●総通信回数及び通信時間は減少傾向
2019年度における我が国の総通信回数は741.8億回(前年度比5.3%減)、総通信時間は29.3億時間(前年度比3.4%減)であり、いずれも減少が続いている。
発信端末別の通信回数では、IP電話発が164.3億回(前年度比0.2%増)と引き続き増加している一方、固定系9発は132.2億回(前年度13.4%減)、移動系10発の通信回数は445.3億回(前年度比4.5%減)となった(図表4-2-2-14)。
発信端末別の通信時間では、IP電話発が4.7億時間と横ばいである一方、固定系発は3.6億時間(前年度比14.3%減)、移動系発の通信時間は20.9億時間(前年度比1.6%減)と減少傾向にある(図表4-2-2-15)。
●我が国の固定ブロードバンドサービス契約者の総ダウンロードトラヒックは、2020年11月時点で平均約19.9Tbpsに達し、前年同月比56.7%増加
2020年11月時点の国内ISP9社11の固定ブロードバンドサービス契約者のトラヒックについては、ダウンロードトラヒック(A1 OUT)が月間平均で12,885.5Gbps(前年同月比49.1%増)となり、増加傾向である。ダウンロードトラヒック(A1 OUT)とアップロードトラヒック(A1 IN:1,542.7Gbps)の比は8.4倍であり、ダウンロード型の利用が中心である(図表4-2-2-16)。
ISP間で交換されるトラヒックについては、国内主要IX12と交換されるトラヒック(B1)、国内主要IXを介さず国内ISP等と交換されるトラヒック(B2)及び国外ISP等と交換されるトラヒック(B3)のいずれも流入が流出を上回っている (図表4-2-2-16)。
国内ISP9社のブロードバンドサービス契約者(FTTH,DSL,CATV,FWA)のトラヒック(A1)と、我が国のブロードバンド契約数における国内ISP9社の契約数のシェアから、我が国の固定ブロードバンドサービス契約者の総ダウンロードトラヒックを試算した。その結果、2020年11月時点では平均で約19.9Tbpsのトラヒックがインターネット上を流通していると推定される。同トラヒックは前年同月比56.7%増となるなど、近年のインターネット上のトラヒックは引き続き増加している(図表4-2-2-16、図表4-2-2-17)。
●直近1年間では約1.3倍のペースで移動通信トラヒックが増加
近年、データ通信を中心としたトラヒックの増加が移動通信システムに係る周波数のひっ迫の大きな要因となっていることに鑑み、移動通信事業社5社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、UQコミュニケーションズ、Wireless City Planning)の協力を得て、移動通信のトラヒック量(非音声)のデータを集計・分析した結果、2020年9月現在の、移動通信のトラヒックは、平均4,491.8Gbpsとなり、直近1年間で約1.3倍に増加している(図表4-2-2-18)。
ISP9社のブロードバンド契約者の時間帯別ダウンロードトラヒックの一週間の推移をみると、土曜日、日曜日は日中時間帯の利用が多くなっている。
移動通信のトラヒック推移も全ての曜日において増加傾向となっている(図表4-2-2-19、図表4-2-2-20)。
ISP9社のブロードバンド契約者の時間帯別ダウンロードトラヒックの曜日別変化をみると、平日と比較して休日は朝から昼にかけてのトラヒックの増え方が大きくなっている(図表4-2-2-21)。
移動通信トラヒックの曜日別変化をみると、平日は朝から夕方にかけて徐々にトラヒックが増加し、昼休み帯(12時から13時まで)に一時的なピークがある。休日は朝から昼にかけて急激に増加している。平日及び休日ともに、夜間帯にトラヒックが増加している(図表4-2-2-22)。
●電気通信サービスに関する苦情・相談等の件数は、ほぼ横ばい
2020年度の総務省に寄せられた電気通信サービスの苦情・相談等の件数は15,833件であり、前年度からほぼ横ばいであった(図表4-2-2-23)。全国の消費生活センター等及び総務省で受け付けた苦情・相談内容をサービス別に見ると、「MNOサービス」に関するものが最も高い(図表4-2-2-24)。
●APNIC/JPNICのIPv4アドレスの通常在庫が枯渇
IPv4アドレスについては、2011年2月3日にIANA13の世界共通在庫が枯渇し、同年4月15日には、アジア太平洋地域にIPアドレスを分配しているAPNICと我が国のIPアドレスを管理するJPNICにおいてIPv4アドレスの在庫が枯渇した。その後、2012年9月14日にはRIPE NCC14が、2014年6月10日にはLACNIC15が、2015年9月24日にはARIN16のIPv4アドレス在庫が枯渇し、AFRINIC17も2031年12月に枯渇する見込みである(図表4-2-2-25)。これにより、世界に5つある全ての地域インターネットレジストリのIPv4アドレスの在庫が枯渇することになる。
●大手ISPを中心にIPv6対応が本格化
APNIC/JPNICにおけるIPv4アドレス在庫が枯渇した2011年4月からアクセス回線事業者のIPv6対応が本格化しており、主要な事業者においては既にIPv6インターネット接続サービスが提供されている。IPv6普及・高度化推進協議会の調査によると、NTT東西の提供するFTTH回線であるフレッツ光ネクストにおけるIPv6普及率が、2021年3月時点で80.0%に達している(図表4-2-2-26)
また、ISPについては、アクセス回線事業者のIPv6対応に合わせて、大手ISPを中心にIPv6インターネット接続サービスの提供が進展している。2021年1月に総務省が実施したアンケート調査に対し、加入者10万契約以上のISPでは91.7%がIPv6インターネットサービスを「提供中」と回答している。
一方で加入者1万契約以上10万契約未満のISPでは16.7%、加入者1万契約未満のISPでは55.0%が「検討の上、提供しないと決定」か「未検討」と回答しており、大規模ISPと比較してIPv6対応が遅れている(図表4-2-2-27)。
9 「固定系」は加入電話、公衆電話、ISDNの総計。
10 「移動系」は携帯電話及びPHSの総計。
11 協力ISP9社((株)インターネットイニシアティブ(IIJ)、NTTコミュニケーションズ(株)、(株)NTTぷらら、(株)オプテージ、KDDI(株)、(株)ジュピターテレコム、ソフトバンク(株)、ニフティ(株)及びビッグローブ(株))の集計。
12 インターネットマルチフィード(株)、エクイニクス・ジャパン(株)、日本インターネットエクスチェンジ(株)、BBIX(株)及びWIDE Projectがそれぞれ運営するIXの集計。
13 IANA(Internet Assigned Numbers Authority)とは、インターネット上で利用されるアドレス資源をグローバルに管理する管理元。
14 RIPE NCC(Réseaux IP Européens Network Coordination Centre)とは、ヨーロッパ、中近東、アジアの一部を管轄する地域インターネットレジストリ。
15 LACNIC(Latin American and Caribbean Internet Address Registry)とは、中南米地域を管轄する地域インターネットレジストリ。
16 ARIN(American Registry for Internet Numbers)とは、北米地域を管轄する地域インターネットレジストリ。
17 AFRINIC(African Network Information Centre)とは、アフリカ地域を管轄する地域インターネットレジストリ。