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セミナーA−1:「地域のポテンシャルを高めるICTの利活用」

【基調講演要旨:早稲田大学 大学院アジア太平洋研究科 教授 三友 仁志 氏】

早稲田大学の三友仁志教授

早稲田大学の三友仁志教授

 地域におけるICTの利活用について3つのテーマで、お互いにメリットが生じる形での相互支援の重要性を意味する「共助」という言葉をキーワードに、お話させていただく。
 地域の課題解決におけるICTソリューションは、個人一人一人の便益実現の積み重ねにより社会的便益を実現する「しくみ」をつくる手法をとることができ、他の課題解決方策よりも優れている。地域課題は地域の前向きな未来を想像することで見えてくるが、たとえ解決のアイデアやICTスキルが無くても、ICTを利活用して地域間共助による解決策を図ることができる。具体例として、金沢では課題解決手法の検討や構築をコンテスト形式で東京において実施し、東京の参加者も地域貢献による満足感を得ることができた。これを通じて、地域と地域を結ぶ仲介者の必要性が明らかになった。
 条件不利地域のICT基盤維持に関しては、ICT利活用の前提となるものであり、一つの方策として、電波資源を割り当てられた事業者に条件不利地域のICT基盤維持の費用負担をしてもらうなど、サービス事業者間の共助による一体的な維持が考えられる。総務省における今後の検討を期待したい。
 さらに、ICT基盤の中でも特に地域におけるWi−Fiによる無線ネットワークの構築は、位置情報に連携した観光サービス、環境や農業分野でのセンサー情報の活用、災害情報の収集・配信など、地域の力を高める上で有効である。特に東北においては、世界共通の規格で訪日観光客のニーズが高いWi−Fiを整備することで、利便性向上と観光客発の地域情報の発信によるさらなる交流人口拡大といった経済的利益のほか、情報発信を通じて東北の現状について理解を深めてもらう事が、国際的共助によるメリットとして期待される。さらに、整備したWi−Fiは介護や教育など行政サービス等の提供に活用すればさらなる価値を生むが、整備対象施設は公的施設や民間施設など多岐にわたっており、官民の共助は不可欠となる。
 地域課題解決によって実現する「地域イノベーション」は革新的変化ばかりとは限らない。ドイツの経済学者シュムペーターが提唱した「新結合」の概念にあるように、新しい財貨、新しい生産方法、新しい販路など、広範な変化を含むものである。まずは地域課題の解決から始め、社会・生活・経済などの向上に向けた新しい枠組みの導入を目指していく必要がある。そのためには官民の共助が必要となる。

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