【基調講演要旨:筑波大学 システム情報系社会工学域 教授 川島 宏一 氏】
筑波大学 川島 宏一 教授
先月、カナダのオタワ市で開催されたオープンデータに関する会議では、「データは、既に水道、道路、電気と一緒」「社会インフラとして重要であり、そのデータを行政、政府、地域が責任をもって品質を管理すべき」との報告がなされている。
日本総合研究所調査部主席研究員で地域エコノミストでもある藻谷浩介さんは、その著書の中で、「奈良県室生寺の五重塔は、名の無い地元の宮大工が建立したもの。しかしそれは、建て替える時も同じ工法で、同じ素材で行われている。自分の人生を超えて残り続けることを直感しているからこそ頑張れる」と述べており、全国各地の行政や企業が、地域で創造的な活動を行う人材を育成するため、地域固有の文化、風土に根ざして活動できる環境を整えて差し上げることが大切になっている。
福岡県で起業して成功された方は、地元役所の質の高いデータ提供が起業のポイントとなった。行政のデータは資源であり、地域のためにどのように利用するかが重要。また、地域ビジネスとしては、一般マーケットを対象とするよりも、役所から提供されたデータを活用しやすく加工して役所にフィードバックする、又は、別の地域企業に提供する業務の方が成り立ちやすい。このように、オープンデータにより、地域における雇用の創出が実現できる。
【質疑応答】
Q 自治体の情報システムの発注が包括的になっており、地元ベンチャー企業の参入が難しくなっている。地元ベンチャー企業を育成する上で、自治体が出来ることは無いのか?
A できれば500万円以下に分割した仕様にするのが良いと思うが、残念ながら、今の東北の忙しい状態では役所がそんな時間が取れないと思う。それで、もうひとつが、包括的な契約の場合であっても、受注企業が地元ベンチャーなどを活用できる一定の業務については、ばらして地域の企業に発注する事を仕様書の条件として組み込むこと。このような発注の工夫こそ、行政の知恵の見せ所だと思います。
【パネルディスカッション要旨】
地域情報アドバイザーの葛西 純 氏
葛西氏 地方創生の取り組みが全国で進められている。ICTは、地方を活性化する上で有効なツールと言われており、これを本パネルディスカッションで明らかにしていきたい。
金子氏 鳥獣(いのしし)被害により、当市の北小野地区では平成23年に耕作面積の85%が食害にあったものを、平成25年にはゼロにした。世界一のアドホックネットワーク網を有しており、これらを利用した対策に取り組んだ。成功の最大の要因は、熱意がある地域の方々の協力があったからである。
塩尻市の金子春雄課長
秋田市の畠中良一課長
総務省の片桐広逸 支援官
畠中氏 当市の中心部にある千秋公園、八橋公園の2つの公園は、普段は市民の憩いの場であるが、災害時の避難場所としても使用される。今年の東北6魂祭の会場が当市であることもあり、観光Wi-Fi整備事業により、祭りまでにこの2つの公園へWi-Fi環境整備を完了した。祭りに訪れた多くの観光客は、このWi-Fi環境を積極的に利用しており、大変好評だった。
片桐氏 地方創生とICTの利活用において、特に観光は重要になっている。我が国は世界的に人気が高く、観光業の経済規模も大きい。外国人の誘客には観光Wi-Fiが有効。また、テレワークは、ICTの利点を生かし、時間と場所を超えて行える事業である。総務省は、お金の支援だけでなく、人的な支援も行っているので活用願いたい。