【講師の東北総合通信局 吉田部長】
総務省で実施している電波の利用状況調査の結果、2005年と2014年の地域振興MCAの加入者数の比較は1.24倍の高い伸びとなっており、東北管内における2020年の需要増加予測は2014年比で1.53倍の見込み。
電波資源を有効活用する観点から、青森県平内町をフィールドに地域振興システムのデジタル化に関する調査検討を実施した(平成27年7月〜同28年3月)。
デジタル化の検討モデルを4値FSK,SCPC方式として陸奥湾における実証実験を行い、デジタルに移行した場合でもアナログと同様の通信エリアを確保可能で、かつ従来と同じ周波数帯域で16チャンネルの需要増に対応可能との検証結果を得ており、デジタル方式の利用により水産業の活性化に資することを期待したい。
【講師の公立はこだて未来大学 和田教授】
函館名物の活真いかであるが、いか漁は世界で最も自動化された漁業である。いかは12〜23度の海域を好み移動するため海水温データは「必要とされる情報」だが人工衛星からの測定では海面(表面)しか把握出来ないのが現状。「海のビッグデータ」である下層水温の共有が出来ればと船から水深50メートルまでセンサを投入し、各船のデータを結んだ海水温観測ネットワーク(うみのアメダス)を構築し、海水温の「見える化」を図った。
水産業分野に関するICTの利活用について模索していたところ、留萌でのナマコ漁が資源枯渇の状態にあることが分かり、漁獲情報や位置情報を共有し資源管理を行う「うみのレントゲン(水産資源管理システム)」について戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)補助金を活用し取り組んだ。
デジタル操業日誌(時系列の航跡・漁獲量)を共有するにあたり、ライバルに情報を提供することに抵抗はあったが、資源を守る取組として理解を得ることが出来、結果として資源量の回復につながった。また後輩の航跡データを先輩が見ること(可視化)で、操船のアドバイスが可能となり、高齢化が進む中、技術の伝承がなされたとの「副次的成果」もあった。
本事業は地方創生に資する「地域情報化大賞2015」で大賞・総務大臣賞を受賞した後、本年3月には北海道総合通信局で行われた意見交換会で先進事例として発表している。