとまり、引き続き、現場主義を徹底し、被災者に寄り添いながら、復興に向けて関係省庁と協力して全力で取り組みます。特にこれから福島原発被災地では帰還困難区域内で復興再生拠点を整備していく過程で、生活・産業インフラとしてのICTを適時適確に整備していく必要があります。また、このためのアクセス道路や除染廃棄物等の中間貯蔵施設への安全な輸送のため、携帯エリア整備など引き続き取り組んでいきます。

 以上、五つの輪をお互いに関連し合いながらOne Teamで東北地域の発展を目指していきます。本年もよろしくお願いします。

 東北総合通信局長 田中 宏

連絡先

東北総合通信局
総務部総務課企画広報室
TEL 022-221-0638

ページトップへ戻る