【講師の東北大学大学院 田中教授】
スマートフォンは凄い勢いで普及しているが、限りある周波数帯の有効利用を図るために、通すべき電波を選択し通過させる特性のフィルタが必要。スマートフォンの中では通信するたびに機器的振動が起きており、その共振子を利用したものが弾性波フィルタ。信号を通す帯域は共振と反共振の周波数差程度。本研究では世界一帯域が広いフィルタを実現した。弾性波フィルタは携帯情報通信のキー部品であり、薄い圧電結晶板を用いた超広域弾性共振子の開発等により、周波数の更なる有効利用やスマートフォンの小型化に有効であると考える。
【講師の東北学院大学 岩谷教授】
音源が持つ大きさ、高さ、音色などを高い周波数で高精度に再現するだけでなく、音と物理空間で作られる音空間そのものを高精度に作り出すことがこのプロジェクトの趣旨。概要としては、高精細音空間コンテンツのための主観的最適化音空間ディスプレイの開発であり、主に、音空間を主観的に体験できる条件の探索、高精細音空間レンダリングシステムの高精度化、音空間ディスプレイシステムの試作、音響シュミレーションブロックの試作等を実現した。将来的には、超臨場感通信や遠隔セッション等への活用も期待したい。
【講師の日立ソリューションズ東日本 吉田技師】
コンピューターでの音声認識の普及が進む中、方言音声の収集について、従来は聞取り調査方式で進められており作業効率が低い。本研究はICTシステムを活用することにより多様な方言に対応した音声認識の手法を確立し、効率化を図ることを目的とする。方言を構成する音韻は、語中の濁音化など独特の発音となり誤認識が発生する。そこで音響モデルと言語モデルの組み合わせにより方言独特の異音モデルを構築。音素の区切りが把握しにくい東北の方言特有の発音は、音声と文字を対応付けるラベリング支援ツールを開発し識別可能とした。東北は日本のどの地域と比較しても音韻の種類が多く、東北で実証されたシステムは日本中で適用可能。本研究の中で方言音声認識システム開発を標準化できると考える。
【講師の弘前大学大学院 野坂講師】
医療現場では多くの治療で輸液が使用されているが、薬剤による輸液の血管外漏出もしばしば発生している。血管外漏出による皮膚障害を防ぎ、患者の皆様が安心して治療に専念できるよう、輸液漏出を早期発見可能な監視システムの研究開発を行っている。輸液で希釈される血液中のヘモグロビンは、特定波長に吸収特性を持つため、反射強度の変化をセンサで検出することで輸液漏れを検地し、看護師に通知するシステムである。ICTの医療現場への活用により、患者にとっての安心・安全な治療環境の実現、看護師の見落とし防止と看護業務の軽減に繋がることが期待される。
【講師の岩手県立大学 新井准教授】
米本研究では、路面凍結によるスリップ事故を防ぐため、車両のタイヤ自身をセンサとする路面状態センシングを開発。タイヤと路面間の帯電作用によって車体に発生する準静電界を観測し、路面の凍結を検出する。路側及び車載サーバによりデータを収集、共有することにより車々間及び路車間通信も可能とする無線ネットワークも構成。赤外線を用いた局所的通信により、通信可能範囲内で途切れることなく精細な情報交換を可能とする。今後もこれらの技術を用いて注意喚起アプリケーションの構築等、研究を継続していく。
【講師の秋田県立大学 下井教授】
超高齢化社会の日本において、施設等での高齢者の転倒・転落事故は少なくない。夜間の人手不足や介護者の目の届かない範囲で発生することが多いことから、事故防止策としてICTを用いたモニタリングシステムを構築。就寝中と他の活動状態の判別及び緊急通報の検証、在宅中と外出時との自動判別等の広域見守りシステム、また被介護者のQOL(Quality of Life:生活の質)を重視した非接触型の見守りシステムなどを開発。 本システムを発展させることにより医療・介護施設や高齢者宅等における「安心・安全の見守り」を可能にし,従来のセンサ技術と比較してQOLの向上に貢献可能である。