消防団は、全国全ての市町村に設置される地域密着型の消防機関であり、地域防災活動の中核を担っている8。近年、災害の多様化・大規模化により、従来の消火・救助活動に加え、避難誘導や避難所運営支援活動等、多様な役割が消防団に求められるようになっており、また活動が長期化する場合も多くなっている9。
一方で、1956年(昭和31年)には、183万人いた消防団員は、緩やかに人数が減少、1989年(平成元年)を最後に、100万人を下回り、2020年(令和2年)には、81万人まで減少した(図表3-2-1-2)。
消防団員の役割が多様化するなか、地域防災の担い手である消防団員一人ひとりの負担が増加している状況であり、消防団員の処遇改善や広報活動等による団員確保の取組とともに、災害対応における団員の安全確保や負担軽減が急務となっている。
現在、日本の人口の約3割は65歳以上が占めている。このような超高齢化社会に加え、外国人観光客・在留外国人等も増加傾向にあることから、現在の日本における防災・減災においては、住民の様々な個性への対応が必要不可欠となっている。
●高齢者の増加
総務省統計局によると、2020年10月1日現在では、日本の総人口は1億2,571万人となっている。65歳以上人口は、3,619万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)も28.8%となった11。今後、高齢化率は上昇し、2065年には約4割になると推計されている(図表3-2-1-3)。
このように、日本では支援が必要となる高齢者が多くなることが見込まれるため、災害対応のさらなる効率化が求められる。
●外国人観光客・在留外国人の増加
日本を訪れる外国人観光客についても、年々増加している。2018年には、日本を訪れた外国人の数が、3千万人を突破した。これは、東日本大震災があった2011年の約5倍である12(図表3-2-1-4)。
また、日本に滞在している外国人については東日本大震災等の影響で一時的に減少したものの、2013年以降は増加傾向となり、2019年には日本に在留する外国人の数が300万人弱となった。これは、東日本大震災があった2011年の約1.4倍である(図表3-2-1-5)。国・地方公共団体等の外国人、特に避難行動要支援者に位置付けられる日本語が理解できない外国人、への対応の必要性が高まっている。
東日本大震災が発生した、2011年におけるスマートフォン普及率は29.3%である。その後、スマートフォンの世帯保有率は年々増加しており、2019年には83.4%となり、初めて8割を超えた(図表3-2-1-6)。加えて、モバイル端末の保有状況について、スマートフォンの保有割合は増加傾向なのに対して、携帯電話・PHSの保有割合は減少傾向にあり、モバイル端末としてスマートフォンへの移行が進んでいる(図表3-2-1-7)。
スマートフォンの普及拡大に伴い、モバイル機器によるインターネット利用が一般的になっていき、特にSNSの利用時間は2012年から2017年までの6年間で約4倍にまで伸びている15。今ではスマートフォンは住民の情報収集・伝達に欠かせないツールとなっており、災害時においては安定的に利用できることが以前に増して求められるとともに、地方公共団体等が住民に必要な情報を届けるチャネルとしても欠かせないものになっている。
近年、スマートフォンの普及に伴い、登録された利用者同士が交流できるWebサイトの会員制サービスであるSNS(Social Networking Service)利用者が高齢者も含め増加している(図表3-2-1-8)。
東日本大震災時は、Twitter等のSNSにおいてラジオやテレビといった広域放送では取得が難しかった、地域情報の取得、伝達に貢献した。
その後、熊本地震ではスマートフォンを利用してSNSから情報収集を行う割合は約50%となっており、東日本大震災時の1%程度から大きく利用率を伸ばしている(図表3-2-1-9)。
SNSの普及が進んだことで、災害時においても住民が地域に密着した情報を取得、伝達しやすくなっただけでなく、住民から発信された情報を活用して被害状況の把握や救助活動に役立てる取組も始まっており、災害時の情報収集・伝達にまつわる環境は大きく変化しているといえる。
8 総務省 消防庁 消防団の概要と位置づけ(https://www.fdma.go.jp/relocation/syobodan/about/role/)
9 総務省消防庁 消防団員の処遇等に関する検討会 第2回資料3-1「多様化する消防団の役割等」(2021.2.9)(https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/post-80/02/shiryou3-1.pdf)
10 総務省消防庁消防団に関する数値データ公表サイト(https://www.fdma.go.jp/relocation/syobodan/data/scale/index.html)
※2021.3.30閲覧時点
11 総務省統計局「令和3年3月報(令和2年10月平成27年国勢調査を基準とする推計値、令和3年3月概算値)」
12 2019年までは7年連続で過去最高を更新したが、2020年は新型コロナウイルス感染症の世界的な流行に伴い、各国・地域において水際対策等が強化された影響等により、大きく減少し、前年比87.1%減の412万人となった。
13 日本政府観光局「年別 訪日外客数、出国日本人数の推移(1964年‐2019年)」
(https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/marketingdata_outbound.pdf)に基づく
14 出入国在留管理庁「在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表」
(http://www.moj.go.jp/isa/policies/statistics/toukei_ichiran_touroku.html)に基づく
15 総務省(2019)「令和元年版情報通信白書」