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「東日本大震災とICT」インタビュー
【岩手県九戸郡野田村】

話者:野田村未来づくり推進課
(新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえ、書面でのインタビューとなっています。)

 東日本大震災直後、野田村では最大約18メートルの津波が押し寄せ、村の中心部を含む2.3平方キロメートルが浸水、村内住家の約3分の1が流失・損壊するなど、甚大な被害を受けられました。
 その後、村内全地区での懇談会を開催して復興計画を策定されるなど、住民の目線に立ちながら、新たな野田村の姿を形にされてきました。

1.復興に関しICTが果たした役割(新たなまち作りにおけるICTの役割)について

 野田村では、被災後、「野田村東日本大震災津波復興計画」「野田村復興むらづくり計画」等により、一歩ずつ着実に復興の歩みを進めてこられました。
 野田村の復興や新たなまちづくりにおいて、ICTはどのような役割を担ってきたのでしょうか。


 10年前の3月11日、東日本大震災大津波により東北沿岸を中心に壊滅的な被害を受けました。本村においても、38人(震災関連死含む)が犠牲となり、515棟の住家が被害を受け、ライフラインや産業基盤等を含め、甚大な災害となりました。

 本村の復興計画は「防災まちづくり」「生活再建」「産業・経済再建」の3つが柱となっています。この中で情報伝達に触れていますが、本村は震災復興に進む中で、「災害情報の一斉配信」「自治体の基幹情報等のクラウド化」などのICTに取り組み、特に復旧・復興期においては防災まちづくりと共に歩んできました。

災害に強い情報連携システム構築事業

野田村の震災後の街並み

野田村の震災後の街並み

 災害時に必要な自治体からの情報について、その伝達は全ての住民へ迅速に行う必要がありますが、防災無線は気象条件等によっては聞こえにくい人もいる、防災メールは携帯キャリアごとに配信作業をする必要がある等の課題がありました。
 これらのことを背景に、一度の情報入力で複数の情報システムに送信し、より多くの地域住民に情報を確実に伝達する「防災情報伝達制御システム」を構築しました。
 例えば、緊急情報についてはJアラートと連動して職員が手入力することなく、休日・夜間でもリアルタイムに複数の情報端末に一斉配信する、避難情報など自治体の状況に応じて伝達する内容については伝達制御システムから必要情報を一斉配信する等のことが可能となりました。
 配信先については、防災無線、緊急速報・エリアメール、登録制メール、ホームページ等のほかIP告知端末があります。
 本村では、光ファイバーによる通信網「のんちゃんネット」を整備し、その告知端末を各世帯へ設置していますが、一斉配信先に「のんちゃんネット」があることにより、災害情報も各世帯へ確実に届けることができます。

自治体クラウド導入事業

 本村においては震災前に住民情報等の基幹情報の拠点を庁舎2階に移転しており、直接的な被害は最小限に留まりましたが、被災地では基幹情報そのものが被災した事例もあります。
 自治体クラウドを導入することにより、基幹情報等を内陸の堅牢なデータセンターに移行し、大規模災害によるデータの損失を免れるといった対災害性の確保、ネットワーク経由による迅速な業務復旧体制を構築することで業務継続性を確立しました。
 このことは、震災以前から自治体において大きな負担となっている情報系システムの運用・管理コストの削減、それにより得られた人的リソースや予算を復興業務に充てることで、震災からの早期復旧を実現することにも繋がったと思っています。

スマートグリッド通信インタフェース導入事業

 エネルギーマネジメントの基礎となるICTシステム等の整備を進めることにより、本村の復興の基礎となる自立分散型エネルギーシステムの導入を促進するとともに、各施設に導入する多様な機器、設備等を通信インタフェースの標準化に資するものです。
 また、エネルギーマネジメントシステムを運用することにより、日々の節電や電力の地産地消に貢献するしくみを構築し、災害時でも安定した行政サービスが提供可能なまちづくりの基盤となりました。

 このように、ICTを活用して村の課題解決に繋げる企画・実施の入口としても大きな役割を果たしたものと考えています。

2.「のんちゃんネット」を整備するにあたって重視したこと、苦労したことについて

 野田村では、光ファイバーを使った超高速通信網「のんちゃんネット」を整備し、村内各世帯に設置した告知端末(のんちゃん電話)へ随時行政情報を配信する等の取組をされています。
 「のんちゃんネット」を整備するにあたって、重視したこと、苦労したことなどについて教えてください。
のんちゃんネット端末

のんちゃんネット端末


 子どもからお年寄りまで誰でも使いやすい操作性が大切だと考えておりました。また、運用コストや今後の利用拡大に合わせた機能追加のしやすさなど、将来性についても重視していました。その一方で、難しい先端技術も分かりやすく手軽に使ってもらいたいという考えから、IP告知端末及び村内の光ブロードバンド環境の名称を村イメージキャラクターにあやかって「のんちゃんネット」と命名しました。画面にも「のんちゃん」を登場させるなどIP告知端末に慣れ親しんで手軽に活用してもらえるよう、さまざまな施策を展開しました。
 また、事前の住民説明会に力を入れることで、民地借用などへの協力的な姿勢を得ることができたものと考えております。

3.ICTを活用して実施したいこと、その課題について

  現在、世界的に流行している新型コロナウイルス感染症により、ICTの重要性に対する人びとの認識が高まりました。国内においては、テレワークの導入やオンライン教育の実施、オンライン診療に係る規制緩和など、企業や教育機関、行政等におけるデジタル化が加速しています。
 野田村の将来像である『「やりがい」と「生きがい」を実感でき、住んでいることを誇りに思えるむら』を実現するために、今後、ICTを活用して実施したいこと、そのために課題となることなどについて、お聞かせください。


 新型コロナウイルス感染症の影響によるデジタル化に関して、本村においても実感しているのが、オンラインによる会議やコミュニティの日常化です。コロナ禍においても、遠隔地とのリモートにより業務継続が可能となり、震災後の繋がりをきっかけに生まれた交流やコミュニティもオンラインを活用することにより途切れることを免れています。

 また、全国的にはテレワークやGIGAスクールなど、コロナ禍だからこそ動きが加速し、実現するICTを活用した取り組みが進んでいます。
 本村においては、コロナ対策と児童生徒の学びを両立するため、学校における高速大容量の通信ネットワークを構築し、GIGAスクール構想の更なる加速・強化等新たな時代に相応しい教育を推進します。

 そのほか、テレワークの推進が本村への人の流れを創るための機会と捉え、村内施設等にテレワーク環境を整備し、震災後の交流層を入口とした人の流れを創出したいと考えています。村民とテレワーカーとの交流を図りながら、Win-Winになる関係性を構築することで、活力ある「まち・ひと・しごと」の実現を目指します。

 これらの基盤となる環境づくりにおいては国の支援もありますが、運用しながら深化させていくためには、経常的な収入とコーディネーター的な人材の確保が課題となります。
 村民と関係人口にあたる皆さんと話し合いを重ねながら課題解決に向かい、取り組みの深化の先に、ICTと共存し発展していく野田村の姿を期待しながら進めていきます。

4.後世に向けて伝えたいこと

 東日本大震災による津波で野田村は甚大な被害を受けました。また、野田村は明治三陸大津波、昭和三陸大津波、チリ地震津波と過去に何度も大きな津波被害を受けています。そうしたことを踏まえて、後世に向けて伝えたいこと、残したいことについてお聞かせください。  


 津波の場合、まずは遠く高い場所、安全な場所へ避難することが必要で、そのために個人・家族として、職場として、村として備えておくべきことは何かということ等、自身も含め後世へ伝えていくことが重要と思います。時間の経過とともに記憶や意識は薄れていくものです。そのため、後世に向けて伝えたいことは、震災伝承として取り組んでいきたいと考えています。
 本村の復興展示室が震災伝承ネットワーク協議会の震災伝承施設(第3分類)に登録されました。復興に係るハード整備はほぼ完了し、震災10年を契機として震災伝承の取り組みを加速・充実させるタイミングになっていると感じています。
 震災前の風景、震災被害、復旧・復興・創生の過程、支援・交流、村民や関係者が感じた教訓や将来に向かっての課題など、村民そして復旧・復興・創生に関わった全ての皆さんの記録や記憶を伝承していくため、デジタルアーカイブやウェブサイトの構築など、ICTと共に震災伝承を進めていきたいと考えています。

5.賑わい創出に向けての取組について

 野田村では、「野田祭り」、みちのく潮風トレイルを活用したイベント等を開催し、賑いの創出を図られています。
 今後、野田村の更なる賑わい創出に向けての取組についてお聞かせください。


 人口減少が進む中、交流人口の拡大・繋がりの深化が重要と考えています。 そのために、テーマを絞ったイベント(例えば、ビールフェスや塩の道トレランなど)を企画・実施することに取り組んでいきます。

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