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放射性物質や原子力に関する被害は?

ちょうせい第28号(平成14年2月)より

Q&A こんなときは? 第17回

 公害紛争・苦情処理に携わる地方公共団体の担当者の皆さんの疑問にお答えする「こんなときは?」のコーナーの第17回です。今回も最近寄せられたお問い合わせの中から、業務の参考となると思われるものを選んで掲載します。公害紛争処理制度等についてご質問等がありましたら当委員会事務局までおたずねください。

原子力に係る被害を理由とする調停の受付について


 原子力発電所の運転等の原子力事業に伴う放射性物質による被害に係る紛争は、公害紛争処理制度の対象となるのでしょうか。

1 公害等調整委員会における考え方
 
まず、いわゆる原子力損害については、原子炉の事故等による、大気汚染等の典型7公害の形態をとらない発生源からの直接的な放射線被曝による被害については、公害紛争処理制度の対象とはなりません。
 しかし、直接的な被曝という形態をとらない被害、即ち、放射性物質に汚染された塵や水の拡散による周辺地域の大気、水又は土壌の汚染による人の健康や生活環境に対する被害は、大気汚染、水質汚濁又は土壌汚染の典型7公害に該当することから、公害紛争処理制度の対象となります。

2 公害紛争処理制度における取扱い
 
公害紛争処理制度では、典型7公害とともに典型7公害以外の被害が併せて主張されている場合、紛争を包括的に解決する必要から、典型7公害以外の被害を含めて一体的に処理しています。
 原子力に係る紛争においても、制度の対象となる大気汚染等の形態をとった被害と併せて制度の対象とならない直接的な被曝による被害が主張されている場合には、紛争を包括的に解決する必要から、一体的に処理することが可能です。

3 その他
 なお、原子力事業に係る紛争のうち損害賠償責任に関するものについては、「原子力損害の賠償に関する法律」第18条に基づく和解の仲介の制度があります。
 この和解仲介の制度と公害紛争処理制度とは相互に独立した制度であり、原子力事業に係る損害賠償責任に関する紛争のうち典型7公害による被害が主張されている紛争については、和解仲介の制度と公害紛争処理制度のどちらも利用することができ、いずれの制度を利用するかは当事者の意思によります。

4 これまでに公害等調整委員会又は都道府県公害審査会が受付けた原子力に係る被害を理由とする調停事件
 
 ア 「原子炉運転停止等調停申請事件」
 平成2年9月11日、大阪府の住民ら39人から関西電力株式会社を相手方(被申請人)として大阪府知事に対し調停を求める申請がありました。
 申請の内容は、被申請人が設置した福井県所在の高浜発電所2号原子炉について、蒸気発生器伝熱管の損傷状態はひどく、これが破断すれば炉心溶融事故に発展するおそれがあり、そうなれば100km前後離れた大阪府にも空気中放射能がわずか半日で到達し、申請人を含む大阪府民は壊滅的被害を被るおそれがあることを理由として、被申請人会社に対し、少なくとも損傷の発生を完全に防止する方法を確立するまで、同原子炉の運転を再開しないことを求めるというものでした。
 大阪府知事は、本申請受付後、福井県知事に対して公害紛争処理法第27条3項の規定により連合審査会設置の協議を行ったところ、協議がととのわなかったため、同年10月1日、同法第27条5項の規定に基づき、公害等調整委員会に対し、本事件の関係書類を送付しました。
 公害等調整委員会では、本事件の関係資料の送付を受けた後、調停委員会を設け、同委員会は、3回の調停期日を開催し、当事者双方から意見及び事情の聴取を行うなど鋭意調停手続を進めましたが、当事者間に合意が成立する見込みがないと判断し、公害紛争処理法第36条1項の規定により、平成3年10月28日、調停を打ち切り、本事件はこれにより終結しました。

 イ 「核融合科学研究所重水素実験中止調停申請事件」
 平成13年5月28日、岐阜県外13都県の住民ら 7,895人から、国(代表者文部科学省大臣)を相手方(被申請人)として、公害紛争処理法第26条第1項の規定に基づき、岐阜県公害審査会に対し調停を求める申請がありました。
 申請の内容は、文部科学省核融合科学研究所において行われようとしている重水素実験が実施された場合、(1)トリチウムの危険性、(2)中性子の危険性、(3)風評被害、(4)大量の電力を消費することに伴う高圧線による電磁波被害の危険、(5)核融合炉爆発に伴う大気汚染の危険がある。これらを理由として、被申請人国に対し、同研究所において重水素実験を実施しない事を求めるものです。
 本事件は、いわゆる県際事件であり、岐阜県知事は公害紛争処理法第27条第3項の規定により、関係都県知事と連合審査会の設置について協議を行いましたが、協議が整わなかったため、平成13年7月9日、同条第5項の規定により、本事件の関係書類を公害等調整委員会に送付しました。公害等調整委員会では、本事件の関係書類の送付を受けた後、直ちに調停委員会を設け鋭意手続を進めています。
 

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