【講演】
【放送サービスの高度化に向けて−講演要旨】
日本放送協会の今泉浩幸部長
総務省の「放送サービスの高度化に関する検討会」では、幅広い産業分野に新市場を創出するため、4K・8K、スマートテレビを一体として放送開始を前倒しして進める方向が示された。具体的には、東京オリンピック開催の2020年に合わせ、2016年までに8Kも試験放送を開始させ、関係機器も低廉化・普及を図る計画である。NHKでも2016年の試験放送開始に向けて、設備整備を進めている。
総務省の「放送サービスの高度化に関する検討会」では、スマートテレビについて、「視聴者の安全・安心の確保」「オープンな開発環境整備」という基本理念の実現を図ることが望ましいとの方針が示された。ハイブリットキャストは、この基本理念を踏まえて、インターネットに接続したテレビが放送に連動・連携した情報の表示やサービスを行うもの。視聴者への「これまで同様安全・安心にサービス提供」と、幅広い関係事業者の「放送連動型アプリの開発」への参画が期待される。また、ブラウザ技術に国際標準規格HTML5を採用したことで、アプリ開発者の裾野が広がり、新たなサービスの展開も期待される。
【ラジオの強靭化に向けた地域連携モデル−講演要旨】
エフエム岩手の村田憲正代表取締役社長
【スマートテレビ機能を活用した地域活性化の実証−講演要旨】
テレビユー福島の辺見執行役員
辺見氏
本事業は平成26年度「新しい東北」先導モデル事業で採択され、過疎地・被災エリアに住む高齢者の生活インフラとして、テレビのデータ放送と連動した日用品食料品宅配サービスの実証研究を行った。
住民へタブレットを配布して地域情報の提供を行っている事例もあるが、利用は低調である。テレビは番組視聴のため積極的に自らON・OFFを行っており、データ放送も天気予報を見るためほとんどの方が利用の経験がある。また、山間の町では冬季間中はほとんど外出できず、買い物も難しい。
実施体制として、参加者テレビへのインターネット環境の整備や高齢者でも理解しやすいリモコンの開発、リモコンに合わせたコンテンツの作成・管理など協力して行った。普段使っているテレビから注文でき、操作も確認しながら簡単にできることを徹底した。高齢者でも実際に操作して注文でき、商品も早ければ次の日にとどくことで好評であった。
メディアキャストの杉本孝浩代表取締役
杉本氏
実証実験では、B-CASカードの番号でデータ放送での宅配サービスのコンテンツの表示有無を管理した。データ放送は帯域も小さく、テンプレートを出来るだけ共通化してシンプルにした。操作する簡易リモコンを画面にも表示させ、操作の内容も表示し、ボタンを押す長さなども高齢者を意識して作成した。
【ディスカッション要旨】
ディスカッション
村田氏
放送局としてICTを最大限に生かして地方を元気にしたい。今あるFM放送の可能性を深掘りしつつ、アナログ放送跡地のV-low周波数を活用したマルチメディア放送を今後展開していく。車メーカーも協議会に入り、ドライバー向けの情報発信などを始め様々な情報を発信する予定である。
NHKさんは世界最先端の放送技術で新しいサービスを作るチャレンジをしており、一方でテレビユー福島さんは地域に密着して掘り下げる、地域に欠かせないデータ放送などの取り組みを行っている。エフエム岩手でも、中継局のエリアだけに向けた地域放送を実証実験で行って有用であることを確認した。
東日本大震災被災県のローカル放送局は復興支援に寄与することを避けて通れないが、被害から立ち上がる時にはイノベーションが起こる。地域住民と一緒に探して・築く、放送局としてのミッションを頑張っていきたい。
今泉氏
AMラジオが聞き難い地域に、V-Low周波数を利用したFM補完も開始されており、受信改善に有効な技術と期待されている。また、ハイブリッドキャストでは、一斉に届ける放送から、視聴者それぞれの好みや関心に合わせたインターネットによる個別の情報の配信を組み合わせることができる技術であり、よりきめ細やかなローカルサービスにも役割が果たせるものと考えている。
8Kの試験放送をロードマップ通りに確実に進めたい。実用放送に向けては、新しい伝送路も検討されており、魅力的なサービスを提供できるようしていきたい。
名和氏
大震災と原発事故、さらに全国的にも新たな難視地域が数多かったが、皆様の協力で無事に福島県の地デジ化を完了した、感謝を述べたい。
テレビユー福島では、スマートテレビ機能を活用して、過疎化の進展を踏まえてより地域に密着した放送サービスが必要と考え、高齢者でも簡単に利用できるデータ放送サービスを開始した。
地域の放送局として、地域の安心安全を大事にして、地域にどのように関わっていけるかを常に考えていきたい。また、スマホ系OSを内蔵したテレビも出てきている中で、視聴者から信頼されるコンテンツ作りが重要になっており、今後とも知恵を出していきたい。